【最終更新日】2022年5月1日
このバローロの 赤ワイン は「ワインの王様」、バルバレスコは「ワインの女王」と呼ばれており、イタリアを代表する高級ワインとなります。
(ただし後述しますが「女王」といってもバルバレスコは相当重厚な味わいです。単体では男性的な力強さを感じるでしょう)
バローロ と バルバレスコ は ブドウ品種 はともに ネッビオーロ で、特徴もよく似ています。
イタリアの品種は サンジョヴェーゼ や バルベーラ など、ほかの国でも栽培が成功しているのに対比して、ネッビオーロはほぼ ピエモンテ州 に限定されています。
ネッビオーロ は世界でも最も渋みや酸味が強く、若いうちはとっつきににくい反面、熟成を重ねることで無二の傑出するワインに豹変するのです。
おそらく バローロ や バルバレスコ が苦手という方も、20年以上経たものをいただくことでその印象ががらりと変わるでしょう。
ここでは二つをまとめて違いや特徴をご説明します。
月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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平均最低気温 | −3 | −1 | 2 | 6 | 10 | 14 | 16 | 16 | 13 | 7 | 2 | −2 |
平均最高気温 | 6 | 8 | 13 | 17 | 21 | 25 | 28 | 27 | 23 | 17 | 11 | 7 |
↑のように、ピエモンテ州 の州都であるトリノの平均気温を検討すると、夏の最高気温こそ高いのですが、全般的に冷涼なことがわかります。
さらに、冬の寒さは厳しく、最低気温は ピュリニーモンラッシェ (-1度)よりも低いことがわかります。
このことから、通常であれば栽培限界の問題に直面し、農作物の原則から言えば交配品種や複数の品種を植えてリスクヘッジを図るのが正攻法でしょう。
しかし実際には ネッビオーロ という高貴品種を単一で用いるという真逆の選択が行われたのです。
ネッビオーロ は通常のブドウよりも栽培期間が長く、その結果 収穫期 に天候不順に見舞われる可能性を考えると、よほどのこだわりを持って品種選択をしたことがわかります。
興味深いのが、ほかのイタリアのエリアは、国際品種をブレンドすることでマーケットをにらんだワイン造りを行っているのに対して、このエリアはほんの少しの生産者を除いて地元の品種を使用しているところでしょう。
二つのワインとも非常に重厚なワインで、DOCG 規格の中でも最上級の評価を受けています。
しかし、ワインの知名度が上がると共に、生産者が増加したため品質にバラツキが出るようになりました。
厳しい意見ですが、一部のワイナリーには世界的なイタリアンブームのなかで「バローロやバルバレスコであれば売れる」という風潮があったと私は認識しています。
世界的なイタリア料理ブームも手伝い1990年代以降どんどん高額になっていくのですが、価格に対して品質の見合わない生産者も目に付くようになったのです。
そのため価格も3千円くらいの手頃なものから、ヴィンテージ によっては数万円のものまで幅広くあります。
価格と品質の見合わないワインはなにもこの地域だけではありません。
ブルゴーニュ や ボルドー、シャンパーニュ にもありますし、もっと言えば世界中の評価の高い地域で部分的にみられる経済現象です。
もっとも日本ではユーザーの目が肥えてきて、最近は品質の見合わない バローロ や バルバレスコ はあまり見かけなくなりました。
バローロ、バルバレスコ
ブドウの品種
バローロ、バルバレスコ共に、ネッビオーロ種(NEBBIOLO)で造られています。
ネッビオーロ はイタリア語の霧(ネッビア)が語源で、霧がで始める季節まで 収穫 を待たなくてはならないという意味があります。
晩熟型の品種のため、糖分が上がり、その分ワインは アルコール度数 が高くなります(と同時に天候不順などのリスクも上がります)。
また、酸味 や 渋み も大変に強い品種で、色調は明るいものが多いのにびっくりするほどのボリュームを感じることも多いでしょう。
渋み、酸味、アルコール が強いということは熟成に耐えうる品質だということです。
ネッビオーロ種を何年も熟成させることで、ワインには深く濃厚な味わいが生まれます。
日本に輸入されるワインとしては、
・ランゲ ネッビオーロ
・ネッビオーロダルバ
などの中には品質も高く、バローロやバルバルスコほどではないにせよ、ネッビオーロの特徴の出た上質なワインも多くあります。
生産地域はアルプス山脈に囲まれた特有の産地となり、地形がブドウの栽培に向いています。
また、ブルゴーニュ のように局地的気象条件(ミクロクリマ)がワインに与える影響が多い地域でもあります。
例えば、バローロ丘陵で造られるワインは柔らかく華やかな印象ですが、セッラルンガ渓谷で造られるワインは重厚で熟成期間の長いワインとなります。
ブルゴーニュがピノノワール単体になったのは「ブドウは畑の特性をそのままワインに映す媒介者」という理論が根底にあったのですが、ネッビオーロも同じ理屈で先鋭化されたのでしょう。
バローロ、バルバレスコの特徴
イタリアワインといえば、飲みやすく軽い味わいが多い中、バローロはしっかりした渋みとコクのあるワインであることが特徴です。
ただし ボルドー のように黒みのある色調ではありません。
どちらかといえば熟成の進んだブルゴーニュのような外観です。
ソムリエ試験での出題は価格的にあまり現実的ではありません。
しかし、ソムリエコンクールでは、審査員の側は品種の個性が出ているため出題しやすいので可能性はあります。
色調は明るいガーネットなのに、酸味が鋭く、渋みが酸味を押し広げるように広がってくるのが特徴です。
また、熟成によって果実味は少なくなり、乾いた印象のことが多いので判別しやすいです。
世界的にも突出した個性を持つので、ここが当てられるかどうかでほかの出場者と差がつくでしょう。
バローロ、バルバレスコ共に多数の生産者がいますので、それぞれ個性が変わってきます。
伝統的な手法で醸造する生産者もあれば、ブルゴーニュの技術を取り入れたモダンスタイルや、両方の生産方法を取り入れた生産者もあります。
伝統的な手法の場合は、酸味やタンニンがしっかりと感じられます。
一方モダンスタイルの場合は、熟成期間が短時間で果実風味が楽しめるような仕上がりになります。
バローロとバルバレスコの違い
バローロは王様、バルバレスコは女王様と評されますが、前述のとおり両者には際立った違いは見出しにくいのが現状です。
ソムリエコンテストでもブラインドテイスティングで出題されても、正確に答えられる人はほとんどいないかもしれません。
(イタリアワイン、というブラインドテイスティングであれば何となるかもしれません)
もっとも、通説ではありますが、
・渋みはバローロのほうが強く、バルバレスコのほうが滑らか
・酸味は、バローロのほうが鋭角的で、バルバレスコのほうが柔らかい
・熟成はバルバレスコのほうが早く進む
などの特徴があるといわれています。
もっとも、これらは一つの目安であって、ワイナリーによっても違いがありますし、最終的には一つ一つのワインで判断するしかありません。
相性の良い料理
ジビエ料理 で使用される動物や野鳥が豊富に得られる地方のワインなので、ジビエ料理 との マリアージュ は最高です。
重厚ながらも柔らかな味わいは肉料理との相性が良くなっています。
バローロ の産地の近くで栽培される 白トリュフ は、ブドウの収穫時期とも重なることから、最高のマリアージュと言われています。
ピエモンテ風の手打ちパスタで絡めれば最高のマリアージュを楽しめます。
その場合は、できる限り熟成の進んだワインを選びましょう。
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