【最終更新日】2022年4月25日
ガヴィ(GAVI)はイタリアのピエモンテ南東にあるワインで、もともと1974年からDOCでしたが、1998年にDOCGに昇格しました。
赤ワインの生産量が6割を占めるピエモンテ州では珍しく、白ワインのみが認められた産地呼称です。
イタリアやフランスのソムリエはバローロブラン(白のバローロ)と呼ぶことがあります。
日本ではガヴィの村で生産すると思われていますが、実際のコミューンはアレッサンドリア州の
Bosio, Capriata d’Orba, Carrosio, Francavilla Bisio, Gavi, Novi Ligure, Parodi Ligure, Pasturana, San Cristoforo, Serravalle Scrivia , Tassarolo
までの11村、約1000ヘクタール弱のエリアです。
”ガヴィ コムーネ ディ ガヴィ”や”ガヴィ ディ ガヴィ”
と呼ばれるのは、ガヴィの中でも”ガヴィのコミューンで生産されたガヴィ”という意味です。
ガヴィ村の生産者にすれば
「俺たちのガヴィこそが正真正銘のガヴィだ」
といいたくなるのが人情でしょう。
また、スティルワイン以外にもスプマンテもフリッツァンテもDOCGに認められています。
現在では辛口白ワインとして知られているガヴィですが、18世紀までは甘口ワインが造られていました。
砂糖が普及していないうえに栽培技術が気候の厳しさに追い付いていなかったため、糖分が豊富であることが価値であると考えられていたのです。
冷涼なエリアはブドウの新陳代謝が進まずに糖分が上がりづらいため、「糖分の高いブドウ=いいブドウ」という理屈が成り立ったのでしょう。
ところが19世紀に入ってから、食生活の変化からマーケットでは地中海の魚料理に合う辛口の白ワインが求められるようになります。
そうなると生産者が辛口ワインに目を向けだし、徐々にガヴィは辛口にシフトされるようになったのです。
20世紀に入り、食生活のライト嗜好はさらに拍車がかかり、それに合わせてガヴィの生産者はより一層辛口ワインの生産に力が入ります。
こうなるともう誰も甘口ガヴィには見向きもしません。
その結果、現在はガヴィと言えば辛口ワイン、というほど辛口ワインのイメージが定着したのです。
評価の高い生産者として、
Broglia、Philippe Gavignet、Michele Chiarlo、 Tenuta la Marchesa
などがあります。
1990年代のイタリアンブームの時にも、いち早く日本に紹介された白ワインはガヴィでした。
日本のイタリアンブームはそれまでの「専門的な西洋料理はフレンチ」の常識を覆し、軽やかで親しみやすく、日本人のし好に合った味付けは一気に主役に躍り出ます。
ところがもともと敷居の高いフレンチへの反動があったため、相対的に安い価格帯の紹介のされ方が先行してしまったのです。
そして赤ワインの一部のキャンティのように、質の低く「がぶがぶ飲むワインがイタリアワイン」のイメージがついてしまうのです。
実際にある程度の価格のイタリアンでもソアーヴェやトレッビアーノなどの廉価で飲みやすく、今では調理用に使われるようなワインがグラスワインで平気で使われていました。
そこにガヴィはさっそうと現れます。
一本芯の通った酸味とクリスピーな口当たり、心地よく凝縮した果実味は「イタリアの白にもこんな高品質なワインがあったんだ」とユーザーの印象を変えたことは間違いありません。
ガヴィ
実はロマンチックなワインだった
日本ではほとんど知られていないのですが、実はガヴィのワインには大変にロマンチックな逸話があります。
~6世紀のフランク王クロドメール(クロヴィス1世の息子)の娘、ガヴィア(GAVIA)は父親の警備係の男性と恋におちます。
そして結婚の許しを得ようとクロドメールに伺いを立てたのですが、身分の違いを理由に決して許しをもらえませんでした。
絶望した二人は逃亡を決意。そしてアルプスの反対側にある小さな村にたどり着くのです。
ある夜、宿泊先でおいしい白ワインをいただき、気をよくしたのか、これまでのことを宿の主人に話します。
主人は二人に同情を見せるのですが、その裏でクロドメールに知らせを送り、二人の居所を教えてしまうのです。
主人は莫大な報奨金をもらい、そして王によって送られた軍隊によって二人は現地で捕まってしまいます。
そしてクロドメールの前にガヴィアは連れ戻されたのですが、陳情する娘の涙に負け、ついに王は二人の結婚を認めるのです。
二人には結婚祝いとして思い出の小さな村を与えられ、娘の名前をとって”ガヴィ”と名付けた~
というものです。
なぜもっと知られないのか、不思議なくらいに美しい話ですね。
意中の方がいらっしゃるユーザー様には、覚えておくとガヴィのエピソードはいつか活躍するかもしれません。
ブドウの品種
ガヴィに昔から生息している白ブドウ種であるコルテーゼ(CORTESE)を使用しています。
このコルテーゼはピエモンテでしかほとんど見かけません。糖分と酸味が大変にバランスの取れた、上質なブドウです。
ガヴィを名乗るワインは、コルテーゼを100%使用していないといけないという規定があります。
ガヴィの生産される地域は大変に冷涼です。
そのためコルテーゼ種は南向きの斜面でなければ栽培出来ず、ブドウ畑は南向きの斜面に広がり、石灰質が主体の土壌で栽培されています。
石灰質の土壌からか、ブルゴーニュのシャブリと同様にクリスピーな口当たりです。
ガヴィの特徴
ガヴィは透明感のある緑がかった麦色の辛口白ワインとなります。
グレープフルーツやパッションフルーツなどの柑橘系アロマを感じさせるフルーティーさもありつつ、ハーブ系の香りも感じられます。
大変に繊細ですっきりした酸味と、シャープな味わいで後味までスッキリとしています。
酸味だけでなく、石灰質土壌特有のミネラルもしっかりと感じられるのが特徴です。
ワイナリーによっては長期の熟成後に飲むほうがいい場合もありますが、多くは早飲みのワインです。
瓶詰めから3年くらいで、フレッシュさを楽しむべきワインであるといっていいでしょう。
飲み方のコツ
ガヴィはさっぱりした口当たりなので、白ワインの中でも冷やし気味に6度程度で飲み始め、徐々に温度が上がって8度くらいになる、というイメージが最もおいしく飲めるでしょう。
この温度ですと、冷蔵庫で一晩冷やし、室温に10分程度置けば近い温度になります。
ワインクーラーがあれば、氷だけを入れてその上にボトルを置けば、ワインの温度を保つことができます。
グラスは大ぶりでなければどのようなグラスでもいいですが、できれば先がつぼまった↑のようなグラスをきれいにみがいておきましょう。
酸度が高いためは輝きが強く、光を反射してきれいに映る特徴がありますので、グラスに注がれた美しい外観もおいしさを一層引き立たせます。
相性の良い料理
元が魚料理に合わせて辛口の白ワインの生産されたこともあり、魚料理とのマリアージュは最高と言われています。
アクアパッツアやカジキマグロのグリルも考えただけで食欲をそそりますね。
貝類の生臭みは、ガヴィのさわやかな風味が口の中をさっぱりさせてくれます。パスタであればボンゴレなどとも非常に相性良くなっています。
酸味がシャープでクリスピーな印象なので、和食であれば青魚の塩焼きなどは最高の組み合わせです。
ガヴィの柑橘系の香りが食欲を増し、お魚がより一層おいしく感じられるでしょう。
例えば、↑の画像であれば、スダチを絞る代わりにガヴィを一口いただくのです。
きっと「これがワインと料理のマリアージュなんだ!」と思ってくれることでしょう。
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