【最終更新日】2022年9月20日
ピノ・ノワール(仏:PINOT NOIR)は主に冷涼なエリアで栽培される黒ブドウ品種で、ヴィティスヴィニフェラ種に属しています。
もともとはフランス、ブルゴーニュ地方で成功しましたが、現在では世界的な人気となり、世界中の銘醸地で好んで選ばれるブドウ品種になっています。
栽培環境や気象条件を選び、病害虫にも強くはないため、世界的な人気の割には栽培面積は決して広くはなく、これがカベルネソーヴィニョンやシャルドネとの違いになっています。
全体的にアルコール度数は高くなく、また色調も渋味も控えめで、繊細なワインに仕上がりやすいとされています。
ブルゴーニュをはじめとする世界各地のワイン産地では特に単体でワインにされ、シャンパーニュなどのスパークリングワインではブレンドをされる傾向が強いです。
【ピノノワールのワインのお勧めはこちらをご参考ください】
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目次
ピノ・ノワールとは?
ぶどうの特徴
ピノ・ノワールといえば銘醸地として真っ先に挙げられるのがフランス、ブルゴーニュ地方です。
その歴史は長く,4世紀には既に栽培されていたとされています。
有名な“Romanee Conti(ロマネ・コンティ)”はブルゴーニュ地方コート・ドール(黄金の丘)地区にあるヴォーヌ・ロマネ村の畑で栽培されたピノ・ノワールで醸造されています。
ピノ・ノワールから造られるワインは,その多くがルビー色の明るい色調で,味わいはバランスの良い酸味が際立ったものが多いです。
また特に語られるのはその香りで,魅惑的な香りからしばしば「ピノ・ノワールは香りを楽しむもの」とも云われています。
大変に魅力的な葡萄品種ですが栽培が難しいことでも知られており,特に環境を選ぶことから栽培者にとっても憧れの品種となっています。
なお、ブルゴーニュ地方では赤ワインはピノノワールから、白ワインはシャルドネから造られることが多いです。
合わせまして、シャルドネについてはこちらをご参考ください。
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栽培・醸造
葡萄の特徴として①房は小さく②果粒も小さく③密着していて④果皮は薄く⑤深い紫から青み掛かった色調をしています。
様々な品種の中でも,とりわけ気難しいと表現されるほどに栽培が難しいことでも有名です。
高品質なワインを造ることが出来る葡萄である(=高額で販売することが出来る)にも関わらず,多くの国・地域で栽培がされなかったのは
①冷涼で乾燥した気候
②土壌は石灰質や粘土質で且つ水捌けがよいことなどを始めとした様々な栽培適正条件
③カビなどの病害に弱い
④果粒が日焼けしやすい
などの品種特有の性質によるところが強く、ごく最近(1980年代)まではブルゴーニュ以外の産地での適切な栽培は困難である,とされる程でした。
そのような状況下にあったピノ・ノワールも1990年代以降になると栽培技術の向上,正しい科学的知識の普及,各ワイナリーの努力や熱意に伴う活動,それらに伴った成功例が増加し,栽培量は増加の一途を辿ることになります。
テロワールを反映する品種
同じフランスの銘醸地ボルドーを始めとして、多くの国・地域では「アッサンブラージュ」といって複数の品種をブレンドする傾向が強いです。
近年では単一のブドウ品種でワインが造られることも増えましたが、それでも完全に単一品種の規定というのはフランスのAOCでも少数派になっています。
しかし一方のピノ・ノワールは、シャンパーニュなどの一部の例外を除いて単一品種のみでワインが造られます。
これは歴史的な経緯も様々ありますが、品種そのものが持つ繊細さにあるとされています。
特にフランス・ブルゴーニュ地方では畑の土壌や標高,傾斜の向きを始めとした環境やその年毎の気候など,その地の個性=「テロワール」を表現したワインが良いワインとされており,その個性を反映しやすい品種こそがピノ・ノワールである,とされてきました。
アッサンブラージュをしてしまうとそのワインの味わいが葡萄品種からくるものなのか,はたまたテロワールの個性なのかが分からなくなってしまう,ということなのです。
外観,香り,味わいの傾向
ピノ・ノワールの外観は,明るいルビー色で,グラスの向こう側が透けて見えるほどの透明感があり,液面がキラキラと輝いているものが多いです(この輝きは,酸度と関係しています)。
カベルネソーヴィニョンやシラーなどに比べると色合いは明るく、濃い色調のワインになるのは稀です。
香りはラズベリーやチェリー,アセロラなどの赤い果物や,赤い薔薇や菫などの花がふくよかに広がります。
鉄や血液などのミネラルの印象を感じることもあるでしょう。
熟成が進んだものですと茸,動物の皮や肉などの獣感,紅茶やドライフラワーの香りを帯びてくるものもあります。
ピノ・ノワールの香りは,しばしば「妖艶」「官能的」と評されるほどに魅力的です。
グラスに鼻を近づけると香りに包みこまれる感覚に,多くのワインファンが魅了され虜になり、「香りを楽しむ品種だ」と断言するオーソリティーまでいるほどです。
味わいは繊細なものが多いです。
口に含んだときの第一印象(これをアタックといいます)は柔らかで,アルコール感もそこまで強くありません。
豊かな酸味と控えめなタンニン(渋み)がバランスよく口の中に広がります。
ふくよかな味わいが口の中にふんわり浮かび上がるイメージでしょうか。
主な生産地
フランス
フランスではブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方、アルザス地方、ジュラ地方、ロワール渓谷地方上流部で主に栽培されています。
シャンパーニュ地方以外では単一品種で、シャンパーニュ地方ではブレンドをして造られることが多いです。
ブルゴーニュ地方
世界中の多くのワインファンを虜にする生産地。ボルドーと共に,4世紀には銘醸地としての名声が確立されていました。
また,ピノ・ノワールの原産地と云われています。需要に対して供給,つまり生産量が少なく(ボルドー地方の約3分の1以下),年々価格が高騰しておりワインファンの悩みの種となっています。
アルザス地方
フランス北東部に位置し,ライン川を挟んでドイツとの国境沿いにあるアルザスでも,ピノ・ノワールのワインは造られています。
アルザス地方はもともと白ワインが主流なため、造り出されるワインのうち赤ワインは全体の1%に過ぎませんが,質の高いワイン造りがされています。
シャンパーニュ地方
シャンパーニュでは発泡性ワインのシャンパーニュの品種として、シャルドネ、ピノムニエなどとともにブレンドをされて造られます。
一部例外的にブランドノワールと言ってピノ・ノワール100%のシャンパーニュもありますが、ほとんどはブレンドをされて造られることになります。
ドイツ
ドイツでは,ピノ・ノワールのことを「シュペートブルグンダー」と呼びます。
一昔前まで,ドイツワインといえば甘口白ワインでしたが,ここ数十年でその様相は明らかに変化を見せています。世界的な赤ワインブームを背景に,赤ワインにも注力するようになったのです。
1980年代10%ほどしかなかった赤ワイン用葡萄の栽培面積は2005年には約36.8%に増加しました。そのうち最も栽培面積が広いのがシュペートブルグンダーです。
アメリカ
主にオレゴン州,カリフォルニア州で生産されています。
ニューワールド(ヨーロッパ諸国のワイン生産伝統国に対する対義語)らしいパワフルな凝縮感,ジューシーな果実味を感じるものから,伝統国と見紛うような繊細さ,エレガントさをたたえたものまで,様々なスタイルのピノ・ノワール・ワインが生み出されています。
オーストラリア
同国で有名なのは何といってもシラーズによる赤ワインですが,南オーストラリア州,西オーストラリア州では,一部地域においてピノ・ノワールが栽培されており,高い評価を得ています。
ニュージーランド
同国はどちらかと言えばソーヴィニョン・ブランから造られる白ワインが有名ですが,黒ブドウの栽培面積トップはピノ・ノワールになっています。
マールボロ地方を中心にピノ・ノワールの高品質なワインが造られています。
その他の国々
ピノ・ノワールによる素晴らしいワインを生産する国は他にもたくさんあります。
南アフリカ共和国,アルゼンチン,チリ,イギリス、そして日本。
様々な国や地域に思いを馳せながら,各国のピノ・ノワールを楽しんでみてください。
マリアージュ
ピノ・ノワールは色調や渋みは控えめで、酸味と果実味、渋みとのバランスの取れた味わいのワインに仕上がりますので、素材の味を引き立てた料理が合うとされています。
繊細な香りや味わいが魅力であるピノ・ノワールにとって,焼くことによって料理が纏う焦げや煙の香りは長所をマスクしてしまうことに繋がります。
この傾向を反映してか、ブルゴーニュ地方の郷土料理に,豪快な「焼く」調理法の料理はあまりありません。
・ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込み)
・コック・オ・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)
・鴨胸肉のロースト,赤ワインソース
などのように肉の素材を味わい、味付けも赤ワインソースなどの強くないソースのものが好まれる傾向にあります。
また、日本料理とのマリアージュでは、しょうゆや出汁の風味を生かした料理との相性が検討されています。
ウナギのかば焼き、肉じゃが、豚の角煮とのマリアージュは意外な発見になることでしょう。
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