シャトー・ラフィット・ロートシルトの歴史─なぜ“王”であり続けるのか?

【最終更新日】2025年4月15日

ボルドーワインを語るとき、必ずその名が挙がる存在──それがシャトー・ラフィット・ロートシルトです。

フランス・メドック格付け第一級の筆頭、つまり「世界最高のワイン」として知られています。

この記事では、ラフィットの格付けにおける地位長い歴史とブランド形成の過程、そしてなぜ今なお頂点に立ち続けているのかを、わかりやすく解説していきます。

【動画でも解説しています】

 

シャトー・ラフィット・ロートシルトの歴史──格付け筆頭のワインは、なぜ“王”であり続けるのか?

■ シャトー・ラフィット・ロートシルトとは?

シャトー・ラフィット・ロートシルトは、フランス・ボルドー地方のポイヤック村に位置するワイナリーです。

「ラフィット(Lafite)」とは、ガスコーニュ語で「小高い丘」を意味し、その名のとおり美しく起伏のある地形が特徴です。

ボルドー左岸の中でも、特に水はけの良い砂利質の土壌と温暖な気候に恵まれたラフィットの畑は、カベルネ・ソーヴィニヨンを中心とするブドウに最適な条件を備えています。

ラフィットのワインは、エレガンス、長命、複雑さ、そして上品さで知られ、まさに“王のワイン”と称されるにふさわしい風格を備えています。

■ なぜ“格付け筆頭”なのか?──1855年の栄光

1855年、ナポレオン3世の命により開催されたパリ万博に合わせて、メドック地区の格付け制度が制定されました。

このとき、ラフィットは第一級(プルミエ・クリュ)の中でも最上位の筆頭に位置づけられます。

当時の格付けは、品質と市場価格を元に構成されましたが、ラフィットは両面において圧倒的な実績を誇っていたのです。

すでに18世紀には、フランス王ルイ15世の寵愛を受けたワインとしてヴェルサイユ宮殿の晩餐を彩り、アメリカ建国の父・トーマス・ジェファーソンにも「最良のワイン」として高く評価されていました。

つまりラフィットは、王室、外交官、知識人、貴族といった当時の上層階級に愛され、

その格付けは“選ばれしワイン”としての集大成だったのです。

■ 歴史の中で築かれたブランド力

シャトー・ラフィットの歴史は、13世紀にまで遡ります。

17世紀にはすでにワイン生産が本格化し、18世紀には世界の名声を得るに至ります。

そして19世紀最大の転機となったのが、1868年、金融王ジェームス・ド・ロートシルト↑による買収です。

この買収劇は、ラフィットが高い評価を受けていた証であると同時に、大きな社会的波紋も生みました。

当時、金融家が伝統的な貴族文化の象徴であるワインシャトーを買収することは、非常にセンセーショナルだったのです。

初回の競売は条件が合わず流れ、2回目の競売では裁判沙汰にまで発展

これは、ラフィットという“文化的象徴”を誰が所有するにふさわしいかという、正統性をめぐる争いだったとも言えるでしょう。

しかし、ロートシルト家はその後、ラフィットの品質維持に並々ならぬ努力を注ぎ、

その信頼とブランド価値を確かなものにしていきます。

■ ニコラ=アレクサンドル・ド・セギュールと“格の裏付け”

18世紀には、フランス貴族のニコラ=アレクサンドル・ド・セギュール侯爵がシャトー・ラフィットを所有。

同時にラトゥールやムートンも手中に収め、「葡萄の王子」とまで称されました。

彼の有名な言葉──

「我、ラフィットやラトゥールをつくりしが、我が心カロンにあり」──は、

ラフィットやラトゥールがすでに世間的評価では最上とみなされていた証とも言えます。

つまりこの時代にはすでに、「ラフィット=最高級ワイン」という認識が確立していたのです。

■ ラフィットが背負う“責任”と“象徴性”

現在に至るまで、ラフィットは単なる高級ワインではありません。

それは、ボルドーワイン全体の品格と文化的伝統を象徴する存在です。

格付け筆頭という地位に甘んじることなく、毎年、最高の品質を保ち続けるという使命感

もしラフィットが品質を落とせば、「格付け」という制度そのものが揺らぐかもしれない──

そんなプレッシャーに応え続けていることこそが、ラフィットの偉大さの根源なのです。

■ まとめ

ラフィット・ロートシルトは、「最も高価なワイン」の1つであるだけでなく、歴史・文化・信頼の集大成として、ワイン界に君臨する存在です。

それは、ルイ15世が愛したワインであり、トーマス・ジェファーソンが推奨したワインであり、

ジェームス・ロートシルトが法廷闘争を乗り越えて手に入れた“象徴”でもあります。

格付け筆頭という地位は単なる称号ではありません。

それは、「ワインの王」としての責任を果たし続ける者にのみ与えられる栄誉なのです。


 

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