【ジュヴレ・シャンベルタンの格付け】基礎知識の解説とワインの違い

【最終更新日】2022年10月18日

「ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)」は、フランス・ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方、コート・ドール(仏:Cote d’Or)の北側、コート・ド・ニュイ(仏:Cotes de Nuits)地区に位置する村の名称であり、ワイン生産地のアペラシオン(仏:Appellation)の名称です。

 

フランス二大銘醸地の一つとして名高いブルゴーニュ地方では、ワインに格付けがされています。

上から順に「特級格」「1級格」「村名格」「地方名格」となるこの格付けは、ワインの品質に対してではなく、ブドウ畑に対してなされます。

どの畑で育てられたブドウから造られたワインなのかによって、ワインの格付けが決まるのです。

 

この村のアペラシオンは、村名格以上には全て「シャンベルタン」の名が入ります。これが初学者にとっての分かりづらさ、混同しやすさに繋がっている、という声も聞かれます。

この記事では、ジュヴレ・シャンベルタンの格付けについて解説していきます。

 

ジュヴレシャンベルタンの格付け

格付けについて

ブルゴーニュ地方では、上位から順に,「特級格」「1級格」「村名格」「地方名格(広域アペラシオン)」と格付けされます。

同地の格付けの歴史は古く、11世紀にまで遡ります。

 

この地には昔から多くの修道院がありました。

修道士たちは神への捧げ物として、自らブドウ畑を耕し、栽培し、ワイン造りを行いました。

 

長いワイン造りの歴史の中で、修道士たちはあることに疑問を持ちます。

それは同じ栽培同じ醸造をしているにも関わらず、できるワインの個性や品質の高さに明らかに違いがある、それはなぜだろう、というものでした。

 

その疑問の答えが「畑の土壌や地勢などの影響によって、育つブドウに違いができ、その違いが出来上がるワインに影響する」ことだと修道士たちが気付くのです。これによって「テロワール」の概念が生まれました。

畑に対して格付けをし、どの畑で育ったブドウから造られたワインなのかによって、ワイン自体にもそのまま畑の格付けが適用されるようになりました。

この格付けが行われ始めたのが、11世紀になります。

 

 

格付け

地方名格(広域アペラシオン)

ジュヴレ・シャンベルタン村の葡萄が使われていても、同アペラシオンのAOC規定から外れた場合、そのワインは地方名格「Bourgogne」になります。

またドメーヌによっては、そのワインが自分のドメーヌのその格に品質的に相応しくないという理由から、例えば村名格の規定を満たしていたとしてもランクを下げて「Bourgogne」として出荷することもあります。

 

村名クラス

村の名前そのままに「Gevrey-Chambertin」を名乗ります。

通常は村名クラスの畑のワインをブレンドし、畑名は記載をせずに売り出しをされることが多いです。

大手のネゴシアンの場合はこの傾向が強いです。

 

1級クラスの畑の周囲にあることが多いですが、村名クラスであっても畑には区画訳があり、かつ、畑ごとに名前がついています。

そのため村名クラスであっても個別にワインを瓶詰めし、畑名を記載するワインもあります。

 

村名という響きから、取るに足らない品質と勘違いされる場合がありますがそれは違います。

この格付けがなされるワインはどのアペラシオンでもその土地の個性や造り手の栽培・醸造の哲学が反映されている場合が多く、品質の高いものが多いです。

生産者によっては1~2万円くらいすることも珍しくないです。

 

 1級

この格になると、エチケットには「Gevrey-Chambertin 1erCru/PremierCru」と印字されます。その後ろに畑名が載る場合も多いです

ジュヴレ・シャンベルタン村には1級畑が26面あります。

「クロ・サン・ジャック」「ラヴォー・サン・ジャック」「オー・コンボット」など、グラン・クリュと遜色のない畑が多数並びます。

 

シャンポー/Champeaux

レ・グーロ/Les Goulots

コンブ・オー・モワンヌ/Combe au Moine

プティット・カズティエ/Petits Cazetiers

レ・カズティエ/Les Cazetiers

クロ・サン・ジャック/Clos Saint-Jacques

エストゥーネルサン・ジャック/Etournelles-Saint-Jacques

ポワスノ/Poissenot

ラ・ロマネ/La Romanee

ラ・ボシエール/La Bossiere

クロ・デ・ヴァロワイユ/Clos des Verroilles

ラヴォー・サン・ジャック/Lavaut Saint-Jacques

クロ・デュ・シャピトル/Clos du chapitre

クレピヨ/Craipillot

シャンポネ/Champonnet

フォントニィ/Fonteny

イサール/Issarts

レ・コルボー/Les Corbeaux

オー・クロソー/Aux Closeau

ラ・ペリエール/La Perriere

クロ・プリウール/Clos Prieur

シェルボード/Cherbaudes

プティット・シャペル/Petite Chapelle

アン・ネルゴ/En Ergot

ベレール/Bel Air

オー・コンボット/Aux Combottes

 

特級畑

多くのワインファンを魅了して止まない9つの特級畑とその特徴を、以下に列挙します。

 

【ジュヴレシャンベルタンの特級畑についてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/gevrey-chambertin-gc/”]

 

シャンベルタン(仏:Chambertin)

面積12.9ha、所有者は25人。

ハイフンも何もつかない”シャンベルタン”のみのワインです。

 

「ブルゴーニュの王」「英雄のワイン」などの呼び声高い、最高峰アペラシオンの一つ。

同村の中でも下記の「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」と共に別格の存在です。

ナポレオン皇帝やルイ16世など、歴史上の偉人に愛されてきたことでも有名で、特にナポレオンはわざわざ遠征先、戦地にまで持ち込み、毎夜祝杯を挙げていたとも云われています(諸説あります)。

 

土壌は複雑で、斜面最上部はプレモー石灰岩、上部は粘土質石灰岩、中部は泥灰岩、下部はウミウリ石灰岩と、大まかに4つに分かれ、その他様々な要素が更にブドウに唯一無二の個性を生み出します。

ワインは、同村の中でも最も力強く雄弁、それでいて華やかなエレガンスを讃え、飲み手を圧倒し、快楽の境地へと誘います。

 

シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(仏:Chambertin Clos de Beze)

面積15.4ha、所有者は18人。

「シャンベルタン」と双璧を成すこの畑は、630年にベーズ修道院がブルゴーニュ大公から寄進された土地を開拓した、ブルゴーニュで最も古い歴史を持ちます。

シャンベルタンと隣り合い、土壌は似ていますが、傾斜、標高、微気候の違いからより優美で繊細な酒質になります。

また、この畑のワインは「シャンベルタン」を名乗ることもできます(「シャンベルタン」が「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」を名乗ることは不可)。

 

リュショット・シャンベルタン(仏:Ruchottes-Chambertin)

面積3.3ha、所有者は8人。

村内最北に位置する特級畑です。

「リュショット」の語源は「小さな岩」の意。痩せた土壌と微気候による冷涼な風の影響から、ミネラリーで鋭い酸味を特徴とするワインになります。

 

マジ・シャンベルタン(仏:Mazis-Chambertin)

面積9.1ha、所有者は28人。

「マジ」は“Mazi”“Mazis”“Mazy”の表記が認められています。

語源も「廃墟」「小さな家」「村落」と諸説あります。

同村特級畑中、唯一全域がプレモー石灰岩となっています。野性味、堅固な骨格の酒質が持ち味です。

 

シャペル・シャンベルタン(仏:Chapelle-Chambertin)

面積5.5ha、所有者は9人。

「シャペル」は英語でいう「チャペル」で教会の意。果実味豊かでエレガントなワインが多いとされています。

 

グリオット・シャンベルタン(仏:Griotte-Chambertin)

面積2.7ha、所有者は9人。

「グリオット」は野性のチェリーの意。

野性味ある赤々とした果実の鮮烈で濃厚な香り、華やかで優美な酒質を持ちます。

日射量が多いことから「グリル」を語源とする説も有名です。

 

シャルム・シャンベルタン(仏:Charmes-Chambertin)

面積12.2ha、所有者は22人。

「シャルム」は英語でいう「チャーミング」、つまり「可愛らしい」「魅惑的」なシャンベルタンと訳されます。

造られるワインもそのような傾向にあると語られることも多いですが、しかし事実は異なり“chaumer(耕作放棄地の植え替え)” が正確な語源のようです。

特級畑にしては酒質の弱さを指摘する向きもありますが、ヴィンテージに恵まれたものや偉大な生産者のものは、優美で繊細、偉大なフィネスを讃えています。

 

ラトリシエール・シャンベルタン(仏:Latricieres-Chambertin)

面積7.4ha、所有者は12人。

語源は「貧しい」「不毛」を意味するラテン語の“ド・トリシエ/de Triciae”またはフランス語の“ド・トリシエール/de triciere”とされています。

強固で力強い酒質を生み出すとされています。

 

マゾワイエール・シャンベルタン(仏:Mazoyeres-Chambertin)

面積18.6ha、所有者は25人。

この畑のワインは「シャルム・シャンベルタン」を名乗ることもできます(「シャルム・シャンベルタン」が「マゾワイエール・シャンベルタン」を名乗ることは不可)。

シャルム・シャンベルタンと似た酒質ですが、より野性的且つ肉付きの良いワインができるとされています。多くが「シャルム」を名乗るため、市場で見かけることは稀です。

 

産地の特徴


ジュヴレ・シャンベルタンは、フランス・ブルゴーニュ地方、コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区にある村の名称で、ワイン生産地のアペラシオンの名称でもあります。

北をフィサン村、南をモレ・サン・ドニ村に挟まれる場所に位置します。コート・ドール内の特級畑を持つアペラシオンとしては最北のため、県道122号、通称「グラン・クリュ街道」を南下し、最初に到達するのが同村です。

 

このアペラシオンが名乗れるのは、ピノ・ノワールから造られる赤ワインのみです。

コート・ドールの他のアペラシオンでは白ワインも少量生産されているので、AOC規定上、赤ワインのみというのはジュヴレ・シャンベルタンが唯一です。

フランス・ワインの二大銘醸地として名を馳せるブルゴーニュ地方、その中でもコート・ド・ニュイは赤ワイン銘醸地として有名ですが、その中でも、

  • 強靭な酒質、大きなスケール感、優雅にして繊細なワインを生み出す。
  • 特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)をブルゴーニュ最多の9面、1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)を26面持ち、同地区内最大の栽培面積を擁する。

 

これらの点から、同村は「ブルゴーニュの王」と呼ばれます。

 

ちなみに、隣接するシャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)は、同地区内で最もエレガント且つ繊細であると評されています。

しばしば優雅なレース織物に例えられるほどです。この2つのアペラシオンは対極の銘醸地として、並び称されます。

 

ジュヴレシャンベルタンの起源

ジュヴレ・シャンベルタン村の名前の由来ですが、同村のグラン・クリュ筆頭に挙げられる「シャンベルタン(仏:Chambertin)」からきています。

「シャンベルタン」は直訳すると「ベルタン(人名)の畑」です。

 

昔、ジュヴレィ村にベルタンさんという人がいました。

彼の所有する畑の素晴らしい品質が有名になり、その畑の知名度が所在地である「ジュヴレィ村」の知名度を凌駕するようになり、村の名前は「ジュヴレ・シャンベルタン」に改名されました。

 

その後、村名のみならず、村内の他の特級畑にもその名が冠されることになります。

今日、同村内の村名格以上全てのアペラシオン名に「シャンベルタン」が付き、初学者に分かりづらさを感じさせる、混同のもととなっている……。

その原因は、この畑の高すぎる質のせいである、と言えます。


 

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