アルザスの地方料理と合わせるワイン・ペアリング

アルザスはフランス北東部にあるライン河沿いの平原地帯にある地域です。

意外と知られていない事ですが、アルザス地方はフランスでも有数の星付きレストランが多い地域といわれています。

かねてより、アルザスはドイツから多大な影響を受けつつ、独自の郷土料理を生みだしながらオリジナリティ溢れる食文化を育んできました。

 

アルザスは『ヨーロッパの十字路』と評されることがありますが、これは歴史と地理的要因によるもので、これがそのまま食文化にも影響しています。

その要因を明確にすることが、アルザスの郷土料理とワインを理解することに繋がります。

この記事では、アルザスの風土に根ざした料理と、その土地で育まれた素晴らしいワインをドイツとの歴史的背景も踏まえながらご紹介いたします。

 

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アルザス地方の地方料理と合わせるワイン

アルザスの歴史的背景

アルザス地方は歴史的にフランスとドイツの境界地帯に位置します。

風光明媚な街並みは観光地としても魅力的で、かつ、鉱山物が豊富なため軍事拠点として重要視されたため、17世紀から19世紀にかけてドイツとの戦争の度に両国の間を行き来する数奇な歴史をたどることになります。

今でも多くの住民がフランス語とドイツ語の方言であるアルザス語の両方を話すことや、ドイツのロマンティック街道を彷彿させる木骨組みの漆喰固めされた家が美しい街並みも、両国の長年にわたる縁を物語っています。

 

アルザスの地理的要因

フランス北東部に位置するアルザス地方は、ライン川をはさんでドイツとスイスに国境を接しています。

パリから主要都市ストラスブールまでTGVで約2時間半、ライン川とヴォージュ山脈にはさまれた小さな地域は、フランス有数のワイン産地であり、美しい「ワイン街道」は南北約170kmにわたり続いています。

 

アルザス地方の風景と文化

「フランスで最も美しい村」に選ばれた村々が点在し、フォトジェニックなアルザスの街並みは世界遺産に登録されています。

山脈から川に至る平野まで多彩な地形は、酪農や果樹、ぶどう、穀物その他様々な農作物を発展させ、地産地消の意識も高い地域です。

ミシュランの星付きレストランも多く、美食の国とも言われています。

さらに、2023年3月6日に開催されたミシュランガイドの発表セレモニーの地にストラスブールが選ばれ、アルザス地域全体でアルザスの
美食、郷土料理のプロモーションが展開されました。

 

アルザス郷土料理の特徴

ドイツの影響

多くはシュークルート、プレッツェル、クグロフなどドイツを思わせる料理やお菓子があり、料理名の多くはドイツ語方言のアルザス語が由来となります。

アルザス語はドイツの南の地方言語アレマン語系の方言で、フランスでは外国語派生の地方言語となります。

フランス語のシュークルート “choucroute” は、”Sürkrüt” をフランス語の音声に合わせ、表記をしたものと言われています。

 

料理の主役は肉料理

山がちなアルザス料理の主役といえば、なんといっても肉料理です。

畜産が盛んで、フランス語でシャルキュトリー (Charcuterie)と呼ばれる豚肉を中心とした加工食品であるハム、ベーコン、ソーセージなどが名物として知られます。

 

代表的な料理

シュークルート/アルザス風シュークルート

Par Arnaud 25 — Travail personnel, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64365987

シュークルートは、乳酸発酵された塩漬けキャベツであるドイツの郷土料理「ザワークラウトSauerkraut)」(酸っぱいキャベツ)をさします。

これに“アルザス風”とつけばシュークルート(酢漬けキャベツ)に加え、塩漬け豚や、ハムやソーセージ等の食肉加工品が添えられます。

 

これは本来、冬の食べ物で、かつて煮込み料理のシュークルートは“日曜日の料理”とされていました。

アルザスの主婦たちは鍋を火にかけてから教会へ行き、礼拝が終わり帰宅する頃にはちょうど食べ頃になっている、という訳です。

日本のおふくろの味、おでんのような家庭料理です。”

 

地理的保護表示を取得

シュークルート(Choucroute d’Alsace)はさらに2018年にI.G.P.(Indication Géographique Protégée)と呼ばれるEUが規定する地理的保護表示を取得しています。

このことからもアルザス人がシュークルートをどれほど愛しているかがわかります。

※IGP(Indication Géographique protégée)

産品の特徴と製造過程が産地の由来との関連を保証するもので、農産物、ワイン、食料品に適用されるEU加盟国の共通認証。

 

ベックオフ(カタカナではベッコフとも表示されることがあります)

ベックオフは、スフレンハイム(Soufflenheim)の陶器で、牛、豚、子羊の3種の肉と野菜を白ワインでじっくり煮込んだもの。

名前のベックオフ(baeckeoffe/baeckeofe)は、「パン屋の釜(four du boulanger)」という意味です。

 

アルザス風シュークルートが日曜日の料理ならばベッコフは「月曜日の料理」だとか。

かつて月曜日は、アルザスの主婦たちにとって洗濯の日であり、忙しい家事の合間、朝一番に鉢にベッコフの材料を入れてパン屋へ行き、パンを焼いた後のかまどに入れて煮てもらっていたのだそうです。

 

フォアグラ

フォアグラはガチョウや鴨の肥大した肝臓のことをさします。フランスではアルザス地方、ラングドック地方、ペリゴール地方が特産です。

アルザスではガチョウのフォワグラが特に知られています。

所説あるものの1778年にジャン=ピエール・クローズ(Jean-Pierre Close)というストラスブールの料理人がガチョウの肝臓でパテを作ったのが始まりです。

その最初の料理方法は、「パテ・ド・フォアグラ・ア・ラ・コンタード」(Pâté de foie gras à laContades)と名付けられました。

これはストラスブールのコンタード伯爵にちなんで名付けられたもので、贅沢で風味豊かなフォアグラの料理として知られています。

 

マンステール

マンステール(MUNSTERは)ウオッシュタイプのチーズです。

表皮はオレンジ色で、湿っており、熟成すると強烈な香りがありますが、味の特徴は香りに反してクセは無く、ミルクのコクと甘みがあり食べやすくなっています。

アルザスでは、クリスマスにクミン入りのスパイシーなマンステールを食べる習慣があります。

 

 

アルザスワイン

大陸性気候で冬は厳しいエリアですが、夏はヴォージュ山脈が西からの偏西風を遮る為、山越えの風はフェーン現象で暖かく乾燥します。

降雨量の少ないこの地域では、ブドウは日差しを十分に浴びながらゆっくり成熟する為、十分な酸を備えていながら、構成のしっかりした凝縮感のあるワインが造られます。

 

51の特級畑があり、ほとんどがヴォージュ山脈の麓、標高200m~400mに広がっています。

様々な地質がモザイクのように複雑に配され、多様なスタイルのワインを生み出す要因の1つとなっています。

 

生産されるワインの9割が白ワインです。

歴史的要因と冷涼な気候により、ドイツ系品種が多く栽培されており、構成のしっかりした辛口白ワインから遅積み又は、貴腐による甘口ワインまで、世界中で愛飲されています。

フランスではラベルに通常、原産地呼称名を記載するところ、ほぼ、単醸でつくられるこれらのワインには例外的に品種名が表記されます。

 

アルザスワインの品種

リースリング、ミュスカ、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールの高貴4品種をはじめ、ピノ・ビラン、シルヴァネール等多様な品種から造られる白ワインが中心となります。

とはいえ、近年の温暖化はアルザスにおいても顕著で、ピノ・ノワール100%から造られる赤ワインのグラン・クリュが誕生したのは記憶に新しいところです。

※2022年ヴィンテージ以降、Hengst 、Kirchberg de Barr の2つの畑で、グラン・クリュ・ピノ・ノワールが認可されました。

 

ペアリング

アルザスの地方料理は肉や野菜を用いた、素材の味を生かした重たすぎない料理が多くなります。

そのため合わせるワインも重たすぎずに、品種や産地の個性が出た繊細で酸味のさわやかな白ワインや軽めの赤ワインがよく合います。

 

シュークルートにはアルザスリースリング、ベックオフにはアルザスリースリングやアルザスピノノワールが良いペアリングです。

また、マンステールやフォワグラには遅摘みタイプや貴腐ワインの甘口白ワインなどが良い相性とされています。

 

まとめ

アルザス地域特有の料理とワインは、歴史と風土が織りなす彼らの生活そのものです。

フランスとドイツの文化が交わり融合することで、この土地ならではのエッセンスが凝縮され、料理とワインはユニークな魅力を放ちます。

是非一度、アルザスのワインと、郷土料理の組み合わせを楽しんでみてください。

これらのストーリーを知ったうえで味わると、さらに極上の体験となるでしょう。


 

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