ムルソー ワインとは?特徴とブドウ品種、合わせる料理

【最終更新日】2022年4月29日

ムルソー(MEURSAULT  カタカナでミュルソーとも書きます)はブルゴーニュの中でも最高の白ワインと言われ、世界的にも人気のある白ワインです(AOCは赤と白が認められていて、96%が白で赤は4%です)。

ワインファンの間ではその品質の高さは知られているのですが、特級がないためメディアへの露出はモンラッシェやコルトンシャルルマーニュよりも控えめで、そのため通人好みのワインといえます。

 

ムルソーの良さは何といってもそのとっつきやすさでしょう。

お隣のピュリニーは若いうちは堅く、閉じている印象でもムルソーは柔らかくふくらみがあり、これぞブルゴーニュワインの真骨頂という味わいをわかりやすく表現しているのです。

その意味ではブルゴーニュの高級白ワインを楽しもうというときに、まずはムルソーから始めるといいかもしれません。

 

ワインの名声はフランス革命以前からあり、19世紀の半ばにはムルソーのいくつかの畑はモンラッシェと並ぶ評価でした。

ワイン好きで有名なアメリカ合衆国3代大統領ジェファーソンは、2年半のフランス滞在のうち、偉大なワインはモンラッシェだが白の一番の好みはムルソーだと後日に告白しています。

つまりモンラッシェと甲乙つけがたい品質なのです。

ブルゴーニュを北から南下していくと、いよいよここからが白ワインの核心部分にさしかかる、その入り口です。

ここから南にピュリニーやシャサーニュ、アロクスコルトンなどの村がありますが、ムルソーも含めてすべてそれぞれはっきりとした個性を発揮します。

ブドウ品種は白のシャルドネだけですから、この多様性はまさにテロワールのなせる業としか言いようがありません。

ムルソー村の人口は2000人ほどですが、そのほとんどはワイン造りとその周辺産業に従事していて、経済的にも大成功を収めていることが少し村を歩くとわかるでしょう。

それぞれの家は広いし、庭は丁寧に仕立て上げられ、趣味のいい街並みは、古くから続く名家ぞろいなのです。

 


主な1級畑は以下のとおりです。

ペリエール(les Perrieres)

シャルム(aux Charmes)

ジュヌヴリエール(les Genevrieres)

ポリュゾ(porusot)

レ クラ(les Cras)

レ・グート・ドール(Les Gouttes d’Or)

レ・ブーシェール(Les Boucheres)

レ・サントノ・ブラン(Les Satenotes Blancs)

 

ムルソーは、データ上では1級ワインと村名ワインの区分となりますが、マーケットでは4つに分かれていると考えていいでしょう。

①一番目は1級畑の中でも特に品質の高い3つのクリマLES GENEVRIERES, LES PERRIERES,LES CHARMES。

この三つは品質も価格も共に別格で、グランクリュ並みの扱いを受けています。↑の価格推移をみてもグランクリュ並みのある価格であることがおわかりだと思います。

②つぎがこの三つ以外の1級畑。

③そして、いわゆるヴィラージュものと呼ばれる村名クラスのワインですが、その中でも斜面にある一部の優れたクリマです。

NARVAUX,LES TILLES,LES CASSE-TETES,LE TESSON,LES ROUGEOTS,LES CHAVALIERES,LES MEIX CHAVAUXなど。

④それらに該当しない村名クラスのワインです。

この中でも②と③の品質の差は少なく、③はAC上はヴィラージュクラスになるため価格も押さえめで、もし見かけたらぜひお試しいただきたいワインです。

 

なお、ムルソー村以外にブラニーもムルソーと名乗れるのですが、日本ではめったに見ないうえに難しいので、ここでは省きます。

 

ムルソー ワイン

語源

ムルソーの語源には諸説ありますが、一つには古語のムール(壁の意味)で、ここに要塞があったからだという説が有力です。

もう一つがラテン語のmuris sauulusで、これは二十日鼠のひとっ飛びのいみで、赤ワインの畑と白ワインの畑をネズミが簡単に行き来できる距離にある、というところからきています。

ムルソーは以前、赤ワインを結構な量を生産していて、モザイク状に畑がなっていたところがあり、これが語源ではないかとする説です。

他にも説がありそうですし、確固たる回答があるわけではありませんのでお好きな説で構いません。

 

ブドウの品種

ムルソーはシャルドネを使用したワインで、樽熟成が特徴となります(赤はピノノワール100%です)。

ワインは非常に有名ですが、最上のものはプルミエクリュで、グランクリュはありません。

これは、原産地統制法が制定された当時、栽培者たちが高い税金のため格付けを拒否したから、とされています。

今考えるとなんてもったいないことをしたんだと思うかもしれません。

しかしこれは仕方のないことで、AOC制定時はワイン生産者は今ほど裕福ではなく、かつ世界的な不景気もあって1級畑にすることのほうが経営的に合理性があると判断したのでしょう。

 

 

ムルソーの最大の特徴は、シャルドネの栽培に非常に適した素晴らしい環境と土壌を持ち合わせていることです。

ミネラルが豊富な石灰岩の土壌により、骨格のしっかりしたミネラルを感じられるワインが造られます。

 

ムルソーの特徴

ムルソーは熟成を重ねる毎に濃い色となり、金色が美しい白ワインです。

昔はこってりとした味わいのワインでしたが、現在ではミネラルが豊富に感じられる華やかな味わいです。

若い内は、ローストしたアーモンドのようなアロマとオイリーな芳醇さが特徴ですが、熟成させると柔らかさと上品さが増します。

更にはミネラルと酸のバランスも見事なものとなり、優雅なワインへと変わっていくのです。

寿命の長いワインなので、その熟成変化を楽しめます。

 

ムルソーは中世、シトー派修道会の重要なブドウ畑であったという歴史があります。

しかし、1960年代までは卸売業者であるネゴシアンにブドウを安く買い取られていたため、ワインの知名度は低いものでした。

しかし1980年代頃にアメリカで起こったシャルドネブームによって、アメリカのバイヤーたちが手頃な価格のムルソーに注目したことがきっかけで知名度が一気に上がったのです。

また、ムルソーという名前の響きは英語圏では大変にキャッチーで高級感があるらしく、これが品質の高さとよくマッチしたのです。

そしてアメリカ市場で人気を得た後、世界的にも有名となり現在の地位を築きました。

 

ムルソー プルミエクリュ レ ぺリエール

ムルソーのワインで押さえておきたいのは、やはりプルミエクリュのぺリエールでしょう。

(以前はぺリエールの所有者のいくつかがグランクリュへの申請を検討しているとの報道もありましたが、その後に昇格した畑はありません)

ムルソー ペリエールは、ブルゴーニュ地方のムルソーに位置しているプルミエ クリュです。

コート ド ボーヌ最大の村であるムルソーにはグラン クリュがありませんが、広がっている畑の1/3はプルミエ クリュです。

ムルソー ペリエールはそのプルミエ クリュの中で最もグラン クリュに近い畑とされています。

ペリエールとは「石切場」という意味であり、その名の通り畑には小石が多く広がっています。

ペリエールは斜面上部に位置しているため表土は薄く、石灰岩の母岩が表土の近くにあります。

また東南東に向いているため恵まれた日照量を持ちます。

ムルソー ペリエールはペリエール ドゥスゥ、ペリエール ドゥスー、クロ デ ペリエールという3つの区画で構成されています。

クロ デ ペリエールの土壌は粘土質が多く、アルベール グリヴォが単独で所有しています。

アルベール グリヴォの他にはコシュ デュリ、コント ラフォンなどが主要な生産者として知られています。

 

飲み方のコツ

(ムルソーはプルミエクリュと村名クラスで差に開きがあり、ここではプルミエクリュをもとにご紹介します)

ムルソーは若いうちから華やかに感じることが多く、熟成によってさらに香りが開くワインです。

また、世界的に見てもシャルドネの生産者は必ずムルソーを意識するほどシャルドネの味の成功例と言えるのです。

 

いざ味わう際はできればいい環境のもと、ワインに集中できる雰囲気で楽しめればそれが最高でしょう。

サービス温度は8~10度で初めて、少しずつ温度が高くなるくらいがおすすめです。

グラスは大ぶりなものではなく、中ぶりのチューリップグラスが最適です。

グラスの形状よりもグラスの品質にはこだわりたいもので、輝きのある良い素材を使ったグラスを選びましょう。

若いムルソーであればデカンタージュをしてもおいしくいただけます。

ムルソーの場合はご家庭での気軽な料理はさすがに合いません。

できればレストランのシェフがしっかりと作りこんだ料理をお勧めします。

合わせる料理は魚介類の中でも噛み応えのある味わい深い素材がいいでしょう。

オマールやホタテ貝、白身の魚をシェフがレストランの料理に仕上げるようなお料理は最高の組み合わせです。

 

また、ムルソーは酒質がしっかりしているので肉料理にも合わせやすく、ジビエ以外であればほとんどの肉料理に合わせることが可能です。

レストランであればコースをワイン一本で、というときなどはムルソー一本で十分に楽しむことができるでしょう。


 

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