【最終更新日】2022年4月29日
POUILLY FUME(プイィフュメ)はフランスのプイィ・シュル・ロワールで生産される白ワインです。
このプイィフュメとお隣のサンセール、それからメヌトゥーサロンの三つがAC上一つの塊のようになってロワール川上流域に君臨します。
↓の地図で見てもお分かりのとおり、ロワール川流域とはいってもブルゴーニュと近接していて、実際に近くのヌヴェールは昔はブルゴーニュ領に入っていたのです。
とはいえ味わいはブルゴーニュのものとははっきりと違い、おそらくお互いに切磋琢磨しながら独自の味わいを作り上げたのでしょう。
この地域のAOCワインは2つあり、プイィフュメとプイィシュールロワールです。
なお、ブルゴーニュ南部にプイィフュイッセ(PUILLY FUISSE)というワインがあり、よく混同されます。ソムリエ時代に何度間違われたことかしりません。
どちらも辛口白ワインですが、プイィフュイッセはシャルドネ種で、プイィフュメはソーヴィニョンブラン種です。
ソーヴィニョンブランはもともとボルドーのブドウ品種ですが、ブレンドしたボルドーの白を「セミヨンソーヴィニョン」と呼ぶように、高級ワインではどちらかといえば従たる存在といえます。
ソーヴィニョンブランは若いうちは若々しさが時として荒々しさととらえられて、熟成向きのワインが評価されるボルドーでは冷や飯を食わされていたのです。
ところがこれが後述するタイミングでロワールに持ち込まれると大活躍し、歯切れがよくてすっきりとした口当たりの味わいが世界的なソーヴィニョンブランブームを起こすのです。
現在では世界的に見るとシャルドネに次ぐ人気の品種で、一口飲むとその新鮮さに色々悩んでいることが吹き飛んでしまいそうな気にさせてくれます。
もっとも、この地域のワインといえばサンセールが圧倒的知名度があり、フュメのほうはいまいち人気がありません。
ここでその全体像を確認し、機会があるときに試してみてはいかがでしょうか。
プイイフュメの特徴とブドウ品種
語源
プイィフュメのうち、フュメのほうはなんとなく知っていても、じゃあプイィのほうはどうなんですかといわれてもさあという人が多いのではないでしょうか。
それもそのはず、プイイのほうは語源の説がいくつかあって現地でもまとまっていないのです。
有力な説に語尾の部分のillyが水に関連する言葉で、これにガロ・ロマン時代の領主paulusがかけわさって造られたという説がありますが、ここまで壮大だとさすがに丸呑みするのには抵抗があります。
一方、fumeのほうにもいくつか語源があります。
FUMEにはもともと煙や蒸気の意味があり、実際にこの辺りの地形的な理由で生じる濃い霧が語源だとする説が有力です。
また、タバコを吸うとかスモークという意味もあって、火打石の土壌から来るそれらの香りが語源だという説も根強いです。
ブドウの種類
ワインのブドウ品種はソーヴィニヨンブランです。
プイイフュメは近接するサンセールとは違い白のみのアペラシオンなのでほかの品種はありません。
プイィ・シュル・ロワール村を中心とした7つの村でブドウを栽培しています(約1300ヘクタール)。
( Garchy, Mesves-sur-Loire, Pouilly-sur-Loire, Saint-Andelain, Saint-Laurent, Saint-Martin-sur-Nohain , Tracy-sur-Loire)
この地域でワイン用のブドウが生産されるようになったのは5世紀のガロ・ローマ時代になります。
元々は赤ワインを生産していた地域でしたが、1860年代にフィロキセラによってブドウの樹が壊滅してしまい、ソーヴィニヨンブランが植え替えられて白ワインの生産地として再生した経緯があります。
土壌が牡蠣の殻から出来た岩やライター石の原料となる岩から生成されていて、石灰質を多く含むためこれがソーヴィニヨンブランと抜群の相性だったのです。
12世紀ころにはここのワインはパリでも多く消費されるほど知られた存在だったのですが、そのころは赤はピノノワール、白はシャスラというブドウ品種を植えていたのです。
ところが19世紀後半、フィロキセラによって壊滅状態に追いやられ、お隣のサンセールは1700ヘクタールあった畑のすべてをシャスラからソーヴィニヨンブランに植え替えたのです。
しかし、プイィフュメのほうはシャスラへの愛着を捨てきれずに一部分が残り、これが現在のプイィシュルロワールとなるのです。
(もっとも、ストーリーとしては響きはいいのですが、実際のワインは個性が見出しにくいです)
ワインの特徴
明るめの黄緑色となり、ピリッとした若干の酸味の刺激のある辛口ワインです。
ミネラル成分を多く含むためキリっとした味わいとなり、さわやかな酸も感じられます。
ソーヴィニョンブランの特徴である爽やかさとレモンやグレープフルーツのような果実香も豊富に感じられます。
プイイフュメは、隣接するサンセールの白との比較がよく議論されます。
これに関しては、はっきりと言い当てられる人はそのワイナリーの人くらいかもしれません。
ただし、一般論としては最上のプイイフュメはサンセールに比べて華やかで複雑であると表現されています。
また、生産量がサンセールに比べて少ないためプイイフュメのほうが相対的にサンセールに比べて価格が高く設定されていることが多く、これも違いといえば違いといえるでしょう。
飲み方のコツ
サンセール同様、プイィフュメは、これぞ白ワインの王道というワインです。
酸味がさわやかで果実味にあふれたワインですので、8度程度にきりっと冷やしていただきましょう。
8度は、冷蔵庫で一晩冷やし、20分程度室温に置くことで近い温度になります。
グラスは大ぶりなものでは不適切です。
(大ぶりなグラスは小ぶりのグラスに比べて多めのワインを注ぐため、温度のコントロールが難しい)
中ぶりなグラスに温度を管理したワインを少しずつ注ぐことで適切な温度を保ち、最後までおいしく飲めるのです。
口がつぼまったグラスであればたいてい合わせることができますので、きれいにみがいて注ぎましょう。
(プイィフュメには一部、特殊な造り方をしたワイナリーがあり、この場合は適宜変更してお飲みください)
相性の良い料理
前述のように、FUMEはフランス語で「煙で燻した」という意味で、名前の通りスモーキーなニュアンスのアロマ感がある独特なワインとなります。
そのためスモークやムニエル、グリルなどの軽く熱を加えた魚やシーフードとの相性が良いでしょう。
ヤギのチーズや白カビタイプのチーズとも相性良く、和食であれば青魚の塩焼きとの相性も最高です。
また、すっきりとした口当たりは食前酒としても最適で、例えば高級レストランのアペリティフの際に
「プイイフュメがあればそれをグラスでください」
とリクエストしてみてはいかがでしょうか。
きっとソムリエさんは
「あの人はワインのことをわかっている。」
と、いつもよりも一段深いサービスをしてくれるかもしれません。
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