ブルネッロディモンタルチーノとは?基礎知識と特徴、合わせる料理

【最終更新日】2022年10月7日

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)はイタリア共和国のトスカーナ州、フィレンツェから80km程南にあるシエーナ県モンタルチーノ村で造られるD.O.C.G認定の赤ワインです。

ブルネッロというブドウ品種名はモンタルチーノ原産と言われてきましたが、1879年にサンジョヴェーゼと同一品種である事がわかりました。

そこで、モンタルチーノではブルネッロはサンジョヴェーゼ100%で造られるワインとされました。

1980年、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは最初にD.O.C.G認定された4つのワインの1つであり、今日イタリアで最も高名で高価なワインの1つです。

 

ブルネッロディモンタルチーノの基礎知識

起源


ブルネッロの歴史は14世紀初頭から始まります。

1831年にコジモ・リドルフィにトスカーナ随一の赤ワインと称賛され、1865年のモンタルチーノにおける農業見本市では賞も受賞します。

19世紀半ばになると、クレメンテ・サンティという地元の農家が長期熟成できるブドウの生産を始め、1888年、孫のフェルッチョ・ビオンディ・サンティは木樽で10年以上熟成された現代風のブルネッロ・ディ・モンタルチーノを販売します。

 

第二次世界大戦の終わり頃にはブルネッロ・ディ・モンタルチーノはイタリアで最もレアなワインとして認知されます。

というのも、ビオンディ・サンティ社が生産したワインは1888、1891、1925、1945年の4つのヴィンテージしか公式に記録されていなかったのです。

 

この名声により、1960年代までに11の生産者が追付いしてブルネッロを造り始め、この地域は1968年に原産地指定管理(DOC)認可を受けました。

By Paolo Tenti – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26058816

1970年からはビオンディサンティ社はフランコ・ビオンディサンティ(Franco BiondiSanti1922~2013)が当主となります。

このころから徐々にブルネッロディモンタルチーノの高い品質が世界的に評価をされはじめ、畑の面積を増加させることになります。

 

その後生産者は増え続け、1980年にはD.O.C.G認定を受け、21世紀になると200近くの小規模を主とした生産者を数え、年間33万ケースのワインを生産するようになりました。

 

気候と地形

モンタルチーノのぶどうは近隣で栽培されているモンテプルチャーノより1週間早く熟す程、暖かく、乾燥した地帯です。

トスカーナのD.O.C.G.では最も乾燥しており、著名なキャンティの年間降水量が約900mmに対し約700mmです。

 

北半球全てに言えますが、北向きの斜面は日照時間が少なく、南向きの斜面より涼しいことが多いです。

従って、北向きの斜面にあるブドウ畑はゆっくりと熟し、香り高いワインを生みます。

 

南、西斜面のブドウ畑は太陽光と海洋風に強くさらされる為、複雑味のあるワインとなります。

この地域のトップ生産者は両方の斜面にブドウ畑を持ち、ブレンドしています。

 

モンタルチーノの町は、シエーナ州の海抜約564 mに位置する小さな町で、ブドウ畑は丘陵地帯である北東部に集中しています。

トスカーナ州南部の最高峰であるモンテ・アミアータが南東から受ける気候や降雨を和らげています。

 

キャンティの栽培面積約17000ヘクタールと比較すると、モンタルチーノは約1200ヘクタールと小さく、海抜149 mから500 mの高度です。

石灰岩、粘土、片岩、火山性土壌、ガレストロと呼ばれる脆い泥沼など、様々な土壌にブドウ畑があり、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの幅広い品質と複雑さはこの土壌の多様性から生まれます。

 

ワインの規定

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは100%サンジョヴェーゼから造られます。

伝統的には、長期間の醸しと発酵の後、オーク樽で3年以上熟成され、スラヴォニアオークの樽を使う事が多いですが、バニラオークの風味が強いフレンチバリックを使うワインメーカーもいます。

通常では収穫後5年間は販売できず、リゼルヴァだと更に1年かかります。

1998年にオーク樽で2年間と、少なくとも4ヶ月間は瓶内で熟成すると定められ、破ると最大6年の懲役刑を受ける可能性がある程厳しく規制されています。

 

サンジョヴェーゼはモンタルチーノで最も多く栽培されているブドウ品種であり、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを名乗るのに唯一許可されているブドウです。

モンタルチーノの高度と気候はトスカーナの他のどの地域よりもサンジョヴェーゼが熟すのに適しています。

トスカーナで有名なサンジョヴェーゼ主体のキャンティとは対照的に、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは複雑さが真骨頂で、ブラックベリー、ブラックチェリー、ブラックラズベリー、チョコレート、レザー、スミレの香りを持つ果実味溢れるワインです。

その為、ブルゴーニュのピノ・ノワールと比較される事がよくあります。

 

二つのブルネッロ?

ブルネロ・ディ・モンタルチーノの味わいは、生産者のスタイルによって大きく分けて2つあります。

 

一つ目が地域伝統の樽を使用してタンニンをそぎ落として、純粋な果実の味を生かす伝統的な味を生かす製法です。

またもう1つの製法は、小樽を使用して樽の風味とボディの厚みを引き出して、まろやかに仕上げる現代的な製法です。

 

では、なぜこのように二つのブルネッロのスタイルが生まれたのでしょうか?

 

これはワイン文化の黎明期には仕方がないことなのですが、ワインブームが落ち着いてきた2000年の頃には、”樽熟成の風味が強い=いいワイン”という風潮がありました。

ボルドーやブルゴーニュ、カリフォルニアの高級ワインは新樽熟成が当たり前ですので、強い樽の風味イコール良いワインという理屈だったのでしょう。

 

マスコミや評論家にもこの流れを後押しする論調が多く見られ、それにならって生産者も樽の風味を誇張する造り方を採用するのです。

この流れはブルネッロディモンタルチーノにもあって、その結果ブルネッロ本来の個性よりも樽の風味が強いほうが評価され、高値で取引されていたのです。

 

ブルネッロディモンタルチーノは、長期に及ぶ酸化促進にもかかわらずブドウ本来の強い酒質と滑らかなでしなやかな飲み口がもともとの魅力なので、この流れには違和感を感じた人も多かったかもしれません。

本来であればワインはその多様性こそが魅力であるにもかかわらず、マーケットに煽動された結果、没個性化が促されてしまった例でしょう。

 

もっとも、何事も行き過ぎると自律反発があり、「それではワインの個性が失われてしまう」という声が徐々に上がり始め、現在は穏やかな振り戻しの時期にあります。時間の経過とともにマーケットも成熟し、現在では元来のスタイルが正当に評価されるようになっています。

 

 

マリアージュ

ブルネッロディモンタルチーノは、フルボディで渋味も酸味も強く、かつ酸化熟成が進んだ複雑な味わいです。

豊かな酸味がグリルした肉やスパイスを効かせた料理にもよく合いますし、トマトソースと合わせても個性を失わない数少ない品種でもあります。

渋みが強いので、伝統的にはトスカーナ州の郷土料理であるビステッカアッラフィオレンティーナは最高のマリアージュとされています。

 

また、トスカーナ州はトマトや野菜とお肉を組み合わせてインパクトのある味わいに仕上げる料理も有名です。

豚肉のアリースタといって、豚肉を塊のままニンニクやローズマリーの風味といただくお料理にもブルネッロディモンタルチーノは良く合います。


 

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