こんにちは。WBSの前場です。
このページではソムリエ・ワインエキスパート試験・二次試験に進まれる方に向けて、試験に合格するための重要なポイントをできる限りコンパクトにまとめています。
コンパクト、とは言ってもかなりのボリュームですし、必ず踏み込んで理解していただき、表面的な理解にとどまらないようにしてくださいますようお願いします。
結論を言うとソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験は普段のテイスティング能力ではなく、「どう対応するのか」「どう準備するのか」の考え方の方が重要な試験だととらえています。
これはなにもテイスティングの能力を斜に見ているのではありません。二次試験の条件、状況を合理的に分析すればおのずと導かれるものです。
テイスティング能力は経験がものを言う世界です。
また、ワイン業界の中にはとんでもなくブラインドテイスティングが強い人というのは存在します。
そういうもともとのテイスティングの素地がある人がさらに経験を積むことで、圧倒的なテイスティング能力は磨かれて行きます。
僕はソムリエコンテストに30歳の時に優勝しましたが、その時でもテイスティングは人より優れているとは思っていませんでした。
なぜなら勉強会に参加すると、僕よりもテイスティング能力が明らかに上の人も何人もいましたし、とても勝てっこないと最初からあきらめるくらいの差を感じていたからです。
では、このくらいの圧倒的な経験値がないとソムリエ・ワインエキスパート二次試験はダメなのかというと、そうでもないのがこの試験の実情です。
実際に多くの人は本格的なテイスティングのトレーニングは一次試験合格後から始めるでしょうし、それでも多くの人が合格しています。
WBSでも「普段のワインの学習をしっかりしていれば、二次試験は一次試験後に準備して大丈夫」とお伝えをしています。
もちろんこの考えには異論もあるでしょうし、中には「なにテイスティングを舐めたこと言っているんだ」とお怒りの方もいらっしゃるかもしれません。
ただしこれはソムリエ・ワインエキスパート二次試験とテイスティングを分離して考えた場合のことで、経験上、「二次試験」と「テイスティング」は分離して考えたほうが早いというところから来ています。
ここであなたに質問をします。
①ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験はテイスティング試験だ。テイスティングは経験がものを言う世界だから、最低でも3年は修業が必要だ
②ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験はテイスティング試験だ。試験には当然攻略法が存在するから、やり方次第では1か月で攻略が可能だ
答えはいわなくて大丈夫。おそらくほとんどの人は②を選ぶでしょう。
文脈を見れば、これはソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験を「テイスティング」ととらえるか「試験」ととらえるかの違いです。
多くの人はテイスティングには膨大な経験が必要だという共通認識を持っているはずです。僕も同じです。
ですが、ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験は「テイスティング試験」ですから、「テイスティング」であると同時に「試験」でもあるのです。
これをテイスティングという面から見るのか、試験という面から見るのかで取り組み方は大きく変わってきますし、もちろん結果にも直結します。
この記事では、あなたがソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験を受験するにあたっての考え方・方向性についてできる限り具体例をあげて解説します。
おそらくここまでお読みのあなたであっても、「いや、テイスティングは経験がものを言う世界だから」と半信半疑な方もいらっしゃるはずです。
また、「そんな考え方とか方向性とかはどうでもいいから、手っ取り早く試験合格の近道を教えてくれよ」という人もいるはずです。
これについては記事を読むにしたがって明らかになりますし、おそらくあなたも「なるほど」とうなずく部分があったからここまで読み進めてくださったのでしょう。
この記事に価値があるかどうかの結論については、もう少し読み進めてから出すようにしてみてはいかがでしょうか?
前置きが長くなってしまいました。それでは、ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験対策講座に進みましょう。
目次
【2024年最新版】ソムリエ・ワインエキスパート 二次試験対策講座
過去の出題
どの資格試験においても過去問の研究は必須です。もちろんソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験も同様です。
最初に、過去に出題されたワインを検討してみましょう。
データはあまり古くても受験者のレベルやワイン業界の背景も変わりますので、ここでは2011年からのデータにしてあります。
また、このグラフは動的コンテンツですので、リアルタイムで更新されます。
ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験過去問についてはこちらをご覧ください→
まずは白ワインです。
白ワインについてはシャルドネ、ソーヴィニョンブラン、リースリング、甲州の4種類で9割を占めていることがわかります。
次に赤ワインです。
白ワインと違って、ピノノワール、カベルネソーヴィニョン、シラー、シラーズ、サンジョヴェーゼ、メルローなど、品種はある程度分かれていることがわかります。
最後に生産国です。
生産国もある程度ばらけていますが、フランス、アメリカ、オーストラリア、日本で7割を占めています。
出題はフランス系ブドウが圧倒的に多いので、土着品種をつかったヨーロッパの伝統国のワインはおのずと選ばれにくいということが推測できます。
おさえるべき事実
つぎに、必ず押さえるべき事実として、4つのテーマについてざっくりと見て見ましょう。
それが、二次試験は
①一次試験を突破した人が受験すること
②マークシート形式であること
③ほとんどの人にとって、事実上の最終試験であること
④二次試験参加者のおおむね8割が合格すること
この四つです。
③についてはソムリエ試験であれば論述や実技があり、2023年度は実技でも多くの方が不合格になった経緯があります。
ただしWBSの経験からもテイスティング以降で不合格になるのはやはりレアケースで、ここは文脈として不正確さを許容して表現をしていますのでご了承ください。
それでは一つずつ見ていきましょう。
①一次試験を突破した人が受験する
ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験は、一次試験を突破した人でないと受験できません。
そのため、ここから、
・一次試験を突破するだけの知識と経験があること
・受験者数はスクリーニングをされて絞られていること
この二つの事実があぶりだされます。
ここを理解しないとそもそもの理論の母体に齟齬が生まれますので、ここは共通認識の上で読み進めてください。
②マークシート形式であること
表現方法、結論など、すべての項目は例年マークシート形式なので、例えばぶどう品種や生産国であっても無限にある中から一つを選ぶのではない、ということです。
結論であれば多くても10個のうちから一つを選ぶことになるので、完全なノーヒントではありません。
・マークシートに必ず正解があること
・正解以外は不正解であること
この二つがわかります。
③ほとんどの人にとって事実上の最終試験であること
ワインエキスパートは二次試験に合格すれば最終合格です。
また、ソムリエであっても三次試験の実技については再現性と最低限のソムリエとしての資質が求められるので、ヤマはあきらかにテイスティングです。
そのためソムリエの方には表現はふさわしくありませんが、記事の便宜上、この二つを押さえてください。
・テイスティングに合格すれば最終合格
・テイスティングに不合格になれば最終合格は来年度以降に持ち越し
つまり、テイスティング試験によって白か黒かの状態に分かれますので、これが受験者の心理にどう影響を与えるかも検討する必要が出てきます。
④二次試験参加者の8割が合格すること
ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験は一次試験に合格した人のみが受験するため、ある程度スクリーニングがされている状態で実施されます。
一次試験に合格するくらいですのでモチベーションは高く、かつ、一次試験突破する知識がある、こういう人が母体となって試験がされるのです。
そして、公開はされていませんが経験上、二次試験参加者の8割は合格すると多くのスクールは分析していて、WBSも同じ意見です。
あなたは8割の合格率と聞いて、どのように感じますでしょうか?
「8割も合格できるのか」と思う人もいれば「2割は不合格になるのか」と感じる人もいるでしょう。
これについては後ほど解説をさせていただきます。
いかがでしょうか?ここまでを押さえると、ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験に進む方がいかに特殊な状況であるかがわかります。
にもかかわらず、これを広義の意味での「テイスティングだ」ととらえるのはややピンボケしているのかがわかるでしょう。
特殊な条件下にある方々が受験されるわけですから、その母体に合わせて理論を構築しないとピントは合いません。
逆に言えば母体に合わせることでピントははっきりし、より直截的で適切なアドバイスをすることができるようになるのです。
それでは、ここまでである程度の前提条件の共有ができました。
ここまでを踏まえたうえで、さらに踏み込んでみましょう。
ソムリエ・ワインエキスパート試験の本質
ここまで前提条件の共有ができた段階で、おそらくあなたは
「テイスティング試験とは言ってもある程度の幅が絞られていて、取り組み方のほうが大事そうだな」
こう思えるようになっているでしょう。
テイスティング試験は、「テイスティング」と「試験」が組み合わさっていますが、真正面から「テイスティング」と向き合ってしまうと時間はいくらあっても足りません。
一方の「試験」という切り口で向き合えば、ある程度の前提条件がありますし、その前提条件をもとに準備をすればいい、ということが分かったかと思います。
では、「テイスティング」と「試験」では、どのようなバランスで向き合えばいいか?これが本質になります。
本質はずばり テイスティング2:試験8 ととらえましょう。
テイスティングだけ、は絶対NGですが、では試験としての技術だけでもダメだということになります。
「試験の技術」ということになりますと、どうしても「どうすれば点が取れるのか」にフォーカスした内容になります。
そのため試験を斜に見るところも出てきますし、受験生や出題者側の事情を深読みして戦略を練るところも出てきます。
あなたがソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験に合格したいのであれば、この「テイスティング2:試験8」のバランスを意識して取り組むことをお勧めします。
もちろんテイスティングを本格的にやろうという場合は時間をかけてしっかりと取り組む必要があります。
ですがそれは試験合格後に、ゆったりと、試験という枠にとらわれずにやりましょうということになります。
「ワインアイテムを広げる」は無駄。むしろ「ノイズになる」
あえて強い言葉で見出しを出しましたが、二次試験前にあれもこれもとワインを広げるのは、同時にノイズも広げることを意味します。
おそらく先輩方に二次試験のことを相談をすれば、あれもやったほうがいい、これもやったほうがいい、と返答があるはずです。
ただしワインのアイテムをただ広げても試験においては逆にノイズになる可能性がありますので、強めの言葉をつかわせていただきました。
フェーズとして、一次試験を突破する段階で頭はワインの知識でパンパンのはずです。
ここにいきなり経験がものを言うテイスティングを入れ込んでもパンクしてしまいますし、逆効果になる可能性も高いです。
この理屈は最初公開したときに結構反対意見もいただきました。
ただし、受験生の身になって冷静に分析すると、やはりこの考え「も」取り入れたほうが理解の深化は早いです。
また、この理屈は受験生の心理的な事情も考慮すると、より理解が早くなりますので、少し触れておきましょう。
「マークシートにチェックを入れる」ことの意味
ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験はマークシート形式なので、最終的にはマークシートにチェックを入れることが必須になります。
マークシートに適切にチェックを入れなければ点数にはなりませんし、点数を積み重ねなければ合格はできません。
ここで、あなたが二次試験の当事者で、今まさにテイスティング試験の真っ最中だとイメージしてください。おそらくこう言う心理が働くはずです。
・テイスティング試験に不合格になれば最終合格は来年に持ち越しだ
・過去問の流れから、おそらくメジャーな品種が中心になるだろう
・8割が合格する試験だから、大きく外さなければ合格できる
こういうなんとも混とんとした心理があなたに浮かぶはずです。
では、こういう特殊な心理状況の中で、「ソアヴェかもしれない」というワインが出たとしましょう。
あなたは自信をもってソアヴェ(ガルガネガ)にチェックを入れられますか?
もちろんソアヴェだと自信があればソアヴェにチェックを入れるべきですが、受験生の身になればこれがいかに過酷なことかは想像に易いでしょう。
「ソアヴェかもしれない、でもシャルドネの可能性もある」と思ったとしましょう。
ここで過去問の出題が頭をよぎるのです。
「この試験は8割が合格するのだから、仮にこのワインがシャルドネの場合、ソアヴェにチェックを入れればこれが致命的になる可能性がある」
つまり、あなたがソアヴェ(ガルガネガ)にチェックを入れた場合に、多くの人がシャルドネで正解するのに自分は外してしまうという心理的プレッシャーがあるのです。
この心理的プレッシャーの中、自信をもってソアヴェにチェックを入れるのがどれほどの事か、当事者以外が言うほど簡単なことではないのです。
「ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験はアイテムを絞ったほうがいい」のご説明はこちら→
極端な心理条件
ソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験はほとんどの受験生にとって事実上の最終試験になります。
三次試験の結果ももちろん重要ですが、一般的にはほとんどの人は一次試験通過後のヤマはテイスティングだと認識しているはずです。
つまりテイスティング試験は多くの受験生にとって最終試験であり、かつ、受験生の8割が通過する試験という、きわめて極端な心理条件に置かれるのです。
では、この心理条件ではどのような行動原理が働くでしょうか?
大勝ちをすることを避け、できる限り損失を回避する心理が強く働くため、無難な判断をするということになるのです。
無難な判断をする人が大勢いるのであれば、当然回答はメジャー品種に寄せられます。
マイナー品種かもしれないと思ったとしても、いざチェックを入れるときになると合格・不合格が頭をよぎりますので、ここでマイナー品種にチェックを入れられるのはよほどのことになるのです。
さて、ここまで前提条件を共有したうえで、いよいよ具体的な取り組み方について解説します。
ブドウ品種の考え方、具体的なトレーニング方法、試験における具体的な得点の取り方を知りましょう。
個別のブドウ品種の表現や得点の仕方についてはWBSでの特別講義での解説になりますので予めご了承ください。
なお、ここからはクローズコンテンツとなります。クローズコンテンツの部分は4720文字/11212文字です。
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