【最終更新日】2025年4月18日
ソーヴィニョン・ブランと聞いて、あなたはどんなスタイルを思い浮かべるでしょうか。
爽やかな酸味とハーブの香り、あるいはトロピカルフルーツの鮮烈なアロマでしょうか。同じソーヴィニョン・ブランでも、産地によってその表情は大きく異なります。
特に、フランスの二大産地──ロワール地方とボルドー地方──は、ソーヴィニョン・ブランの魅力を語る上で欠かせない存在です。
ロワールのソーヴィニョン・ブランは、ミネラル感と繊細な酸を生かしたピュアなスタイル。
一方、ボルドーではセミヨンとブレンドされることで、厚みとまろやかさを兼ね備えた白ワインが生み出されています。
近年、世界のトレンドはこの二つのうち、よりフードフレンドリーで再現性の高い「ロワール型」へとシフトしていると言われています。
なぜ今、ロワールスタイルのソーヴィニョン・ブランが注目されるのか。
本記事では、その背景と、ロワールとボルドーにおけるソーヴィニョン・ブランの違いについて深く掘り下げていきます。
【動画でも解説しています】
目次
【ソーヴィニョンブラン ロワールとボルドーの違い】味わいと特徴からマーケットまで
ソーヴィニョンブランの概要
ソーヴィニョン・ブランは、世界中で愛される白ワイン用ブドウ品種のひとつです。
その特徴は、シャープな酸味と、ハーブや柑橘類、時にはトロピカルフルーツを思わせる鮮烈な香りにあります。
原産地はフランス・ロワール地方とされ、現在でもサンセールやプイィ・フュメといった銘醸地では、ソーヴィニョン・ブランの個性を最大限に引き出したワインが造られています。
一方、ボルドー地方では、セミヨンとブレンドされることが一般的で、豊かなボディとまろやかな味わいを持つスタイルが主流です。
ニュージーランドのマールボロをはじめ、世界各地でも独自の表現がされており、特にトロピカルなアロマとフレッシュな酸味を強調するスタイルが人気を集めています。
近年では、過度にアロマティックなスタイルから、よりミネラル感と繊細さを重視する方向へとシフトしつつあり、ソーヴィニョン・ブランは単なる爽快系ワインにとどまらない、奥深い表現力を持つ品種として再評価されています。
ロワール型ソーヴィニョンブラン
ロワール地方のソーヴィニョン・ブランは、繊細な酸味とミネラル感に優れたスタイルが特徴です。
サンセールやプイィ・フュメを中心とする冷涼な気候と多様な土壌(石灰質、シレックスなど)が、ワインに純粋で引き締まった表情を与えています。
香りは控えめでありながら、白い花や柑橘、時に火打石のようなニュアンスが感じられ、近年ではチオール香(トロピカルフルーツ系)の印象はあまり強調されず、よりニュートラルで上品なスタイルが主流となっています。
この控えめながら芯のある味わいは、料理との相性が非常に良く、世界的にもフードフレンドリーな白ワインとして高い評価を受けています。
ボルドー型ソーヴィニョンブラン
ボルドー地方のソーヴィニョン・ブランは、セミヨンとブレンドされることが多く、豊かなボディとまろやかな口当たりが特徴です。
温暖な大西洋性気候のもとで十分に果実が熟し、グレープフルーツや白桃、時に蜂蜜のようなニュアンスを持つふくよかな味わいに仕上がります。
ペサック=レオニャンをはじめとする高級白ワインでは、樽発酵・樽熟成が取り入れられ、樽由来のトースト香やクリーミーな質感が、果実味と絶妙に調和します。
伝統的にボルドーでは赤ワインが主役であり、白ワインは脇役的な存在とされてきましたが、近年では白にも力を入れる生産者が増え、ソーヴィニョン・ブラン主体の洗練された辛口白が世界的にも注目を集めています。
ロワールのソーヴィニョンブランでは、チオールの印象が低下?
近年、ロワール地方のソーヴィニョン・ブランでは、かつて強く感じられたチオール香──グレープフルーツやパッションフルーツを思わせるトロピカルなアロマ──が、目立たなくなりつつあります。
これは単なる偶然ではなく、気候変動と造り手たちの意図的なスタイル変化が影響しています。
まず、温暖化によりブドウの成熟が進みやすくなり、チオール前駆体(香りの元となる成分)の保持が難しくなってきました。
適熟を超えて完熟に近づくことで、チオール特有の青っぽいニュアンスは自然と控えめになります。
さらに、ロワールの生産者たちは現在、過剰なアロマを避け、ミネラル感や土地の個性を引き出すスタイルへとシフトしています。
醸造においても低温管理をやや緩め、ナチュラルな発酵を促すことで、派手すぎない、繊細で洗練された味わいを追求する傾向が強まっています。
その結果、現代のロワールSBは、華やかさよりも引き締まった骨格とテロワール表現を重視する、世界的なトレンドを牽引するスタイルへと進化しているのです。
世界のトレンドはロワール型ソーヴィニョンブラン
近年、世界のワイン市場では、ロワール型のソーヴィニョン・ブランが高く評価されています。
その大きな理由は、料理との相性に優れた「フードフレンドリーさ」と、品質の「再現性」にあります。
ロワールのソーヴィニョン・ブランは、過剰な香りを控え、ミネラル感ときれいな酸を中心に構成されています。
これにより、さまざまな料理──特にシンプルな魚料理や山羊のチーズなど──と自然に寄り添い、食事を引き立てる力を持ちます。
華やかさを狙ったニューワールド型のSBとは異なり、飲み疲れせず、食中酒としての完成度が高いのです。
また、栽培・醸造の技術向上により、ヴィンテージの違いに左右されにくい安定したスタイルの再現が可能になりました。
この「いつ飲んでも期待を裏切らない」安心感も、現代のマーケットでロワール型が支持される大きな理由です。
単なる爽やかさではなく、奥行きと土地の表現を持ったロワールのSBは、今や世界標準のスタイルになりつつあります。
まとめ
ソーヴィニョン・ブランというひとつの品種でも、ボルドーとロワールではスタイルも哲学も大きく異なります。
ボルドーではセミヨンとブレンドし、ふくよかさと熟成ポテンシャルを追求。
ロワールでは、ピュアな酸とミネラル感を生かした透明感あるワインが造られてきました。
そして現代、世界が求めるスタイルは、よりフードフレンドリーでテロワールを映すロワール型へとシフトしています。
気候変動や消費者の志向の変化を映しながら、ソーヴィニョン・ブランもまた、進化を続けています。
一杯のグラスの中に宿る、産地ごとの個性と造り手の意志──。
次にソーヴィニョン・ブランを手に取るときは、ぜひその背景にも思いを馳せてみてください。
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