ワインエキスパート試験とは?向いている人向かない人

【最終更新日】2022年10月26日

ワイン エキスパートは、一般社団法人 日本ソムリエ協会が主催している呼称資格の一つです。

飲食店や酒販店勤務のプロフェッショナル向けの資格であるソムリエに対し、一般ワイン愛好家向けのものがワイン エキスパートです。

ソムリエ呼称資格試験は、1985年から始まりましたが、ワイン愛好家向けのものではなかったため、1996年にワイン エキスパート呼称の資格試験が始まりました。

 

ワイン エキスパート認定が始まって以来受験者は増加しており、受験資格が必要ではないためワイン好きの間では人気のある資格です。

ワイン エキスパートは、日本ソムリエ協会により「ワインを中心とする酒類、飲料、食全般の専門的知識、テイスティング能力を有する方」と定義されています。

プロフェッショナル向けの資格ではなく、飲酒ができる年齢であれば受験することができるため、学生や主婦、会社員など様々な職業の方が受験されています。

 

ワイン エキスパートの上位資格としてシニア ワイン エキスパートがありましたが、2019年からはワイン エキスパート エクセレンスに変更されました。

ワイン エキスパート エクセレンスは、ワイン エキスパート資格を取得後5年経過しており、30歳以上であれば受験することができます。

 

 

ワインエキスパート試験

試験の特徴

ソムリエ呼称がアルコール飲料を扱うプロフェッショナル向けな資格であることに対し、ワイン エキスパートは一般ワイン愛好家向けであることが特徴です。

職種や経験は不問であるため、ソムリエ職種に就いていながら、ソムリエ呼称を受験する資格に満たない方も受験することができます。

実際にワインエキスパートの資格でソムリエコンテストで入賞する人もいるくらいですので、区分についてはあまり気にする必要のない者と考えていいかもしれません。

 

逆に、これは言いづらいのですが、ソムリエという言葉の響きがいいため、資格要件をちょろまかしてソムリエ試験を受けてしまう人もいます。

ただし厳密に言えばこれは規約違反ですし、後日ばれれば無効取り消しの原因にもなりかねません。

 

見る人から見ると誤魔化してソムリエ試験を受けている人はわかるもので、しっかりと資格要件を持っている人(飲食店や酒販店勤務の人)から見るとあまりいい気はしないものです。

そのため資格要件を満たしていないのであれば、ここは正直にワインエキスパートを受けるべきでしょう。

 

合格率・難易度

ワイン エキスパートの合格率は、全般的に40%程度で推移しています。

一次試験の合格率は50%程度と言われており、そこから検討すると二次試験は80%ほどの合格率ということができます。

ワインエキスパートが一般ワイン愛好家向けの資格とは言っても、ソムリエと難易度はあまり変わらず、勉強しなければならない内容もほぼ同じです。

 

合格するにはプロフェッショナルと同様に、ワイン全般に対する知識が必要とされています。

実技試験はありませんが、二次試験ではテイスティングも課されているため、知識だけでなく様々なワインを飲んできた経験も必要とされています。

 

ワインエキスパート試験の難易度、合格率、合格点についてはこちらをご覧ください→

 

向いている人と向いていない人

ワインエキスパートは試験とは言え愛好家向けのものなので、

「ワインを愛する気持ちはだれにも負けない」

という思いが強ければ強いほど有利かといわれればそうではありません。

 

後述しますがワインエキスパート試験はそれこそ全世界のワインを含めた飲料とその周辺知識が出題範囲です。

そのため世界のワインに興味があって、まんべんなく知識が欲しいという人は向いています。

また、試験なので当たり前ですが正解を多くとらないといけません。

苦手な人には申し訳ないのですが、教本を丸暗記できる人とそうでない人であれば、やはり丸暗記できる人は有利でしょう。

 

逆に、ワインファンの中にはそれこそ特定のワインは生産者の特徴からヴィンテージの良し悪しまですべて覚えているような人もいます。

言いづらいですがこういう人はそのほかのワインの知識が頭に入らないのか、なぜか試験までたどり着かない人も多いですね。

これは知識の方向性の問題であって、当たり前ですがワインファンにどちらが上とかしたとかはありません。

ただし試験を目指そうと思ったら「局地的なワインファンは不利な傾向にある」ということは覚えておいて損はないでしょう。

 

それでは、試験内容を見てみましょう。まずは筆記試験からです。

 

筆記試験

ワイン エキスパートの試験は、一次試験と二次試験に分かれています。

一次試験はコンピューターを使用した筆記試験であり、それに合格するとテイスティングの二次試験を受験することができます。

以前は同日開催によるペーパー試験であったため全受験者同じ内容でしたが、現在は別日に開催されているため受験者により試験問題は異なります。

 

ワイン エキスパートではCBT方式が採用されており、択一で記述や論文はありません。

以前の難易度は常識的な問題も多く、対策のしやすい試験というイメージでした。

しかしここ数年で急激に難化が進み、対策もしづらい出題が増え、地道な教本の読み込みをする作業が必要になってきています。

 

一次試験の出題は、日本ソムリエ協会が発行している教本からであり、知識を問う問題がほとんどです。

教本には様々なワイン生産国の情報や、ワインの生産工程、ワイン以外の酒類全般の情報も記載されているため、幅広い知識が必要とされています。

 

ブドウの生育環境はワインにとって最も重要な要素の一つであるため、地図を使用した問題や、位置関係を問う問題は頻繁に出題されています。

そのためしっかりと地図を確認しつつ、知識をつけていく必要があります。

 

フランス、イタリアなど歴史あるワイン産地からの出題が多いですが、アメリカやチリなどのワイン新興国の出題も増加しています。

それどころか普段は聞いたこともないような国のワインも出題されることがあって、要するに世界のワイン生産国であれば出題の可能性があるのです。

そのためマイナーなワイン生産国の勉強を疎かにしてしまうと、合格することは困難です。

またワイン生産量やワイン法は最新情報を問われるため、しっかりと教本で最新情報を確認する必要があります。

 

 

テイスティング

二次試験ではテイスティングが課されます。

例年5種類の酒類が出題され、3~4種類がスティルワイン、1~2種類がスティルワイン以外からとなっています。

 

テイスティングとはいっても、ヴィンテージ、品種、生産地を当てるために行われているものではなく、ワインの外観や香り、味わいの適切な表現を判断するものです。

自身が感じた味わいなどを記述するわけではなく、配られた試飲用語の中からそのワインの官能評価として適切なものを選択するという形です。

 

もちろん品種やヴィンテージなどを問う選択肢もありますが、そこを当てることよりもそのワインの外観、香り、味わいに対する適切コメントを選択できるかどうかが重要とされています。

 

スティル ワイン以外の出題では、それが何かを当てさせる問題なので、ワイン以外でも様々な酒類を飲んできた経験が必要とされます。

メジャーなリキュール、スピリッツなどはしっかりと確認しておきましょう。

 

 

試験スケジュール

ワイン エキスパートの試験は、1年に1時期のみ行われています。

受験をするためには、3月から6月に申し込み手続きを行う必要があります。

 

例年一次試験は8月前後に行われており、7月下旬から8月末の間に一次試験を受験することができます。

2018年からはCBT方式(Computer Based Testing)が採用されており、コンピューターに表示された試験問題に回答する形になっています。

合否は試験問題回答後、画面上で即時発表されます。

試験問題は受験者により異なり、受験会場と受験日を受験者が選択することができるようになりました。期間内に一次試験を二回受験することもできるようになりました。

 

同一呼称であれば翌年一回に限り、一次試験が免除されていましたが、同一呼称に限り翌3年まで一次試験が免除されることになりました。

また過去5年間のうち、ソムリエやワインエキスパートに合格した方は、別呼称を受ける場合一次試験は免除されます。

 

二次試験は、一次試験に合格した方のみ受験をすることができ、指定された日時、会場で受験しなければなりません。

例年一次試験終了後の9月1日から1か月半程度をおいた10月中頃に開催されています。

二次試験合格発表後、資格認定登録料を支払うことにより、認定証と認定バッジが郵送されます。

 

なぜワインエキスパートなのか?

ひょっとしたら、「なぜワインエキスパート試験があるの」と疑問を持つ方もいるかもしれません。

仕事でつかえないんだったら資格といっても何も生かせないし、ソムリエ協会のビジネスじゃないか、と思う人もいるでしょう。

 

もちろんソムリエ協会からすればビジネスであることには違いありません。

しかし、ワインの適切な普及を考えれば、消費者側(つまりワインエキスパート受験者)の正しい知識の浸透は必須で、この底上げがワインキスパートの本来の目的になります。

 

ワインは少しの知識があることで楽しみがぐっと深まります。

しかし一方で、ただ無鉄砲に好き嫌いでのめりこむと、本来であれば出会えたかもしれないワインとの出会いを狭めてしまう可能性があるのです。

 

例えば(やや耳の痛い人もいるかもしれません)ブルゴーニュワインが大好きで、ワインの銘柄から生産者、ヴィンテージの出来不出来まですべてを理解している人がいるとしましょう。

日本で流通するワインがすべてブルゴーニュワインなのであればいいのですが、それだとお金持ちしか楽しめなくなってしまいます。

ワインファンがブルゴーニュしか知らず、ほかを全く知らない偏った見識の場合、旗印としてはもう少し広い視野が必要になってくるのです。

 

ワインは一部の貴族社会やビジネスエリートだけのものではありません。

現在ではコンビニでもスーパーでもおいしいワインを買うことができますし、これが日本のワイン消費を伸ばしているのです。

そのなかでブルゴーニュしか知らない、となると、そのほかのワインを楽しむきっかけが失われてしまいますし、もっともすそ野を広げよう、ということなのです。

 

例えば、まだ20歳になりたての若者がいたとしましょう。

なんとなくワインの味わいが好きで、いつかはブルゴーニュのワインを飲みたいとおもっているとします。

しかし、彼女ら彼らはお金があまりありません。

身近にソムリエはいないし、ワインショップは敷居が高そうで行きづらい・・・

 

そこに、「似たような味わいだと、ピノノワールだったらオーストラリア産もリーズナブルで品質もいいよ。」とさりげなくアドバイスするワインエキスパートがいたら、素敵だと思いませんか?

アドバイスをされた人はきっと翌日にはそのワインを購入し、そしてもっとワインが好きになるでしょう。

 

 

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