レコルタンマニピュランとは?意味とワインの特徴の解説

【最終更新日】2022年10月13日

レコルタンマニピュラン(Récoltant-manipulant)は、フランス、シャンパーニュ地方のシャンパーニュの製造形態のひとつを意味しています。

一言で言えば”ブドウ栽培からワイン醸造まで一貫して行うシャンパーニュの生産者”のことを指します。

 

逆にブドウ栽培は主に栽培農家さんから仕入れて、自社ではワイン造りを主に行う生産者のことをネゴシアンマニピュラン(Négociant manipulant)と呼びます。

シャンパーニュのラベルには小さな文字でRM,NMの文字がありますが、レコルタンマニピュランとネゴシアンマニピュランの頭文字をとって、ラベルに表記をしているのです。

 

シャンパン好きであればジャック・セロスやエグリ・ウーリエなどのメゾンは聞いたことがあるはずですが、あれらは代表的なレコルタンマニピュランです。

これらは高級シャンパーニュになりますが、レコルタンマニピュラン=高級というわけではなく、中には5000円程度のレコルタンマニピュランもあります。

 

ここでは、主にレコルタンマニピュランについて、その意味と特徴、実際のお勧めシャンパーニュを見てみましょう。

 

レコルタンマニピュランとは?

レコルタンマニピュランの基礎知識

シャンパーニュは世界一有名で、かつ金額ベースで売れているスパークリングワインの銘柄です。

その売り上げはすさまじく、年間に3億本の出荷がされるほどの人気です。

 

こうなると、例えばシャンパーニュの生産者が一社で広大なブドウ畑を所有し、管理するのはおのずと限界があり、そのため歴史的にシャンパーニュ地方は「ブドウ栽培は農家さんが、ワイン造りは生産者が」行うスタイルが根付いていたのです。

これをネゴシアンマニピュランと呼びます。日本に入ってくるシャンパーニュのほとんどはネゴシアンマニピュランになります。

 

しかし、生産者によってはぶどう畑も所有し、栽培からワイン造りまでを一貫して行うところもあり、それを区別するキーワードとしてレコルタンマニピュランがあるのです。

ぶどう栽培から一貫して行うということでワイン造りにはより一層の個性を出しやすく、消費者には安心して購入できるメリットもあります。

 

 

レコルタンマニピュランのメリット

では、レコルタンマニピュランのメリットを検討してみましょう。

なんといっても栽培から携わることができるので、ワイン造り全般に個性を反映させやすいというメリットがあります。

 

ワインはブドウ果汁以外に水を加えることは基本しませんので、ぶどうの品質がそのままワインに影響する性質があります。

そのため「良いワインは良いブドウから」の不文律が成立しているのです。

ということは、ぶどう栽培はワイン造りに勝るとも劣らない重要性があって、これに携わることでワインの品質に個性を反映させることができるのです。

 

また、消費者に対するイメージも悪くありません。ブドウ栽培から携わっていることで消費者は安心して購入することができる場合が多いです。

また、やはり農作業からこだわってワイン造りをしているというイメージも消費者には受け入れられやすく、そのため小規模でこだわりの強い生産者はレコルタンマニピュランを強く押し出すところも少なくありません。

 

レコルタンマニピュランのデメリット

シャンパーニュの製法は普通のワイン造りとは違い、一度できたワインを瓶に詰め、瓶内で二次発酵をさせて炭酸ガスを発生させるという瓶内二次発酵という製法を採っています。

この製法は19世紀後半ごろに確立されますが、普通のワイン造りに比べて複雑で難易度が高く、そのためブドウの質よりも生産者の腕に品質がかかっているところも多いです。

 

こうなると小規模な生産者よりも大規模な生産者の方がノウハウが蓄積しやすく、そのため高級シャン―パーニュは今でもネゴシアンマニピュランものが多くなるということになるのです。

これは何を意味しているのかというと、小規模なレコルタンマニピュランではノウハウの蓄積ではおのずと大手のネゴシアンマニピュランには差がつきやすいということなのです。

 

そのため、消費者のイメージも決して「栽培からしているから高品質だ」というイコールでは結び付けてはいないことが多いです。

高級シャンパーニュで知られるサロンもクリュグもドンペリニョンもネゴシアンマニピュランですが、「なんだ、栽培はやっていないのか」という声は聴かないと思います。

 

これがブルゴーニュであればこうはいきません。

ブルゴーニュはネゴシアンものとドメーヌものではワインファンの扱いに差があり、ドメーヌものこそがブルゴーニュワインの真骨頂だという風潮も根強いです。

 

しかし、シャンパーニュの様な規模の大きさになるとそんなことは言っていられないというのが本音でしょう。

そのため、小規模な生産者の多いブルゴーニュに比べると、シャンパーニュでは栽培をしているかどうかは本質的な問題ではないととらえられている傾向が強くなるのです。

 

代表的なレコルタンマニピュラン

エグリ・ウーリエ レ・ヴィーニュ・ド・ヴリニー


エグリウーリエはモンターニュドランス地区で1930年代に創業という歴史のある生産者です。

第二次大戦後にどこのメゾンも拡大を目指す中、1990年代に位置はやく環境への配慮を強く意識したシャンパーニュ造りをします。

化学肥料は使わずに有機肥料を用い、手作業でブドウ栽培を行います。新樽での発酵をすることで穏やかな樽の風味がワインにしみこみ、これがこのメゾンのシャンパーニュを特徴づけています。

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ジャック・セロス イニシャル


レコルタンマニピュランのキーワードを押し上げた立役者のメゾンです。

数年前から価格は上がり続け、簡単には手が出せない価格になってしまいました。

シャンパンファンあこがれのワインですので、イベントの時などにお勧めです。

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まとめ

レコルタンマニピュランはワインファンのイメージも良く、これまでの重厚長大なシャンパーニュ業界に新しい風を吹かせたのは間違いありません。

そのうえで、行き過ぎると”レコルタンマニピュラン=善””ネゴシアンマニピュラン=悪”のような二元論に陥りやすい分野でもあるので注意が必要です。

 

合理的に考えれば「ブドウ栽培はプロの栽培農家さんに任せる」というのも極めてまっとうな考え方です。

特にシャンパーニュの規模や歴史、社会的要請などを検討すると、一概にレコルタンマニピュランがワイン選びの正解とも言えない面も出てくるのが実際のところでしょう。

 

もちろん栽培から携わるレコルタンマニピュランには高品質なワインも多く、かつ消費者にニーズに近いのはその通りでしょう。

この辺りは二元論の白黒の判断ではなく、ワインの品質や飲むシチュエーションによって飲み分けるのがベストと言えるのかもしれません。

 

 


 

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