コート・ド・ボーヌとは?ワインの特徴と各村の解説

【最終更新日】2022年12月21日

コート・ド・ボーヌ (仏:Cote de Beaune)は、フランス東部、ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方にある黄金丘陵=コート・ドール(仏:Cote d’Or)の南側に位置する、ワイン生産地の地区名称です。

白ワインの銘醸地として知られており、その多くはシャルドネ(仏:Chardonnay)という白ブドウ品種から造られます。

アペラシオン(仏:Appellation)や造り手の違いによって、酸が際立つすっきりとしたもの、酸とミネラルが端正で引き締まったもの、リッチで豊満、力強いものなど、様々なスタイルの白ワインが生み出されています。

 

いずれにせよ、多くの秀逸な白ワインのアペラシオンが軒を連ねています。

中でも「コルトン・シャルルマーニュ(仏:Corton-Charlemagne)」「ムルソー(仏:Meursoult)」「モンラッシェ(仏:Montrachet)・ファミリー」はブルゴーニュ白ワインの三大銘醸地とされています。

北に接するコート・ド・ニュイ(仏:Cote de Nuits)が赤ワインの聖地なら、コート・ド・ボーヌは白ワインの聖地と言えるでしょう。

 

また、白ワインにばかり注目されがちですが、赤ワインも高品質なものが生み出されています。

コルトン(仏:Corton)という赤の特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)もありますし、白:赤の比率の上でも赤はそれほど低くありません。

 

ブルゴーニュ・ワインの高騰著しい昨今にあって、高品質・安価のお値打ち赤ワインがこの地区には結構隠れています。

18の村名アペラシオンを擁し、それぞれに個性的な特徴があります。本記事では、コート・ド・ボーヌの抑えるべき特徴をご紹介していきたいと思います。

 

コート・ド・ボーヌの基礎知識

産地の特徴

ブルゴーニュ地方は、ボルドー地方とその地位を二分する世界的銘醸地です。

遅くとも3世紀にはブドウが植えられ、ブドウ栽培の歴史は続きました。

その後、中世に修道僧たちによって本格的な開墾が始められ、以降、偉大な銘醸地として名声を得てきました。

 

ブルゴーニュ地方は6つの地区に分かれます。

北から南へ順に「シャブリ(仏:Chablis)」「コート・ド・ニュイ」「コート・ド・ボーヌ」「コート・シャロネーズ(仏:Cote Chalonnaise)」「マコネ(仏:Maconnais)」「ボージョレ(仏:Beaujolais)」となります。

 

今回のテーマであるコート・ド・ボーヌ地区は、その中でも白ワインの世界的銘醸地として特に有名です。

AOC規定により、その多くはシャルドネから造られる白ワインです。

一部造られる赤ワインも品質の高いものが多く、ピノ・ノワール(仏:Pinot Noir)によって造られます。

 

18の村名アペラシオンからなり、北から南へ順に

ラドワ・セリニィ(仏:Ladoix-Serrigny)

ペルナン・ヴェルジュレス(仏:Pernand-Vergelesses)

アロース・コルトン(仏:Aloxe-Corton)

サヴィニー・レ・ボーヌ(仏:Savigny-les-Beaune)

ショレイ・レ・ボーヌ(仏:Chorey-Les-Beaune)

ボーヌ(仏:Beaune)

ポマール(仏:Pommard)

ヴォルネイ(仏:Volnay)

モンテリ(仏:Monthelie)

サン・ロマン(仏:Saint-Roman)

オーセイ・デュレス(仏:Auxey-Duresses)

ムルソー(仏:Meursault)

ブラニー(仏:Blagny)

ピュリニー・モンラッシェ(仏:Puligny-Montrachet)

シャサーニュ・モンラッシェ(仏:Chassagne-Montrachet)

サン・トーバン(仏:Saint-Aubin)

サントネー(仏:Santenay)

マランジュ(仏:Maranges)

と並びます。

 

所属する18の村名アペラシオン

コート・ド・ボーヌに所属する18の村名アペラシオンを以下に記載します。

 

ラドワ・セリニー(仏:Ladoix-Serrigny)

最も北に位置するラドワ・セリニー村は、コート・ド・ニュイ地区と接しており、コート・ド・ボーヌ地区の銘醸地としては最北の村でもあります。

白の特級畑「コルトン・シャルルマーニュ」は、このラドワ・セリニー村、アロース・コルトン村、ペルナン・ヴェルジュレス村の3村にまたがっており、その面積の約1/3は同村に広がっています。

 

栽培エリアは大きく2つに分かれます。

「コルトンの丘」の中腹にかけてはピノ・ノワールが栽培されています。

コート・ド・ニュイ側から丘の手前はニュイ・サン・ジョルジュ(仏:Nuits-Saint-Georges)と地続きで土壌が似ており、土っぽく野性的な赤ワインが、丘の北部の北東向きの斜面では、果実味豊かで且つミネラリーな赤ワインが、それぞれ生産されています。

また、丘陵の最上部は白っぽい石灰質土壌が広がり、ここにシャルドネが植えられています。

 

ペルナン・ヴェルジュレス(仏:Pernand-Vergelesses)

ラドワ・セリニー村の南に接するアロース・コルトン村のブドウ畑は、斜面が南東から南を向いていて、日照量に恵まれています。

斜面上部にシャルドネ、その下にピノ・ノワールの栽培地が広がっています。

 

この丘独特の光景ですが、白と赤の特級畑が並び立っている様子は実に壮観です。

ボディの厚い、リッチな白ワインが生まれます。

 

アロース・コルトン(仏:Aloxe-Corton)

赤の「コルトン」と白の「コルトン・シャルルマーニュ」と、コート・ド・ボーヌで唯一、赤・白両方のグラン・クリュを擁します。

畑の斜面は北西向きが多いことに伴って日照量が少ないこと、標高が高くに位置すること、また石灰質の土壌的要素から、ミネラルが強く、厳しさを讃えたワインが生まれる傾向にあります。

また、コルトン・シャルルマーニュの中でも、カール(シャルルマーニュ)大帝が所有していたことでも有名な「アン・シャルルマーニュ(仏:En Charlemagne)」はこの村に広がっています。

 

サヴィニー・レ・ボーヌ(仏:Savigny-les-Beaune)

特級畑はなく、22の1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)があります。

生産量比は赤:白≒9:1と、大部分が赤です。

ほとんどの村のキャラクターがはっきりしている(キャラ立ちしている)コート・ド・ニュイと比べると、あまり取り上げられない、地味に感じられやすい村も多いコート・ド・ボーヌ。

この村も正にそんな扱いを受けがちですが、赤・白共にミネラリーで酸味と果実味のバランスの取れた,綺麗なスタイルのワインが生み出され、その品質は高いです。

ちなみに、栽培面積は360haあり、ボーヌに次ぐ広さを誇ります。

 

ショレイ・レ・ボーヌ(仏:Chorey-Les-Beaune)

特級畑・1級畑共にありません。

畑の多くが県道974号の東側に広がる、同地域内では例外的ともいえるアペラシオンです。

村名ワインは、赤・白共に軽やかでフルーティー、チャーミングで親しみやすいタイプのものが造られています。

また、生産量のうち約半分は「コート・ド・ボーヌ・ヴィラージュ」の名で販売されています。

 

ボーヌ(仏:Beaune)

「ブルゴーニュ・ワインの首都」と呼ばれており、人口23000人はコート・ドールの生産地の中で最大です。

宿泊施設や飲食店、ワインショップも整備されていること、またランドマークであるオスピス・ド・ボーヌ(仏:Hospices de Beaune)やブルゴーニュ博物館もこの地にあることなどから、ワイン・ファンが聖地巡礼のごとくコート・ドールを回る際には、この村が拠点となります。

栽培面積もコート・ドール内最大で400haを優に超えます。

 

大手のネゴシアンが多数立ち並んでいることから、ブルゴーニュ・ファンの中には逆に軽視してしまう方もいるようですが、上質なボーヌは、バランスに優れた魅力的な飲み口のものが多く存在します。

また、11月の第3日曜日から3日間に渡って開催されるチャリティー・オークション「栄光の3日間(仏:Trois Glorieuses)」は、ワイン・ファンとして一度は訪れてみたいお祭りです。

 

ポマール(仏:Pommard)


このポマールと次のヴォルネイは赤の銘醸地として知られ、その酒質からコート・ド・ニュイにおける「ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)」と「シャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)」の関係に例えられることがあります。

 

28の1級畑が存在する同村は、北をボーヌ村、南をヴォルネイ村に挟まれる場所に位置し、村の中心に流れるデューヌ川を境にして南北二つの丘陵に分かれています。

ボーヌ村側とヴォルネイ村側で傾斜や斜面の向き、土壌の違うそれぞれの丘陵に、ブドウ畑は広がっています。北の丘陵は南向きでなだらかな斜面が、南の丘陵は南東向きの急勾配です。

栽培区域は標高約240m~380mで、1級畑はそれぞれの丘陵の中腹に広がっています。

 

ピノ・ノワールと相性が良い泥灰土や褐色石灰岩質が土壌の中心です。

この粘土質土壌が生み出すワインは、全体的にタンニンがしっかりとした堅牢で筋肉質なワインが多く、また長期熟成に向くものも多いと云われています。

 

【ポマールについてはこちらをご参考ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/pommard/”]

 

ヴォルネイ(仏:Volnay)

人口300人足らずの同村がピノ・ノワールから造り出す赤ワインは、繊細、優美、しなやかさが特徴で、「エレガンスの縮図」との表現がなされることがあるほどです。

35面の1級畑が存在する同村は、北をポマール村、南をムルソー村に挟まれる場所に位置します。

栽培面積は僅か約210haで、これはコート・ドールにおいて最も小さい部類です。

 

標高約220m~380mと高低差が大きく、1級畑は標高240~300m地帯を中心に広がっています。

母岩が泥灰土、表土が粘土質と泥質が主体で、これらはいずれもピノ・ノワールと好相性です。

 

コート・ド・ボーヌの赤ワイン銘醸地としては特級畑もあるコルトンが知られていますが、ポマールとヴォルネイからはそれに勝るとも劣らない銘酒が生み出されています。

事実、20世紀以前はブルゴーニュの赤といえばポマールとヴォルネィが2枚看板として地位を確立していました。

 

【ヴォルネイについてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/volnay/”]

 

モンテリ(仏:Monthelie)

特級畑はなく、15の1級畑があります。

ヴォルネィとムルソーに挟まれるように位置し、ケルト語で「街道の高いところ」を意味するモンテリのワインは、そのほとんどが赤ワインです。

ポマールほどの力強さはなく、ヴォルネィほどの上品さもない、などと評されがちなアペラシオンではありますが、勿論全てがそうではありません。

骨格のしっかりとした、それでいてエレガンスの感じられる質の高いワインも確かに存在しています。

 

サン・ロマン(仏:Saint-Roman)

ショレイ・レ・ボーヌ同様、特級畑・1級畑共にありません。

新石器時代の遺跡も残る同村がワイン史に登場するのは中世初期になります。

その後、フィロキセラが猛威を振るう19世紀後半までは耕作可能地はそのほぼ全てがブドウ畑に充てられていたといいます。

赤は果実味豊かでタンニンが引き締まったタイプ、白は酸味が爽やかで程よいミネラルを感じさせるタイプのものが、それぞれ造られています。

 

オーセイ・デュレス(仏:Auxey-Duresses)

コート・ドールの中ではマイナー産地扱いされがちな同アペラシオンですが、紀元前2世紀には栽培が始まっていた、歴史あるワイン産地です。

赤・白両方生産しており、生産量比は赤:白≒7:3です。

赤は、軽やかな果実味とミネラルが特徴です。

ブルゴーニュの村名の中では親しみやすい部類でしょう。

白はムルソーをスリムにしたようなイメージです。

「貧乏人のムルソー」などと揶揄する人もいますが、造り手によってはムルソーを凌ぐものさえあるように、私は思います。

 

ムルソー(仏:Meursault)

同地区は白ワインの銘醸地として有名です。

その中でも、「モンラッシェ・ファミリー」「コルトン・シャルルマーニュ」、そしてこの「ムルソー」は、ブルゴーニュ白ワインの三大銘醸地とされています。

 

ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェの3村は「ブルゴーニュのコート・デ・ブラン(白い丘)」と称されます。

酒質は華やか、リッチで厚みがあります。

キンモクセイを始めとする黄色い花、アーモンド等のナッツ、バター、トーストが感じられます。

アロマもフレーヴァーも豊満ですが、ミネラルと主張しすぎない酸味が決して輪郭をぼやけさせません。

 

間違いなく世界に誇る白ワイン生産地ですが、特級畑はありません。それには、税の問題など生産者を始めとする当事者たちの事情も関係しているようです。

30ある1級畑から、いずれも素晴らしいワインが造られています。

 

【ムルソーについてはこちらをご参考ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/meursault/”]

 

ブラニー(仏:Blagny)

8面の1級畑があります。

ムルソー村とピュリニー・モンラッシェ村の間にあることから、いかにも白を造っていそうですが、こちらはコート・ド・ボーヌ少数派、赤のみのアペラシオンです。

ただし、同地でもシャルドネによる白ワインを造りは行われており、ブドウの栽培された畑の位置によって、ムルソーやピュリニーを名乗ることができます(この場合、純正なムルソーやピュリニーよりは若干お手頃になる傾向があります)。

赤土で小石混じりの石灰岩土壌から、粗野で力強く、熟成を経ることでエレガントにまとまるピノ・ノワールの赤ワインが造られます。

 

ピュリニー・モンラッシェ(仏:Puligny-Montrachet)

白の銘醸地であるコート・ド・ボーヌの中でも、同村とシャサーニュ・モンラッシェに広がる「モンラッシェ・ファミリー」と呼ばれる白のグラン・クリュらは特に有名で、世界一の一角といっても差し支えないでしょう。

 

同地の白はシャルドネ本来の特徴を反映しているとも云われています。

その上で、優れた土壌、傾斜や斜面の向き、天候などの条件、そしてこの地にひしめく優良生産者たちの技量が、ピュリニー・モンラッシェを唯一無二の銘醸地たらしめているのでしょう。

ミネラリーで豊潤、花やその蜜、コンポートの甘やかさ、柑橘系果実やハーブの爽やかさ、スパイス、アーモンド等ナッティなニュアンスなど、数多の要素が複雑玄妙に膨らみ、飲み手を幸福感で包みます。

 

【ピュリニーモンラッシェについてはこちらをご参考ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/puligny-montrachet/”]

 

 

シャサーニュ・モンラッシェ(仏:Chassagne-Montrachet)

シャサーニュ・モンラッシェでは,シャルドネという白ブドウ品種から白ワインが、ピノ・ノワールという黒ブドウ品種から赤ワインが、それぞれ造られています。

白ワインが圧倒的に有名な産地ですが、赤ワインもある程度の量を生産しており、その品質の高さが知られています。

 

3つの特級畑と50以上の1級畑を持ちます。

その中でも世界一の白ワインを生み出す特級畑「モンラッシェ」、そしてもう一つ「バタール・モンラッシェ」、この2つの畑は同村と隣村「ピュリニー・モンラッシェ」の2つの村にまたがり存在しています。

 

同村の白ワイン、特に偉大なものは,ピュリニー同様、豊潤な香りと豊かな味わい,長く続く余韻が飲み手に幸福感をもたらします。

また、ピュリニーと比べシャサーニュの方がより厚みがあって豊満、より「グラマラス」であるとも云われています。

 

【シャサーニュモンラッシェについてはこちらをご参考ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/chassagne-montrchet/”]

 

 

サン・トーバン(仏:Saint-Aubin)

ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェのある丘陵を登ったところにあるサン・トーバンは、標高300~410mと高い位置にあり、ミネラリーでエレガントな白ワインを産出しています。

ブドウ栽培大きく2エリア、サヴォワ山側とバン山側に分かれ、特にサヴォワ山側には多くの優良畑が広がっています。

赤ワインも、質の高いエレガント系が造られます。こちらはコート・ド・ボーヌ・ヴィラージュとして販売されることが多いようです。

 

サントネー(仏:Santenay)

同村はコート・ド・ボーヌ最南端の丘陵に位置しています。

標高210~450m、南東向きの斜面、酸化鉄交じりの石灰岩土壌といった好条件から、力強く野性味ある赤ワインが産出されます。

 

栽培エリアは北部・中部・南部と3つに分かれ、1級畑は13面あります。

造られるワインはそれぞれ少しずつ違った特徴を有しています。

白ワインも全体の10%程造られています。

フルーティーで親しみやすい、肩ひじ張らずに楽しめる味わいのものが多いように感じます。

 

マランジュ(仏:Maranges)

1級畑は10面持つこちらの産地はコート・ドール県から外れ、ソーヌ・エ・ロワール(仏:Saone-et-

Loire)に位置します。ドジズ・レ・マランジュ(仏:Dezize-les-Maranges)、サンピニ・レ・マランジ

ュ(仏:Sampigny-les-Maranges)、シュイイ・レ・マランジュ(仏:Cheilly-les-Maranges)の3村からなるこのアペラシオンの歴史は新しく、1989年にAOCができました。

 

コート・ド・ニュイを思わせる長期熟成型で力強い赤を産出します。

野性味があり、土系のニュアンスを感じさせる同地のワインは、熟成させることで洗練され、華やかな変身を遂げます。


 

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