【最終更新日】2024年8月1日
ワインエキスパートは料理に弱い!そう言われないために。
今回は「代表的な調理技法」についてです。
料理をする上で大切な事はたくさんありますが、その中でも火入れは素材の持ち味を最大限に発揮させるために欠かせない内容になります。
フランスでは日本とは異なり、流通が未発達な時期は新鮮な食材が手に入りにくく、美味しい料理は調理者の腕にかかっていたと言われています。
そのためか、数多くの調理技法が生まれたと言われています。
今回はどのような調理方法があり、その特徴はどのようなものなのか、どういった食材に向いているのかなどをみていきたいと思います。
そんな記事を書く私ですが、
ワインブックススクールWBSで学習し、2023年度に1発でワインエキスパート試験に合格しました。
ワインエキスパート試験合格以前には、調理学校の通信教育でフランス料理・イタリア料理技術講座を1年間受講し、卒業した経歴があります。その当時の資料、参考書を中心に今回の記事を作っていきたいと思います。
それでは早速みていきましょう。
目次
フランス料理の基本的な調理技法
基本の調理技法
フランス料理の代表的な加熱調理法は、大きく3つに分かれます。
①表面の素材に高温で焼き色をつけながら火を通す方法
②液体(蒸気含む)を介して、火を通す方法
③表面に焼き色をつけてから液体でゆっくり火を通す方法
他にも、通常の調理よりも低温で火を通す低温調理がありますが、今回は上記の3つに絞って解説をしていきたいと思います。
表面の素材に高温で焼き色をつけながら火を通す方法
代表的な方法に「ロースト- rôtir-」、「ソテ-sauter-」、「グリエ-griller-」など様々な技法がこれに該当します。
こんがりとした焼き色と香ばしい香り、カリッとした食感が得られます。
焼き色や香りは料理に風味を与える上で重要な役割を果たします。肉汁が保たれるように、ジューシーに焼き上げるのが重要です。
今回はこの技法が1番のボリュームゾーンになります。それぞれについてみていきましょう。
ロースト- rôtir-
大きな塊の肉や丸ごとの家禽類などをオーブンに入れ、高温の熱気に当てて焼き上げる調理法。
代表的な料理としてはローストビーフやローストチキンなどが挙げられます。
大きな塊で調理する場合は加熱時間が長いため、香ばしい焼き色が自然につきますが、小さな素材はあらかじめ焼き色をつける必要があります。
出てきた焼き汁を利用してソース(ジュ•ド•ロティ-jus do rôti-)も作る事ができます。
ポワレ-poêler-
表面に焼き色をつけた塊の肉や丸ごとの家禽類を、香味野菜、バターと共に蓋をした状態でオーブンで蒸し焼きにする方法。
厚みのある蓋できっちりと密閉することで、素材のもつ水分で“蒸し焼き”の状態になります。間接的に熱が入るため、水分が失われにくく、しっとりと焼き上がるのが特徴。
なお、切り身にした魚をフライパンで焼く調理法を指す場合も「ポワレ」ということがありますが、本来は“蒸し焼き”にする調理法のことを「ポワレ」と呼んでいます。
キュイール・アン・クルート-cuire en croûte-
いわゆる包み焼きのこと。代表的なものとしてパイ包み焼きがあります。他にも塩釜などもこれに該当します。
折り込みパイ生地などを用いて肉や魚、ムースを包み、オーブンで焼き上げる調理法。生地で包むことで、素材の持つうまみや風味を閉じ込めるだけでなく、間接的に火が入るため、しっとりとした仕上がりになります。
ちなみに、中に包むタネのことは「ファルス-farce-」と呼びます。
ソテ-sauter-
フライパンや浅い鍋に油脂を熱し、適当な大きさに切り分けた肉や家禽、魚を入れて表面をこんがりと焼き、比較的短時間で火を通す調理方法。
ソテした鍋に残った素材のうまみ(シュック-suc-)を利用してソースを作る場合いも多い。
短時間で中まで火入れするため、フィレ肉などの肉質が柔らかく、あまり大きくない素材が向いています。
ソテの火入れについて少し記載をしておきます。よくステーキの焼き加減で使われているレアやミディアムのことですよ。フランス語では以下のように言われます(英語→フランス語で記載しています)。
・ウェルダン well-done →ビヤン・キュイ bien cult
・ミディアム medium →ア・ポワン à point
・レア rare →セニャン saignant
・ベリー レア very rare →ブルー blue
もし使う機会があれば、参考にしてみてくださいね。
ムニエル-sauter ”meunière”
ムニエルはソテのバリエーションのひとつ。
小麦粉をまぶした素材(主に魚介)を、多めの油脂で焼く調理方法。バターをたっぷりと使い、その香ばしさと風味をつけながら焼き上げるのが特徴。
主に魚介類に対して用いられる用語になります。
グリエ-griller-
溝がついた鉄板や縦格子の網に素材をのせ、高温の熱源にかざして火を通す調理方法。
鉄板などに接する箇所にこんがりと焼き色がつき、接していない部分は間接的に加熱され、柔らかく仕上がります。脂分の多い素材は余分な脂を落とし、あっさりと仕上げる事ができる。
グリエは食材が乾燥しやすいため、火が通りにくい素材は向いていません。比較的厚みがなく、火が通りやすく柔らかい素材が向きます。牛サーロインやラムチョップ、魚の切り身などが良さそうですね。
焼く前に素材に油を塗ってあげると乾燥を防ぎ、肉全体に効率よく熱を伝えることもできるので、一度試してみてくださいね。
フリール-frire-
揚げる技法のことを指します。素揚げと衣揚げの2通りがあります。
130~180度に熱した油で加熱することで、素材の水分を適度に蒸発させて旨みを凝縮します。それと同時に素材の表面を素早く固め、外はカリッと香ばしく、中は柔らかいという対照的な食感が特徴的。
素材は短時間で火が通り、柔らかい素材が向いています。素揚げはじゃがいもをはじめ、様々な野菜など。衣揚げでは魚の切り身や小魚、切り開いた丸ごとの魚が良いとされています。
以上が、高温で焼き色をつけながら火を通す方法になります。
表面の香ばしさと内面の絶妙な火入れ。想像するだけで涎が出てきます。
液体(蒸気含む)を介して、火を通す方法
「キュイール•ア•ラ•ヴァブール-cuire à la vapeur-」や「ポシェ-poacher-」がこれにあたります。
キュイール•ア•ラ•ヴァブール-cuire à la vapeur-
いわゆる蒸し料理のこと。
表面が乾燥せず、しっとりと仕上がるのが特徴。素材を液体に浸さないので、旨みや風味が逃げにくく、持ち味がそのまま生かさせる。素材の形を保ったまま仕上げることができる。
蒸し器で調理する場合は水の代わりにクールブイヨンや香草の香りをつけた液体にすると、素材に風味を与えることもできる。
ポシェ-poacher-
ポシェとはたっぷりの液体の中で素材を加熱する調理法です。日本でいうところの「茹でる」。ただし、ポシェは水のみならず、フォンやブイヨン、ワイン、牛乳など様々な液体を用います。
ポシェには高温の液体から火入れする場合と低温の液体から火入れする場合があります。さらに、少量の液体でポシェする事で、蒸し煮のようにして火入れすることもあります。
高温で火入れする場合、素材の持ち味をできるだけ生かして火を通したい時に用いられ、素材の表面を素早く固め、短時間で火を通し、素材の旨みを保ちます。
低温からの調理では、素材のうまみが次第に液体に溶け出すので、火を通した液体(煮汁)でソースを作ります。
逆に素材には煮汁の風味が加わるため、香味野菜やワインなどを加えた液体で火を通します。
少量の液体でポシェを行った料理、「舌平目のデュグレレ風-Filets de sole Dugléré-」は絶品なので、機会があれば是非、ご賞味ください。
表面に焼き色をつけてから液体でゆっくり火を通す方法
「ブレゼ-braised-」や「ラグー-ragout-」がこの方法になります。
低温からのポシェ同様に液体には素材のうまみが、素材には液体の風味が加わります。
しかも、表面を焼くことで香ばしい香りも得られ、より豊かな風味が生まれます。
ブレゼ-braised-
表面を焼いた素材を鍋にいれ、その半分が浸かるくらいの液体を注いで蓋をし、オーブンで蒸し煮する調理方法。液体に浸かっていない部分にも穏やかに火が入ることで、全体的にしっとりと仕上がります。
煮汁には素材のうまみが溶け出すため、それを利用してソースを作ることもできます。
肉質が硬い場合は火入れの時間を長くし、肉質が柔らかく、短時間で火が通る家禽類、小さな魚介類は短時間で仕上げます。
ラグー-ragoût-
適度な大きさに切り分けた肉類や家禽類などの表面を油脂で焼き、小麦粉などで濃度をつけた液体で煮込む調理方法。液体は素材がヒタヒタに浸かるまで注ぎ、蓋をして柔らかくなるまで煮込む。
煮汁に素材の旨みが溶け出しているので、ソースとして一緒に供する事がほとんどです。
適している素材として、肉類全般の肩肉、ばら肉、すね肉など、比較的肉質が固く適度に脂身が混ざっている部位が向いているとされます。他にも、あんこうやうなぎなどの煮崩れしない魚も向きます。
ソムリエ・ワインエキスパート試験の教本に出てきたブルゴーニュ料理「Boeuf bourguignon」や「coq au vin」、「matelote d’anguille」はラグーに分類されます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は基本的な調理技法について記載を行ってみました。
これ以外にも様々な調理方法があり、興味の尽きない分野になります。
フランス料理のソースと食材、それに調理技法も加わると本当に組み合わせは無限大!って感じます。
お食事をする際に、この料理の火入れはどうやっているんだろうと、少し考えてみるとまた理解が深まっていきそうです。
調理技法の違いによる料理とワインとのペアリングなどもとても面白そうですよね。どこかでそんな機会、ないかなぁ。
今後のお食事やワインライフの参考にしていただければ幸いです。
ここまでご一読いただきありがとうございました。
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