シャトーラトゥールとは?基礎知識と歴史・起源の解説

【最終更新日】2022年11月29日

シャトー・ラトゥール(Chateau Latour)は、ボルドーのメドック地区、ポイヤックにあるシャトーです。

1855年のボルドーの格付けでは、最上級の1級に選ばれています。

 

五大シャトーの中でもシャトー・ラトゥールは最も力強く長命なワインと言われることが多いです。

また、きわめて手堅いワイン造りをすることでも知られています。

他のシャトーが評価を落とす年であってもシャトーラトゥールは手堅くワイン造りをし、ファンの期待を裏切らないとされています。

 

今回はそんなシャトー・ラトゥールにはどのようなワイン造りや歴史があるのかを見ていきましょう。

 

シャトーラトゥールの基礎知識

ワイン造り


シャトー・ラトゥールの畑は78ヘクタールあります。

畑に植えられているブドウの品種構成は、カベルネ・ソーヴィニヨンが80%、メルロが18%、残りの2%がカベルネ・フランとプティ・ヴェルドです。

シャトー・ラトゥールには、カベルネ・ソーヴィニヨンが75%、メルロが20%、残りカベルネ・フランとプティ・ヴェルドが使われます。
また、シャトー・ラトゥールには他に2つのワインがあります。

 

セカンドラベルはレ・フォール・ド・ラトゥールです。

このワインはファーストラベルの畑の周りにあるラ・ピナダ(La Pinada)とプティ・バタイエ(Petit Batailey)という区画のブドウを使って造られています。

セカンドラベルとはいえ評価は非常に高く、実質は格付け2級ものの実力があるとも言われています。

また、1989年からポイヤック・ド・ラトゥールというサードラベルのワインも生産しています。

 

歴史・起源

1838年に描かれたイラスト

シャトー・ラトゥールの歴史は少なくとも1378年、百年戦争があった時代にまで遡ります。

ちなみに、シャトー・ラトゥールラベルには塔(フランス語でla tour)が描かれていますが、この頃に要塞として築かれたものです。

既に元々の塔は存在しませんが、1640年頃にラベルとは異なる丸い屋根の塔が建てられています。

この塔は鳩の巣として使われていますが、現在でもシャトー・ラトゥールのシンボルとなっています。

1670年代からはシャトー・ラフィット・ロートシルトやシャトー・カロン・セギュールを所有していたセギュール家がシャトー・ラトゥールの所有者になります。

このセギュール家の中でもボルドー市議会長勤めたニコラ・ド・セギュールは優れたシャトーの持ち主であることを誇りに思っていた人物で、畑の手入れやワイン造りに熱心に取り組みました。

この頃からシャトー・ラトゥールはシャトー・ラフィット・ロートシルトなどと同じように名を上げていくようになります。

 

1755年にニコラが亡くなり、シャトーは娘たちに継承され、その後ボーモン家に引き継がれます。

また、1842年にこのボーモン家によってシャトー・ラトゥールは法人化されます。

 

しかし第二次大戦後にシャトーを維持できなくなり、1963年に株式の4分の3をカウドレイ卿が主宰するピアソン家に売却します。

支配人を選ぶ段階になり、メドックの人たちはアンリ・マルタンを推薦しました。

マルタンは、シャトー・グロリアの持ち主でサン・ジュリアン地区きっての造り手でした。

 

しかしマルタンが提案したのは、親友のジャン・ポール・ガルデールでした。

ガルデールは農夫生まれでメドックのワインについて知り尽くしており、抜群の実務知識を持っていました。

 

ラトゥールを任されたガルデールは精力的にワイン造りに取り組みました。

さらに1977年には若手の醸造技師であるジャン・ルイ・マンドロウをシャトー・ラトゥールに招き入れます。

ルイは学究型のインテリで、ワインを一つ一つ試験官に取って分析しないと気が済まないような性格でした。

ガルデールは経験と勘を頼りに物事を決めようとする性格で、ルイとワイン造りのアプローチが異なることもしばしばあったようです。

しかし、奇妙なことにアプローチは違っていても、二人の結論は常に一致していたとされています。

 

ステンレスタンクの導入

Par BillBl — originally posted to Flickr as Chateau Latour I, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11706315

1963年以降支配人が変わったシャトー・ラトゥールは改革が進められます。

当時のボルドーのシャトーは手入れが行き届いておらず、シャトーラトゥールの発酵槽は手が付けられないほど老朽化していました。

この現状を見たマルタンとガルデールは古い木の仕込み槽をモダンなステンレスタンクに変更することを提案します。

 

仕込み槽の変更は莫大な経費が掛かり、当時まだメドック第一級のシャトーでは導入しているシャトーはありませんでした。

この判断がどれだけのプレッシャーだったのかは想像もつきません。

もしステンレスタンクを導入した結果、評価を落としたのであれば「それ見たことか」という冷笑は想像に易いからです。

 

しかし、ピアソン家はこの提案を受け入れ、1964年にステンレスタンクを導入しました。その結果この年のワインはメドック最高のものになりました。

この現代醸造技術の導入は他のシャトーにも影響を与えました。

 

 

改革派イメージのシャトー?

他にも老朽化していた醸造所や地下蔵の改装や、畑の調査などに取り組みました。

このようにシャトー・ラトゥールは力強いワイン造りをするだけでなく、革新的なワイン造りをするシャトーと言われることも多いです。

その一つが現在においてもビオロジック農法をベースとした有機農法である「ビオディナミ」の導入やしていることです。

ボルドーのシャトーになると規模が大きいことも多く、ビオディナミは簡単に導入できるものではありません。

 

もう一つが樽で熟成中のワインを先行販売するボルドー独自のシステムである「プリムール」から、2011年のビンテージを最後に撤退したことです。

プリムール販売は各シャトーにとって安定した売り上げになり、かつ歴史があるため販売する側としては安心感のあるシステムです。

しかし同時にブラックボックスが多く、市場にはもっと開かれた透明性を求める声も大きかったのですが、これを反映したものです。

 

これらのように、イメージからすると保守の権化のようなイメージはありますが、シャトー・ラトゥールの革新はつねに止まってはいないのです。


 

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