【最終更新日】2022年10月17日
ジュヴレシャンベルタン(Gevrey-Chambertin)は、フランス、ブルゴーニュ地方、コートドニュイのワインです。
同名の村がディジョンから南に1.5㎞程のところにあり、お隣のブロション村の一部で規定を守ったワインもジュヴレシャンベルタンを名乗ることができます。
フランス の ブルゴーニュ地方の中でもおそらくトップ3に入る知名度と人気を誇ります。
ナポレオン・ボナパルト(1808~1873)が愛した ワイン という背景から「ブルゴーニュの王」「王のワイン」と呼ばれています。
遠征にも必ず持っていき、シャンベルタン以外は口にしなかったと言われるほどです。
ナポレオンの遠征の失敗は、生死を分けるほどの意味を持ちます。
味わいも好きだったに違いませんが、おそらく縁起もよいと判断したのでしょう(後述しますが異論があります)。
指定栽培面積は409ha,そのうち1級のクリマはそのうち5分の1にあたる80haです。
平均生産量は18000hl程度で、コートドールのなかでも大きな生産量になります。
目次
ジュヴレ シャンベルタン村のワイン
シャンベルタンとナポレオン
シャンベルタン のワインは、ナポレオン(1769~1821)が必ず遠征先に持ち込んだとして有名です。
これがジュヴレシャンベルタンのどこかのワインなのか、あるいは特級畑のシャンベルタンなのかははっきりしていません。
このころにどこまで畑の線引きがしっかりできていたかはわかりませんし、そこまで掘り下げる話でもないでしょう。
この話には異論も多く、もっとも強い説はそもそもナポレオンは進軍が早いため、そんな悠長に シャンベルタン を味わっているわけがないというものです。
また、生死を分ける戦場でワインで酔っぱらうというのもおかしな話で、事実ワインを水で割っていたという説もあって、いよいよシャンベルタンとナポレオンの話には疑問はついてきます。
ナポレオンの食生活は案外粗末なものでしかも早飯食いだった、という話もありますので、ゆっくりと美食と美酒を楽しむグルメとはややイメージが違うのかもしれません。
ラスカーズ伯爵
ナポレオン と ワイン にはいくつも小話があり、ボルドー にもゆかりのある話があります。
ナポレオンの側近にジャン・ラスカーズ伯爵がいて、この人は英語が達者なうえにナポレオンに心底ほれ込んでいた人で、セントヘレナ島で死をみとった人の一人です。
ラスカーズ伯爵は頭脳明晰なのですが猫背で平身低頭、ナポレオンの風見鶏で「追従のあまりナポレオンよりも背が低くなった」と皮肉られるほどの相当の側近です。
お察しのとおり、この人はあの シャトー レオヴィルラスカーズ の所有者だったのです。
ジュヴレシャンベルタン のワインをお飲みの時に、レオヴィルラスカーズも一つの小話として思い出してみてはいかがでしょうか。
わかりづらい村名とクリマ
ジュヴレシャンベルタン村のワインは、フランス国内の ソムリエ では「罪作りなワイン」と揶揄されています。
というのも、正真正銘の特級のシャンベルタンやシャンベルタンクロドベーズを含む7つのAOCと、ただの村名のジュヴレシャンベルタンにも同様にシャンベルタンの文字が入り込んでいるのです。
ユーザーからすればこれは混乱のもとで、おそらく今まで多くのワインファンをよろこばせ、それと同じくらいがっかりさせてきたのかもしれません。
また、世界的にシャンベルタンワインの名前は浸透していて、シャンベルタンと名乗るだけで売れてしまいます。
一部のネゴシアンからすれば経済的理由以上に優先させることはありませんので、中には粗悪な品質の村名ワインも出回っているのが事実です。
これを知らないユーザーが間違って特級ワインと混同して飲んでしまうとその落胆は目に浮かびます。
そのため、この村のワインを選ぶときは、生産者をしっかりと検討して購入するべきでしょう。
しっかりつくりこんだジュヴレシャンベルタンであれば、たとえ 村名クラス であってもうっとりするくらいの品質なのです。
【ジュヴレシャンベルタンの格付けについてはこちらをご覧ください】
[blogcard url=”https://winebooks-media.com/classement-gevrey-chambertin/”]
ブドウの品種
ジュヴレシャンベルタン村(と名乗る)のワインは100%赤ワインです。
ブドウ品種はピノノワールを使用しており、ブルゴーニュ地方の他の村と同様のブドウ品種となります。
しかしシャンベルタンには26の プルミエクリュ の畑と9つの グランクリュ の畑があり、それぞれ味わいが違います。
味わいが違うといっても、どれも最高級品レベルの質の高いワインです。
グランクリュ がある村では最も北の位置にあたるため、涼しく石灰土壌の水はけの良さから ブドウ の成長を早めてくれます。
また日照り条件も良いため、色が濃く高品質なブドウが栽培されるのです。
【ピノノワールについてはこちらをご参考ください】
[blogcard url=”pinot-noir”]
クリュ
グランクリュ
グランクリュは、2つの別格特級畑(シャンベルタンとシャンベルタンクロドベーズ)があります。
格下げしたワインの場合はACブルゴーニュ、もしくはブルゴーニュ グラン オルディネールとなります)
以下はグランクリュの一覧と、指定栽培面積です。
シャンベルタン(Chambertin) 13ha
シャンベルタンクロドベーズ(Chambertin Clos de Bèze) 15ha
シャペルシャンベルタン(Chapelle-Chambertin) 5.5ha
シャルムシャンベルタン(Charmes-Chambertin) 31ha
グリオットシャンベルタン(Griottes-Chambertin) 2.7ha
ラトリシエールシャンベルタン(Latricières-Chambertin) 7.5ha
マジシャンベルタン(Mazis-Chambertin) 9ha
マゾワイエールシャンベルタン(Mazoyères-Chambertin)
リュショットシャンベルタン(Ruchottes-Chambertin) 3.5ha
マゾワイエールは、独立したクリマですが、通常はシャルムシャンベルタンの名前でリリースされます。
そのため上記のシャルムシャンベルタンの指定栽培面積にはマゾワイエールが含まれています。
【ジュヴレシャンベルタンのグランクリュについてはこちらをご覧ください】
[blogcard url=”https://winebooks-media.com/gevrey-chambertin-gc/”]
プルミエクリュ
ジュヴレシャンベルタンには1級畑であっても特級ワインと同じくらいの価格や評価のワインも多いです。
ただし生産者によって品質が大きく変わることもありますので、購入前にはしっかりとした検討が必要でしょう。
1級畑は以下の通りです。
Au Closeau
Aux Combottes
Bel Air
Champeaux
Champonnet
Cherbaudes
Clos des Varoilles
Clos du Chapitre
Clos Prieur
Clos Saint-Jacques
Combe au Moine
Craipillot
En Ergot
Estournelles-Saint-Jacques
Fonteny
Issarts
La Bossière
La Perrière
La Romanée
Lavaut Saint-Jacques
Les Cazetiers
Les Corbeaux
Les Goulots
Petite Chapelle
Petits Cazetiers
Poissenot
ジュヴレシャンベルタンの特徴
鮮やかで濃厚かつ滑らかな味わいが特徴の赤ワインです。
長期熟成にも耐えるワインなので、若いうちは渋みが強く、熟成するほどまろやかな口当たりとなります。
酸とミネラルも程よく感じられ、タンニンも豊富です。
土やスパイス、またピノノワール特有のサクランボのようなアロマを感じられ、骨格がしっかりとしているので赤身の肉と相性良くなっています。
飲み頃は5年~25年くらいとなります。
ざっくりというと、村名クラスは~5年、プルミエクリュは~15年、グランクリュは~25年程度でしょう。
歴史
13世紀にクロ・ド・ベーズというベーズ修道院が管理する畑で作られたワインが有名になりました。
その話を聞いたベルタンという農夫が、隣の畑から高品質のワインを作り出すことに成功したので「ベルタンの畑」という意味の「シャンベルタン」と呼ばれるようになったのです。
その後1848年にジュヴレ村の村長がワインの評価を高めるために、村名にシャンベルタンの名前を付けて、ジュヴレ・シャンベルタンという現在の名前となりました。
合わせる料理
ジュヴレシャンベルタンはブルゴーニュの中でも鉄分の印象が強く、そのため ジビエ などの肉料理にも合わせやすいといわれています。
ジビエ料理であれば、必然的にレストランのシェフが丹精込めて作る料理になります。
もっとも、村名クラスのワインはもっと気軽に飲めるタイプのため、逆に高級料理は合わせにくいでしょう。
そのため村名クラスであればもう少しクセのない牛ロース肉の炭火焼などの料理が合わせやすくなります。
1級クラスや特級クラスになるともう少し凝った料理が似合います。
前述のジビエであってもしっかりと都会的に仕上げ、血液のミネラル分を感じさせる料理がいいですね。
例えば野生の鴨をローストし、血液で仕上げたような料理は特級のシャンベルタンにふさわしいでしょう。
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