【最終更新日】2022年9月28日
ナチュールワインは化学肥料や農薬をできる限り使用しないで栽培し、ワイン造りにも野生酵母を用いるなどの自然な製法でつくられたワインの総称を指します。
ただしナチュールワインそのものはもともとワインのキーワードがあったわけではなりません(後述)。
自然派ワインのことをフランス語でヴァンナチュール(Vin Nature)と呼ぶため、これを英語の発音のワインと掛け合わせたものが日本では一般的に呼ばれるようになった経緯があります。
ワインはもともとブドウ果汁以外には糖分や水分などの外部から添加をするものが少なく、「良いワインは良いブドウから」の原則があります。
そのためぶどうの品質がワインに直接影響をする傾向が強く、それであれば製法にもこだわり、より自然な栽培をしたブドウを使用し、できる限り自然な醸造をしようという生産者が「ナチュールワインの造りて」として注目されています。
ナチュールワインとは?
いつから呼ばれるようになったの?
まずは客観的なところから検討してみましょう。
ナチュールワインは綴りではNature Wineと書きますが、ナチュールという発音はフランス語の発音ですし、ワインは英語の発音です。
フランス語ではヴァン ナチュール(Vin Nature)と書きますし、英語ではナチュラルワイン(Natural Wine )と表記をします。
そのためフランス語でもないし英語でもないので、おそらく日本でつくられた造語なのではないかと検討するのが合理的な判断でしょう。
では、日本ではいつ頃からフランス語と英語を足した「ナチュールワイン」という呼び方がされるようになったのでしょうか?
グーグルトレンドで「ナチュールワイン」と日本での検索を見ると、2004年から現在までの推移では「ここに表示するデータはありません」と表示されます(2022年9月28日)。
これはグーグルがデータとして表示するほどの検索数がとれていないことを表しています。なお、そのほかの直近1年間でも同様の表示がされています。
ただし、自然検索ではナチュールワインの関連キーワードは多くありますが、これは対象とする期間が短く、かつ少ないキーワードの検索数にも対応しているための違いになります。
ここからおそらく、ナチュールワインはまだ検索数は少なく、かつ、近年急に身近になったキーワードだということが推測できます。
もともとカタカナで「ナチュール」と検索する人がそもそも2004年頃にはゼロに近く、そこから徐々に増えていったことがわかりますので、本格的に語られるようになったのはここ7~8年ではないかと推測できます。
なお、「ナチュール」の関連キーワードを検討すると、「ナチュールワイン」が圧倒的に多くキーワードあることがわかります。
ワイン以外にはスパだったりカフェなどが見受けられますが、おおむねナチュールで検索する人の多くはナチュールワインのことを調べているといっていいでしょう。
このように、せんじ詰めればナチュールワインは造語のため、使い方はあいまいだし、どこかに線引きがあるようなキーワードではありません。
ここまでの検証から言うと「自然な造り方をしたワイン」の総称をナチュールワインと呼ぶんだととらえるのがいいかもしれません。
ナチュラルワインとは?
では、英語版のウィキペディアで「ナチュラルワイン」を見てみます。おおむね日本でいうナチュールワインと同じ意味で使われているとしましょう。
訳しますと
オーガニックワインやバイオダイナミックワインとは混同しないでください。
ナチュラル ワインとは、自然な方法または伝統的な方法をもちいてワイン造りをする生産者が造るワイン全般を指します。
ナチュラル ワインのキーワードには統一された定義はありませんが、通常は殺虫剤や除草剤を使用せず、添加物はほとんど、あるいはまったく使用せずに造られます。
通常、自然派ワインは、工業的な技術ではなく伝統的な造り方で、かつ小規模に生産され、天然酵母で発酵されます。
最もピュアな形の自然派ワインは、ワイン製造プロセスで添加物を一切使用せずに純粋に発酵させたぶどうジュースと呼べるでしょう。
ナチュラルワインの他の意味としては、介入の少ないワイン、生のままのワイン、むきだしのワインなどがあります。
とされています(日本語にして読みやすいように修正してあります)。
ここでわかることは、
①オーガニックワインやビオディナミとは線引きがあること
②決まった定義はないキーワードであること
がわかります。それ以外はおおむね「自然に近い造り方をしたワイン」を指すとの記述とみていいでしょう。
オーガニックワインとの違い
では、なぜ英語版のウィキペディアではわざわざ「オーガニックワインやビオディナミとは混同しないでください」と強調しているのでしょうか?
まずはオーガニックワインとの違いを検討してみましょう。
オーガニックワインは有機農法で作られたブドウを原料に、防腐剤や酸化防止剤を使用しない造り方のワイン全般を指します。
そして、多くの国ではオーガニックワインの規定が法律で定められていて、規定を守らずにオーガニックワインを名乗ることは禁止をされています。
日本でも「有機農業の推進に関する法律(平成 18 年法律第 112 号)」という法律の第2条で
(定義)第二条 この法律において「有機農業」とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。
と規定がされています。
この法律では総論として環境と農業の調和が本旨とされています。つまり人間の都合や生産性だけで農業を行うのではなく、環境への配慮を行い、それが最終的には消費者のニーズにこたえることができるとまとめています。
また、オーガニックには認定制度があり、日本ではJAS認定制度があり、2022年10月からは有機酒類の表示も認められるようになっています。
ヨーロッパでもEUの基準でオーガニック、オーガニックワインを表記するためには専門の認証機関から認証を受けないといけないという規定があります。
主な認証機関は以下の通りです。
日本:有機JAS規格
EU:Euro leaf(ユーロ・リーフ)
フランス:ECOCERT(エコセール)、AB (Agriculture Biologique)、
ドイツ:DEMETER(デメター)
イタリア:Associazione Italiana per L’Agricoltura Biologica
ここからわかるように、統一された決まった使われ方のないナチュールワインと、厳密な規定のあるオーガニックワインということで棲み分けがあることがわかります。
二つとも似ているような使われ方ではありますが、ここは使い分けをしたほうがよさそうですね。
ビオディナミとの違い
では、ビオディナミとナチュールワインの違いは何でしょうか。
ビオディナミはもともとオーストリアの哲学者、ルドルフシュタイナー博士↑が提唱した栽培方法です。
農薬の使用や化学肥料は一切用いずに自然な農法で栽培し、かつ、土壌のエネルギーや天体の動きなどのスピリチュアルな要素が合わさった栽培方法、ワイン造りの考え方を指します。
ビオディナミは民間団体での認証機関はありますが、行政が真正面から認める形での認証制度はありません。
ビオディナミは特にブルゴーニュの生産者で多く採用されています。
スピリチュアルな要素は最終的に科学的に証明することができないため批判も多いですが、現実的にビオディナミを採用した生産者が評価の高いワインを生産しているところから、必ずしも無関係とはいいきれない理論でもあります。
世界で最も高級なワインの一つ、ロマネコンティもビオディナミ農法を採り入れています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はナチュールワインの総論と、オーガニックワインやビオディナミとの違いを検討してみました。
まとめますと、
・決まった統一的な使われ方はないけど、より自然に近い栽培、ワイン造りをしたものがナチュールワイン
・決まった統一的な使われ方はないけど、自然に近い栽培、醸造に加えて天体の動きや土中のエネルギーなどのスピリチュアルな要素のあるビオディナミ
・法律などではっきりとした既定のあるオーガニックワイン
になります。
ただし、一般的に使われる場合にこれらのキーワードを厳密に使い分けている人はごく少数はですし、ほとんどの人は何となくのイメージで言葉を発しているはずです。
ワインを楽しむ場合にはこれらのキーワードについてはある程度の緩さは許容して楽しんだ方がリラックスできるかもしれません。
逆に、言葉に決まった統一がない場合、言葉の規定がないことをいいことに都合のいいキャッチコピーでワインを売り出そうとするところはどこにでもいつの時代にもいます。
これについてはしっかりとした検討が必要ですし、場合によりましては自然なワインを求める消費者の真摯な気持ちを逆手に取られてしまう可能性もあります。
ナチュールワインは旬なキーワードだからこそ、しっかりとした検討が必要な場合もあるキーワードといえるでしょう。
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