北海道のワインとは?基礎知識と著名ワイナリー、ぶどう品種の解説

【最終更新日】2022年12月6日

北海道の日本ワインの生産量は山梨県、長野県に次ぐ第3位、日本全体の約18%ですが、日本のワイン造りにおいては、長野県と並ぶ活気のあるエリアです。

2020年以降に新設されたワイナリーは30軒を超え、現在ワイナリー数は合計42軒となりました。

 

新規参入のワイナリーの大半は小規模ワイナリーで、これまでは空知地方と後志地方に集中していました。

最近ではこれ以外の地域でも、サッポロビール(グランポレール北海道北斗ヴィンヤード)やアサヒビール(サントネージュ・ニッカ余市ヴィンヤード)などの大手企業や広告代理店が手がけるNIKI Hillsヴィレッジ、カルディコーヒーファームが運営するキャメルファームワイナリーなど他業種からの参入も増えて続けています。

 

その他、地球温暖化の影響もあり、ブルゴーニュに近い気候条件になりつつある函館には、ブルゴーニュの老舗、ドメーヌ・ド・モンティーユが進出計画を発表しており、今後ますます注目される生産地となりそうです。

また、2018年に北海道は国税庁より、地理的表示「G.I」北海道の指定を受けました。

 

北海道のワインの基礎知識

歴史・起源


北海道で初めてワインが造られたのは、山梨県とさほど変わらない1876年、札幌の開拓使麦酒醸造所の一画に開拓使葡萄酒醸造所が設立され、ヤマブドウを原料にワインが造られたのが始まりです。

翌1877年には同醸造所でアメリカ系品種を使ってワインが造られました。

 

開拓使末期の1882年には札幌一帯のブドウ栽培面積は100㏊を超え、またこの頃開拓使顧問のルイス・ベーマーによって欧州系品種のピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミネールなど17品種が日本に持ち込まれていたことが記録に残っています。

しかしその後北海道のワイン造りは半世紀にわたって中断します。

 

そして1960年代になり、ようやく十勝地方の池田町でヤマブドウを使ったワイン造りが始まります。

さらに1970年代には道立中央農業試験場や北海道ワインによって40種類以上の欧州系品種が次々と輸入され始め、こうして明治時代以来70年の時を経て欧州系品種によるワイン造りが再開されました。

 

2000年以降は日本ワインブームの追い風を受け、道内の各地でワイナリー新設の動きが活発化しています。

新規参入を目指す人たちに対する行政の北海道ワインアカデミーや、民間ワイナリーによる委託醸造や研修制度などの支援もあり、今後ますます道内のワイン産業は活発化していくことでしょう。

 

ブドウ品種

北海道は欧州系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ種)のワインが多いのが特徴で、特に冷涼な気候を反映してドイツ系の白用品種が多く、全体の約44%を占めています。

対する赤用品種は約35%。最も生産量の多いのは生食用品種である白ブドウのナイアガラ、次いで赤用品種のキャンベル・アーリーです。

またドイツ系品種であるケルナーやミュラー・トゥルガゥ、バッカスは日本における全醸造量の大半を北海道が占めています。

 

赤用品種としてはツヴァイゲルド、ロンド、山幸、ピノ・ノワールなどが挙げられます。

北海道特有の品種としては山幸と清舞があり、このうち山幸は2020年にO.I.Vとして登録されています。

現在まだ少ないものの、急増中なのがピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランで、今後もこの傾向は続く模様です。

 

ワイン産地

北海道の面積は8万3457k㎡と東京都の約40倍、オーストリア一国の広さに匹敵します。

オホーツク海、太平洋、日本海の3つの海に囲まれ、中央部には西側の手塩山地から夕張山地の列と東側の北見山地から日高山脈の2つの山並みが走っています。

このうちワイン用ブドウが栽培される空知地方の大半と後志地方は、天塩山地から夕張山地の西側の西部に含まれています。

 

ブドウ栽培地最北端の名寄市から南端の栽培地北斗市の距離は296kmもあり、気温、降水量、日照時間の地域差は大きいですが、総じて山地の西側は東側より冬期の冷え込みが穏やかになる傾向があります。

4~10月の平均気温は12.8℃~14.6℃で日本のワイン用ブドウ栽培地の中では最も低く、フランス、シャンパーニュ地方のランスやドイツのラインガウと同程度です。

 

後志地方


札幌から見て西に位置する後志地方は、余市町を中心に現在栽培面積、収穫量とともに道内1位の一大生産地です。

余市湾に面した余市町は海洋性気候で、この湾を望む丘陵地帯が道内随一のワイン生産地となっており、アメリカ系品種のナイアガラやキャンベル・アーリー、ドイツ系品種のケルナー など多彩なブドウを使ったワインが生産されています。

2000年時点ではワイナリーが1軒のみでしたが、2010年に余市町に設立されたドメーヌ・タカヒコがピノ・ノワールから高品質なワインを生産して話題となり、2011年には北海道初のワイン特区にも認定されました。

それ以降隣接する仁木町を含めワイナリーの新設が活発化しています。

 

空知地方


札幌から見て北東に広がる空知地方は、日本最大のぶどう園がある浦臼町やぶどう園やワイナリーの新設が活発な岩見沢市、三笠市などを中心としたエリアです。

気候は内陸性気候。ワイン用ブドウの生産量は後志地方についで道内2位で、なだらかな丘陵の斜面に葡萄畑が広がっています。

栽培品種については、ケルナーは減少傾向が見られますが、ピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランなどの栽培は増加中です。

 

 

著名なワイナリー

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所

町の財政破綻から回復すべく1963年、日本初の自治体ワイナリーとしてスタートし、全国「一村一品運動」の先駆けとなったワイナリーです。

当初ヤマブドウから始まったワイン造りですが、その後「ワイン造りはブドウ造りから」の考えのもと独自のブドウ品種を開発し、現在では北国特有の酸味が豊かで辛口の、長期熟成タイプのワインを中心に製造しています。

中世ヨーロッパの古城に似たワイナリーは「ワイン城」と呼ばれ、十勝地方で人気の観光地となっています。

 

10Rワイナリー

世界的に有名な醸造家であり、栃木県のココ・ファーム・ワイナリーの取締役ブルース・ガットラブ氏が2011年に空知地方の岩見沢市に移住し設立したワイナリー。

醸造経験のないブドウ生産者が、収穫したブドウをワイナリーに持ち込むスタイルの、日本ではまだ珍しいカスタムクラッシュ(受託醸造)ワイナリーです。

ブドウ生産者は自ら仕込みに参加する経験を通してワイン造りを学ぶことができ、多くのスタート・アップ生産者を輩出しています。

 

Domaine Takahiko


2010年、長野県の小布施ワイナリーの二男の曽我貴彦氏によって後志地方余市町に設立されたワイナリー。

「醸造家でなくヴィニュロン(農夫)でいたい」という曽我氏の思いのもと自社農園ナナツモリにはピノ・ノワール1種類のみが植えられ、化学肥料や農薬を一切使用しない有機農法で丁寧に育てられています。

 

醸造は野生酵母、完全全房発酵、自然にまかせた発酵を目指しており、亜硫酸も不使用、出汁のような旨味と繊細さを感じるワインは、品質の高さと希少性から幻のワインと称されています。

2020年には「ナナツモリ ピノ・ノワール2017」がデンマーク・コペンハーゲンにある世界一と評されるレストランnomaのワインリストに日本ワインとして初めてオンリストされました。

またワイナリーでは新規参入希望者に向けた2年間の研修も行っており、何人もの卒業生がワイナリーを設立しています。


 

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