【最終更新日】2022年10月11日
甲州は日本の在来の白ブドウ品種で、国内で栽培されているワイン用ブドウ品種としては最大の栽培面積となっています。
量においても日本では甲州からつくられるワインが最も多く、まさに日本を代表するブドウ品種です。
甲州は日本在来のブドウ品種のうち、初めて国際的に認められた品種となっています。
2010年には国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V.)に登録され、品種名をワインラベルに記載してEUへ輸出することが可能になりました。
果皮は厚く、グリ系とよばれるやや薄く紫がかったピンク色の見た目をしており、大粒で晩熟型、病気にもなりにくい品種です。
ヨーロッパ系の品種と比べると糖度が上がりにくいため、甲州からつくられるワインは、穏やかでスッキリとした辛口タイプの白ワインが主流となります。
日本固有のブドウ品種としては、白ブドウの甲州、黒ブドウのマスカット・ベーリーAがあります。
マスカット・ベーリーAは明治に入りワイン用ブドウとして開発されたのに対して甲州は江戸時代から食用として栽培されてきたものをワインに使用した経緯があり、対照的になっています。
【マスカット・ベーリーAについてはこちらをご覧ください】
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目次
甲州種の基礎知識
歴史・起源
甲州は、現在の山梨県甲州市勝沼地域で生食用として栽培が始まったとされ、江戸時代には年貢として献上されたり、甲州街道を通じて江戸の市場で販売されたりするようになりました。
その後、明治時代には日本の近代化が進むなかでワイン醸造が産業化され、山梨県をはじめとして島根県や山形県などにも栽培が広がっていきました。
日本では古くから親しまれていた甲州ですが、実は甲州の来歴や発見された詳細な時期については確かな記録が残っていません。
そのため、いくつかの諸説はあるものの甲州のルーツはこれまでわかっていませんでした。
しかし、2013年に酒類総合研究所が甲州のDNAを解析した結果、甲州は欧州・中東系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)と中国の野生種(ヴィティス・ダヴィーディ)が交雑しながら、何百年、何千年もかけて日本に渡ってきた品種である可能性が明らかになりました。
ワインの特徴・スタイル
現在の甲州からつくられるワインは、淡い外観にグレープフルーツや柑橘類、梨の香り、ときには日本酒のような吟醸香を思わせる香りがあり、果実味や酸味も柔らかくスッキリと軽やかな辛口タイプが典型的なスタイルです。
最近では、甲州の新たな可能性を広げるため、各生産者や大手ワインメーカーの工夫や努力によってスタイルも多様になってきています。
ここでは、甲州ワインにみられるいくつかのスタイルをご紹介します。
①シュール・リー製法
「シュール・リー」はフランス語で「澱の上」という意味で、フランスのロワール地方で古くから行われている製法です。
通常、白ワインは発酵が終わるとすぐに澱引きを行いますが、シュール・リー製法では数ヶ月間、澱とともに同じタンク内でワインを熟成させます。
発酵を終えた酵母とワインを長く接触させることで、酵母由来の風味や旨みをワインに与えることができます。
甲州にはこのシュール・リー製法が広く用いられており、フレッシュで爽やかな香りに加えて、ほのかにナッツの風味も増したワインとなります。
②樽熟成
アメリカンオークやフレンチオークなどの樽を使ってワインを熟成させる方法です。
樽の種類や熟成期間など、こまかくはワインメーカーや銘柄によって違いがあります。
比較的シンプルな香りや味わいとなる傾向の甲州ワインに対して、このタイプは樽由来のロースト香やバニラの香り、熟成の風味を持たせることで、より複雑でまろやかなワインに仕上げることが多いです。
③早摘み
甲州は従来、ノン・アロマティック系の品種、つまり香りが少ない品種とされていました。
ブドウそのものの芳香性が弱く、発酵後も香りが強くならない特徴であったためです。
しかしのちに、ソーヴィニヨン・ブランなどの香り成分と同様の物質(チオール系物質)が甲州にも含まれていることがわかりました。
それ以降、このチオール系物質がブドウの中で最大量になる時期に注目し、早めに収穫することで一般の甲州よりも柑橘系の香りを際立たせたタイプもつくられるようになりました。
④オレンジワイン
オレンジワインといっても果物のオレンジのことではありません。
赤ワインの醸造と同じようなプロセスで、白ワインをつくる際に白ブドウの果汁を果皮や種と一緒に発酵させる製法です。
白ブドウの果皮の色素が抽出されることで、オレンジがかった色合いのワインになります。
この製法を用いて、甲州のオレンジワインもつくられています。
典型的な甲州の白ワインとは異なり、複雑さのある香りと心地よい渋み、厚みを持ったワインとなります。
⑤スパークリングワイン
一般的には、発酵途中あるいは発酵後のワインをタンクや瓶内で二次的に発酵させることで、ワインにガスを含ませる製法です。
近年では甲州からもスパークリングワインが多くつくられるようになりました。
通常のワインづくりよりも工程が増えるため、てまも時間もかかるのですが、日本国外のワインコンクールで甲州のスパークリングワインが受賞するなど、着実に世界からの評価も高まりつつあります。
フレッシュで柑橘系の爽やかな味わいにシュワシュワとした泡が加わることで、料理との組み合わせの幅が広がります。
上記で紹介した5つのスタイルのほか、甘口タイプの甲州ワインもつくられています。
これまで飲んだことがないスタイルのものがあれば、ぜひトライしてみてください。
新しい発見があるかもしれません。
主な生産地とその他の産地
甲州の最大の生産地は山梨県で、日本の甲州ブドウの95%以上を栽培しています。
山梨県は本州の中央部に位置している内陸県で、山梨県内のワイン用ブドウは大半が甲府盆地で栽培されています。
甲府盆地は、日中の気温差が大きく降水量も比較的少なめで、日照量も確保しやすい環境となっています。
日本のワインづくり発祥の地といわれるだけあって、歴史の長いワイナリーや大手ワインメーカー、栽培から醸造まで一貫したワインづくりを行うドメーヌ型のワイナリーも多数存在しています。
国内では島根県も山梨県に次いで甲州の生産数が多く、2019年には日本ワインコンクールで島根県の甲州ワインが部門最高賞を受賞しています。
このほか海外では、ドイツのラインガウやアメリカのカリフォルニア州、ナパ・ヴァレーでも甲州の栽培が行われており、少しずつ注目を集めています。
今後はさらに世界中に広がっていくこともあるかもしれません。
合わせる料理、ペアリング
ここまでご紹介したとおり、甲州ワインは穏やかな和柑橘のような香りに、果実味や酸味も柔らかくスッキリとした辛口タイプに仕上がることが多いです。
そのため赤身の肉や濃厚なソースを使った料理というよりは、素材の味を活かしたシンプルな料理や和食がよく合うとされています。
レモンやかぼすを絞ったお刺身やカルパッチョ、野菜の天ぷらなど、甲州の香りやさっぱりとした風味とバランスが取りやすいでしょう。
オレンジタイプの甲州であれば、山菜を使った煮物や豚の生姜焼きなど、もう少し味の濃さや苦味のある料理とも合わせることができ、オレンジワインの守備範囲の広さも感じられるかもしれません。
日本を代表する品種である甲州と、素材を活かした旨味のある和食を組み合わせることで、きっと日本の風情を感じられる食事になることと思います。
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