クロドヴージョ ワインとは?基礎知識と味わいの特徴、合わせる料理

【最終更新日】2022年10月15日

クロ・ド・ヴージョ(仏:Clos de Vougeot)はフランス・ブルゴーニュ地方コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区のヴージョ村にある特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)の名称です。

特級ワインとしては赤のみが認められていて、ピノ・ノワール(仏:Pinot Noir)という黒ブドウ品種から造られます。

 

フランス二大銘醸地の一つとして名高いブルゴーニュ地方では、ワインを畑ごとに格付けしています。

その中で最も上級なもの、特に品質の高いブドウを生み出す畑は「特級畑」と格付けされます。

クロ・ド・ヴージョはそのうちの一つです。

 

51ha弱に及ぶ広大な面積はコートドニュイでは全特級畑中最大で、ヴージョ村における栽培面積の約80%を占めています。

その広さゆえに一つの畑とはいえ100以上の区画に分かれ、所有者も80人以上です。

 

クロドヴージョは生産者、銘柄によって評価が大きく変わるワインとしても知られています。

土壌などの栽培環境、所有者、造り手の醸造方法や技術など様々な違いから、ワインの個性・傾向には一貫性がなく、また品質もそれぞれです。

そのため全体像を捉えにくいアペラシオンといえるでしょう。

 

ただし、優れた区画、優れた造り手からは、肉付きの良い果実味と華やかなエレガンスを兼ね備えた「これぞグラン・クリュ」というべき傑出したワインが生み出されます。

古く11世紀から修道僧たちによってワイン造りが行われており、歴史的経緯にも見るところがあるアペラシオンでもあります。

 

【クロドヴージョの区画ごとの所有者はこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/clos-de-vougeot-map/”]

 

クロドヴージョの基礎知識

歴史

キリスト教の一派であるシトー派修道会が1098年にヴージョの東方にシトー修道院を開山しました。

そこからシトー修道院は次々と畑を獲得していきますが、その中に今日のクロ・ド・ヴージョの広大な畑も含まれています。

クロドヴージョの畑は早くのうちに品質を認められ、1115年には現在の区画で誕生したとされています。

 

時代は流れ1789年、貴族・聖職者へ向けられた不満・鬱憤が爆発し、フランス革命が起きます。

この改革により修道院からの農地没収が行われます。

国有財産となった農地は1793年に競売に掛けられました。

 

幾人かの資産家から資産家へと所有権が移った後、1818年にガブリエル・ウーヴラール(↑銀行家。ナポレオン相手に商売し巨万の富を得た人物)がクロ・ド・ヴージョの畑を手にすることになりました。

ちなみに当時ウーヴラールはロマネ・コンティをも買収しました。

そのため一時期はクロ・ド・ヴージョの醸造所で「ロマネ・コンティ」を造っていたこともあります。

 

再び時は移ろい1800年代後半、悪名高き病害虫フィロキセラがヨーロッパのほぼ全土を侵食します

畑は荒廃し、フランス国家や農家にとっての資産的魅力が薄れ、結果としてフランス国外資本に売りに出される。そんな流れができつつありました。

 

そんな折「国の魂ともいうべき伝統あるワイン畑を国外に出してなるものか!」と農民達が結束して買い取り運動を起こしました。

結果として畑を国内に留めることに成功します。

 

ですが当時の多くの農民は広大な畑を買い取る十分な財力を持っていませんでした。

この買収劇は多くの農家が結束して資本を出し合い、協力し合ったことで成し得たものでした。

それでもまだ買い取り当初は15農家による分割所有ですんでいました。

 

その後の「売却」「相続」の繰り返しにより、所有者の数が増え続けることになります。

現在「1グラン・クリュ多所有者制」となっている原因は、これらの歴史によるものとされています。

 

産地の特徴:ヴージョ村の検討

AOCヴージョ(仏:Vougeot)


ヴージョ村は、ブルゴーニュ地方コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区に位置ある村の名称です。

シャンボール・ミュジニーとの村境に流れるヴージョ川が名前の由来です。

 

黒ブドウ品種のピノ・ノワールと白ブドウ品種のシャルドネ(仏:Chardonnay)が栽培されており、それぞれから赤ワイン・白ワインが造られます。

北をシャンボール・ミュジニー、南をヴォーヌ・ロマネ村と、それぞれ赤ワインの世界的銘醸地に挟まれる場所に位置します。

 

特級畑「クロ・ド・ヴージョ」の他に4面の1級畑(プルミエ・クリュ)を持ちます。

1級畑:Clos de la Perrière, Le Clos Blanc, Les Crâs, Les Petits Vougeots.

 

栽培面積の約80%がクロ・ド・ヴージョで約51ha弱もあり、これはコート・ド・ニュイの特級畑中最大です。

逆に村名アペラシオンの面積はコート・ドール最小です。

 

標高約235~260mと高低差が小さく傾斜も2~5度とどこも緩やかで、概ね日当たり良好な東向きとなっています。

土壌は斜面上部が理想的で、母岩が石灰岩、小石に粘土が少し混じります。

中部は泥灰土に石灰岩,小石も混じり水捌けにも優れています。

 

ですが下部は沖積土で水捌けが悪く、育つブドウの質は概して凡庸です。

その土壌の違いからかつては上部が「法王の畑」、中部が「王様の畑」、下部は「修道僧の畑」との呼び名で認識されていました。

 

クロ・ド・ヴージョ

 

クロ・ド・ヴージョは前述したヴージョ村が唯一持つ特級畑の名称であり、そこで育ったピノ・ノワールから造られる赤ワインの名称です。

フランス二大銘醸地の一つとして名高いブルゴーニュ地方ではワインを畑ごとに格付けしており、その中で最も上位のもの畑を「特級畑」と呼びます。

クロ・ド・ヴージョは、そんな「特級畑」の一つです。

 

同アペラシオンはヴージョ村の栽培面積中約80%を占めており、その面積は51ha弱に及びます。

これは全特級畑中2番目の広さ(因みに1番はコルトン)で、単一のクロ(石垣で囲まれた畑)として最大です。

その広さゆえに一つの畑とはいえ区画は107に区分され、所有者も80人以上に上ります。

 

石灰岩土壌、斜面は東向きで緩い傾斜という条件こそ同一ですが、表土の厚さや混じる土質、斜面の上部か下部か、水捌けの良し悪しなど、区画によってはっきりと優劣が分かれます。

当然生産者の技量やワイン造りに対する哲学も様々ですので、生み出されるワインにアペラシオン特有の個性を見出すことが困難な畑でもあります。

以上の理由から、同地のワインを選ぶ際には、区画もですが何より生産者で選ぶことをお勧めします。

 

【グランクリュについてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/grand-cru/”]

 

「クロ・ド・ヴージョ」と「クロ・ヴージョ」

クロ・ド・ヴージョのワインをいろいろと眺めてみると、「クロ・ド・ヴージョ(Clos de Vougeot)」と「クロ・ヴージョ(Clos vougeot)」、2つの表記が混在していることに気が付くことでしょう。

この、「ド(de)」の有無の違いは何なのでしょうか。

 

この問いの答えは、昔からクロ・ド・ヴージョのワイン造りを行ってきた歴史を持つ、このアペラシオン的に由緒正しいドメーヌが「ド(de)」のついた「クロ・ド・ヴージョ」を名乗ることが多いです。

 

これについては例外も多々ありますので、一つの小話として押さえておいてください。

 

ワインの特徴

「クロ・ド・ヴージョ」を名乗ることのできるワインはAOCの規定により、ピノ・ノワールから作られる赤ワインのみ、最低アルコール度数は11.5%です。収量は42hl前後で推移しています。

前述の理由から造られるワインはそれぞれ個性も品質も千差万別です。

他の特級畑のような一定の傾向を見出すことはできませんので、特級ワインとは言え中にはがっかりしてしまうワインがあることも事実です。

 

ただし優れた区画(特に斜面上部に多い)、優れた生産者が造り出すワインは、肉付きの良い果実味と魅惑的なスパイシーさが馥郁として飲み手の心を掴みます。

「これぞグラン・クリュ」と唸らせられる傑出したワインが確かに存在します。

 

【ピノノワールについてはこちらをご参考ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/pinot-noir/”]

 

外観・香り・味わい

ここでは最良品質のクロ・ド・ヴージョを想定し、外観・香り・味わいを見ていきましょう。

外観は深いピション・ブラッドのルビー色、液中を通り抜けた光がステムやテーブル・クロスを赤々と彩ります。

きらきらと輝く液面からは十分な酸度が感じられるでしょう。

 

香りは凝縮感があり、様々な要素を感じさせます。

これから訪れる幸福な体験を予告してくれているようです。

 

カシスやブラックベリーを始めとした黒系果実、菫・薔薇・牡丹といった花、黒胡椒やリコリスなどのスパイス。

熟成したものは果実感がプルーンのようなドライフルーツ寄りになり、なめし皮、ジャーキー、ジビエのような獣臭、茸、腐葉土、中には鉛筆の芯など、多様な香りが鼻腔を満たします。

 

味わいは第一印象(アタック)は力強さを感じさせるでしょう。

しかし筋骨隆々というよりは、様々なフレーヴァーが大きな花束のように目の前に広がるイメージです。

 

円やかな甘味、黒系ベリー・黒系チェリーを彷彿とさせる酸味。

タンニン(渋み)はぎっしりと詰まっており、それでいて非常にきめ細かいため「ビロードのよう」という表現がぴったりです。

特に良いヴィンテージのものは30年以上の熟成に優に耐えるポテンシャルを持ちます。

 

主な生産者

シャトー・ド・ラ・トゥール/Chateau de la tour

多くの醸造元の中で、唯一クロの中で醸造しているドメーヌです。

肉厚さと気品を兼ね備えた、長い余韻を持つワインを造ります。

 

ドメーヌ・ベルターニャ/Domaine Bertagna

クロ・ド・ヴージョを本拠地とするドメーヌ。ドメーヌ・ドゥニ・モルテとも親交のある天才醸造家フォレスティエール女史が携わり、品質が著しく向上しました。

 

メオ・カミュゼ/Domaine Meo-Camuzet

ヴォーヌ・ロマネの優良ドメーヌです。多くの畑を所有し、生み出すワインのどれもが高い品質を誇ります。

かつて「ブルゴーニュの神様」こと故アンリ・ジャイエ氏がコンサルタントをしたことでも有名です。

 

ドメーヌ・ジャン・グリヴォ/Domaine Jean Grivot

こちらもヴォーヌ・ロマネの名門です。

クロ・ド・ヴージョ内の最良区画を保有する生産者の一人です。

テロワールを重要視し、ブドウのポテンシャルを最大限に引き出す努力を惜しみません。

 

マリアージュ

クロ・ド・ヴージョの優良なものとマリアージュを引き起こす料理は、やはり品質の高い素材のポテンシャルがシェフ渾身の技巧によって最大限に生かされた、そんな料理でしょう。

ブルゴーニュ地方の郷土料理はもちろん鉄板です。

 

他には、鴨の胸肉をローストしたものや、仔牛や仔羊の肩ロースをグリルしたものはいかがでしょうか。

どちらも香草は控えめにして、マッシュルームなどの茸を添えることでワインと料理がグッと距離を縮め、引き立て合うポイントになります。

 

【マリアージュについてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/mariage/”]

 

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