ココ・ファーム・ワイナリー ワイナリー訪問レポート

【最終更新日】2024年8月1日

栃木県足利市にある、ココ・ファーム・ワイナリーは、知的障がいをもつ人たちの自立支援を目的に作られた「こころみ学園」を母体とする醸造所です。

園の生徒さん達が自家畑でぶどうを栽培し、ワインづくりにも携わるという社会的意義も併せ持つワイナリーですが、その味わいも格別。

2000年の九州沖縄サミットの晩餐会をはじめ数々の政府主催の晩餐会や夕食会で採用された他、

航空会社のファーストクラスでもおなじみのハイレベルなワインを数多く生み出す人気のワイナリーです。

 

【日本ワイナリーを巡っています】

 

 

ココ・ファーム・ワイナリー ワイナリー訪問レポート

ワイナリーツアー

ワイナリー見学は2種類。

1つはほぼ毎日3回開催され、当日ワインショップにて申し込みができる、気軽に参加可能な約45分のワインセミナー。

 

そして、もう一つが今回参加させていただきました、12月~7月までの第二と第四土曜日に開催される予約制の「ワイングロワーズセミナー」です。

 

栽培・醸造にかかわるスタッフが葡萄畑や醸造場を詳しく案内して下さる約2時間のツアーで、見学の最後にはワインのテイスティングも含まれています。

ドライバー向けにノンアルコールのテイスティングもありますが、今回はしっかりワインも楽しみたいので、JR足利駅からバスを利用してワイナリーへ向かいました。

土日祝はバスがかなり減便しているため、往きは開始時間ギリギリ到着予定のバスで向かうしかなく、ご迷惑おかけしないよう事前にメールなどでワイナリーへその旨をお知らせしておく方がよいかもしれません。

復路はちょうどよい時間のバスがないため、タクシーの予約がお勧めです。

 

バス停から坂道を10分ほど登るとワインショップ&カフェが見えてきます。

 

カウンターで参加費3000円を払いツアー開始です。

 

通常はカフェ前に広がる最初に開墾された「最初の葡萄畑」から見学開始だそうですが、この日はあいにくの雨のため、車で「最初の葡萄畑」を見下ろす山頂まで移動しました。

 

ちなみにこの「ワイングロワーズセミナー」は葡萄の栽培や醸造に携わるスタッフの方がご案内下さるのですが、担当者によって少しずつ見学場所、コースも異なるそうですので、毎回違った発見があり、何度でも参加したくなります。

 

ココ・ファーム・ワイナリーの自社畑は、現在足利市に約6ヘクタールと佐野市に2ヘクタールの計5カ所。

その他北海道や山形、長野、山梨、群馬、埼玉、栃木の契約農家から仕入れる100%日本産の葡萄から、野生酵母を使い、自然に寄り添いながらワイン造りを行っています。

また海外にも、アメリカ、カリフォルニア州のソノマに1989年にこころみ学園の園生や職員たちが植樹した5ヘクタールほどの畑を有し、ココ・ファーム監修の元、地元醸造家のマシュー・クラインさんが現地でワイン造りを行っています。

ワイナリーの前に広がるのは、60年以上前の1950年代最初に開かれた畑です。

平均傾斜38度の急斜面3ヘクタールを特殊学級の職員と生徒たちが中心となって機械を入れず、人力のみで2年がかりで開墾。

元々葡萄畑にすることを目的にしていたというよりも、痩せた土地でも育つ植物として葡萄を植えたそうです。

 

ただ良い面もあり、この畑は南西向きで陽あたり良好、急斜面のため水はけも良く、葡萄にとってはなかなか良い条件だったようです。

ちなみにこれらの畑には開墾以来化成肥料や除草剤がまかれたことがないのだとか。

標高180mの山頂から眺めるといかに急斜面かがよくわかり、当時の開墾の大変さがしのばれます。

今でも急斜面のため機械が入れず、手作業で通常の3倍の労力がかかるそうです。

 

急斜面の畑では、山頂からマスカット・ベーリーA、リースリング・リオン、ノートン、アルバリーニョ、プティ・マンサンが栽培されています。

山頂から見える田島側右岸とよばれる平地の畑ではアルバリーニョとプティ・マンサンの他、最近ではバスク地方のチャコリの原料として使用されるオンダラビスリの栽培も開始したそうです。

 

仕立てはジェノヴァ・ダブルカーテンが採用されています。

地面からの高さがある為、湿気で葡萄が痛みにくくベト病を防げ、日本のように高温多湿の土地に向いています。

そして下げることによって作業がしやすく、作業面でも体をかがめて腰に負担がかからない高さで、ハンディキャップを持つ園生さんにも優しい仕立てとなっています。

また平地にある畑の一部では垣根仕立ても採用されています。

 

土壌は表土から20cm~100㎝は礫混じりの壌土で、その下にはジュラ紀に海溝の底に溜まった岩石が地殻変動により押し上げられて形成された砕屑岩類、チャート、玄武岩 、メランジなどで構成された頁岩からできています。

年間の平均気温は15℃ですが、夏は約40℃まで上がり、6月中旬から7月中旬、さらには9月中旬から10月中旬雨が多い気候だそうです。

 

 

また車に乗り、今度は「スパークリング庫」へ。

こちらは通常見学コースには入っていないのですが、今回は雨で畑の見学があまりできなかった為、特別に見学させていただきました。

 

ココ・ファーム・ワイナリーのワインはほとんど葡萄の果皮などにつく野生酵母で醸されますが、

このスパークリングワインのみ培養酵母が使われているそうです。

 

シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵、3年間は澱引きをせず熟成させます。

 

建物に入り、奥の扉を開けると部屋一面にピュピトルが並びます。

こころみ学園の園生さん達により、手作業で一日45度ずつルミアージュ(動瓶)が21日間行われます。

瓶の口に澱が落ちきると、その後でゴルジュマン(澱引き)、そして打栓してミュズレーを施し、このスパークリング庫内で商品が完成します。

 

また車に乗り、次に向かったのは「醸造所」です。

 

入ってすぐ大小様々なプレス機が並んでいます。

小さめのプレス機は主に白ワイン用ブドウの圧搾に使用されています。

また、こころみ学園の園生さん達の作業の為に、除梗作業は手で行われているそうです。

 

奥に進むと大型のステンレス製のタンクが並んでいるのが目に入ってきます。

こちらでは皮に付いている自然酵母を使ってスティルワインが造られています。

 

発酵途中のケルナーを少しタンクから抜き、テイスティングさせていただきました。

まだワインというよりブドウジュースといった感じでしたが、皮に貴腐菌が少し付着していた為、

少し貴腐ワインのような風味を感じます。

試飲させていただいたケルナーはG20外相会合の食事会や、JAL国際線ファーストクラス搭載ワインにも選ばれた、「月を待つ」というワインとしてリリース予定だそうです。

江戸時代の儒学者、中根東里の言葉「出る月を待つべし、散る花を追うことなかれ」から名付けられ、ジョージ・ハリソンの「Here comes the moon」という曲名が添えられた、華やかで静かな甘さと瑞々しい酸のあるワインです。

 

奥に進むと樽が並ぶエリア、そしてその向こうに熟成庫があります。

手前に置いてある大型のアンフォラのような壺が目をひきます。

こちらは栃木県にあるワイナリーらしく、益子焼で造られたジョージアのクヴェヴリのような醸造・熟成・保存用の壺ですが、クヴェヴリと違って土に埋めて使用するわけでなないとのこと。

 

次に古樽の並ぶ熟成庫を兼ねたトンネルへ向かいました。

酸や香りが弱まってしまうため熟成は半年から、ポテンシャルのあるものは1年ほど熟成されるのだそうです。

こちらでも樽から熟成中のワインを2種類テイスティングさせていただきました。

1つ目の北海道余市産ツヴァイゲルド主体の樽は「風のルージュ」になる予定。

リリース前の物をこうしてテイスティングできるのもワイナリーツアーの楽しみの1つです。

もう1つはマスカット・べーリーAの樽から。

遅積みのブドウが使われており、マスカット・ベーリーA に特徴的な苺キャンディのような香りは控えめですとのこと。

「第一楽章」としてリリースされるか、「第二楽章」としてリリースされるかは今後の熟成次第だそうです。

 

ココ・ファーム・ワイナリーのワインは「月を待つ」や「風のルージュ」などの素敵な名前が多いのですが、これらは主に専務さんが付けられているのだとか・・。

車中そんなお話を伺いながら、スタート地点のワイナリーショップまで戻ります。

 

テイスティングタイム

約1時間の見学後はお待ちかねのテイスティングタイムです。

この日の試飲は6種類。

チーズなどちょっとしたおつまみ付きです。

①北ののぼ2015

北海道余市町のピノ・ノワールとシャルドネ、ピノ・ムニエをココ・ファームのワイン造りの土台をつくり、現在も取締役を務めるブルース・ガットラヴさんの10Rワイナリー(岩見沢市)で発酵させた後、足利のココ・ファームで瓶内二次発酵から瓶詰めまで行ったスパークリングワイン。

上品なコクのあるワインでビンテージ違いの2012年はG7広島外相会合夕食会の乾杯酒としても採用されました。

②プティ・マンサン2021

プティ・マンサン100%(グロ・マンサン1%)のしっかりした酸が特徴のワイン。

気候変動に適応できる適地適品種として2006年からこころみ学園の急斜面で栽培が開始。

ビンテージ違いの2015年はJR東日本のTRAIN SUITE四季島に採用されています。

 

③こことある ぴのぐり2020

こちらも北海道余市産のピノ・グリを10Rワイナリーで醸造した1本。

グレープフルーツのような香りの爽やかなワインで和食にも洋食にも合いそうです。

こちらのビンテージ違い、2014はJAL国際線のファーストクラスに採用。

 

④ケルナー・シエスタ2021

北海道の契約農家で育てられた貴腐菌の付いたケルナーを野生酵母でゆっくりと発酵させたワイン。

蜂蜜やアプリコットのような香りと上品な甘さが特徴で、チーズやクリーム系の食事に合いそうです。

 

⑤風のルージュ2020

北海道産ツヴァイゲルド主体の濃いガーネット色の赤ワイン。

ベリー系の香りと黒胡椒のようなスパイシーさもあり、ジビエやエスニック料理にも合いそうです。

ビンテージ違いの2006年は洞爺湖サミット、2014年と2020年はJAL国際線のファーストクラスのラウンジで採用されたシリーズです。

 

⑥協奏曲R2021

こころみ学園自社畑のノートン、プティ・ヴェルド、タナなど赤ワイン用品種で作られたワイン。

ちなみに協奏曲Rの「R」は英語のRed、仏語のRouge、伊語のRossoなど「赤」を意味するRだそうです。

アルコール度数10%ほどで酸も滑らか、酢豚など中華料理に良さそうです。

この他にも気になったワインを試飲させていただき、自分の好みにあったワインをたくさん買うことができました。

 

 

 

国際会議の食事会や航空会社、観光列車に採用された憧れのワインの並ぶセラーや、あわここペティアンなどワイナリーに行かないとなかなか買えない限定商品もあり、ワイナリーショップも大変充実しています。

本当に時間がいくらあっても足りないくらい最後まで楽しいワイナリー訪問でした。

実際にテイスティングさせていただくことで意外な好みも発見できるので、

少し交通の不便な場所にあるワイナリーですが、是非公共交通機関やタクシーを利用して行くのがオススメです。

 

 

ワイナリーツアーインフォメーション

ワイナリー見学ツアーは2種類。

 

ワイナリー見学

葡萄畑やワインづくりの現場を見学できる毎日開催の気軽に楽しめるワインセミナーです。こちらは当日ワインショップにて申し込み可能。

開催日時:

11月収穫祭前日から4日間、年末年始(12/31~1/2)、1月第3月~金曜日の5日間を除く毎日

10:30~、13:00~、15:00~の1日3回

所要時間:約45分

料金:¥500/1名

10名様以上は要予約

 

ワイングロワーズセミナー

今回参加させていただいた、栽培・醸造にかかわるスタッフが葡萄畑や醸造場を詳しく案内してくださる見学ツアーです。

ワインのテイスティングもお楽しみいただけます。

 

開催日時:

1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、12月の第2土曜日と第4土曜日

10:30~12:30

所要時間:2時間

料金:¥3,000 /1名

予約:https://cocowine.com/contact_us/  からメールにて問い合わせ

または電話予約(0284-42-1194)

お車で行かれる場合、予約時に希望すればノンアルコールでのテイスティングも可能です。

ご予約は、前々日17:00まで。

 

テイスティングのみは当日ワインショップで申し込めます。

 

ショップのお隣にはカフェが併設し、蔵出し中のワイン全酒とお料理が楽しめます。

土日限定ですが、ワイン8種とのペアリングを楽しめるデギュシュタシオンコース(要予約)もあります。

訪問した日も行列ができていましたが、満席のことが多い為平日でも予約がベストです。


 

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