ミュジニー グラン・クリュとは?基礎知識と味わいの特徴,合わせる料理

【最終更新日】2022年10月23日

ミュジニー(仏:Musigny)は、フランス・ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方コート・ドール(仏:Cote d’Or)の北側、コート・ド・ニュイ(仏:Cote de Nuits)地区のシャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)村にある特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)の名称であり、そこで育ったピノ・ノワール(仏:Pinot Noir)という黒ブドウ品種から造られる赤ワインの名称です。

遅くとも3世紀にはブドウが植えられ、その後中世に修道僧たちによって本格的に開墾され、以降、偉大な銘醸地として名声を得てきました。

 

フランス二大銘醸地の一つとして名高いブルゴーニュ地方では、ワインを畑ごとに格付けしています。

その中で最も上級なもの、特に品質の高いブドウを生み出す畑は「特級畑」と格付けされ、ワインにもその名が冠されます。

ミュジニーはそのうちの一つです。

 

全てのブルゴーニュ・ワインの中で最も偉大なワインの一つに数えられるミュジニーは、気品、洗練、精妙さを纏い、その存在が優美さそのものであるとされています。

同地区内で同じくブルゴーニュ最高峰の呼び声高い偉大な特級ワイン、力強く雄弁、華やかなエレガンスで飲み手を圧倒する「シャンベルタン(仏:Chambertin)」とは対極の個性であり、その品質、存在感、人気と双璧を成しています。

 

その品質の高さと希少性から、とても高価なことでも知られています。安いものでも数10万円、高額なものだと100万円を優に超えます。

現在の世界のワインで最も高価なワインはルロワのミュジニーで一本の価格が620万円になっています(2022年10月)

また、コート・ド・ニュイの特級畑中で唯一赤・白両方のワインを造ることができることからも、やはり特別な存在と言えるでしょう。

 

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ミュジニ― グランクリュの基礎知識

AOCシャンボール・ミュジニー


特級畑のミュジニーはシャンボールミュジニー村にあります。

特級畑のミュジニ―とシャンボールミュジニー村は混同しやすいので、ここで軽くシャンボールミュジニー村について記載します。

 

シャンボール・ミュジニーは、ブルゴーニュ地方コート・ドールの北側,コート・ド・ニュイ地区に位置する村の名称であり、アペラシオンの名称です。

北をモレ・サン・ドニ(仏:Morey-Saint-Denis)村、南をヴ―ジョ(仏:Vougeot)村にそれぞれ接しています。

 

遅くとも3世紀にはブドウが植えられ、その後もブドウ栽培の歴史は続きました。

中世に修道僧たちによって本格的な開墾が始まり、以降、偉大な銘醸地として名声を得てきました。

 

黒ブドウ品種のピノ・ノワールと、白ブドウ品種のシャルドネ(仏:Chardonnay)が栽培されています。

それぞれから赤ワイン・白ワインが造られますが、AOCの規定により、村名格と1級格を名乗れるのは赤ワインのみとなっています。

 

特級であるミュジニーは赤・白両方を造ることができます(後述)。

一方、より広範囲の村名格・1級格では赤しか造ることができない、というのはこの村の特徴の一つであると言えるでしょう。

 

名称 区分 ワイン ぶどう品種
シャンボールミュジニー 村の名前 赤のみ生産可能 ピノノワール
ミュジニ― 特級畑 赤も白も生産可能(ほとんど赤) ピノノワール/シャルドネ

 

特級畑は2面、北に「ボンヌ・マール(仏:bonnes-Mares)」、南に「ミュジニー」を擁し、1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)は「レ・ザムルーズ(仏:les Amoureuses)」を筆頭に24面あります。

標高約250~350m。畑の北と南でワインの性格が明確に違うことが知られています。

 

北側は土壌がジュヴレ・シャンベルタンと繋がっており、ワインはモレ・サン・ドニ寄りの力強い傾向のあるものも生まれます。

南側は、「シャンボール・ミュジニー」といったときに想起されるワインを造る土壌、と云われています。

 

また、ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)村やモンラッシェ(仏:Montrachet)・ファミリーと同じく、畑が村の知名度を大きく上回り、元々の村の名前に畑名を加えた村の一つでもあります。

 

【ジュヴレシャンベルタンについてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/gevrey-chambertin/”]

 

ミュジニー グランクリュ

ミュジニーは、前述したシャンボール・ミュジニー村が持つ特級畑の名称であり、そこで育ったブドウから造られるワインの名称です。

ブルゴーニュ地方では、ワインを畑ごとに格付けしており、その中で最も上位のもの畑を「特級畑」と呼びます。

ミュジニーは、そんな「特級畑」の一つです。

 

同アペラシオンは、シャンボール・ミュジニー村の南端に位置し、エシェゾーやクロ・ド・ヴージョと接しています。

特にクロ・ド・ヴージョとは、手が届くくらいの段差を隔てて上下関係になっており、隣り合う畑にも関わらずその酒質は全くもって異なります。

 

面積は約10.7haで、そこに17人の所有者がいます。

ワインはそのほとんどがピノ・ノワールから造られる赤ですが、そのうち約0.5haだけシャルドネが栽培されており、わずか6樽(ボトルにして約1800本)ほどの稀少なミュジニー・ブラン(ミュジニーの白)が造られています。

このミュジニー・ブランを造っているのは、ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエのみとなっています。

コート・ド・ニュイの特級格において唯一、赤・白両方のワインを造ることができることも、このアペラシオンの特徴であると言えます。

 

また、ミュジニーは3つのリュー・ディ(仏:Lieu-dit)があります。

①ミュジニー(Musigny)

②レ・プティ・ミュジニー(仏:Les Petits Musigny)

③ラ・コンブ・ドルモー(La Combe d’Orveau)

からなり、ミュジニー・ブランはラ・コンブ・ドルモーで造られていることも押さえておきたいところです。

 

標高約260〜300m、土壌は上部が白色魚卵状石灰岩、下部がコンブランシアン石灰岩を母岩とし、その上に粘土室と泥室の約30cmと非常に薄い表土が広がります。

斜面は東向きで、傾斜は4〜8度、特に下部はなかなかの勾配です。小高い丘陵となっており、日当たり・水捌け共に大変良好です。

 

ワインの特徴


「ミュジニー」といえば,ピノ・ノワールから造られる赤ワイン「ミュジニー」とシャルドネから造られる白ワイン「ミュジニー・ブラン」を指します。

ミュジニーの主要生産者はいずれも音に聞こえた名醸造家であり、彼らだけで畑全体の9割を所有しています。

この「銘醸地×銘醸造家」の組み合わせにより、多くの素晴らしいミュジニーが存在します。

 

【ピノノワールについてはこちらをご覧ください】

[blogcard url=”https://winebooks-media.com/pinot-noir/”]

 

全てのブルゴーニュ・ワインの中でも最も偉大なワインの一つに数えられ、気品、洗練、精妙さを纏い、その存在が優美さそのものです。

また、このワインが語られる際、ときに詩的、ときに幻想的で、「これは現実に存在する飲み物(ワイン)の評価なのか!?」と感じてしまうような壮大な叙述も時折見かけます。

それもこのワインの崇高さ故でしょう。このワインは本当に傑出した、他に類を見ないものです。

 

ところがこれを一般的なテイスティング・コメントのみで表現すると、せいぜい優良な村名〜1級格のブルゴーニュのワインに対しての叙述と変わらないものになってしまうのです。

それではこのワインの偉大さが伝わらないため、結果として、成分分析のような評価ではなく、詩的で幻想的な表現をすることで、ミュジニーに対する感動を表したのでしょう。

 

有名な表現として、例えばフランスの著名な歴史家ガストン・ルプネル(Gaston Roupnel)の

「幼子イエスがビロードのズボンを履いたまま喉を滑り落ちていく」

「シルクとレース、最高のデリカシー(精妙さ)」

などがあります。

 

傾向としては、ブルゴーニュで最も繊細であるとされており、同地区内で同じくブルゴーニュ最高峰の呼び声高い特級ワイン「シャンベルタン(仏:Chambertin)」の、力強く雄弁、華やかなエレガンスで飲み手を圧倒する性質とは対極の関係にあります。

その偉大さ、品質、存在感、人気とあらゆる面で双璧を成しています。

 

外観・香り・味わい

ここでは逆に、具体的・実際的なテイスティング・コメントを述べるに留め、余白を残したいと思います。

実際の感動は、お飲みいただいた際のお楽しみとなればと思います。

 

外観は、クリスタルの透明感と輝きを感じさせる、色鮮やかなルビー色です。それでいて涙は充分な凝縮感を感じさせます。

 

香りは、十分に熟しているイチゴ、フランボワーズ、ザクロ、チェリーなどの赤々とした果実や、菫や野生の赤薔薇などの花が、艶やかに広がります。

十分に熟成したものだと、プルーンなどのドライフルーツやトリュフなどの複雑なブーケが馥郁とします。

 

味わいは,第一印象はやや強い程度です。甘味・酸味・渋み・アルコール度数は、精妙なバランス感覚でもって飲み手を官能の世界へ誘い出します。

香りで感じた、赤々とした果実に火を入れたニュアンスの上品な甘みと酸味、しっかりとしてそれでいて非常にきめ細かいタンニンが、そのまま喉の奥へと流れていきます。

前述の「幼子イエス……」「シルクとレース……」等,考え得る中で極上の表現が、自らの頭にも浮かぶようです。何より最後には、長い長い余韻がいつまでも続きます。

 

 

主な生産者

ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ/DomaineComte Georges de Vogue

1528年創立の名門。ミュジニーとボンヌ・マールの面積最大所有者であり、シャンボール・ミュジニーの面積最大所有者です。

造るワインは豪華絢爛、華やかな赤系の果実と花のアロマ、ミネラリーで端正な味わいは、ブルゴーニュ・ワインの一つの境地といえるでしょう。

 

ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエ/Domaine Georges Roumier

1924年設立、ネゴシアン業も営む名門にして実力派のドメーヌです。

ワイン造りは、強い抽出を行わず、エレガンス、フィネスを追求します。

果実味豊かさと繊細さ、品の良さと芯の強さの共存を感じさせます。

 

ドメーヌ・ロベール・グロフィエ/Domaine Robert Groffier

1950年設立。本拠地はモレ・サン・ドニ村ですが、シャンボールにも多くの畑を所持しており、1級畑筆頭「レ・ザムルース」の最大所有者として有名です。

造られるワインは、果実や花が鮮烈に香り、口当たりは力強さを感じさせつつもタンニンは非常にシルキーです。

 

ドメーヌ・ジャック・フレデリック・ミュニエ/DomaineJacque-Frederic Mugnier

設立は1864年の家族経営型生産者ですが、ドメーヌとしての活躍は5代目である現当主フレデリック氏からです。

彼はクリストフ・ルーミエやミシェル・ラファルジュに師事した後に、家業のドメーヌを継ぎました。

めきめきと頭角を現した彼は、ドメーヌのワインの質を劇的に高めることに成功しました。ちなみに祖母は日本人なのだそうです。

肉付きの良さを感じさせる豊かな果実味は、しかし決して上品さを失わず、同地の個性を見事に表現しています。

 

マリアージュ

ミュジニーとマリアージュを検討してみました。

結論として、今の僕の中で解答を見つけることはできませんでした。

それ自体が一つの宝石のような、完成された美しさのようなものを讃えるミュジニー……。優美・繊細の極致ともいえるミュジニー……。

このワインと合わせ、互いの個性を潰さないどころか、引き立て合い、更なる高みへと導き合う料理。いったいどのようなものなのでしょう。

 

今の筆者には、経験も知識も足りないようです。

今後も多くのワインの学習や経験の蓄積など、研鑽を重ねることで、いつか辿り着ければいいなと、感じているところです。


 

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