日本ワインの「特定用語の使用基準」とは?

【最終更新日】2024年7月27日

ワインのラベルに表記する特定用語に使用基準を設ける理由は、消費者に対する信頼性と透明性を確保するためです。

消費者に信頼と透明性を確保することができれば、それは同時に生産者保護にもつながります。

 

特定用語に使用基準を設けることにより、消費者はラベルを見ただけでワインの品質や特性、産地などの情報を正確に把握できます。

例えば、「エステートボトルド(Estate Bottled)」と表記されている場合、そのワインは特定のエステート(不動産・ぶどう園)で栽培されたぶどうのみを使用し、同じ場所で醸造されたことを保証します。

 

さらに、使用基準を設けることで、不正確な表示や誇大広告から消費者を保護し、誤解を防ぎます。

これは、ワイン業界全体の信頼性を高め、ブランド価値を維持するためにも重要です。

規制により、ワインの品質管理が厳格に行われ、市場に出回る製品の品質が均一に保たれることが期待されます。

 

最後に、国際的な取引においても共通の基準を設けることで、異なる国の消費者やバイヤーが同じ基準でワインの品質を評価できるようになります。

これにより、国際市場での取引がスムーズに行われ、ワインの信頼性と価値が向上します。

 

今回は、日本ワインの「特定用語の使用基準」について、練習問題を通して解説します。

 

 

*この記事は、WBSワインブックススクールの代表前場が、インスタグラムに毎日投稿するソムリエ・ワインエキスパート試験のお役立ち情報を抜粋し、スタッフが記事にしています。

【過去の記事はこちら】

 

日本ワインの「特定用語の使用基準」

暗記型では対応できない「理解型」の問題とは?

【練習問題】

次の日本ワインのラベル表記される特定用語をカタカナで記述してください。

製造したワインの原料として使用した全てのブドウ(ブドウ果汁を含み、国産のものに限定される)が、自園および契約栽培にかかるもので、かつ、その製造にかかる製造場が当該ブドウの栽培地域内であるもの。

 

 

 

なにかの表現をラベルにするときに使う側の意図しか反映されていないのであれば、消費者は混同するだけです。

「俺のワインは俺が日本一だと評価している」からラベルに「日本一評価されるワイン」と書いても消費者には正しく情報が伝わらないからです。

 

WBSではソムリエ・ワインエキスパート試験の学習を「暗記型」ではなく「理解型」にしましょうとするスタンスです。

今回の様な設問はまさに理解型が生かされた良問です。

このような場合に「そもそもエステートとは?」を覚えたほうが早いし、理解の定着もしやすいです。

 

エステートは、もともとは土地や建物の不動産を意味していて、ワイン用語においては栽培から瓶詰までを一貫して自身の不動産内で行う生産形態を指します。

どこかの工程を自身の不動産以外で行うことはできません。

 

↓正解はインスタ投稿の下↓

 

 

【正解】エステート

特定用語の使用基準は2024年度教本94Pに記載されています。

個別の法的拘束力はありませんが、業界全体で監視・自制をすることで消費者とともに生産者の保護をしようという狙いがあります。

 

特定用語のうち、生産形態については教本ではドメーヌ、シャトー、エステート、元詰めなどが記載され、どれも似通ってはいますがそれぞれの文言に起因する意味があります。

ざっくりいえば①シャトー・ドメーヌは栽培・醸造が自園であること

エステートは①に加えて醸造所が自園内であること、

元詰は①に加えて瓶詰も自社の醸造所で行うこと、と記載されています。

 

エステートは醸造所の位置が指定され、不動産に強く起因しています。

 

今回の問題を暗記だけで解決するとなった場合を想像しましょう。

シャトー、ドメーヌ、エステート、元詰とともに、その説明も暗記する。

これではいくら時間があっても足りませんし、

記憶の質は決して高くありません。

 

では、

エステートはもともと不動産の意味だ、だから醸造所が自分の不動産内にあることを意味するんだ。

と理解するのはいかがでしょうか?

こうすればシャトーやドメーヌ、元詰めとの違いも見出しやすいし、理解が深いので簡単に忘れることはなく、他人にも説明がしやすいです。

 

この試験は「暗記が向いているパート」と「理解が向いているパート」があります。

今回の様な設問は、明らかに「理解型」の方が早いです。ご参考ください。

 

特定用語の使用基準のメリット

ここから先は特にエクセレンスの受験生向けになります。必要のない方は飛ばしてください。

ワインのラベルに特定用語の使用基準を設けることは、消費者側と生産者側の両方に多くのメリットをもたらします。

 

消費者側のメリット:

1. 透明性と信頼性の向上:

使用基準を設けることで、消費者はラベルに記載された情報を信頼できるようになります。

例えば、「エステートボトルド(Estate Bottled)」と表記されていれば、そのワインが特定のエステートで栽培されたぶどうのみを使用し、同じ場所で醸造・瓶詰めされたことが保証されます。

2. 情報の一貫性:

使用基準が統一されることで、消費者は異なる生産者のワインを比較しやすくなります。

これにより、購入時の意思決定が容易になり、満足度が向上します。

 

3. 品質の保証:

特定用語の使用には厳しい基準が設けられているため、消費者は一定の品質を期待できます。

これは、高品質なワインを求める消費者にとって大きなメリットです。

 

4. 教育的価値:

明確な基準があることで、消費者はワインに関する知識を深めることができます。

例えば、「オーガニック(Organic)」や「バイオダイナミック(Biodynamic)」といった用語の意味を理解することで、選択肢が広がります。

 

 

生産者側のメリット:

1. ブランド価値の向上:

高い基準をクリアした特定用語を使用することで、生産者は自社のブランド価値を高めることができます。

これは、品質に対する自信と誠実さを消費者に伝える手段となります。

 

2. 市場競争力の強化:

規制を遵守し、高品質なワインを提供することで、他の生産者との差別化が図れます。

特に高級ワイン市場において、特定用語の使用は競争力を高める重要な要素です。

 

3. 消費者との信頼関係の構築:

基準を守ることで、消費者との信頼関係が強化されます。

これは、リピーターの増加や口コミによる新規顧客の獲得に繋がります。

 

4. 国際市場へのアクセス:

国際的な基準に準拠することで、海外市場へのアクセスが容易になります。

これにより、輸出機会が拡大し、売上の増加が期待できます。

 

5.紛争の事前解決

使用基準を設けることで生産社間の紛争を未然に防ぐことが可能となります。

これにより業界の健全化と、紛争による無駄な労力の削減がのぞめます。

 

以上のように、特定用語の使用基準を設けることは、消費者にとっての透明性と信頼性を高めると同時に、生産者にとってもブランド価値の向上や市場競争力の強化に繋がる重要な要素です。


 

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