岩手県のワインの基礎知識|ブドウ品種と代表的な生産地域、生産者の解説

【最終更新日】2023年3月1日

岩手県は北東北に位置しており、気候は日本のブドウ栽培地の中では冷涼です。

ワインの生産量は全国第5位。

内陸部の一部を除き果樹栽培が盛んだったとは言いがたい岩手県ですが、明治以前から山野で自生しているヤマブドウを発酵させ酒として飲むというワイン造りの流れがありました。

 

本格的なワイン造りは1960年代からですが、しばらく大きな動きには至らず、ワイン産業が活性化し始めたのは2011年の東日本大震災以降です。

地元を復興させようという機運ともあいまって、現在ワイナリーは現在11軒にまで増えています。

2017年にはワインを核とした地域の活性化を図る「いわてワインヒルズ推進協議会」も設立され、今後ますます注目される生産地となりそうです。

 

岩手県のワインの基礎知識

歴史・起源


明治以前から岩手県には野山に自生するヤマブドウを収穫し、甕で発酵させて滋養のある飲み物として重用する生活文化がありました。

しかし本格的なワイン造りの歴史は比較的新しく、戦後になって、農業構造改善事業の一環として、花巻市や紫波町の山間部においてブドウ栽培が推奨されたことがきっかけでした。

 

1962年にこうしたブドウの規格外品を加工する工場として、県内初の本格的ワイナリーが大迫町(現花巻市大迫町)に設立されましたが、長い間大手メーカーがつくる甘味果実酒の原料供給地にとどまっていました。

その後、ワイナリーから改革の機運が高まり、そうして選抜された、日本で開発された交配品種、リースリング・リオンによって、これまでとは異なるスタイルのワインが作られるようになりました。

また、1986年には県北部の葛巻町で自生のヤマブドウを使ったワイン造りを、当時の高橋吟太郎町長が導入。

 

2001年には、自社畑のブドウにこだわったワイン造りを目指した五枚橋ワイナリーが盛岡市に新設。

また、2005年には盛岡市近郊の紫波町でも自家畑のブドウを原料とする自園自醸をうたう紫波ワイナリーが誕生しました。

こうした自らブドウを育て、自ら醸造するというスタイルは広く支持され、特に東日本大震災以降の地域復興の動きともあいまって、近年急速にワイナリーの新設が増加しています。

 

ブドウ品種

岩手県で生産量が最も多いのはキャンベル・アーリー、その他ヤマブドウ、リースリング・リオン(甲州三尺×リースリング)、ナイアガラがワインの主要原料をして挙げられます。

キャンベル・アーリーは北海道、宮崎県と共に3大産地の1つです。また岩手県で特徴的なのはヤマブドウとリースリング・リオン。特にリースリング・リオンは生産量日本一で、日本全体の9割以上が県内で生産されています。

この他にワインの原料としてはメルロ、ツヴァイゲルド、ロースラーが挙げられます。

 

主なワイン産地

北海道に次いで2番目の面積を誇る岩手県は、北部、南部、内陸部、沿岸部と、地域によっても出来るワインの特長が異なり、多様なスタイルのワインが造られています。

ワイン造りが行われているのは、県央から県南にかけての北上川流域と県北地域、そして沿岸部南部の3エリアです。

 

北上川流域

花巻市や紫波町を中心とするエリア。盆地気候で県内では雨量が少なく、1950年代からブドウ栽培が盛んです。県内の半数のワイナリーが集中しており、中でも花巻市に集中しています。

花巻市は2016年に「花巻クラフトワイン・シードル特区」に認定されたことで、小規模の新興ワイナリーが増加しており、ワイン産地としての発展が期待されているエリアです。

 

リースリング・リオンの栽培が盛んですが、エーデルワインのツヴァイゲルドを使用したワインは原産国オーストリアのコンクールで最高賞を受賞するなど高品質なワインを産出しています。

また、国内でも非常に珍しい古生代地質があることでも有名で、活き活きとしたクリアな酸味のワインが特徴です。

 

県北エリア

北上川流域と同じく降雨量が比較的少ない、葛巻町を中心とするエリアです。

ヤマブドウによるワイン造りが行われています。

寒さが厳しいこともあり、長らく岩手くずまきワイナリー1軒のみでしたが、2016年に隣接する野田村に涼海の丘ワイナリーが新設されました。

 

沿岸部南部エリア

海洋性気候でやや温暖ですが、降水量は多め。

東日本大震災以前はワイナリーが1軒もありませんでしたが、震災前より営業していた陸前高田市の神田葡萄園が津波の被害を乗り越えて2015年にワイン造りを再スタートさせます

それ以来、震災からの地域の復興などをきっかけとして大船渡市にThree Peaks、釜石市にソーシャルファーム&ワイナリー釜石あまほらヴィンヤードなどワイナリーの新設が続いています。

 

著名なワイナリー

エーデルワイン

霊峰・早池峰山の麓、1962年花巻市大迫に創業した岩手県を代表するワイナリーです。

年間降雨量が少なく、石灰質土壌というブドウ栽培に恵まれたテロワールで、葡萄の個性を最大限に生かした高品質なワイン造りを行っています。

ジャパンワインチャレンジやオーストリアのウィーンで開催される世界最大級の国際ワインコンクール、awcウィーンなど、数々の受賞歴を誇り、国内外で高い評価を受けています。

商品名の由来は、早池峰山に咲く高山植物、ハヤチネウスユキソウとアルプスのエーデルワイスが姉妹花ということに因んでつけられました。

 

岩手くずまきワイナリー

1979年、岩手郡葛巻町にて創業。当時の高橋吟太郎町長が構想した「当地に自生するヤマブドウを使ったワインで町おこし」から始まった第3セクターのワイナリーです。

ヤマブドウの特徴である酸味を活かしたワイン造りを行っています。

ワイナリーでは工場見学や無料で試飲できる直売店、レストランもあり、1日中楽しめる施設です。

 

神田葡萄園

リアス式海岸で有名な、陸前高田市にある神田葡萄園は1905年創業。

東北でいち早く甘味葡萄酒の製造許可を取り、恵比寿葡萄酒という名でワイン造りを開始しましたが、1953年には一度ワイン事業から撤退。

2011年の東日本大震災では大きな被害を受けましたが、2015年には「リアスワイン」の銘柄でワイン造りを再スタートさせています。

地元三陸の海産物とのペアリングを目指して造られており、フラッグシップワインである「アルバリーニョ」は、ミネラルとほんのりと感じられる塩味が魅力です。


 

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