【最終更新日】2022年10月17日
ロワール地方は、フランスの北部に広がる広大なワイン産地です。
ブドウ畑は1000kmにも及ぶロワール川の流域に広がっています。ロワール川の渓谷の両岸には田園風景が広がっており、その中に城館が点在しています。
以前は多くの貴族達がそのような城館に住んでおり、ロワール地方はフランスの中心とも呼ぶことが出来る地方でした。
現在ではそのような田園風景から、ロワール地方は「フランスの庭」と呼ばれており、多くの旅行者が訪れる観光地となっています。
ロワール川はリヨンの南西あたりから始まり、北に流れていき、オルレアン辺りで西へと方向を変え、大西洋へと流れ込んでいきます。
ロワール川の上流辺りは暑い夏と寒い冬を持つ内陸性気候を持ち、下流に向かうにつれて穏やかな海洋性気候になっていきます。
北緯47度前後と北よりに位置しているため、ワイン産地の中では比較的冷涼な産地です。
ところで、ロワールのワインを検討していくと、河に接するいくつかの大都市(ナント、アンジュ、トゥ―ル、オルレアン、ポワトゥなど)が目に入るかと思います。
車両や鉄道ができる前は、河は重要な流通経路で、そのため19世紀以前に大きく発達した都市がロワールに点在するのです。
それらの都市では華やかできらびやかな歴史もあれば、血腥い殺戮の歴史もあります。
ワインは人間の文化、歴史の所産なので、それらに興味を持つことで、より一層ロワールワインがおいしくなることをお約束します。
目次
ロワール川のワイン 全体像
生産地域
ロワール地方は東西に広がる広大な産地であるため、スパークリングワイン、甘口~辛口の白ワイン、ロゼワイン、赤ワインなど様々なタイプのワインが生産されています。
このロワール地方はペイ ナンテ地区、アンジュー ソミュール地区、トゥーレーヌ地区、サントル ニヴェネ地区という4つの地区に分けられており、生産されるワインのタイプが異なります。
甘口~辛口まで様々なタイプのワインが生産されているロワール地方ですが、ボルドー地方やブルゴーニュ地方と比べると全体的に親しみやすく、価格がお手頃なワインが多く生産されています。
ロワール地方では様々なブドウ品種が栽培されています。
生産比率は赤ワインとロゼワインが47%、白ワインが53%であり、偏りなく生産されています。
白ブドウは上流付近ではソーヴィニヨン ブラン、中流付近ではシュナン ブラン(ピノー ド ラ ロワール)、下流付近ではミュスカデ(ムロン ド ブルゴーニュ)が栽培されています。
黒ブドウではガメイやカベルネ フラン(ブルトン)、グロローなどが主に栽培されています。
ペイ・ナンテ地区
ペイ ナンテ地区は、フランスのロワール地方で最も下流にあるワイン産地です。
ナント市を中心にして、アンジューから西の大西洋岸一帯に広がっています。
大西洋に近いこともあり、ペイナンテ地区は穏やかな海洋性気候をもちます。
主要なAOCとしては、ミュスカデを使用した4つのAOCが挙げられます。
その中で最大のAOCはミュスカデ セーヴル エ メーヌです。ミュスカデ セーヴル エ メーヌはロワール川の支流であるセーヴル川とメーヌ川にちなんだ名前を持つAOCであり、日本にも多くのワインが輸入されています。
クリッソン、ゴルジュ、ル パレという3つのコミューン名を付記することが認められ、これからが注目されている産地です。
その他にはグロ プランを使用したグロ プラン デュ ペイナンテや、白ワインだけでなくロゼワインや赤ワインも生産できるフィエフ ヴァンデアンとコトー ダンスニも2011年よりAOCに昇格しています。
特徴
ペイ ナンテ地区では白ワイン、ロゼワイン、赤ワインが生産されていますが、辛口白ワインの産地として広く知られています。
ペイナンテ地区の白ワインは、ミュスカデを使用したものが多く生産されています。
ミュスカデを使用した白ワインの外観は比較的色合いが淡く、ほのかに緑がかった透明感のあるワインアが多いです。柑橘や潮の香りを持ち、果実味やアルコール感は穏やかで軽快な味わいが特徴的です。
ミュスカデを使用したワインは、「シュール リー」という製法で作られることが多くあります。
シュール リーとは澱引きをせずに澱とともにワインを寝かせる製法であり、ミュスカデがもつ個性の乏しさを補う目的で行われています。
ぶどう品種
ペイナンテ地区では主に白ブドウであるミュスカデが栽培されています。
このミュスカデは、ブルゴーニュで栽培されていたムロン ド ブルゴーニュををこの地に移植させ改称したものです。
その他に白ブドウではグロ プランやシュナンブランなども栽培されています。
黒ブドウではガメイやカベルネフラン、ネグレトなどが栽培されており、生産比率は低いながらロゼワインや赤ワインを生産しています。
アンジュ・ソーミュール地区
アンジュー ソミュール地区は、フランスのロワール地方にあるワイン産地です。
ロワール川中流のアンジュー市から上流に位置するソミュール市まで広がっています。
アンジュー地区は海洋性気候で比較的穏やかな気候を持ちますが、ソミュール地区は丘陵地帯であり、海からの風が遮られるために半海洋性気候とされています。
アンジュー ソミュール地区ではスパークリングや極甘口~辛口の白ワイン、半甘口~辛口のロゼワイン、赤ワインなど様々なスタイルのワインが生産されています。
1つの地区でここまでヴァリエーションがあるのは、フランスのワイン産地では珍しい存在ということが出来ます。
この地区のワインが飛躍的に発展を遂げたのは、アンリ2世の影響が強くあります。
1154年にイギリス王になったアンリ2世はアンジュー一帯も治めていたため、アンジュー付近のワインが宮廷で飲まれるようになり、飛躍的に発展をしていきました。
特徴
アンジュー ソーミュール地区には様々なアペラシオンが含まれており、多様なワインが生産されていることが特徴です。
ソミュールではシュナンブランを使用した辛口の白ワインが生産されており、スパークリング ワインであるクレマン ド ロワールもソミュールで主に生産されています。
ソミュール地区にあるソミュール シャンピニィではカベルネフランを使用したコクのある赤ワインも生産されています。
また、ロワール川の支流であるレイヨン川流域では貴腐ワインが生産されています。
このレイヨン川の流域のコトー デュ レイヨン、ボンヌゾー、カール ド ショームはロワールの三大貴腐ワインの産地として知られており、高品質な甘口ワインが生産されています。
アンジューでは半甘口のロゼ ダンジューが世界的に知られていますが、辛口タイプであるロゼ ド ロワールも注目されています。
アンジューではカベルネ ソーヴィニヨンやカベルネ フランを使用した爽やかな赤ワインも生産されています。
ぶどう品種
アンジュー ソミュール地区ではシュナン ブランを中心として様々なブドウが栽培されています。
白ブドウでは広く栽培されているシュナンブランや、ソーヴィニヨン ブラン、シャルドネなどが栽培されています。
黒ブドウはカベルネ フランやカベルネ ソーヴィニヨン、ガメイやピノ ドニス、グロロなどが栽培されています。
トゥーレーヌ地区
トゥーレーヌ地区はフランスのロワール地方にあるワイン産地です。
トゥールの町を中心にした地区であり、ソミュール市の東からオルレアンまで広がっています。
1000kmにも及ぶロワール川の中流域に位置しているため、海洋性気候と大陸性気候が混じった気候条件をもちます。
トゥーレーヌ地区にあるブドウ畑の背後にはいくつもの城館が点在しており、ロワール地方の中でもまさに「フランスの庭」という言葉が最も似合う地域です。
トゥーレーヌ地区を包括するアペラシオンとしてトゥーレーヌがあります。
このトゥーレーヌはスパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン、ロゼワインと様々なタイプを生産することが出来るため、トゥーレーヌの名で多彩なワインが市場に流通しています。
トゥーレーヌの中でもアンボワーズ、アゼイル リドー、メスラン、シュノンソー、オワズリーの5つのコミューンはコミューン名をアペラシオンに付記することが出来ます。
特徴
トゥーレーヌ地区では様々なタイプのワインが生産されているため、各アペラシオンがもつ特徴は様々です。
白ワインでは甘口~辛口まで造ることが出来るヴーヴレが知られており、シュナンブランのみを使用して高品質なワインが生産されています。
貴腐菌を付けた甘口タイプは非常に長命で、熟成を経ることにより真価を発揮します。
ブルグイユやサン二コラ ド ブルグイユ、シノンではカベルネ フラン主体で評価の高い赤ワインが多く生産されています。
トゥーレーヌ地区全体では、高級ワインの産地と言うより比較的リーズナブルに購入できるワインが多く、日本でもトゥーレヌ地区産の様々なワインを見つけることが出来ます。
ぶどう品種
トゥーレーヌ地区では様々なブドウ品種が栽培されています。
白ブドウではシュナンブランやソーヴィニヨン ブラン、シャルドネ、ムニュ ピノー (アルボワ)などが栽培されています。
黒ブドウはカベルネ フランやカベルネ ソーヴィニヨン、グロローやピノ ドニスが栽培されています。
中央フランス
サントルニヴェネ地区は、フランスのロワール地方に位置しているワイン産地です。
ロワール地方にある4つの地区の中では最も上流域に位置しており、フランスの中央部にあたる地域です。
上流域であるため海洋性気候の影響はなく、大陸性気候を持ちます。
ブルゴーニュ地方のヨンヌ県に近く、気候条件が似ています。
ロワール川と、その支流であるシェール川流域の緩やかな起伏の丘陵地帯に畑は広がっています。
シェール川流域にはカンシーやルイイなどのアペラシオンがありますが、サントル ニヴェネ地区はロワール川流域が中心産地であるということができます。
ロワール川流域にはサンセールやメヌトゥー サロン、プイイ フュメなどの銘醸地が並んでおり、世界的に知られているワイン産地です。
特徴
サントル ニヴェネ地区では様々なワインが生産されていますが、最も知られているのはサンセールとプイイ フュメの白ワインです。
両産地とも白ワインはソーヴィニヨン ブランから造られており、日本でも人気のあるアペラシオンです。
サンセールで造られた白ワインはミネラルと豊かな果実味が特徴的であり、プイイ フュメはかすかにスモークを感じさせる香りや、しっかりと伸びるミネラルのニュアンスが特徴です。
サンセールでは白ワインのほかに赤ワインとロゼワインも生産しており、華やかな香りを持つ赤ワインが流通しています。
ぶどう品種
サントル ニヴェネ地区ではロワール地方の他の地区とは異なり、白ブドウはシュナン ブランではなく主にソーヴィニヨン ブラン (フュメ ブラン)が栽培されています。
フランスのソーヴィニヨン ブランの産地としてはボルドー地方が有名ですが、サントル ニヴェネ地区のソーヴィニヨン ブランも高い評価を得ています。
【ソーヴィニョンブランについてはこちらをご参考ください】
[blogcard url=”https://winebooks-media.com/sauvignon-blanc/”]
あまり栽培面積は広くありませんが、シャスラやピノ グリも栽培されています。
プイイ フュメではソーヴィニヨン ブランの他にシャスラが栽培されており、シャスラを使用した白ワインはプイイ シュール ロワールを名乗ります。
黒ブドウはピノノワールやガメイが主に栽培されています。
ワインの特徴
ロワールのワインは全体を通して白は軽快な口当たりで酸味や果実味が引き締まったワインが多く、赤は軽めの渋みが心地よいバランスの取れたワインが多いです。
生産者によってはボルドーやブルゴーニュの白のような凝縮感のあるワイン造りをしているところもありますが、数は多くはありません。
ワインの特徴としては、ペイ・ナンテ地区は辛口の白ワインが有名です。
独特のシュール・リーと呼ばれる製法で作られるワインは、手頃な価格のものが多くの人から愛されています。
アンジュ・ソーミュール地区といえば、ロゼワインと言われるほどロゼワインが有名です。
フランスを代表するロゼワインであるロゼダンジュは果実味のかわいらしい優しい味わいとなります。
一方でカベルネ・ダンジュは辛口で、渋みも感じられる早飲みタイプです。
トゥーレーヌ地区は、全体的に軽いタンニンで、果実を感じられる味わいが特徴となります。
品質に対して値ごろ感があり、日本料理にも合わせやすいのでもう少し注目されてもいいワインかもしれません。
最後に中央フランスのワインは、収穫時期に天候が変わりやすいため、ブドウの出来がヴィンテージにもろに左右します。
日本のフレンチレストランでもグラスワインなどによく使われる辛口白ワインとなり、ミネラルを感じられる果実味と酸味の力強いワインです。
日本料理とのマッチング
ロワール川のワインは全体的にさっぱりとしていて、かつ、華やかな印象なので日本料理や中華料理などのアジア系の料理との相性の良さも指摘されています。
特に日本の家庭料理は様々な食事が一度に食卓に並ぶ特色があるため、ロゼワインや軽めの赤ワインは基本的にどの料理にも合わせやすく、日本の食卓事情にも合っているのです。
また、日本料理は魚介類が新鮮で知られるので、塩焼きにした青魚(サンマやイワシなど)とミュスカデやサンセールとの組み合わせも試してみたいですね。
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