【最終更新日】2022年10月21日
AOCは、Appellation d’Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)の略で、ワインの原産地呼称のことを意味しています。
原産地呼称にはいくつかの格付けがあって、AOCはその格付けの中でも最も高いものになります。
原産地呼称とは、たとえばブルゴーニュワインであれば「このワインはブルゴーニュで造られたワインだよ」ということを国家がお墨付きをする、ということになります。
国家が品質を保障するからには簡単に保障してはダメです。そこでブルゴーニュワインと名乗るためにいくつもの規定を設けています。
この規定は法律で定められているので、規定を守らなければ当然法律違反ということになります。
フランスワインはフランスにとって重要な産業で、そのため様々な制度を設けて品質の安定化をはかっています。
例えば規定がなくて生産者に一任されていれば、消費者にすれば品質に一定性のないものが流通することになり、これではフランスワインの安全性や信頼性は望めません。
生産者からすれば面倒な仕組みかもしれませんが、AOCの規定がしっかりと機能することによって消費者の保護となり、それが結果として生産者の利益にもなるのです。
ここでは、フランスワインの格付けを、フランス全土で採用されるAOCに絞って説明します。
AOC以外の格付けとは、例えばブルゴーニュの格付けやボルドーの格付けなど、地域ごとにありますが、それらは別途開設させていただきます。
目次
フランスワインのAOCとは?
AOCのラベルをみてみよう
では、AOCとはどのようなものでしょうか?
↑のワインはボルドー、ポイヤックのシャトーポンテカネというワインのラベルです。
APPELATION PAUILLAC CONTROLEE
と記載があります。この頭文字をとったものがAOCです。
「なんだ、AOCなのにOがないじゃないか」と思われると思いますが、OはORIGINE、つまりそれぞれの区画の名称で、この場合はPAUILLACのことを指します。
では次にブルゴーニュワインを見てみましょう。
このワインはジュヴレシャンベルタン村のワインですが、ここにも赤枠でAppelation Controleeと記載があります。
先ほどはAPPELATION PAUILLAC CONTROLEE と記載がありましたが、今回はAppelation と Controleeのあいだには何も記載がなくなっています。
この辺りは案外生産者の自由に委ねられていて、いくつかのパターンがあります。
AOCはもともと1935年にフランス国の法律で制定されましたが、2008年のEU法でAOPとして登録されました。
AOPはEU法での呼び名で、AOCはAOPの一部ですが、現在でもフランスワインの格付けと言えばAOCが主流です。
AOCの規定
前述のようにこの法律の趣旨は消費者保護で、消費者を保護する=生産者保護となるという構図になっています。
そのため「そのワインらしさ」を担保するために様々な規定が設けられています。
・使用するブドウ品種
・ha当たりの収穫量
・最低アルコール度数
・最高アルコール度数
・醸造法
・栽培法
・官能テスト(利き酒)
などにワインごとに基準を設け、すべてに合格しないとAOCとして認められません。
このフランスのワイン法は消費者と生産者の保護に成功しますが、これによって近隣各国が類似の法律を制定しています。
ただしドイツは似て非なる制度で(近年フランスワイン法に近づいています)、アメリカおよびオーストラリアやカナダなどのニューワールドの規制は全く制度は似ていません。
範囲が狭くなるほど品質は高くなる
AOCの特徴は、制定する区画が狭くなればなるほど基準が厳しくなるところにあります。
例えばブルゴーニュであれば広範囲から狭い範囲の順で、
ACブルゴーニュ→ジュヴレシャンベルタン→シャンベルタンクロドベーズ
ボルドーであれば
ACボルドー→メドック→マルゴー
のようなヒエラルキーができています。
そして、広範囲なAOCほど基準は緩く、狭いものほど厳しくなるのです。
範囲が狭いワインは、例えばブルゴーニュであれば特級畑はそれぞれ独立したAOCを持っているので、中には1ヘクタールをきるようなAOCもあります。
それらの狭い範囲のAOCは、狭い範囲ではあるけど近隣の畑とはちがう個性があるから、だから個別のAOCとして制定されています。
それだけの個性が認められるということは、品質がそれだけ高いということになるのです。
歴史をざっくりと理解しよう
前述しましたようにフランスワインはAOCによってワイン造りに規制がなされています。
規制をする、ということはフランスワインの生産者や消費者の権利や自由を縛るということでもありますので、なんの理由もなく格付けを制定するということは近代国家としてできません。
ここで格付け制定の歴史をざっくりとみてみましょう。
AOC制定の経緯
フランスワインは18世紀のころにはその品質の高さを近隣諸国に知られていましたが、19世紀後半のフィロキセラの出現によって壊滅状態に陥りました。
ところがこの危機をフランスワインは見事に脱します。
それまでは一部のエリート層や遺族階級しか所有できなかったブドウ畑は二束三文になり、ブルゴーニュやロワールでは、荒れ果てた畑を今度はワイン生産者が直接所有するのです。
フィロキセラの対抗策としてアメリカ産台木をもちいることで解決したのちに、もともとワイン生産に優位性のあったワイン生産者は一気に注目を浴びます。
そして世界中に「ワインと言えばフランス」との評判は一気に回復し、名声をほしいままにするのです。
こうなるととっぽい人はどこにでもいつの時代にもいて、こうなると模倣品やまがい物が出回るのが世の常でしょう。
ほかの産地とブレンドしたものをボルドーと名乗ったり、なかには全く関係のないワインをシャンパーニュと名乗るワインも出てきます。
これらの商品はラベルを信頼して購入した消費者をだまそうという理論が根底にあるので、品質そのものも粗悪なものでした。
消費者からすればラベルを見てワインを選んでいるのに、ボトルの中身が違うのであれば信頼がそもそもありません。
そうなるとせっかく回復したフランスワインの名声は落ち、販売価格の下落とそれでも止まらない販売低迷に直面するのです。
消費者と生産者保護のために法律を制定
このようにまがい物が横行して誰が一番被害を被るか?
もちろん第一は消費者でしょう。まがい物をつかまされて低い品質のワインに高い金額を支払わされるのですから。
そしてもちろん、真面目にワイン造りをしてきた生産者も一番の被害者です。
自分たちが長い年月をかけて作り上げた生産地のブランドが勝手に誰かに利用されたらたまったものではありません。
このまま不正の横行を放置すればワインの消費が冷え込むでしょう。
消費が冷え込めば当然税収は減ります。
税収が減ることは国家財政の破綻へとつながる可能性だってあるでしょう。
そこで法律で適正に規制をして消費者や生産者の保護を図ろう、ということになるのです。
この流れを受けて制定されたのがAOCなのです。
AOC⇒Appellation d’Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)
この名称は今でもあり、法律上はこのクラスが一番上ということになります。
なお、2008年にはEUワイン法が改訂され、AOCはAOP(Appelation d’Origin Protegee)とも呼ばれるようになっています。
EUワイン法ではAOPではありますが、現状フランスではフランスワイン法のAOCの表記の方が多く見受けられます。
(1949年に、AOCよりも緩やかなAOVDQSが制定されましたが、ワインの品質が底上げされた結果、実態として現代のワイン流通になじまないとして2011年に廃止されます。)
まとめ AOCは生産者と消費者の保護
このように、フランスにはワインの格付けが合って、その最も上にはAOCというものがあるんだということが分かったかと思います。
この格付けはルールで固めて生産者に自由度をあたえないという面もありますが、それ以上に生産者と消費者の保護という意味合いが強く、ヨーロッパの伝統国ではおおむね似たような規制があります。
私たちがワインを学習するときによく耳にするAOCがどのように生まれたのか?これを知ることでより一層理解が深まるのではないでしょうか。
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