シャンボール・ミュジニーとは?基礎知識と味わいの特徴,合わせる料理

【最終更新日】2022年10月30日

シャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)は、フランス・ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方コート・ドール(仏:Cote d’Or)の北側、コート・ド・ニュイ(仏:Cote de Nuits)地区に位置するワイン生産地であり、そこで育ったピノ・ノワール(仏:Pinot Noir)という黒ブドウ品種から造られる赤ワインの名称です。

赤ワインの銘醸地として有名で、「ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)」「ヴォーヌ・ロマネ(仏:Vosne-Romanee)」と共にブルゴーニュ赤ワイン三大銘醸地とされています。

 

コート・ド・ニュイの中でも最も繊細なワインを生むとされており、その酒質はしばしばシルクやレースに例えられます。

筋骨隆々で華やかなジュヴレ・シャンベルタンとは、対極として語られます。

 

2つの特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)、「ミュジニー(仏:Musigny)」と「ボンヌ・マール(仏:Bonne Mares)」があり、特に前者は、数あるブルゴーニュ・ワインの中でも最も偉大なものの一つとして数えられます。

気品、繊細さ、精妙さを纏い、詩的・幻想的に語られるほどのワインは、世界中のワイン・ラヴァーの憧れの対象です。

 

1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)も24面あります。

中でも有名な「レ・ザムルーズ(仏:Les Amoureuses)」はその見事な酒質とロマンチックな名称で、ときにグラン・クリュをも上回る価格で取引されることがあるほどです。

 

【レザムルーズについてはこちらをご覧ください】

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シャンボールミュジニーの基礎知識

産地の特徴


シャンボール・ミュジニーは、ブルゴーニュ地方コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区に位置する村の名称であり、アペラシオン(仏:Apellation)の名称です。

北をモレ・サン・ドニ(仏:Morey-Saint-Denis)村、南をヴ―ジョ(仏:Vougeot)村にそれぞれ接しています。

 

斜面上部に密集する集落に僅か300人ほどが生活しています。

遅くとも3世紀にはブドウが植えられ、ブドウ栽培の歴史は続きました。

その後、中世に修道僧たちによって本格的な開墾が始められ、以降、偉大な銘醸地として名声を得てきました。

 

黒ブドウ品種のピノ・ノワールと白ブドウ品種のシャルドネ(仏:Chardonnay)が栽培されており、それぞれから赤ワイン・白ワインが造られます。

ただしAOCの規定により特級格であるミュジニーは赤・白両方を造ることができるのに対して村名格と1級格は白ワインは認められておらず、赤ワインのみが認められています。

広範囲で下位の村名格・1級格では赤しか造ることができないのに、その中の一部であるミュジニーは白も造ってよい、というのはこの村の面白い特徴であると言えるでしょう。


特級畑は2面、北に「ボンヌ・マール(仏:bonnes-Mares)」、南に「ミュジニー」を擁し、1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)は「レ・ザムルース(仏:les Amoureuses)」を筆頭に24面あります。

栽培区域は、標高約250~350m。土壌は、全体的に表土が薄く、粘土質は少ないです。

 

北側と南側でワインの性格が異なることが知られています。

北側はジュヴレ・シャンベルタンまで繋がっている石灰岩の母岩で、シャンボール・ミュジニーの中ではモレ・サン・ドニ(仏:Morey-Saint-Denis)寄りの力強い酒質になる傾向があります。

 

対して南側はコンブランシアン石灰岩が母岩で、斜面の下部に行くとバジョシアンの泥灰岩が混じります。

「シャンボール・ミュジニー」といったときに想起されるワインを造る土壌、と云われています。

また、ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)村やモンラッシェ(仏:MontRachet)・ファミリーと同じく、畑が村の知名度を大きく上回り、元々の村の名前に畑名を加えた村の一つでもあります。

 

特級畑

シャンボール・ミュジニーには2つの特級畑があります。

ミュジニー (仏:Musigny)

村の南端に位置し、エシェゾーやクロ・ド・ヴージョと接しています。

特にクロ・ド・ヴージョとは、手が届くくらいの段差を隔てて上下関係になっておりますが、その酒質は全くもって異なります。

面積は約10.7haで、栽培面積のほとんどがピノ・ノワールで、赤ワインが造られています。

 

わずか6樽(ボトルにして約1800本)ほどシャルドネ(仏:Chardonnay)の稀少なミュジニー・ブラン(ミュジニーの白)も造られています。

コートドニュイでは赤・白両方ワインを造ることができるグラン・クリュはミュジニーだけで、ブルゴーニュ全体を見てもコートドボーヌのコルトンとともに二つしかありません。

このミュジニー・ブランを造っているのは、ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエのみとなっています。

 

全てのブルゴーニュ・ワインの中でも最も偉大なワインの一つに数えられ、気品、洗練、精妙さを纏い、その存在が優美さそのものです。

フランスの著名な歴史家ガストン・ルプネルは、この偉大なワインを「幼子イエスがビロードのズボンを履いたまま喉を滑り落ちていく」「シルクとレース、最高のデリカシー(精妙さ)」と表現しました。

非常に人気があること、生産量は多くないことから、大変に高価です。

安くても数10万円、高価なものですと100万円を優に超えます。

ちなみに、2022年現在、世界で最も高価なワインはドメーヌ・ルロワのミュジニーで、約620万円となっています。

 

【ミュジニ―についてはこちらをご覧ください】

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ボンヌ・マール (仏:Bonnes-Mares)

村の北端にあり、隣のモレ・サン・ドニ村にまたがって位置しています。

面積は約15haありそのうちモレ・サン・ドニ側に1.5ha、残り13.5haがシャンボール・ミュジニー側にあります。

 

モレ・サン・ドニ側は赤土が豊富で粘土も多く含んでおり、生み出されるワインは力強くタニック、グラマラスです。

一方シャンボール・ミュジニー側は白土で、白色泥灰土で石灰質が多く、果実味豊かで重厚なワインが生まれます。

名前は、「ボンヌ」が良い、「マール」が母で、「良い母」という意味です。

 

 

1級畑

シャンボール・ミュジニーには、24面の1級畑があります。

以下に、1級畑名を記載します。

 

レ・ヴェロワイユ/Les Vroilles

レ・フュエ/Les Fuees

レ・クラ/ Les Cras

レ・サンティエ/Les Sentiers

レ・ボード/Les Baudes

レ・ラヴロット/Les Lavrottes

レ・ノワロ/Les Noirots

デリエール・ラ・グランジュ/Derriere la Grange

レ・グリュアンシェール/Les Gruenchers

レ・グロゼイユ/Les Groseilles

オー・ボー・ブリュン/Aux Beaux Bruns

オー・ゼシャンジュ/Aux Echanges

レ・キャリエール/Les Carrieres

レ・シャトロ/Les Chatelots

レ・コンボット/Les Combottes

オー・コンボット/Aux Combottes

レ・フースロット/Les Feusselottes

レ・プラント/Les Plantes

レ・シャルム/Les Charmes

レ・ボルニック/Les Borniques

レ・シャビオ/Les Chabiots

レ・オー・ドワ/Les Hauts Doix

レ・ザムルース/Les Amoureuses

ラ・コンブ・ドルヴォー/La Combe d’Orveau

 

「レ・ザムルーズ」は、知名度・酒質共に筆頭で「ミュジニーの妹」と形容されます。

他にも「レ・フュエ」「レ・サンティエ」「レ・クラ」「レ・フースロット」「レ・シャルム」「ラ・コンブ・ドルヴォー」に、特に品質が高いものが多いように思います。

 

ワインの特徴

AOC規定では、 1級格、村名格は赤ワインのみが認められており、特級格のミュジニーのみ、赤・白両方認められています。

ここでは、赤ワインの方の特徴についてみていきましょう。

 

ブドウは、ピノ・ノワールという黒ブドウ品種のみです。

最低アルコール度数は、1級格が赤11.0%、白11.5%、村名格が赤10.5%、白11.0%です。

 

1級格と村名格の生産量はほぼ同量(1級格がわずかに少ない)となっています。

畑による違いはありますが,コート・ド・ニュイで最も繊細なワインを生み出すと云われています。

 

瑞々しい赤系果実や花の香り、しばしばシルクやレースに例えられる口当たり、総じて穏やかな性格です。

決して甘味や酸味、タンニンやミネラルなどの成分が薄いわけではなく、長期熟成させることができ、高いポテンシャルを秘めています。

筋骨隆々でパワフル、華やかなジュヴレ・シャンベルタンとは対極に位置し、共にブルゴーニュの銘醸地として知られています。

 

【ピノノワールについてはこちらをご覧ください】

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外観・香り・味わい

今回はシャンボール・ミュジニーの中でも村名格から1級格の丁寧に造られたワインの傾向を見ていきたいと思います。

外観は,鮮やかなルビー色で、透明感のある澄んだ液面はきらきらと輝いています。

涙は意外にもしっかりとしています。ブドウの高い成熟度、そして凝縮感が感じられ、期待感が膨らみます。

 

香りは穏やかです。

特に抜栓直後は浮き立ってこないこともあるのですが、液温や気温、抜栓後の適度な時間経過など、ワインのコンデションが整うと、ワイン・ラヴァーにとって堪らない体験が始まります。

是非、大ぶりのブルゴーニュ・グラスを使うことをお勧めします。

 

ラズベリー、ブルーベリー、チェリーなどの瑞々しい果実、菫、赤い薔薇や牡丹などの花、よくよく嗅ぎ分けると茸や森のニュアンスが感じられることも。

適切に熟成したものは、干しブドウなどのドライフルーツ、上質な紅茶、黒トリュフなどが、優しく穏やかに広がります。

 

味わいは,第一印象(アタック)は中庸からやや強い程度です。

穏やかな甘味、ストレスのない好ましいレベルの酸味,それらと調和して隠れがちですが決して少なくないきめ細やかなタンニンがそれぞれに感じられます

それでいて不和はなく、口中で「至福」の感覚が広がり、最後には余韻が儚く、それでいて長く残ります。

 

様々な要素が玄妙なバランスで並び立ち、一つの「珠」を思わせるこのワインを飲むとき、個人的にはロベルト・シューマン(独:Robert Schumann)の「夢=トロイメライ(独:Träumerei)」を想起します。

個体差はありますが最低5年、一般的には10年から15年、上質なもので20年程度寝かせることで、真価を発揮するように思います。

 

著名な生産者

シャンボール・ミュジニーの代表的な生産者を以下に挙げます。

 

ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ/DomaineComte Georges de Vogue

1528年創立の名門。ミュジニーとボンヌ・マールの面積最大所有者であり、シャンボール・ミュジニーの面積最大所有者です。

造るワインは豪華絢爛、華やかな赤系の果実と花のアロマ、ミネラリーで端正な味わいは、ブルゴーニュ・ワインの一つの境地といえるでしょう。

 

ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエ/Domaine Georges Roumier

1924年設立、ネゴシアン業も営む名門にして実力派のドメーヌです。

ワイン造りは、強い抽出を行わず、エレガンス、フィネスを追求します。

果実味豊かさと繊細さ、品の良さと芯の強さの共存を感じさせます。

 

ドメーヌ・ロベール・グロフィエ/Domaine Robert Groffier

1950年設立。

本拠地はモレ・サン・ドニ村ですが、シャンボールにも多くの畑を所持しており、1級畑筆頭「レ・ザムルース」の最大所有者として有名です。

造られるワインは果実や花が鮮烈に香り、口当たりは力強さを感じさせつつもタンニンは非常にシルキーです。

 

ドメーヌ・ジャック・フレデリック・ミュニエ/DomaineJacque-Frederic Mugnier

設立は1864年の家族経営型生産者ですが、ドメーヌとしての活躍は5代目である現当主フレデリック氏からです。

彼はクリストフ・ルーミエやミシェル・ラファルジュに師事した後に、家業のドメーヌを継ぎました。

めきめきと頭角を現した彼は、ドメーヌのワインの質を劇的に高めることに成功しました。

ちなみに祖母は日本人なのだそうです。

肉付きの良さを感じさせる豊かな果実味がありますが決して上品さを失わず、同地の個性を見事に表現しています。

 

ドメーヌ・アルロー/Domaine Arlaud

ボンヌ・マールに20ha所有するこのドメーヌはヴィンテージごとにブドウのでき次第で除梗率や木樽発酵の日数を調整し、入念なこだわりを見せています。

フレッシュな果実味、緻密なタンニン、立体的で奥行きのあるワインは、近年多くのファンを獲得するに至ります。

 

マリアージュ

この繊細なワインを楽しむとき、個人的にはワイン単体で味わうことが多いです。

ですがこのワインと料理が互いを高め合うようなペアリングは確かに存在します。

 

まず、やはりレストランで腕利きのシェフが力を込めた料理と合わせたいところです。

フレンチであれば、ブルゴーニュ地方の郷土料理の牛や鶏などを赤ワインで煮込んだもの(ブッフ・ブルギニョンやコック・オー・ヴァン)を、あえてハーブを抑えて仕上げれば、ワインと料理のアロマ,フレーバーが相互に広がりを見せてくれることでしょう。

フォアグラと牛フィレ肉を合わせたロッシーニ風も、味付けの方向性によっては「なぜだ!?」と驚きを感じさせるほど合います。

 

もし、どうしても家庭料理で合わせたい場合には、ジャガイモ、マッシュルームなどの茸、小玉葱(玉葱でもO.K.)、ベーコンや牛肉などをベースにして、ほっくりと炊いたものは好相性だと思います。

個人的なお勧めは肉じゃがで、意外にもきちんと出汁をとった醤油ベースの煮物は、合うように思います。

他にもポトフやロール・キャベツは、胃を温めつつ、優しく寄り添うことが多いです。


 

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