山形県のワインの基礎知識|歴史と主なワイン産地、生産者

【最終更新日】2023年1月16日

果樹栽培が大変盛んなフルーツ王国山形。

ブドウの生産量は全国3位、そして日本ワインの生産量は山梨、長野、北海道に続く全国第4位という日本のワイン4大生産地のひとつです。

 

ワイナリーの軒数は他県のワイン産地に比べると少ないものの、2016年には上山市が「かみのやまワイン特区」、それに続き南陽市も「ぶどうの里なんようワイン特区」に指定されました。

ここ数年県内のワイン用ブドウ栽培やワイン造りが活発化しています。

 

2021年には国税庁より、2016年の日本酒に次いで、ワイン産地として地理的表示「G.I」山形の認定を受けており、今後ますます注目されるワイン産地の一つです。

 

山形県のワインの基礎知識

歴史・起源

ブドウの栽培自体は300から350年前から行われていたと推定されています。

しかし本格的なワイン造りが始まったのは、山梨県に遅れることわずか10数年、明治中期のことで、他県同様殖産興業政策の一環として始まりました。

 

1873年には官業畑が高畠町に開かれ、欧州系品種やアメリカ系品種の栽培が開始されます。

また同時期に南陽市でもコンコードやシャスラ、ブラックハンブルグなど欧米系品種の栽培が始まりました。

 

しかしこうして広がったブドウ栽培地も1916から1920年代にかけて、フィロキセラによる壊滅的な大打撃を受けることになります。

これを機に県内各地の品種は山梨県から伝わった保存性に優れたデラウェアに切り替わっていきます。

 

戦後は甘味果実酒の流行に伴い、1953年から1970年にかけて大手メーカーの原料供給地として次々に工場が建てられました。

コンコードやナイアガラ、キャンベル・アーリーを原料としてワインが造られていましたが、1973年以降、世の中が本格的な辛口ワイン造りへ転換する頃には大手メーカーは撤退。

残された中小のワイナリーは、その後本格的なワインの生産に切り替え、欧州系ブドウ品種の導入を図ります。

 

2000年以降の日本ワインブームにおいては、北海道や長野県に次々とワイナリーが新設されるのに対して、山形県の新設ワイナリーはわずか5軒のみでそれほど増加していません。

しかしその一方で、山形県の欧州系ブドウ品種の品質には定評があり、県外からの引き合いは増加の一途をたどっていました。

そんな状況のもと、ワイン用ブドウの栽培農家がワイナリーを設立するケースも増え、2016年には上山市、南陽市がそれぞれワイン特区に指定されるなど、ワイン産地として近年活況を呈してきています。

 

ブドウ品種

伝統的にデラウェアの生産が盛んで、生産量日本一を誇る山形県。マスカット・ベーリーAの生産量も多く、山梨県に次ぐ第2位です。

ワインはワイン用ブドウ品種、生食用品種、交雑種のブドウから造られており、赤系品種が約40%、白系品種が約50%と白系品種の割合が高くなっています。

 

赤系品種ではマスカット・ベーリーAが最も多く、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ヤマ・ソーヴィニヨンがこれに続きます。

白系の生産量では最多のデラウェアの他、ナイアガラ、シャルドネが続きます。

この他、生産量はそう多くないものの、1930年に導入されたブラック・クイーンも山形県の重要な赤ワインの品種です。

 

ワイン産地


山形県は本州東北部に位置しており、西北部は日本海に面し、東側には奥羽山脈が南北に走っています。

それと並行して県央部には出羽丘陵、月山、朝日山地が連なっており、森林面積が県の72%を占めています。

気候は中央部の丘陵、山地によって大きく2分されており、日本海側が海洋性気候、内陸側が盆地気候で、ワイナリーおよびブドウ畑は主に内陸部の村山地方や置賜地方に集中しています。

 

村山地方(むらやまちほう)

山形盆地の南端に位置する蔵王連峰の麓、上山市を中心とする地域で、ブドウ園は主に水はけがよく日照量の多い、盆地辺縁部の傾斜地に開かれています。

シャルドネやメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど欧州系品種の栽培が盛んでこれらのブドウから造られたワインは高い評価を受けています。

 

この他、朝日町のマスカット・ベーリーAは収穫時期が日本で最も遅く、近年評価が上昇している注目のエリアです。

上山市では、2015年に「かみのやまワインの郷プロジェクト協議会」を発足、翌年には「かみのやまワイン特区」を取得するなど、ワイナリーが新規参入しやすい環境を整えています。

 

置賜地方(おきたまちほう)

山形県随一の伝統的ブドウ産地で、東北最古のワイナリーのある南陽市赤湯町や高畠町を中心とする地域です。

高畠町は、置賜盆地の北東部に位置し、稲作や果樹栽培が盛んで、有機農法の先駆者として有名で、デラウェア・シャルドネの生産量が全国1位でもあります。

近年、置賜盆地の長井市や白鷹町でもワイン用ブドウの栽培に取り組む動きもみられます。

 

庄内地方(しょうないちほう)

庄内地方鶴岡市櫛引の西荒屋地区は、日本最北端の甲州ブドウの栽培地域と言われており、甲州ブドウの栽培が250年以上に渡り受け継がれています。

山梨などで栽培される甲州ブドウとは異なり、品種改良のされていない原木に近い系統と言われています。

そんな樹齢も高く、糖度も高い鶴岡の甲州で造られたワインも近年注目され始めています。

 

 

著名なワイナリー

酒井ワイナリー

置賜地方南陽市赤湯にある1892年創業の東北地方最古のワイナリー。

創業者の酒井彌惣氏は赤湯町長を務めたこともある進取の気質に富む人物です。

イギリス人のチャールズ・ヘンリー・ダラス氏が牛肉と相性の良い酒を求めていると聞き、ワイン造りを始めたという逸話も残っています。

家族経営の小さなワイナリーですが、昔ながらの濾過器無ろ過・無清澄・無殺菌にこだわったワイン造りを大事にしています。

 

高畠ワイナリー

置賜地方高畠町に本社を置く、1990年創業の東北を代表するワイナリー。

高い醸造技術、自社農園や契約農園などで造られた高品質なブドウを、親しみやすい甘口のワインからワイン愛好家を唸らせる白ワインのシャルドネやフルボディタイプの赤ワインまで幅広いジャンルで醸造しており、出荷量でも東北一を誇ります。

最も金賞を取ることが難しい世界的アワードのひとつとも評されている「Decanter World Wine Awards」での受賞ワインもあるなど、国内外で高い評価を受けているワイナリーです。

 

タケダワイナリー

蔵王連峰の麓、上山市の高台にある1920年創業の老舗ワイナリー。

「良いワインは良いぶどうから」をモットーに開園以来、過剰な施肥を排除し、自然のサイクルを最大限活かした減農薬・無化学肥料によるブドウ栽培を行っています。

長い歴史と、高い技術力で醸されるワインは、日本トップクラス。

 

2008年の洞爺湖サミットでは、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵による本格的なスパークリングワイン「ドメイヌ・タケダ キュベ・ヨシコ2003」が、2016年の日露首脳会談の際には「ドメイヌ・タケダ ブラック・クイーン古木2013」が使われるなど、世界に名を馳せるワイナリーの一つです。


 

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