【最終更新日】2022年11月19日
ヴォーヌ・ロマネ(仏:Vosne-Romanee)は、フランス・ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方にある黄金丘陵=コート・ドール(仏:Cote d‘Or)の北側、コート・ド・ニュイ(仏:Cotes de Nuits)地区に位置する村の名称であり、アペラシオン(仏:Apellation)の名称です。
ヴォーヌ・ロマネでは、ピノ・ノワール(仏:Pinot noir)という黒ブドウ品種から赤ワインが造られています。
コート・ド・ニュイ地区は赤ワインの銘醸地として有名ですが、中でも「ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)」「シャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)」そして「ヴォーヌ・ロマネ」はブルゴーニュ赤ワインの三大銘醸地にして世界中のワイン・ファン垂涎の地として有名です。
このアペラシオンを端的に表すとすれば、それは「華やかさ」「エレガンス」と言えるのではないでしょうか。
むせ返るような香りのオーケストラ、繊細且つ優雅な宝石のごとき液体を生み出すこの銘醸地は、「ネックレスの中央の真珠」と比喩されます。
8つの特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)があります。
中でも、「ロマネ・コンティ(仏:Romanee-Conti)」が、人気、知名度、実力、それら全てにおいてやはり筆頭です。
ワイン・ファンは勿論、ワインに明るくない方でもその名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
また、このアペラシオンのワインは、その多くが大変に高価です。
グラン・クリュは数十万円が当たり前、1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)であっても、ものによっては特級に匹敵する価格で流通しています。
ヴォーヌロマネ村のワイン
産地の特徴
ヴォーヌ・ロマネは、フランス・ブルゴーニュ地方にある黄金丘陵=コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区に位置する村の名称であり、ワイン生産地のアペラシオン名称です。
「ヴォーヌ」は6世紀には「vaona」「voone」などと記され、「森」を意味していました。
890年頃に設立されたクリュニー派のサン・ヴィヴァン修道院が一帯を所有し、畑の管理・栽培をしていました。
ちなみに、この当時のワイナリーは、現在もドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社が所有し使用しています。
村としては、北をフラジェ・エシェゾー(仏:Flagey-Echezeaux)村、南をニュイ・サン・ジョルジュ(仏:Nuits-Saints-Georges)村に挟まれるように位置しています。
アペラシオンとしては、フラジェ・エシェゾー村も含めて「ヴォーヌ・ロマネ」を名乗ります。
造られるワインはピノ・ノワールから造られる赤のみです。
「ジュヴレ・シャンベルタン」「シャンボール・ミュジニー」と並んでブルゴーニュ・赤ワイン三大銘醸地に数えられます。
【ピノノワールについてはこちらをご参考ください】
[blogcard url=”https://winebooks-media.com/pinot-noir/”]
人気、知名度、実力で他を圧倒する「ロマネ・コンティ」を始めとして、8つの特級畑(内2つはフラジェ・エシェゾー村に所在)と,14の1級畑を持ちます。
繊細且つ優雅な宝石のごとき液体を生み出すこのアペラシオンは、「ネックレスの中央の真珠」と比喩され、世界中のワイン・ファン垂涎の地となっています。
栽培区域の標高は230~340mの斜面、及び平地に広がっています。
斜面は全体的に東向きが多く、傾斜は上部が比較的きつく、中部は緩やかです。
グラン・クリュはその多くが標高255~280mの位置に広がります。
土壌に関しては、バジョシアンとバトニアンの石灰岩が主体の母岩で、斜面上部は表土が薄く小石混じり、場所によって砂利も多く見られます。
斜面下部は泥灰岩層も入り混じり、平坦部は酸化鉄と粘土質の比率が高くなります。場所によって多様性が見られます。
特級畑
アペラシオンとしてのヴォーヌ・ロマネには、フラジェ・エシェゾー村に2つ、ヴォーヌ・ロマネ村に6つ、合計8つの特級畑があります。
フラジェ・エシェゾー村
エシェゾー(仏:Echezeaux)
クロ・ド・ヴージョに次ぐ面積を持ち、11以上のリュー・ディから成ります。
そのため、秀逸なものと凡庸なものが存在しており、正に玉石混淆です。
畑全体の傾向をこれと説明することも難しく、そのため畑の中のどの場所で生産されたブドウなのか、そして誰が造ったのかによって、質の高さも味わいの傾向も異なります。
とはいえ、天下のグラン・クリュ、それもヴォーヌ・ロマネの、です。
それぞれの生産者が注力して造るワインですので、上質なワインであることには変わりないです。
グラン・エシェゾー (仏:Grande-Echezeaux)
12世紀にシトー派の修道士たちによって開墾されたとされています。
面積はエシェゾーの1/4程度の9ha、作り出されるワインも概ね均質で、畑の個性を感じさせます。
ヴォーヌ・ロマネの東端にあたり、クロ・ド・ヴージョ(仏:Clos de Vougeot)と石壁を隔てて接しますが、酒質はまるで異なります。
グラン(仏:Grande)は「広大」「偉大」ですが、ここでは後者の意味を持ちます。
「グラン・エシェゾー」=「偉大なエシェゾー」ということで、一般的にはエシェゾーの格上として位置付けられています。
ヴォーヌ・ロマネ村
リシュブール(仏:Richebourg)
ヴォーヌ・ロマネのみならず、コート・ドール全体のグラン・クリュの中でも極めて秀逸な畑といって差し支えないでしょう。
華麗、壮麗、洗練などなど、ワイン愛好家がブルゴーニュに求める要素の全てを内包しているといっても過言ではないのではないでしょうか。
優雅さと、「ヴェルヴェット」と形容されるタンニンが特徴的で、間違いなく、世界トップレベルの畑の一つです。
ロマネ・サン・ヴィヴァン(仏:Romanee-Saint-Vivant)
ヴォーヌ・ロマネのグラン・クリュの中で、最も標高の低いグラン・クリュで、255~260m、なだらかな東向きの斜面に位置しています。
同村内グラン・クリュで最も繊細とされており、同アペラシオンの中でも上質なものはミュジニーに近い酒質であるとされています。
ロマネ・コンティはもともとこの畑の一部でしたが、ここから独立した経緯があります。
ラ・ロマネ(仏:La Romanee)
ブルゴーニュのみならず、フランス最小のグラン・クリュにして、最小のアペラシオンとしても有名です。
彼のロマネ・コンティと接している点、栽培面積が狭い故の希少性。
いずれにせよ、ワイン・ファンの興味・関心を大いに誘うワインということに異論はないでしょう。
現在、ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレールのモノポールです。
ロマネ・コンティ(仏:Romanee-Conti)
繊細且つ優雅な宝石のごとき液体を生み出すこの銘醸地は、「ネックレスの中央の真珠」と比喩されます。
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(仏:Domaine de la Romanee Conti)所有のモノポール、栽培面積2ha弱のこの畑は、ブルゴーニュという宝山の中に在って、その中心に鎮座する、正に王であると云われています。
畑に纏わる、数々の逸話に彩られた歴史、非凡なテロワール、それらを背景にした神秘性については他の記事で詳しく言及するにしても、世界で最も高価なワインとして、対象をワイン・ファンに限定せず世界で最も有名なワインと言って全く過言ではないでしょう。
ちなみに、私たちのように純粋なワイン・ラヴァーにとっては腹立たしい限りの話題ですが、ワインを始めとする酒類は、投資性の高さが知られています。
20~30年前は1ボトル20万円であった同ワインは、2022年現在100万円で安いと感じられるほどの価格に成り代わってしまいました。
ラ・グランド・リュ(仏:La Grande Rue)
もともとは特級畑に挟まれた1級畑でしたが、1992年に特級畑への昇格を果たしました。
その挟む2つの特級畑がヴォーヌ・ロマネのトップ2との呼び声も高いロマネ・コンティとラ・ターシュですので、土壌的にも納得の昇格といえるのではないでしょうか。
トップ・ドメーヌの一つ、ドメーヌ・フランソワ・ラマルシュのモノポールです。
ラ・ターシュ(仏:La Tache)
同村内最南端にして、ロマネ・コンティに次ぐNo.2の呼び声高い畑です。
ロマネ・コンティと比べ、骨格がしっかりしており力強い傾向があります。
斜面下部から上部まで、細長い形状を特徴としています。
ちなみに「ターシュ(仏:tache)」は「タスク(英:task)=労役」を語源とするとされています。
1級畑
ヴォーヌ・ロマネには,14面の1級畑があります。
アン・ノルヴォー/En Orveaux
レ・ルージュ/Les Rouges
レ・ボー・モン/Les Beaux Monts
オー・ブリュレ/Aux Brulees
レ・スショ/Les Suchots
クロ・パラントゥ/Clos-Parantoux
レ・プティ・モン/Les Petits Monts
オー・レイニョ/Aux Reignots
ラ・クロワ・ラモー/La Croix Rameau
オー・ドゥス・デ・マルコンソール/Au-dessus des Malconsorts
レ・ゴーディショ/Les Gaudichots
オー・マルコンソール/Aux Malconsorts
レ・ショーム/Les Chaumes
クロ・デ・レア/Clos des Reas
中でも、「クロ・パラントゥ」「レ・ボー・モン」「レ・スショ」「オー・マルコンソール」「クロ・デ・レア」「オー・ブリュレ」が、特に有名です。
ワインの特徴
AOC規定により、ピノ・ノワールという黒ブドウ品種による赤ワインのみが認められています。
最低アルコール度数は、特級格が11.5%、1級格が11.0%、村名格が10.5%です。
「エレガントの極み」と表現されることがあるほど、華やかさ、優美さ、官能性を兼ね備えています。
上質なワインの多くはバランスに非常に優れ、骨格がしっかりとしつつ暑苦しさやけばけばしさはありません。
円やかに広がる甘味、穏やか且つ輪郭のすっきりとした酸味に、シルクやビロードを思わせるタンニン、どの要素を切り取っても秀逸です。なにより、それらが見事に調和しているのです。
最後には至福の余韻が長く続き、「ああ、ヴォーヌ・ロマネだなぁ」とワイン・ファンを唸らせます。
外観・香り・味わい
ここでは、ヴォーヌ・ロマネの村名から1級の、テロワールを表現した上級なものの傾向を見ていきます。
外観は、色調はルビーからガーネット、濃淡は明るいものからやや濃いものまで。澄んだ液体は、輝きを持ち、涙はしっかりしています。
成熟度の高さとポテンシャルの高さを感じさせ、期待が膨らみます。
香りは、華やか、正にエレガンスの極みといった様相。果実はカシス、ブラックベリー、ブラックチェリーまで感じることも。
赤から黒の薔薇、ゼラニウムから牡丹などの花、静かに黒胡椒などのスパイス。
若いうちからジャーキーを感じることもあります。
熟成を経て、紅茶、なめし皮、好ましい獣臭、茸(好ましいものだとトリュフ)などなど。
味わいは,第一印象(アタック)は豊か、且つ険しくなく、押しつけがましさは一切ありません。
円やかな甘味,輪郭を感じさせつつ出しゃばらない酸味,上質の布生地類が想起されるタンニンらが、見事なバランスでもって,飲む者を多幸感で満たします。
最後に嫋やかに伸びていく余韻は、きっと飲み手を虜にしてくれることでしょう。
多くは長期熟成が可能です。
特に最近のものに関しては、早くから美味しく感じられますが、個人的にはやはり、熟成を経ることで真価を発揮するように感じます。
最低10年、ポテンシャルによっては20年、30年の長期熟成も可能で、仮にピーク・アウトしたとて、その魅力を失わず、飲み手に感動を与える、そんなワインだと、私は思います。
主な生産者
ヴォーヌ・ロマネの代表的な生産者を以下に挙げます。
が、銘醸地であるが故、多くの銘醸造家が存在し、更に「ベスト」はワイン・ラヴァーの思い出や思い入れによって様々です。
よって、ここでは好む好まざるは別に、多くのファンが認めざるを得ない生産者の他は、その高名の列挙のみに留めたいと思います。
個々の詳細については今後の記事をお待ちいただくということで、ご了承いただければ幸いです。
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ/Domaine de la Romanee-Conti
通称DRC(ディーアールシー)。
ずば抜けた「歴史」「人気」「実力」を兼ね備えた、云わずと知れた世界のトップ・ドメーヌ。
特級畑の中でもトップ・クラスの畑、区画を25ha所有し、そこでは妥協のない栽培と醸造が行われています。
毎年10樽ほどのみ生産されているモンラッシェも有名です。
赤にしろ白にしろ、価格はボトル1本数十万円から数百万円するにも関わらず、世界中の億万長者が先を競って買い求めるこのドメーヌのワインは常に品薄状態です。
また、このワインが投資・投機の対象とされていることは、多くのワイン・ラヴァーにとっては憂うべき事象として有名です。
ドメーヌ・ルロワ/Domeine Leroy
現当主のマダム・ビーズ・ルロワは、「神のテイスティング能力」を持つとされ、半ば神格化されています。
彼女に掛かると、どのようなワインでもその「本質」を見抜かれてしまうと云われています。
元はDRCの共同経営者の一人として名を連ねていましたが、袂を分かち、独立しました。
本ドメーヌに加え、ネゴシアンの「メゾン・ルロワ」、サン・ロマン村に居を構える「ドメーヌ・ドーヴネ」も同時に運営しています。
ドメーヌ・メオ・カミュゼ/Domaine Meo-Camuzet
彼のアンリ・ジャイエと分益農法契約をしていたことでも知られるメオ・カミュゼ。
それ故、このドメーヌが所有する区画は優良のお墨付きをジャイエ氏から受けていると同義であるとされています。
ドメーヌが自らワイン造りを行うようになってからも、同氏が助言を行っていた事実から、このドメーヌを彼の後継者と見るファンもいるほどです。
ネゴシアン業「メオ・カミュゼ・フレール・エ・スール」も運営しています。
ドメーヌ・フランソワ・ラマルシュ/Domaine Francois Lamarche
ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール/Domaine du Comte Liger-Belair
ドメーヌ・ジャン・グリヴォ/Domaine Jean Grivot
ドメーヌ・エマニュエル・ルジェ/Domaine Emmanuel Rouget
ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ/Domaine Mongeard-Mugnert
ドメーヌ・グロ・フレール・エ・スール/Domaine gros Frere et Soeur
ドメーヌ・アルヌーラショー/Domaine Arnoux Lachaux
ドメーヌ・ビゾー/Domaine Bizot
……etc.
マリアージュ
ヴォーヌ・ロマネの上質なものを飲む際、個人的にはワイン単体で飲むことが多いです。
まだまだ研鑽不足である私は、このワインにおいて納得のいくペアリングを感じた経験がそこまで多くはないのです。
その中でも、数少ない至福の経験を振り返ると、やはり「腕利きシェフのレストランで」「気心の知れたワインの同志と」「ブルゴーニュに寄せた料理」という条件が揃っていたように思います。
以下に、申し訳程度に、メニューを列挙し、本記事の結びといたします。
牛頬肉 赤ワイン煮込み
玉葱は完全に溶けているけど、十分に効かせて。マッシュルームは触感が残る程度にさっと炒めたあとに加えてください。
インゲン、ジャガイモのピューレなど、彩を最低限添えて、最後に黒胡椒を振ってあげてください。
鴨のポワレ ソース・カナール・ド・フランボワーズ
鴨を噛み締める度に流れ出る肉汁とその肉質が、個人的には大好きです。
元より赤ワインとの親和性が高い食材ですが、ソースをワインに寄せることによって、更に相性は高まるように感じます。
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