【最終更新日】2025年4月11日
ブルゴーニュ地方の中心に位置するヴージョ村。ここには、フランスワイン界でもひときわ特別な存在感を放つ特級畑、「クロ・ド・ヴージョ(Clos de Vougeot)」があります。
その名を聞けばワインラバーの心がざわつき、同時に「当たり外れがある」と囁かれるこの畑は、一体どんな歴史を辿ってきたのでしょうか?
この記事では、クロ・ド・ヴージョの概要、歴史的背景、そして今注目すべき生産者までをわかりやすくご紹介します。
【動画でも解説しています】
目次
クロ・ド・ヴージョの歴史|偉大なる特級畑の栄光と混迷
クロ・ド・ヴージョとは?
クロ・ド・ヴージョは、ブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイ地区、ヴージョ村にあるグラン・クリュ(特級畑)のひとつです。
畑は約50.6ヘクタールと特級畑としては非常に広く、実に100を超える生産者によって分割所有されています。
生産されるワインはすべて赤で、品種はピノ・ノワール。
「クロ(Clos)」とは石垣などで囲まれた畑を意味しており、クロ・ド・ヴージョも中世からの石垣に囲まれた歴史的な区画です。
この畑の最大の魅力は、歴史的背景と格式の高さ、そして条件が整ったときのワインの素晴らしさ。
一方で、その広さと多様な所有者の存在から、品質にばらつきがあることもよく知られています。
歴史:修道士からナポレオン、そして100人の生産者へ
クロ・ド・ヴージョの歴史は、12世紀にさかのぼります。
この畑は、シトー派修道士によって開墾され、ワイン造りの修練と祈りの場として使われてきました。
修道士たちは細かな区画ごとの土壌や日照の違いを研究し、まさに“テロワール”という概念を体現した存在でした。
フランス革命後、教会の土地は没収され、クロ・ド・ヴージョも国家に接収。複数の所有者に分割されることになります。
その後、19世紀に登場したのが実業家**ウーヴラール(Jean-Antoine Ouvrard)です。
彼はナポレオン戦争時に軍需品供給などで巨万の富を築いた人物で、その資金を元にクロ・ド・ヴージョをほぼ一括で買収し、再びひとつの畑として統合しました。
しかし、その後の相続や売却により畑は再び分割されていきます。
さらに20世紀初頭には、ドイツ資本の企業による買収の動きもありました。
フランスワイン文化を守るべきという国内の声により、生産者たちは一致団結してこの買収を阻止します。
ただし、皮肉なことにワイン造りそのものについては意見がまとまらず、現在のように100を超える生産者がそれぞれ独自のスタイルでワインを造る畑となったのです。
品質のばらつきと、評価される生産者たち
現在、クロ・ド・ヴージョはその歴史的価値と格式から、ワイン愛好家の間では常に注目の的です。
しかし、前述の通り、所有者の多さゆえにワインの品質には大きな差があります。
だからこそ、「どの造り手が手がけたクロ・ド・ヴージョか?」が極めて重要です。
以下は、特に評価が高い主な生産者たちです。
クロ・ド・ヴージョの主な優良生産者
ドメーヌ・ルロワ(Leroy)
極端なまでの低収量と完璧主義。クロ・ド・ヴージョでも圧倒的な存在感。
メオ・カミュゼ(Méo-Camuzet)
力強く、熟成に耐える構造。果実味とタンニンのバランスが見事。
ドメーヌ・アンヌ・グロ(Anne Gros)
エレガントで繊細。女性らしい感性が生きる優美なワイン。
グロ・フレール・エ・スール(Gros Frère et Sœur)
リッチで飲みやすく、親しみやすいスタイル。
ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレ(Vougeraie)
ビオディナミ実践。緻密で調和の取れたクラシカルな仕上がり。
その他にもジャン・グリヴォ、ラマルシュ、シャルロパンなど、素晴らしい生産者が名を連ねています。
まとめ:クロ・ド・ヴージョは“選んでこそ”真価を発揮する畑
クロ・ド・ヴージョは、その壮大な歴史と文化的価値において他の畑を圧倒する特級畑です。
しかし、実際にワインを選ぶ際には「ラベルにClos de Vougeotと書いてあるから高品質」とは限らず、生産者ごとの実力とスタイルを見極める必要があります。
修道士の理想、実業家の夢、国家間の思惑、そして現代の造り手たちの個性。
すべてが折り重なって今のクロ・ド・ヴージョがあると思うと、その1杯には歴史の重みが感じられるはずです。
次にクロ・ド・ヴージョを手に取るときは、ラベルのその先にある“物語”に、ぜひ思いを馳せてみてください。
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