【最終更新日】2022年3月19日
ひょっとしたらあなたは飲食店で勤務し、ソムリエ試験に興味があり、なにから手を付けようかと思案しているのかもしれない。
あるいは酒販店や輸入業をしていてワインを取り扱ううちにソムリエ試験の全体像を探ろうとしているのかもしれない。
ソムリエ試験はワインに興味がある人であれば一度は考えるほど存在感があり、現代社会でワインに関する業務に携わるのであれば避けて通れない資格だといえる。
「言葉の響きがなんとなくかっこいい」
「将来のステップアップにつながるかも」
「ソムリエ資格を持っている自分ってイケてるかも・モテるかも」
最初のきっかけはたいていこの程度かもしれない。私も大した差はなかった。
確かに”ソムリエ”という言葉の響きは神秘めいていてなんとなくかっこいいと思うだろう。
資格を取得することで道が開けることもあるだろうし、その結果モテることもあるかもしれない。
ただし、あなたの思いは一部分はその通りで、一部分は間違っている。
ソムリエ資格はワイン業界全体から見ると登竜門というか、「持っていて当然」というものなのだ。
そのため資格を持つことでようやく舞台に上がったととらえるほうが無難で、自動的に道が開けるというものではない。これが現実だ。
「なんだ、その程度なんだ」
あなたはこう思うかもしれないが、”舞台に立つ”というのはあなたの人生にとっては大きなアドバンテージをもたらすのだ。
・ソムリエコンクールで活躍し、メディアで紹介される
・勤務するイタリアンでワインの仕入れを任され、マネージャーへの道が開ける
・ワインの輸入業で独立開業する
・有名レストラン・ホテルにヘッドハンティングされる
・ニューオープンのフレンチレストランの支配人として招かれる
これらのわかりやすい成功の形であればワクワクしないだろうか?
これらの成功の形はソムリエの資格を持っていることでぐっと引き寄せることができるし、逆にソムリエの資格を持たないままではほかの人との競争で敗れる可能性が高い。
ワインに携わるのであれば、まずはソムリエの資格を取得して、「自分はワインに詳しいんです」というアピールを対外的にすることが肝心だといえる。
まずは、舞台に上がろう。
ここでは、その舞台に上がる(ソムリエ試験に合格する)全体像とコツを誰にでもわかるように、どこよりも詳しく説明したいと思う。
私は23歳の時にソムリエ資格を取得し、20代でソムリエコンクールに出場し、30歳の時に優勝した経験がある。
ソムリエの資格を取得することで様々な人と出会えたし、ステップアップもできた。
その経験をできる限りフィードバックしたいと思う。
大変に長い記事だが、読んですぐに本物の情報だということがわかるだろうし、くだらない宣伝や我田引水も絶対にしない。
安心して読み進めてほしい。
目次
ソムリエ試験に合格するまで
ソムリエとは?
ソムリエ試験の前にソムリエとは?を簡単に知ろう。
ソムリエはもともとフランスなどのヨーロッパでレストランでワインの販売を担当する係のことだ。
ワインを担当するのだから当然ワインに詳しくなくてはならないし、その結果お店の花形として扱われていた。
日本でソムリエという言葉が一般的に認知されてきたのは1990年代で、食生活の変化とともに一気に浸透した経緯がある。
しかし、徐々にエスカレートしていった結果ソムリエという言葉が独り歩きを始め、野菜ソムリエ、温泉ソムリエ、肉ソムリエなどの
「なんでもいいからソムリエってつけとけ」
的な流れがあるのは事実だと思う。
ただし本来の意味でのソムリエはワインを中心としたアルコール販売のプロであって、そのほかのソムリエは単なる”その分野に詳しいプロ”というとらえ方でほぼ間違いないだろう。
このサイトでもソムリエ=ワインを中心としたアルコール販売のプロととらえている。
まずは全体像を知ろう
ソムリエ試験は国家資格ではないので極端な話名乗ったもの勝ちだ。
そのためソムリエ団体はいくつか存在していて、それぞれ独自に呼称資格試験を行っている。
しかし、日本でのソムリエ界で圧倒的な存在は日本ソムリエ協会で、日本ソムリエ協会の認定試験に合格すれば堂々と「自分はソムリエだ」といえると思う。
日本ソムリエ協会の試験は毎年8月にあって、最終3次試験までは11月という長丁場だ。
一次試験は筆記試験、二次試験はテイスティング、三次試験は実技になるが、これらにすべて合格してはじめて資格を取得できるのだ。
そのため独学だけではカバーできないと判断する人はワインスクールのソムリエ試験講座がある。
高い金額を支払ってでも合格したい。こう思わせるほど魅力があって、かつ難易度が高いのだ。
ソムリエ資格を取得してできること
では、ここでせっかちなあなたは
「じゃあ、ソムリエ資格を取得することで何ができるようになるんだよ」
という疑問を持つと思う。
しかし、前述したようにソムリエは極端な話、一団体の呼称資格なので資格を取得したからと言っていきなり華々しい毎日が待っているかというと、それは違う。
取得後に様々な知見を深め、積極的に自己啓発し、コンクールなどに参加することによって少しずつあなたはソムリエとして認知されてくるだろう。
では、認知されればどんなことができるだろうか?
有名レストランのソムリエやマネージャーになり、さまざまなお客様と知り合ったうえで独立開業という人もいるし、ワインの輸入に携わることもできるだろう。
コンクールで活躍した人であれば知名度を利用してワインスクールを開業する人もいる。
こんなわかりやすい成功事例だけでなくとも、例えば勤務するレストランでそれまではただの下働きだったのがワインの仕入れを任されるかもしれないし、そうなるとお店での存在感も増すだろう。
任されることが増えれば当然経験値も増える。ある程度経験を積んだうえで海外修行という道も現実味を帯びてくる。
これらの成功例は、ソムリエ資格があるとないのとでは相当の差があることは簡単にわかると思う。
2017年度のソムリエ試験の過去問と解説は、こちらをご覧ください。
試験の難易度と合格率
ソムリエ試験はこれらのように、飲食業界でワインに携わるのであれば避けては通れない道なのでそれなりの難易度になる。
誰でも簡単に受かって一年間に何回も試験があるのでは意味がないのだ。
実際のソムリエ試験の難易度は、もちろん人によってまちまちだが合格率は30%前後、一次試験の筆記試験の合格点はおおよそ70%と言われている。
筆記試験問題を見ればわかるが、勉強していない人が見ても何が書いてあるのか問題の意味が分からないだろう。
それくらい日常とはかけ離れた問題をこなさなければならないのだ。
安心して合格できるというレベルだと、ある程度の予備知識がある人でも一日2時間程度の勉強時間で半年程度、全くの初学者であれば事前準備も含めて1年間はかけたほうがいいと思う。
ワインスクールか、独学か
ネットで検索するとワインスクールに行かないと難しいというサイトがあったり独学でも大丈夫というサイトもある。
これは何を意味するかというと
「独学でも合格できるけど、ワインスクールに行ったほうが有利だよね」
というラインの難易度にあるということだ。
実際に私はワインスクールに通ったのはソムリエの試験に合格した後だったので独学で合格できるのはその通りだと思う。
ただし、例えば宅建試験や行政書士試験のように筆記試験のみの試験とは違い、ソムリエ試験はテイスティング試験があるのでワインスクールに通うメリットはやはりそこにあると思う。
筆記試験のみの試験であれば自分で自分を律することで合格はできるかもしれないが、テイスティングであれば自己流だけではやはり限界がある。
あなたが時間とお金に余裕があるのであれば試験の年の初めころにワインスクールを検討するのもいいだろう。
ソムリエ試験に向いている人
ソムリエ試験は得点によって合否が決まるので当然向き不向きがある。
そのため「この人はソムリエ試験に向いているなあ」という人は確実に存在する。
一番は筆記試験の勉強をコツコツできることだし、テイスティングでトレーニングを定期的にできる人だが、それ以上にワインに対してフラットな目を持っているかどうかが重要だ。
ソムリエ試験の教本は「なんでこんなところまで覚えないといけないんだ」というところまで細かく記載がある。
それらの全分野に対してまんべんなく勉強するには、ワインに対してフラットな姿勢を持つことが重要だ。
では「ワインにフラットな目ではない」とはどのようなひとだろうか?
耳が痛い人や面白く思わないはいるかもしれないが、それは図星だからだと思ってすこし読み進めてほしい。
ソムリエ試験に向かない人
個別のワインに対して強烈な思い入れがあったり、逆に個別のワインに対してよく思わない、という傾向がある人は苦戦する傾向にある。
・ブルゴーニュワインについては誰にも負けない知識がある
・ビオワイン以外はワインじゃない
・ワインはイタリアワインに尽きる
・一本10000円以下のワインは、個性に欠ける
このようなワインラバーは多く、確かにそれらの分野においてはこだわっているので知識も深いものだ。
ただしソムリエ試験となるとそんな個別の思い入れはどうでもよくて、まんべんなく勉強する必要があるし、思い入れに反する知識も仕入れないと合格はできないのが現実だ。
特に専門フレンチやイタリアンに努めている人は要注意だ。
これらのお店の中には「フレンチこそ至上の料理」「イタリアンが世界のトレンド」とか思っている人も多い。
もちろんこれらの思い入れは大事だが、ソムリエ試験では足かせ以外の何者でもないのだ。
逆に言えば、試験に合格したあとこそ思い入れを発揮しよう。
その後のステップアップ
ソムリエコンクール
では、あなたがソムリエ試験に合格したとして、その後のステップアップはどのようなものだろうか。
正統派のソムリエとして羽ばたきたいのであればやはりソムリエコンクールに出場し、上位入賞するのが一番の近道だろう。
ソムリエ協会の会長や副会長はじめいわゆる上層部はほとんどがソムリエコンクール入賞者だ。
そのためソムリエとして優秀=コンクール入賞者という図式が成り立っているのが現実だ。
ソムリエコンクールはソムリエ試験とは違い、完全な相対評価なのであなたが頑張ってもほかの人があなた以上に頑張ればあなたは埋没することになる。
逆にあなたが誰よりも頑張れば入賞は近づき、その結果がステップアップにつながるということでもあるだろう。
ワイン業界でのステップアップ
ソムリエ試験は飲食店だけではなく、インポーターや酒販店などのワインに携わる人全般の試験だ。
そのため例えばワインの輸入業で独立開業する人もいればワインのネット販売などで起業する人もいる。
これもステップアップとして有力な候補だろう。
あなたがワインのインポーターを選ぶとき、ワインのことは何も知らない大企業からの子会社出向の社長の会社とソムリエの資格を持つ社長の会社のワインどちらを買うだろうか?
私だったら前者の会社はなんとなく意気込みを感じないし、仮に会社が大きくても商売としてワインを扱っているだけかもと勘繰ってしまう。
逆にソムリエの資格を持ち、社長自らホームページなどでしっかりと自分の言葉でワインを解説しているインポーターであれば「よし、この会社は信頼できる」となるだろう。
ワインバーの開業
カウンターのお店で自分の好きなワインを扱い、うまいつまみを出す。これはワイン好きならだれもが夢見る理想の形だろう。
ソムリエの資格を持てば当然ワインバーの開業は選択肢に入るだろう。
私の周りにもこのような夢を持っている人は少なくない。
バーの開業は以前とは違い、資金的にも社会的な信用的にも随分とハードルが下がった。
開業資金に何千万円も用意する必要はないし、10坪程度のバーなら数百万円あればなんとかなるだろう。
ただし独立開業はゴールではなくスタートだ。
生き残るのはソムリエ試験の何倍も努力しなければならない。
そして生き残った結果あなたのワインバーが本当にお客様に愛された場合はそれこそ一生の財産になるだろう。
まとめ 橋は、渡ったもの勝ち
いかがだろうか?
ここまで読んだあなたはおそらくソムリエ試験に対してワクワクしているのではないだろうか。
ソムリエ試験はワイン全体を網羅的に勉強できて、そしてそれらはこれからあなたがワイン業界で生きるためには必須であり、道を開く可能性を最大化するきっかけなのだ。
学生の頃は定期的に試験があり、入学試験があり、就職活動がある。
これらは待っていれば向こうから手を差し伸べてくれるが、社会人であればこうはいかない。
ソムリエ試験だって同様だ。
会社で強制的に受けさせられる以外であれば、あなたが自発的に申し込みをしなければ受験はできないのだ。
あなたもうすうす気づいていると思うが、現代社会は何が起こるかわからない時代だ。
そのため昨日の続きが今日で、今日の続きが明日という約束はどこにもない。
それであれば、思い切って手をあげ、橋を渡ろう。
確かにソムリエ試験は手ごわいし、あなたが躊躇する気持ちも理解できる。
橋の向こう側にはひょっとしたら無限の可能性が待っているかもしれないし、何もないかもしれない。
ただし、橋を渡った人にしか見えない景色というのは確実にある。
ここまで読んだあなたは、きっと橋を渡った景色を見たくてここまで読んだのだろう。
あなたには可能性がある。素晴らしいワインの世界を、その案内人になる可能性だ。
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