飲食店の創業計画書のひながた①|創業計画書の全体像と心構え

【最終更新日】2020年8月30日

飲食店の開業で融資を受ける場合に日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資をお考えの方は多いでしょう。

できればあなた自身で融資手続きができればそれが一番ではありますが、要件を満たし、そのうえで創業計画書を作成するのは簡単ではありません。

飲食業界で勤務している人にとっては創業計画書をスラスラかける人はまずいません。

もし書けたとしても、融資は他者との競争でもありますので完成度は高ければ高いほどいいのです。

融資希望者全体の融資実績は10%程度と言われているところからも、融資のハードルは簡単ではないことがわかるかと思います。

 

では、最初からあきらめて行政書士のような書類作成のプロに依頼をするのがベストなのでしょうか?

私はそうは思いません。

スタートアップであれば出費は一円でも押さえるべきですし、「自分のお店だからこそできる限り自分でやりたい」という思いをかなえるためにもあなたが自分でできることがベストだと思うからです。

ただし、ではどの程度が融資を受けられるレベルの創業計画書なのか、どこまでの完成度が求められるのかはあまり公開されていません。

 

書類作成のプロからすれば簡単に自分の作成した計画書を公開するのは避けたいところですし、「それであればウチに依頼してくれ」というのが本音だからです。

もちろんプロからすればこの思いは当たり前のことですし、できる限り出し渋りをしたくなるのが人情でしょう。

ただし、それでは結局ブラックボックスのまま自分でやるかどうかを判断することになりますし、開業を考えている人からすれば情報不足といえます。

 

そこで、ここでは、実際に当事務所が依頼を受け、日本政策金融公庫から1500万円、制度融資で1500万円の融資を受けた実際の創業計画書をご紹介し、そのポイントをすべてお伝えします。

今回の創業計画書は、千葉県でお好み焼き屋のチェーン店で開業する際のものを紹介していますが、よくお読みいただくことで個人経営のお店にも対応できるようになっています。

また、合計3000万円を引き出した創業計画書ではありますが、小規模な融資(~500万円程度)にも十分参考になるでしょう。

 

もちろん、記事内容は個人情報が含まれていますので住所やデータなどはすべてフィクションです。

さらに、特定の個人がわからないように部分的に、あるいはその大部分を書き直ししています。

 

真剣に読み込んでいただければ、最終的にはあなた自身が創業計画書を書き込めるようになるくらいの内容に仕上げています。

大変に長い道のりではありますが、ぜひ最後までお読みいただき、プロに依頼するのか、あるいはご自身でやるのかの参考にしてください。

 

 

飲食店開業・融資の創業計画書

最初に全体像をつかもう

まず最初に、日本政策金融公庫にせよ、制度融資の窓口にせよ、提出する書類はさほど変わりはなく、おおむね以下の書類だととらえましょう。

・事業計画書

・資金繰り表

・必要資金と調達方法の表

この三つで、残りはその根拠を示す書類だったり、窓口ごとのローカルルールで必要な書類です。

はっきり言えば、この三つ以外の書類は差が出せませんし、この三つの完成度で融資の可否は決まるといっていいです。

 

後述しますが事業計画書が主体となっていて、その補足説明で資金繰り表と必要資金と調達方法の表があるととらえましょう。

 

チャンスは何回もない

創業計画書の作成で最も注意するべきなのは、基本的にはチャレンジは一回というところです。

もちろん、一度やってダメな場合は半年~1年を過ぎて再度チャレンジすることはできますが、金融機関には不可の履歴が残りますのでハードルが上がってしまいます。

また、創業融資はいつ、どこで、どのような事業をするのかを確定させたうえで創業計画書を作成します。

そのため押さえていた物件や見積もりを出した仕入れ先、従業員に対して次のチャレンジまで待ってくれということになりますが、それは期待通りにいかないことのほうが多いでしょう。

そのため、創業融資のチャンスは一度しかないという気持ちで臨むべきで、創業計画書の作成もそれこそ全神経を注いで完成させるべきなのです。

 

創業計画書作成の心構え

創業計画書のひな形↑

長い期間の修行や実務経験を経て、やっと準備がととのったのですから、はやる気持ちもあるでしょう。

また、前述のように

一度きりのチャンス=失敗が許されない

となるとどうしても肩に力が入り、本当の実力を出し切れずに終わってしまう可能性もあります。

そこで、具体的には以下のようなところに集中し、創業計画書を書き進めることをお勧めします。

 

・情熱1割、事実9割で説明する

・できる限りイメージしやすいように具体的に説明する

・読みやすく、テンポよく読めるように気を遣う

・「良い」「悪い」の二元論はできる限り避ける

・ダメだと思った場合は潔くプロに依頼する

 

この4つをかならず押さえておきましょう。

 

心構え①情熱1割、事実9割

これは特に飲食業界の人には多い傾向にありますが、どうしても情熱が先行してしまって事実が伝わらないため、融資担当者に幼稚さを指摘されてしまうのです。

例えば、有名な料理店で修業した人からすれば、「いい料理をできる限り低い料金で提供したい」という思いがあるとしましょう。

この思いそのものは素晴らしいと思うのですが、では「いい料理」とは何なのか、その「いい料理」を提供することで借り入れが返済できるのかは伝わりません。

また、「できる限り低い料金」では利益が圧迫するので通常は経済的に不整合を指摘されることになります。

 

この場合、例えば

・市場で働く知人から新鮮な魚介類を安く提供してくれる契約をした

・マーケティング的にこの場所は〇〇料理の他店舗の出店がないので優位性がある

・家賃が安く固定費が抑えられるため、安く提供しても利益が上がりやすい

などの具体論で理論武装するのです。

 

情熱はもちろんないと困るのですが、創業計画書は情熱を伝える所ではなく、事実を伝える局面です。

そのため、1:9の割合くらいがちょうどよく相手に伝わると考えましょう。

 

心構え② できる限りイメージしやすいように工夫する

自分の考えや思いを書面にするのは、案外むずかしいものです。

しかも、飲食業界にありがちな「おいしい料理」「おしゃれな内装」「気の利いた接客」などは、業界内であれば理解してくれても融資担当者には通用しません。

そのため、例えば料理や内装であれば写真を2~3枚用意して見た目のきれいさをアピールすることも大事です。

接客技術であれば「具体的にここを徹底する」というポイントをあげ、スタッフへの教育カリキュラムを簡単に表にするなどの工夫もいいでしょう。

あまりにも膨大な説明では読むほうが疲れてしまいますので逆効果ですが、あなたの料理や接客への熱意は工夫次第でイメージしやすくなるものです。

 

心構え③ 読みやすく、テンポよく読めるように工夫する

同じことを伝えるのであれば、やはり読みやすいほうが選ばれやすいですし、それが人情というものです。

融資担当の窓口は多数の申込者の創業計画書を読んでいるので、それであれば読みやすいほうが好感が持てるものなのです。

読みづらい文章とは、専門用語が羅列してあったり、独りよがりであったり、文章ばかりでどこで息をつけばいいのかわからないような文章です。

逆に、よみやすい文章とは、

 

・平易な言葉を用いる

・ところどころにイメージ画像や余白を用意する

・一つの文章は長くても3行程度にまとめて改行をする

 

などで一気に改善されます。

こうなるとテンポよくサクサク読めるので、好印象であると同時に審査の時間も短くなることも期待できます。

 

ところで、ここまで読んだあなたは、この記事をスラスラ読めていることに気づくのではないでしょうか。

この記事は↑で紹介した「読みやすく、テンポよく読める」ように気を使い、書き込んでいます。

自分の書きたいことを書きたいように書くのも大事ですが、それ以上に読む側にとっての目線を大事にしていることが表れているのかと思います。

 

心構え④ 「良い」「悪い」の二元論は避ける

これは特に20代~30代の方に多いのですが、物事をとらえるのに単純な「良い」と「悪い」の二つで論述をするのはできる限り避けましょう。

例えば、次のような一文を読んで、あなたはどのように考えるでしょう?

 

・日本全国の農家を直接訪ねて自分が直接買い付けをした本当に良い食材だけを使った料理

・マニュアル通りの悪い接客ではなく、心のこもった一人一人に合わせた良い接客

 

この二つの文章は、単純に食材や接客を良いと悪いの二つで説明していますが、なんとなく押しつけがましいと思いませんか?

融資担当者からすれば、

 

日本全国を回るのだったら、その費用はどう捻出するのだろう?

低価格のお店なのに一人一人に合わせた接客は、逆に不経済では?

 

という見方にもなってしまうかもしれません。

 

あなたにとっての良い悪いは、必ずしも他人にとっての良い悪いではありません。

もちろんこだわりは大事ですので、「良い」「悪い」は部分的に一部分で使うにはいいかもしれません。

しかし、あまり多用すると独りよがりなんじゃないか、視野が狭いのではないかと心配される可能性があります。

 

 

心構え⑤ ダメな場合はプロに依頼しよう

創業計画書を書き進めると、向いている人はサクサク書き進めることができますが、一向に筆が進まない人もやはり多くいます。

サクサク進まないということは、内容にも完成度は期待できないということです。

何日間もかけても最初のページから先に進まないような場合や、途中でこんがらがって修正が聞かないような場合は、残念ですが潔くあきらめることも重要です。

確かに創業計画書があなた自身でできるのであればそれが一番であることは事実です。

しかし、だからといってかじりついてまでやっても決して成功の確率は高まりません。

融資は受けないと何も始まりませんし、受けてからが本当の勝負なのです。

それであればいっそのことプロに依頼して、身軽になることも一つの手段でしょう。

 

作成環境

最後に、創業計画書の作成環境として、最低限、ワードとエクセルは必要です。

パソコンが苦手な人には厳しいかもしれませんが、手書きの創業計画書は今どき通用しません。

もちろん、中には達筆でパソコンを超えるほどのきれいな出来栄えの計画書を作成できる人もいるかもしれません。

しかし、それはレアケースですし、普通は何枚も書き込めば誤字も出てくれば修正も必要になるものです。

さらに、創業計画書には資金繰り表を添付するのでこればかりは手書きでなんとかなるものではありません。

もちろん、ワードやエクセルでなくてもキングソフトの類似品でも構いません。

 

私たちプロもほとんどの人はワードやエクセルで作成しています。

また、あなたが開業してもこの二つはどこかで必要になるものです。

安いものであればソフト込みで5~7万円で購入できるでしょう。

先行投資としてご購入されてもいいかもしれません。

 

 

 

 

いかがでしょうか。

前置きが長くなってしまいましたが、次回からいよいよ具体的に創業計画書を見ながら解説します。

 


 

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