ソムリエ論述試験 ポップ(POP)の書き方とポイント

2023年度ソムリエ試験は路線変更をしたところが多く、中でも論述のポップには驚いた、という方も多いでしょう。

ポップ(POP)は、Point Of Purchaseの略で、消費者にとってわかりやすく「ここがウリ」という購買意欲を掻き立てる販促ツールのことをさします。

 

これまでソムリエの論述試験は文字で回答する筆記形式の設問でしたので、受験生は「まさか」という心理になったはずです。

ただし論述試験でのPOPの出題は、ソムリエ試験の行く末を検討すると、ソムリエ協会側の「こういうソムリエになってほしい」というメッセージととらえることもできます。

 

これまでソムリエ試験は、特に筆記試験では単純な暗記で回答できる問題も多く、過去問や練習問題をこなして受験勉強をする方がほとんどでした。

そのため数年前までは「ソムリエ試験は過去問・練習問題で対策すればOK」という記事も多かったように思います。

 

確かに過去問や練習問題の取り組みは重要ですが、ソムリエにとってもっと大事なのはお客様の意図を読んだり、あるいは「何が問われているのか?」を考える推察力です。

にもかかわらず他人が用意した練習問題や過去問で準備をしても、肝心の「考える力」が養われませんので、これではソムリエ協会としては何とかしたいと考えるのは当然のことでしょう。

 

資格試験の難易度的にも、正直過去問や練習問題をこなして合格できる試験は、決してレベルは高くありません。

資格試験でも一般的に難易度が高いとされる試験になればなるほど考える力、推察力が求められます。

にもかかわらずいつまでたっても「ソムリエ試験は過去問、練習問題でOK」というのは、悪い表現をするとこの試験がなめられているのです。

 

試験の難易度と権威性はある程度比例しますので、当然ソムリエ協会側は経営合理性から、難易度を上げ、「ソムリエ試験は難しい」という合格プレミアをつけたいと考えるはずです。

そこで論述試験にも新しい傾向としてPOPの出題を出し、受験生にその場で考える力、その場で推察をする力を問おうということなのでしょう。

 

おそらく、ポップの作成は今後も毎年とは言わずとも出題される可能性はありますし、仮に出題がされなくても、ポップの作成はソムリエの本文である「ワインを売る」の縮図になります。

ここでしっかりとポップ作成の基礎を押さえて、自信をもって論述試験に臨めるようにしましょう。

 

なお、この記事は、「なぜこうなるのか」をできる限り多く記載しています。

単純に「ポップはこう書けば点数がもらえるよ」と教えても、そのパターン以外の出題がされれば対応ができず、最悪な場合それが引き金となって不合格になることもありうるからです。

ここは面倒であっても「なぜそうなるのか」について、できる限り踏み込んで理解をするようにしましょう。

 

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ソムリエ論述試験 ポップ(POP)作成の書き方とポイント

ソムリエ試験は「暗記型」から「理解型」へ

僕が運営するWBSでは、ソムリエ・ワインエキスパート試験は「暗記型」から「理解型」にシフトしていると解説しています。

ソムリエ試験が暗記型から理解型へとシフトしている理由は、暗記型では記憶の質が低く、実務において適切な対応が困難になるからです。

試験合格にプレミアを出すことは、主催者側としては当然の考えでしょう。その意図からも、いつまでも暗記型の試験ととらえられるのは避けたいはずです。

 

暗記型の学習は極端な話、他人が作ったものを覚える作業なので、試験範囲の知識を単純に覚えるだけで、応用力や柔軟性に欠ける傾向があります。

そのため、実務で求められる問題解決能力や状況に応じた判断力が十分に発揮できません。

 

一方、理解型の学習では、知識を体系的に理解し、背景や原理を把握することで、柔軟な対応が可能となり、記憶の定着も良くなります。

これにより、試験だけでなく、実際のソムリエ業務においても高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

ソムリエ協会側が理解型の試験にしたいと思うのは、試験合格後のプレミアを考えても当然の流れと言えます。

 

 

ポップ(POP)作成は理解型の試験として最適

では、なぜ2023年度試験でいきなりポップの作成が問われたのでしょうか?

おそらく、論述試験を取り入れたこと自体が「理解型へのシフト」に舵を切るきっかけだったのでしょう。

 

ですが、文字ベースの論述ではどうしても「このように書けばいい」という攻略法があり、理解型を試すには限界があったのでしょう。

また、記述式の論述では、少し難しい問題を出すと今度は「覚えている、覚えていない」の理屈になってしまい、「結局ソムリエ試験は暗記の試験か」と評価をされてしまうのです。

 

しかし、ポップ作成であれば白紙の中に自身のイメージを構築し、お客様にとって何が知りたい内容なのかを具現化するという、推察力、思考力、実行力の問われる形式です。

もちろん、ポップ作成が今年度以降も出題されるうちに、ある程度の模範解答のようなものは出現するだろうし、これを考慮して新しい形式の問題が出現するはずです。

 

ただし、それであっても、根本的には「推察力」「何が問われているのか」「何が求められているのか」を考える力さえあればその場で対応が可能ですし、あなたの地力は向上します。

ポップ作成は理解型の試験としては有効ではありますが、単なるポップ作成のテクニックに終わらせず、最終的にはあなたの推察力、考察力を養うようにしましょう。

 

2023年度試験の概要

それでは、2023年度試験のポップ作成の試験内容を振り返りましょう。

【 問題 1 】

テイスティング試験で供出された1番目のワインをワインショップで販売するにあたり、POP(Point of Purchase)を作成することになりました。自身のテイスティングに基づき、枠内を自由に使用してコメントを書いて(描いて)ください。

1番目のワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2021 年(フランス/ボルドー)

 

の記載でした。

ここではまず、ポップが何かを知らないと回答できませんので、知らなかった人には酷な試験内容でしょう。

ただしソムリエの実務家としての試験と考えれば、「ポップがわからない、というのはそれだけで大減点だ」というソムリエ協会側の意図でもあるかもしれません。

 

では、模範解答を見てみましょう。

 

採点のポイント

一番のポイントは「買いたくなるか」。

テキストのみでも評価、イラストなどデザイン性のあるものは特別加点とした。

 正確な情報の記載(銘柄、ヴィンテージ、価格など)

 ワインの説明(特徴、味わいなど)

 シチュエーション提案(楽しみ方など)

 購買意欲をそそる文言など

 

となっています。

PDF形式の2023年度模範解答はこちら→

 

何が問われているのか?を考える

ここで、模範解答を覚えてポップの書き方を箇条書きで覚えても、新しい形式になれば何も書けません。

なので、ここから「なぜこのような模範解答になるのか」を考えましょう。

 

当たり前ですが、ポップは購入意欲を誘い、購入行動につなげることが目的になります。

買う気にさせることが目的ですが、じゃあ耳障りのいいことをただ並べればいいのかと言われればそれは違います。

事実と違うことをいって購入させても後でクレームになるし、最悪悪評につながります。

 

そのため、嘘がないこと(事実を述べる)は大前提になります。

何が事実で何が意見や願望なのかがわからなければポップは書きようがありません。

ここは日ごろから自分の発している言葉は果たして事実なのか、願望なのか、意見なのかをはっきりと棲み分けるようにしましょう。

 

これをふまえた上で、ポップの項目はざっくりいえば以下のようになります。

簡単な理由も添えてありますので、必ず理由も理解しましょう。

 

①ワインの名称:

ワインの名前は消費者が選択する際の基本情報です。

ブランド名やワインのスタイル(赤、白、ロゼなど)も明記することで、顧客がすぐに興味を持てるようになります。

ここに事実と違うことを書くのは購入の前提条件にかかわってきます。

事実と違うことを書くのは絶対NGとなりますので、ここは細心の注意を払いましょう。

 

②価格:

価格は購入決定に直結する重要な要素です。顧客は価格を見て、自分の予算に合うかどうかを判断します。

また、割引やセール価格がある場合、それを明確に示すことで購買意欲を高めることができます。

 

本番では価格はわかりませんが、模範解答に価格が記載されている以上、書いた方がメリットは大きいはずです。

合理的に推測すれば、ポップには価格は推測で書くしかありません。

 

③生産地・産地:

ワインの生産地や地域は、味わいや品質に影響を与える重要な情報です。

特定の地域やブドウ品種にこだわる顧客も多いため、これらの情報を提供することで、顧客が選びやすくなります。

今回であれば、ボルドー地方はフランス南西部のため、「フランス南西部、ボルドー地方産」などと書くとイメージがしやすいということになります。

 

④味わいの特徴:

ワインの味わいや香りの特徴を簡潔に説明することで、顧客が自分の好みに合うかどうかを判断しやすくなります。

例えば、「果実味が豊かで、スパイシーな余韻が楽しめる」などの表現が有効です。

また、さっぱりしているのか、複雑なのか、フルボディなのか、ライトボディなのかもわかりやすい表現になります。

 

⑤料理とのペアリング、シチュエーションの提案:

ワインと相性の良い料理を提案することで、購入の際の決め手となります。

顧客がそのワインをどのようなシーンで楽しめるかをイメージしやすくなり、購買意欲が増します。

また、シチュエーションとしてどういうシーンにふさわしいかもソムリエにとっては必須の能力でしょう。

 

⑥受賞歴や評価:

ワインが受賞した賞や、専門家からの高評価があれば、それを明記することで、品質や信頼性をアピールできます。

これにより、顧客がそのワインを選ぶ際の安心感が高まります。

 

ただし、⑥については試験では受賞歴などの前提条件がわかりませんので、書きようがありません。

適当に受賞歴を書いたらそれこそ事実に反すると減点になる可能性があります。

そのためここについては記述しないほうが良いでしょう。適当に金賞受賞とか書いたらダメです。

 

これらの項目は、顧客がワインを選ぶ際に必要な情報を網羅し、購入を促進するために不可欠です。

情報が明確かつ簡潔に提供されることで、顧客の選択が容易になり、最終的には売上の向上につながります。

 

誰に向けて書くのか?

今回の試験内容をよく読むと、”ワインショップ内のポップ”になります。

ですが、そのワインショップがどういうものかは記載がありません。

専門性の高い高級なワインショップか、あるいはリーズナブルで大衆的な雰囲気のワインショップかは特定されていないのです。

 

こういう場合は、通常は合理的に最大公約数をイメージして書き上げるのがセオリーです。

一般的なワインショップであれば、ワインに興味がある人が雑多にいる、そんなイメージです。

そのため、いくらワインショップだからワイン好きが集まるだろうからといって、アルファベットだけで記載するのはダメです。

カタカナをデフォルトで使うことになります。

 

この辺りはしっかり問題文を読み込んで記載しましょう。

 

 

模範的なポップを見てみよう

ソムリエ協会の模範解答をそのまま当て込んだのが↑のポップになります。

おそらく多くの人は「なんだ、これじゃ文字だけだからポップとしては弱いじゃないか」と思うかもしれません。

 

ですが、デザイン性は求められていませんし、ソムリエ試験にデザイン性を一律に求めるのは逆に試験の信頼性を落とします。

模範解答にも

イラストなどデザイン性のあるものは特別加点とした。

とありますが、運営側の経営合理性を考えれば当然でしょう。

 

試験の性質からも特別加点で合否がひっくり返るようなものは試験の性質上できないはずです。

おそらく採点官の裁量の範囲に収まる微々たる追加点くらいにしかならないはずです。

 

本来書くべきことを適切に書けばいいので、先ほどのソムリエ協会の模範解答であれば

正確な情報の記載(銘柄、ヴィンテージ、価格など)→ACボルドー2020年、ソーヴィニョンブラン種

 ワインの説明(特徴、味わいなど)→さっぱりとしながらも穏やかな樽香が心地よい

 シチュエーション提案(楽しみ方など)→週末のゆったりした午後のひと時にお勧め!ペアリングの提案

 購買意欲をそそる文言など→当店のお勧め白ワイン!

など、すべてを盛り込んであることがわかります。

 

これでも合格十分な内容ですが、これを本番にしっかり書けるのはしっかりとトレーニングをしないといけません。

ここからさらに踏み込んで、具体的なポップの書き方と、ポップ作成のトレーニング方法を解説します。

 

 

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2024,08,23  2024年度ソムリエ試験 論述ポップの書き方とポイント 600円

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