南アフリカのワイン生産地域「コースタル・リージョン」

【最終更新日】2024年8月1日

みなさんこんにちは。わいんとくすりです。

今回は南アフリカのワイン生産地域についてみていきましょう。

 

南アフリカのワイン生産地域は、ワイン法(Wine of Origin=W.O.)の1993年改訂にともない、西ケープ州、北ケープ州、クワズル・ナタール州、リンポポ州、東ケープ州、フリーステイト州の6つの「州域」(Geographical Unit)が誕生しました。

 

そのうちワイン生産の中心地である西ケープ州では、ブリード・リヴァー・ヴァレー、ケープ・サウスコースト、コースタル・リージョン、クレインカルー、オリファンツ・リヴァーの5つの地域(Region)が指定されています。

 

地域の中から「地区」(District)が制定されており、さらに「小地区」(Ward)へと細分化されていきます。

 

今回は西ケープ州の中で、最も活発にワインの生産が行われているコースタル・リージョン(沿岸地域とも呼ばれる)について解説ができればと思います。早速みていきましょう。

 

南アフリカのワイン生産地域「コースタル・リージョン」

コースタル・リージョン概略

コースタル・リージョンは南アフリカのブドウ総栽培面積の半分を占める、ワイン産業の中心地になります。

南アフリカで最初にワインが作られた地「Cape Town:ケープタウン」や最大生産量を誇る「Stellenbosch:ステレンボッシュ」が含まれる地域です。

 

アフリカ大陸の最南端に位置しており、沿岸部は大西洋を流れるベンゲラ海流とインド洋からのアラガス海流の影響による海洋性気候、内陸に行くと温暖な地中海性気候となります。

また、複雑に連なる山々の影響で場所によっては大陸性気候や高山気候もみられ、産地によりその表情は多彩です。

 

土壌は主に火山性の花崗岩、片岩、砂岩ベースが多く、水はけも良くなっています。

産地によっては太古の海底が押し上げられた白亜質土壌や石灰質などもみられ、ワインの特徴や個性に大きな影響を与えています。

 

主なブドウ品種は国際品種が多く、赤ではカベルネ・ソーヴィニョンやシラー/シラーズ、メルロー、ピノタージュなど、白はソービニョン・ブラン、シュナン・ブラン、シャルドネ、セミヨン、コロンバールなどになります。

 

次からそれぞれの「地区」(District)についてみていきましょう。

 

Stellenbosch:ステレンボッシュ地区

1679年に誕生した南アフリカで最も古い街の一つ、ステレンボッシュの街を中心に広がる地区。

17世紀半ばに遡るワイン造りの伝統と歴史がある南アフリカの代表的産地。ブドウ栽培面積は南アフリカで最大。

 

学術機関も集中しており、「ステレンボッシュ大学」は、ブドウ栽培と醸造学の学位が受けられる南アフリカ唯一の大学です。

また、ブドウ栽培に特化した「エルセンバーグ農学校」やブドウ栽培とワイン醸造学の研究・実践を行う「ニットフォルベイ研究所」もステレンボッシュにあります。

 

ステレンボッシュ地区はフォルス湾からの距離、複雑な地形から多様な微小気候が存在し、多様な土壌構成であることから、8つの小地区が登録されています。

 

ステレンボッシュは街の名前の由来となったオークの街路樹、ケープダッチ様式の建造物が建ち並ぶ街としても有名です。

 

Paarl:パール地区

温暖な地中海性気候の恩恵を受けるエリア。ステレンボッシュとフランクシュックの北側に位置し、北側にはスワートランドとウェリントンに隣接します。

 

ドレンスタイン山やヴェメールスフック山があり、その伏流水がバーグ川を形成し、パール地区の中心を縦断します。川のおかげで東側では灌漑が不要となります。

ただし、その他の地域は夏季から収穫期にかけて灌漑は必須のようです。

 

歴史の面から見ると1680年代のオランダ系、フランスのユグノー派移民が入植したことで、ブドウ栽培が盛んに行われました。

1918年に設立されたKWV(Ko-operatiewe Wijnbouwers Vereniging van Zuid-Afrika)のホームタウンがあることでも有名ですね。

 

Franschhoek/Franschhoek Valley:フランシュッフック/フランシュフック・ヴァレー

ステレンボッシュの北東部に広がるエリア。山々に囲まれたこの地に17世紀後半、フランスのユグノー派が入植したことから名付けられた。「French Corner」を意味するオランダ語「Franschhoek」が由来。

 

フランスが由来なので、試験の時は印象的で覚えやすいですよね。

 

起伏の富んだ環境ですが、なだらかな丘陵地帯や平野もあり、さまざまな土壌や微小気候があることが特徴です。

ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、古木のセミヨンが代表的な品種。赤系ではカベルネ・ソーヴィニヨンや古木のシラーズも多い。

 

文化的にもフランスを彷彿とする街並みが並んでおり、洗練されたレストランが多く立ち並んでいます。南アフリカを代表する「美食の街」になります。

 

Darling:ダーリン地区

首都のケープタウンから車で北に1時間程度のエリア。大西洋の影響が大きく、冷涼な海洋性気候。

ソーヴィニヨン・ブランの産地として名が知られており、90年代にGroenekloof小地区が注目を浴びたようです。

 

土壌は風化した花崗岩とオークリーフと呼ばれる堆積土壌が主体。冬の降雨も十分あり、地下水脈にも恵まれるため、灌漑は不要。

特に西側のエリアで大西洋からの影響が大きく、しっかりとした酸とハーブの印象が特徴です。

 

Swartland:スワートランド地区

総面積が西ケープ州で「最大」のエリア。栽培面積では無いことに注意してくだい。

Malmesbury、Paardeberg、Paardeberg  South、Riebeekberg、Riebeeksrivierの5つの小地区を有する。これらは小高い丘や丘陵地帯になっており、土壌構成も異なる。

 

2002年からロサ・クルーガーによって続けられているオールド・ヴァイン・プロジェクトで一躍脚光を浴びた樹齢35年以上のブドウ木の畑が多く存在しています。

 

南アフリアを代表する醸造家のイーベン・サディ氏がスワートランドでワイン造りを始めたことにより、瞬く間に有名産地へ。

イーベン・サディ氏の「その土地の真の個性を表現したスワートランドのワイン造り」という信条をもとに、集った18名の有志の生産者らによりSIP(スワートランド・インディペンデント・プロデューサーズ)が結成されたのも重要なポイントです。

 

Tulbagh:トゥルバッハ地区

三方を山々に囲まれた谷により盆地を形成するエリア。ブドウ以外にもリンゴやアプリコット、ブルーベリーなどの果物や穀物も多い。

 

太古は湖であったため、盆地は粘土を多く含んだ砂質土壌から、砂利や砂岩の土壌などの多彩な土壌構成に加え、標高や傾斜、日照量、降雨量に至るまで多彩なミクロクリマに恵まれています。

 

この土地で特筆すべきはなんといっても山々に囲まれた盆地からなる夜の冷却された空気が地区全域に溜まる「コールド・トラップ」になります。その効果は日が昇ってからも続くため、ブドウの過熟を防いでくれます。

 

白系品種ではシュナン・ブランを主として栽培。赤系品種はシラー、カベルネ・ソービニヨン、ピノタージュになります。加えて、内陸部ではスパークリングワインのキャップ・クラシック(MCC)でも高い評価を得ています。

 

Wellington:ウェリントン地区

パールとスワートランドに隣接するエリア。山と谷が複雑に入り組んでおり、さまざまな微小気候が存在しています。

この地域でおさえておく内容としては、南アフリカのワイン産業で使われる苗木のの85%以上を供給しているという点です。

 

主なブドウ品種としては、白がシュナン・ブラン、赤はカベルネ・ソービニヨンになります。

Cape Town:ケープタウン地区

ケープタウンの名がW.O.となっているエリア。17世紀にブドウ栽培とワイン醸造が始まった南アフリカで最も歴史のあるワイン産地の1つ。

ただし、この地区がW.O.に追加されたのは2017年5月の話。

以前あったケープペンシュラ地区が廃止され、新たに追加となったエリアです。

 

4つの小地区を有するが、特に有名なのはあの「コンスタンシア(Constansia)小地区」です。

コンスタンシア小地区は南アフリカで最も歴史のある産地の1つ。

18〜19世紀にかけてナポレオンを始めとするヨーロッパの貴族やアメリカ合衆国の大統領ジョージ・ワシントンなど各国の要人に寵愛された極上のデザートワイン「Vin de Constance」を生産する地域です。

 

「Vin de Constance」は19世紀後半のフィロキセラ被害により1度生産中止を余儀なくされました。

しかしながら、1980年代後半からクレイン・コンスタンシアがミュスカ・ド・フロンティニャンの栽培を開始し、1986年に復活を遂げました。

 

ケープタウンの気候はコンスタンシアバーグ(「バーグ」は山の意)やフォルス湾からの海風の恩恵により冷涼です。

土壌は砂質主体の花崗岩土壌で水はけが良いのも特徴。

初夏から秋にかけて晴れが続き、ブドウがよく熟すが、冷涼気候のため、成熟はゆっくりと進み、エレガントな酸が残りやすいとうい特徴があります。

 

まとめ

いかがでしたか?

南アフリカのコースタル・リージョンについて記載してみました。

 

まとめますと、

・南アフリカの中でもワイン産業の中心となるエリアが密集している。

・南アフリカで最もワインの歴史が長い地域を有する。

・海側は冷涼、内陸に行くと温暖。エリアによってさまざまな微小気候が存在し、小地区も多数登録されている。

 

正直、コースタル・リージョンは南アフリカワインの花形です。有名な生産者も多くいますし、気候、地形に恵まれているため高品質なワインも多くあります。

加えて、世界の著名人に愛された「Vin de Constance」も有する魅力の詰まった生産地域です。

 

デイリー使いから贅沢なひと時まで、幅広いシチュエーションに対応できる素晴らしいワイン生産地域です。

是非コースタル・リージョンのワインを試してみてはいかがでしょうか?

 

かなりボリュームの多い内容となってしまいました。ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございます。

また次回、お会いしましょう。


 

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