ジュヴレ・シャンベルタンのグランクリュ(特級畑)の解説

【最終更新日】2022年11月5日

ジュヴレ・シャンベルタン(仏:Gevrey-Chambertin)は、フランス・ブルゴーニュ(仏:Bourgogne)地方にある黄金丘陵=コート・ドール(仏:Cote d‘Or)の北側、コート・ド・ニュイ(仏:Cotes de Nuits)地区に位置する村の名称であり、ワイン生産地のアペラシオン(仏:Apellation)の名称です。

 

9つもの特級畑=グラン・クリュ(仏:Grand Cru)、26の1級畑=プルミエ・クリュ(仏:Premier Cru)を持ち、同地区内最大の栽培面積を擁しています。

コート・ド・ニュイ地区は赤ワインの銘醸地として有名ですが、その中にあって「ブルゴーニュの王」と呼ばれるほど、代表的な産地とされています。

強靭な酒質、大きなスケール感、優雅にして繊細、これらの要素を併せ持ち、王を名乗るに相応しい風格があります。

 

そんなジュヴレ・シャンベルタンの筆頭に挙げられる「シャンベルタン(仏:Chambertin)」は,ルイ16世やナポレオンに愛されていたことでも有名で、このシャンベルタンを特に「ブルゴーニュの王」と称することもあります。

本記事では、そんなシャンベルタンを筆頭に、ジュヴレ・シャンベルタン村に並び立つ9つのグラン・クリュについて深掘りしていきたいと思います。

 

【ジュヴレシャンベルタンのワインについてはこちらをご覧ください】

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ジュヴレ・シャンベルタンの特級畑・グランクリュ

ジュヴレ・シャンベルタン村の特徴

ジュヴレ・シャンベルタンは、フランス・ブルゴーニュ地方、コート・ドールの北側、コート・ド・ニュイ地区にある村の名称で、ワイン生産地のアペラシオンの名称でもあります。

北をフィサン(仏:Fixin)村、南をモレ・サン・ドニ(仏:Morey-Saint-Denis)村に挟まれる場所に位置します。

コート・ドール内の特級畑を持つアペラシオンとしては最北のため、県道122号、通称「グラン・クリュ街道」を南下し、最初に到達するのが同村です。

 

ジュヴレ・シャンベルタンは村名格から特級格まで全て赤ワインのみのアペラシオンで、ピノ・ノワール(仏:Pinot Noir)という黒ブドウ品種から造られます。

フランス・ワインの二大銘醸地として名を馳せるブルゴーニュ地方、その中でもコート・ド・ニュイは赤ワイン銘醸地として有名ですが、その中でも、

  • 強靭な酒質、大きなスケール感、華やかにして繊細なワインを生み出す。
  • 特級畑をブルゴーニュ最多の9面、1級畑を26面持ち、同地区内最大の栽培面積を擁する。

これらの点から、同村は「ブルゴーニュの王」と呼ばれます。

 

ちなみに、同じコート・ド・ニュイ地区にある「シャンボール・ミュジニー(仏:Chambolle-Musigny)」は、同地区内で最も繊細であると評され、しばしば優雅なレース織物に例えられるほどです。

この2つのアペラシオンは対極の銘醸地として、並び称されます。

ジュヴレ・シャンベルタン村の名前の由来ですが、同村のグラン・クリュ筆頭に挙げられる「シャンベルタン(仏:Chambertin)」からきています。

「シャンベルタン」は直訳すると「ベルタン(人名)の畑」です。昔、ジュヴレ村にベルタンさんという人がいました。

彼の所有する畑の素晴らしい品質が有名になり,その畑の知名度が所在地である「ジュヴレ村」の知名度を凌駕するようになり、村の名前は「ジュヴレ・シャンベルタン」に改名されました。

その後、村名のみならず、村内の他の特級畑にもその名が冠されることになります。

 

今日、同村の村名格以上全てのアペラシオン名に「シャンベルタン」が付き、初学者に分かりづらさを感じさせたり、混同のもととなっていたりするのは、この特級畑の高すぎる質のせいである、と言えます。

 

 

特級畑

ジュヴレ・シャンベルタン村には、9つの特級畑があります。多くのワイン・ファンを魅了して止まない、

個性豊かなそれぞれの畑、生み出されるワインの特徴を見ていきたいと思います。

 

【ジュヴレシャンベルタンの格付けについてはこちらをご覧ください】

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シャンベルタン(仏:Chambertin)

面積12.9ha、所有者は25人。

「ブルゴーニュの王」「英雄のワイン」などの呼び声高い、最高峰アペラシオンの一つ。同村の中でも下記の「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」と共に別格の存在です。

ナポレオン皇帝やルイ16世など、歴史上の偉人に愛されてきたことでも有名です。

特にナポレオンは、わざわざ遠征先や戦地にまで持ち込んで、毎夜祝杯を挙げていたとも云われています。

ただしこれには諸説あり、事実ではないとする説もあります。

ナポレオンは名将にして戦の鬼、進軍の速い彼がわざわざワインを運搬して楽しんでいたとは考えにくいでしょう。

またナポレオンはワインを普段水で割って飲んでおり、そこまで美酒・美食に興味がなかったのではないか、またはアルコールに弱かったのではないか、という話もあり、真相は分かっておりません。

むしろここで重要なのは事実よりも、彼の偉大な革命の英雄であるナポレオンが愛飲していた、と語られるほどの偉大なワインだということでしょう。

 

土壌は複雑で斜面最上部はプレモー石灰岩、上部は粘土質石灰岩、中部は泥灰岩、下部はウミユリ石灰岩と、大まかに4つに分かれ、その他様々な要素が更にブドウに唯一無二の個性を生み出します。

ワインは同村の中でも最も力強く雄弁、華やかなエレガンスを讃えながらも繊細さも兼ね備えた、「王」を名乗るに相応しいワインです。飲み手を圧倒し、快楽の境地へと誘います。

 

シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(仏:Chambertin Clos de Beze)

面積15.4ha、所有者は18人。

「シャンベルタン」と双璧を成すこの畑は、630年にベーズ修道院がブルゴーニュ大公から寄進された土地を開拓した畑であり、ブルゴーニュで最も古い歴史を持ちます。

シャンベルタンと隣り合い土壌は似ていますが、傾斜、標高、微気候の違いからより優美で繊細な酒質になります。

シャンベルタンに比べ若干傾斜がきつくそのため日当たりは良好です。ラヴォー渓谷から噴き出す冷気の影響で、周りのグラン・クリュと比べ収穫は遅めです。

土壌はシャンベルタンと類似していますが、表土は薄く、より白い土色をしています。

 

この畑のワインは「シャンベルタン」を名乗ることもできます(「シャンベルタン」が「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」を名乗ることは不可)。

 

リュショット・シャンベルタン(仏:Ruchottes-Chambertin)

面積3.3ha、所有者は8人。

村内最北に位置する特級畑です。

「リュショット」の語源は「小さな岩(仏:Rochers)」、または蜜蜂の巣(仏:Ruche)。

 

一帯に岩が目立つことや、かつて修道院の養蜂場があったことなどが関係しているとされています。

村内グラン・クリュのなかで最も勾配がきつく、また表土は20cmほどしかありません。

痩せた土壌と微気候による冷涼な風の影響から、ミネラリーで鋭い酸味を特徴とするワインになります。

赤系果実の瑞々しいアロマと、端正な骨格を持つ、優雅なワインが生み出されています。

 

マジ・シャンベルタン(仏:Mazis-Chambertin)

面積9.1ha、所有者は28人。

「マジ」は“Mazi”“Mazis”“Mazy”の表記が認められています。

語源は「廃墟(仏:Mazures)」という説、方言で「小さな家」を意味する説、「村落」を意味する説等あり、正確なことは分かっていません。

 

上部は緩やかな傾斜がありそれ以外ほとんどは平坦です。

表土はクロ・ド・ベーズと概ね似通っており、大量の石を含んでいます。

また、同村特級畑中唯一、全域がプレモー石灰岩となっています。

筋肉質な酒質が持ち味で、野性味、堅固な骨格も特徴としています。

 

シャペル・シャンベルタン(仏:Chapelle-Chambertin)

面積5.5ha、所有者は9人。

北はシャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、南はグリオット・シャンベルタンと接する畑です。

「シャペル」は英語でいう「チャペル」で教会や礼拝堂の意。

以前はこの畑のある地に教会があったのですが、優れた土壌であるがゆえに、なんと教会を燃やして畑の面積を増した過去を持ちます。

 

水捌けの良いの良い傾斜、石混じりの薄い表土が、生産者の卓越した技能によって秀逸なワインを生み出します。

果実味豊かでエレガントなワインが多いとされています。

生産者によって、個性が分かれやすい産地でもあります。

 

グリオット・シャンベルタン(仏:Griotte-Chambertin)

面積2.7ha、所有者は9人。

同村内面積最小のグラン・クリュです。北はシャペル、南はシャルムと接しています。

生産量の少なさから見かけること自体があまりないのですが、素晴らしいワインを生み出します。

 

「グリオット」の語源には、2つの説があります。

窪地のため熱がこもること、更に剝き出しになった岩が暑さを増幅させることから、焼かれた=グリオット(仏:Griotte)になったとする説と、ワインにある野性のチェリー=グリオット(仏:Griotte)の香りに由来するという説です。

野性のチェリー等、野性味ある赤々とした果実の鮮烈で濃厚な香り、華やかで優美な酒質を持ちます。

偉大なものは多彩なアロマに満ちており、熟成することで更に複雑味を増します。

 

同村のグラン・クリュの中でも特に秀でた存在であること、同時に生産量が少なく手に入れることが難しいことが知られています。

 

シャルム・シャンベルタン(仏:Charmes-Chambertin)

面積12.2ha、所有者は22人。

「シャルム」は英語でいう「チャーミング」つまり「可愛らしい」「魅惑的」と勘違いされがちで、

造られるワインもそのような傾向にある、と語られることも多いのですが、事実は異なります。

“chaumer(耕作放棄地の植え替え)” 、古代ローマ語の「カルマ」が正確な語源のようです。

 

特級畑にしては酒質の弱さを指摘する向きもありますが、ヴィンテージに恵まれたものや偉大な生産者のものは、優美で繊細、偉大なフィネスを讃えています。

多くの素晴らしい生産者がこの畑でのワイン造りを行っております。

 

ラトリシエール・シャンベルタン(仏:Latricieres-Chambertin)

面積7.4ha、所有者は12人。

語源は「貧しい」「不毛」を意味するラテン語の“ド・トリシエ/de Triciae”またはフランス語の“ド・トリシエール/de triciere”とされています。

 

地形の影響から雹害や風害に見舞われることが多く、それがこの名称の原因になっているという説もあります。

同じグラン・クリュでも、シャンベルタンと比べると同様の華やかさや気品、何より複雑さを望むことは難しいですが、優れた生産者によって強固で力強い酒質のワインが生み出されています。

 

マゾワイエール・シャンベルタン(仏:Mazoyeres-Chambertin)

面積18.6ha、所有者は25人。

語源に関しては曖昧でよく分かっていないのですが、マジ・シャンベルタンとの関連はあるのだろうと云われています。

また、一説には「家=メゾン(仏:Maison)」の変化形ともされています。

 

この畑のワインは「シャルム・シャンベルタン」を名乗ることもできます(「シャルム・シャンベルタン」が「マゾワイエール・シャンベルタン」を名乗ることは不可)。

多くが「シャルム」を名乗るため、市場で見かけることは稀です。

シャルム・シャンベルタンと似た酒質ですが、より野性的且つ肉付きの良いワインができるとされています。


 

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