飲食店営業許可の要件|設備の基準(施設基準)を事前に確認!

【最終更新日】2024年8月23日

飲食店営業許可は、食品衛生法という法律に定められています。

法律に定められた許可なので許可基準というものがあって、「この要件を満たせば許可になる」というはっきりとした基準があります(これを保健所では施設基準といいます)。

中には保健所の職員と仲良くしていれば許可になりやすいとか、多少無理があってもごり押しすれば大丈夫だとかの噂話もあるかもしれませんが、それは都市伝説です。

保健所の職員さんも公務員なので、法令順守義務があります。

法律にそって審査をしなければならない義務があるのです。

 

ここでは、飲食店営業許可で満たさなくてはならない基準を理解してみましょう。

許可基準は大まかに言って

①設備の基準

②人的基準

③立地の基準

がありますが、最も重要なのは①の設備の基準です。

 

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飲食店営業許可の設備基準

まずは全体像を見てみよう

いきなり核心部分ですが、最初に設備基準の全体を見てみましょう。

 

調理場

・調理場と客席がスイングドアなどで分かれている

・流し(シンク)が二つ以上ある

・手洗い(固定の消毒装置付き)がある

・床材が耐水になっていること

・冷蔵庫があること(外付けの温度計付き)

・扉付きの収納がある

・床、天井、壁は平たんになっていていいること

・水が流れる

・お湯が流れる

・換気の設備がある

 

便所

・手洗い(固定の消毒装置付き)がある
・水が流れる

 

(一部の自治体のローカルルール)

・客席用の手洗い設備がある

 

おおまかにいってこれらの基準を満たせば許可になります。

ただし、地域によっては保健所独特のローカルルールもありますので、施工などの前に必ず保健所で確認をしましょう。

 

調理場の設備基準

調理場と客席が分かれている

「ここからが調理場」

「ここまでが調理場」

という境目がドアやスイングドアで分かれている必要があります。

スイングドアは、↑の画像のようなもので、ウエスタンドアとも呼びます。

大きさについては正直なところ検査担当官によってまちまちですが、おおむね↑の写真のように床から10センチくらいに始まって、高さの幅が60センチくらいあれば問題ないでしょう。

 

居ぬき物件の場合、検査が終わると外してしまってすでにスイングドアがない物件もたくさんあります。

もっとも、この程度は板を買ってきてカットして日曜大工レベルの施工でも問題ありません。

スイングドア以外では一般的なドアでも大丈夫です。

ただしアコーディオンカーテンなどは認められませんので気を付けましょう。

 

・流し(シンク)が二つ以上ある

流しは二つ以上必要で、さらに一つの流しの大きさが

奥行36㎝以上

幅 45㎝以上

深さ18㎝以上

が必要になります。

この流しの大きさについては保健所やその職員によって判断はまちまちです。

多少小さくても大目に見てくれる神様のような人もいればきちんとメジャーで測り、少しでも足りないと作り直しにさせる鬼のような人がいます。

 

 

例えば料理店であればよほど小さなお店でなければ流しが2つしかないというところは少ないかもしれません。

逆にバーや喫茶店などで、かつ小さなお店だと二つしか流しがないということは多いでしょう。

 

・手洗い(固定の消毒装置付き)がある

調理場内に上の画像のように手洗いが必要です。

これも大きさに基準があって、幅が36㎝、奥行きが28㎝以上という決まりがあります。

一般的に、業界用語で「エル5」と呼ばれる大きさのもので、これは明らかに小さいと許可になりません。

また、画像のように固定された消毒装置が必要です。

この”固定”に関しても調理場内の手洗いは厳格で、ビス止めなどでしっかりと固定されていないと再調査の原因になります。

 

・床材が耐水になっていること

調理場内は水が跳ねたりしますので、床材が耐水になっている必要があります。

耐水とは、要するに水をはじく材質のものである、ということです。

畳や木材、じゅうたんの場合は水を吸い込んでしまい、腐食したりして不衛生ですので認められません。

 

冷蔵庫があること(外付けの温度計付き)

飲食店営業許可には必ず冷蔵庫がないと許可になりません。

ただし、この冷蔵庫に関しては上の画像のような、一般的によく見るコールドテーブルという本格的なものでなくてもご家庭のものでも問題ありません。

例えば居ぬき物件などでコールドテーブルがない場合は電気屋さんで買ってきた冷蔵庫を置いても許可になります。

ただし、外付けの温度計がないと職員さんによっては再調査の可能性があります。

この場合は保健所で上の画像のような温度計を購入し、基準を満たすことになります。

大体1500円程度で売っていますので大きな出費にはなりません。

 

扉付きの収納がある

飲食店ではよくステンレス製の扉付きの収納が天井に設置されているのを見かけると思います。

これも、画像のようなプロ仕様のものでなくても許可になります。

 

極端な話、通販で買ったキャビネットのようなものを調理場内においていればとりあえず基準は満たします。

 

ただし、この扉付き収納は、グラスや皿類を収納しておくものなので、お店の規模が巨大なのに収納が小さすぎると現実的な問題として再調査になる可能性があります。

 

床、天井、壁は平たんになっていていいること

調理場は清潔さを保つことが求められますので平たんであることが必要です。

例えば床や壁に穴が開いていたり、でこぼこのままだと清潔を保つことができないという理由で再調査になる可能性があります。

 

ここで気を付けたいのは天井です。

よくおしゃれなカフェやバーで天井にボードを張らずに吹き抜けのまま塗装などをして仕上げる天井があると思います。

吹き抜けの天井は天井を高く見せることができますし、開放感がありますので人気ですが、調理場がこの天井になっていると再調査になる可能性があります。

例えば↑の画像のような天井だと、配管がむき出しになっていてここに誇りがたまったり動物や虫が生息しやすくなってしまうという指摘が入るのです。

最低限、調理場だけはボードを張り、平たんな状態にして申請をしましょう。

 

以前は認められていた?

厳しい話ですが、特に東京都の場合、5年くらい前は天井が吹き抜けの調理場であっても許可になっていたケースが見受けられます。

これらの店舗を更新申請や居ぬきで買い受けた場合に、改めて申請をしても許可にならなかった、という経験があります。

「以前は許可になっていたのに何で今回はダメなのか」とごねても「前回と今回では時系列が違います」と言われればそれまでです。

天井のボード貼りはそれだけで大きな出費になりますので、必ず押さえておきましょう。

 

水、お湯がでる

水、お湯が蛇口から出ないと許可になりません。

「飲食店なんだから水やお湯が出るのは当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、案外ここが落とし穴なのです。

私の経験上、保健所の再調査になる原因の20%はここにあります。

特に居ぬきの場合はガスの開栓を忘れてお湯が出ないことに気づかずに調査日を迎えてしまうのです。

 

また、ごくまれにガスを使用しない飲食店もありますが、この場合は↑の画像のような電気式の給湯器を設置することになります。

 

換気の設備がある

換気は、要するにダクトや換気扇などの設備があるかということです。

大型の店舗や重飲食店では本格的なダクトがないと調理場が煙だらけで大変なことになります。

一方で、カウンターだけのバーやほとんど調理をしないような小さなお店ではここまで本格的なダクトは必要ありません。

この場合は家庭用の換気扇のレベルで問題ないでしょう。

 

以上が調理場内の基準です。

 

便所の設備基準

保健所の検査では調理場とともに必ず便所も確認されます。

当たり前ですがきちんと水が流れて排水ができることが必要です。

さらに、化粧室のなかや便所のなかにも手洗いが必要です。

ただし調理場内の手洗いほどの大きさや消毒装置の設置ほど厳しく見られないことが多いです。

 

ただし、鬼のような職員さんですと便所内でもしっかりと確認し、消毒装置が固定されていないと遠慮なく再調査を言い渡す人もいます。

 

 

客席はほとんど見られない?

保健所の検査では調理場と便所が重要ですが、では客席は確認されないのでしょうか?

答えはほぼイエスです。

 

保健所は食品衛生法という法律の許可要件を確認しているのですが、この許可要件に客席の要件は含まれていません。

含まれていないということは審査権限がないので審査できないのです。

 

ただし、例えば神奈川県や埼玉県は客席にも手洗いが必要などのローカルルールもあります。

また、あまりにも客席が不衛生だと営業の実態を疑われて再調査なんてことにもなりかねません。

最低限清潔を保ち、なんとなく営業のイメージがつくという状態で保健所の職員を安心させるのがベストでしょう。

 

自治体・担当官による差が激しい?

これは多数の窓口で申請をし、検査を受けた経験上の話なのですが、保健所の検査は自治体や担当官による差が激しい印象があります。

ただし、よくよく検討するとこれは「厳しい検査官は、法律にのっとっているだけ」というケースなのです。

つまり、

「法律の検査基準通りに検査をすればダメなんだけど、これくらいならまあいいか」

というケースが多く、それが主流になった結果、法律通りに検査すると厳しく感じるのだと私は思います。

 

例えば(千代田区さんには大変に失礼ですが)東京都では千代田区がおそらくもっとも厳しい区として有名です。

しかし、当たり前ですが実際には法律の範囲以上のことは絶対に求めてはきません。

肩を持つわけではありませんが、法律の範囲以上に市民に厳しく基準を求めたらそれこそ大問題です。

もちろん言い方や表現の仕方が意地悪に聞こえることもありますが、彼らも仕事なのでそういうときもあるでしょう。

 

もし、窓口や検査が厳しいと感じる場合、これは担当官や自治体が厳しいのではなく、単純に法律にのっとって業務を行っているだけととらえるのが大半ではないでしょうか。

 

まとめ

飲食店営業許可は、ここに挙げた許可基準を満たせば設備上の要件は満たすことになります。

設備上の基準は足りなかったり誤った設置方法をすると再調査になり、許可されません。

そうなるとカラ家賃が発生して損失になり、これが馬鹿にならないのです。

 

また、簡単な施工が必要になったとしても天井にボードを張るだけで結構な出費になります。

例えば給水や排水をすこし整えるだけでも平気で何万円もかかってしまうものです。

後からわかると計画がくるってしまい、営業に影響が出てくることも考えられます。

許可基準は必ず事前に確認し、しっかり準備をして検査に臨みましょう。


 

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