エルミタージュ ワインとは?特徴とブドウ品種、合わせる料理

【最終更新日】2022年4月28日

HERMITAGE(以下エルミタージュ)はローヌ地方の中でも優れたワインを生み出すAOCです。

その品質はローヌを超えてフランス最高のワインのひとつとされ、価格も ボルドー や ブルゴーニュ と肩を並べているのです。

ローヌ河 の 左岸 で生産され( ローヌ北部 では唯一の 左岸 )、非常に狭いAOCで、クローズエルミタージュ に囲まれています。

 

タン=レルミタージュ、クローズ・エルミタージュ、ラルナージュの3つの村からAOCのブドウが造られており、急斜面の段々畑になっています。

花こう岩 がベースとなった( グラニット ) 砂利土壌 なので水はけが良く、ブドウ造りに適した場所です。

エルミタージュは全部の栽培面積を合わせても150ヘクタールほどと小さく、しかもほとんどが地元の高級レストランに充てられるワインです。

輸出向けのワインは少ないので日本ではほとんど見かけませんし、見かけても大変に高価なのです。

日本で見つけるととんでもなく高額なワインが、地元の何気ないレストランでひょいと置いてあったりしてびっくりさせられます。

 

エルミタージュは歴史的に昔から有名でした。

濃く、飲みごたえのあるワインは多くの歴史に登場し、18世紀にはその濃さを見込まれてボルドーで補強用に用いられるほどだったのです(一時期ラフィットロートシルトにも混ぜられていた)。

もちろんエルミタージュはただ濃いだけではなくて、豊潤で優雅さがあり、熟成することでつややかさを増す味わいです。

畑が急斜面なので機械化ができず、そのため手作業で長年造られてきた美酒は、決して期待を裏切らない安定さがあるのです。

 

エルミタージュ

ブドウの品種

赤ワイン

シラー85%以上、

ルーサンヌ・マルサンヌ

白ワイン ルーサンヌ・マルサンヌ

エルミタージュは赤と白が認められています。

赤ワインはシラー種を使用したフルボディのワインになります。

シラーを85%以上使用することが定められており、15%以内までマルサンヌとルーサンヌを混醸することが認められています。

しかし実際にはほとんどの生産者はシラー100%で造っていて、仮に混ぜても5%程度が現在のエルミタージュのスタイルです。

 

ちなみに 赤ワイン に 白ブドウ を アサンブラージュ する(認められている)のは南部では珍しくありません。

黒ブドウ だけだとスパイシーすぎてしまったり、個性が出すぎるためそれを緩和させるために行います。

同じ ローヌ の コートロティ や、 イタリア ですと キャンティ も同じ理由で白の アサンブラージュ が認められています。

 

完熟したルーサンヌのブドウ↑

また非常に生産量はすくないものの、 ルーサンヌ や マルサンヌ を使用した白ワインも生産されています。

これはあまり紹介されていないことなのですが、 赤ワイン のエルミタージュに比べて白はやや優美さに欠ける評価があります。

仕方のないことなのですが、南部独特の酸味の弱さがワイン全体にぼやけた印象を与えているのです。

もちろんそのあたりは生産者もわかっていて、ブルゴーニュの白と同様の低温長期発酵や一部ヴァンダンジュヴェルトを取り入れて新しいスタイルのワインを造っています。

 

なお、ソムリエコンクールの出場をお考えの方は、エルミタージュの3つの区分けを知っておいたほうがいいでしょう。

les murets  レ ミューレ 白ワイン

les bessards レ べサール 赤ワイン

les greffieux レ グレフュー 赤ワイン

のみっつとなっています。

 

エルミタージュの特徴

エルミタージュの赤ワインはシラーの特徴がよく出ています。

濃い紫色のような赤色で、渋みと柔らかな酸味が感じられます。

シラー種特有の甘草のようなスパイスの香りがあり、渋味が強くタンニンがしっかりとしています。

 

このワインの最も大きな特徴は、長期熟成が可能なことで、10年から20年熟成させるとベストな状態になると言われています。

ボルドー メドック のワインと共に長命なワインとして知られており、ヴィンテージ物は50年熟成させたものまであります。

若い時はパワフルな味わいながらも、熟成することで丸みや滑らかさが出るという2つの違いを楽しめるワインでしょう。

 

また黄金色の白ワインは、パイナップルやアプリコットのような甘い香りが特徴です。

これは日照量が多くブドウがよく熟すために感じられる香りです。

果実味の中にも酸味がバランス良く感じられ、力強い白ワインとなっています。

エルミタージュは、赤白共にアルコール分が高く、そのため熟成させたほうが価値を発揮しやすいワインです。

ところが経済のスピード化に伴って、ネゴシアンや小売店にすれば、在庫に伴う金利の確保が気になってどうしても早く出荷してしまう傾向にあります。

そのため本来であれば瓶詰めされて最低でも4~5年は寝かせないといけないのに、瓶詰めされてすぐのワインがもう出荷されるのかと驚くこともあります。

ボルドー や ブルゴーニュ であれば多少待ってもいいかもしれないけど、エルミタージュになると名声のはしっくれにあるから早く出しちゃえということでしょうか。

ワインショップで若いエルミタージュを見かけた場合、お買いになってもできればしばらく押し入れの奥にでも眠らせておいて、思い出した頃にお飲みいただいてはいかがでしょうか。

 

 

エルミタージュ ヴァンドパイユ

ごく少量ですが、 エルミタージュ では ヴァンドパイユ ( vin de paille )も生産されています。

ヴァンドパイユは日本語にすると”藁のワイン”です。

収穫した ワイン を藁の上でねかせることで水分を蒸発させます。

すると相対的に糖分含有量があがり(1リットル中最低225グラムが法定糖分含有量)、そのため極甘口のワインに仕上がるのです(この作業をパスリヤージュといいます↑)。

アプリコットのジャムやはちみつの香りが強く、デザートに合わせることが多いです。

ただし生産量が大変に少なく目にするのはよほどのことでしょう。

希少価値もあいまって大変に高価です。

 

飲み方のコツ

赤ワインは18度くらいの温度で飲むのがベストでしょう。

これはボルドーやブルゴーニュの極上ワインと同じ程度の温度です。

熟成したエルミタージュの赤は、生産者によってはオリが出ますのでデカンタージュをして30分ほど置いていただくのがベストです。

そのためレストランであればソムリエにあらかじめデカンタージュをリクエストして、食事の後半に差し掛かるころにベストのコンディションにするというのも面白いですね。

 

白のエルミタージュも白ワインとしては高めの10度程度がベストでしょう。

もし若いワインであれば空気に触れさせ、かつ温度を上昇する目的でデカンタージュをするのもお勧めです。

 

赤白ともにグラスはできればいいものを用いたいところです。

輝きがあり、先のつぼまったものであれば形はこだわらなくても大丈夫です。

赤であれば通常のボルドーグラスでもいいでしょうし、白であれば中ぶりのチューリップグラスで問題ありません。

注ぎ方に一工夫ができるのであれば、一本の糸のように、空気を含ませるようにグラスに注ぐことで↑ふわっと華やいだ香りが楽しめます。

 

せっかくの上質なワインですので気分を盛り上げて、いい環境でいただきたいですね。

 

相性の良い料理

赤ワインはカシスやベリー系の酸味と、奥行きのある味わいが余韻として残るため鴨や兎などのジビエ料理や、牛肉など赤身料理全般と相性が良いワインです。

シラーはスパイシーに仕上がりますので、お肉もできればスパイスやハーブで香りづけをして楽しみたいところです。

一方で白ワインの場合、甘い香りと柔らかい酸味、凝縮感のある果実味が特徴なので、ベシャメルソースやバターを使用した魚介料理と相性が良いでしょう。


 

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