こんにちは。ワインブックスの前場です。
僕はワインブックススクール(以下WBS)と言ってオンラインのワインスクールを運営しています。
WBSは月額2200円でいつでもどこでも誰でも学習できることにこだわったワインスクールで、お陰様で大変に多くの生徒様が学習をしてくださっています。
ワインは歴史的に市民社会の伝播によって伝わった経緯があり、その土地の風土や環境が大きくワインの味わいに影響を与えています。
ごく普通の市民社会で広まった経緯から、僕には「ワインはみんなのものだ」という強い信念があります。
だからできる限り価格をおさえて、かつ品質は最高レベルのものを提供しようということでスタートをし、今のところ満足のいく内容をご提供できていると考えています。
WBSはワインを体系的に学習し、その流れで自然な形でソムリエ、ワインエキスパート試験の合格があるというスタンスです。
そのため講義は対策講座と銘打っているわけではなく、ワイン全般の知識経験を得てくださいというものになっています。
しかし、多くの生徒様はソムリエ試験、ワインエキスパート試験を受験し、合格を勝ち取っています。
これはもちろん生徒様の頑張りが一番です。
そのうえで、WBSは試験向けの特別講義も充実していて、普通の対策講義を超えるような内容の情報を提供している結果、よいシナジーを生んでいるものと思われます。
このような流れの中で、WBSの二次試験対策講義は特にほかのスクールに比べて際立った個性があると感じています。
それは「テイスティングのワインは最小限の数に絞って体得し、あれもこれも幅を広げるのはリスキーな判断だ」という考えです。
これは何を意味するのかというと、事前のワインテイスティングの経験は絞りに絞って、その代わりに表現方法を徹底的にマスターしてもらうということです。
実際にWBSのテイスティングワインのアイテムは赤白4種類ずつで、それ以外は余裕がある方だけ取り組んでくださいというものです。
おそらくどのワインスクール様よりも少ない銘柄でトレーニングをしているはずです。
もちろん生徒様の中にはこれじゃ足りないからということでほかのスクールに通われた方もいるはずです。
ご自身でワインを調達したり、ワインバーなどでブラインドテイスティングを経験するなどの自発的な学習をされている方もいらっしゃたでしょう。
ただしそれであっても最終的にはWBSのスタンスを受け入れてくれて、実際の試験で実力を発揮し、そしてほとんどすべての人が2次試験を突破しています。
これはなぜか?
WBSはワインにとどまらず、試験とその周辺環境までメタ推理も含めて分析していて、これをうまく取り込むことに成功しているからです。
ワインと向き合うという点で見れば、赤白4種類ずつは明らかに少ないです。
多くのワインを生徒にテイスティングさせ、本番の試験でできる限り高い点で合格をしてもらうのが普通でしょう。これが多くのワインスクールの教え方です。
ただし、これがどこまで受験生の試験中の実際のアクションに反映されるのか?これは疑わしいです。
後述しますが受験生は「この試験を落としたらチャンスは1年後に持ち越し」という極めて特殊な状況にあります。
しかもテイスティング試験は官能試験のため、どれだけトレーニングをしても正解の確実性はどこにも担保されません。
にもかかわらず「できる限り多くのワインを体験して、そのままテストに反映させて下さい」となるか?そう甘くはないからです。
もちろん中にはワインスクールで多数のワインを経験し、これが実際の試験でドンピシャで出題されることもあるでしょう。
こうなると中にはほかの人が外すようなレアなワインでも品種や生産国まで当てる人もいるはずです。
しかし物事はそうそううまくはいかないものです。
中には経験が増えることで逆にノイズが増えてしまい、判断に迷ってしまうこともあるはずです。
「何だそんなことを言って。それじゃあ多くのワインをテイスティングするのが無駄だというのか?」
おそらくこのように義憤を感じられる方もいらっしゃると思いますが、それは誤解です。
最初に申し上げた通り、ワインは市民生活の伝播によって広がった経緯があるため、市民生活の数だけワインの品質にも違いがあります。
「ワインはみんなのものだ」と言っておきながら、多様な市民生活に目を背け、ワインを限定的なものとして扱うのはあまりにも無茶でしょう。
そのためワインはできる限り広く味わってほしいし、味わいがわかるようになってもらいたい。これは揺るぎません。
しかし、では試験ではどうか?これは全く話は別です。
試験を受けるからには合格が目的で、その目的のためにWBSの考えとか理念とかを持ち込むのは筋違いだし、最悪生徒様の本音を無視することになります。
この試験の本質は可処分時間との戦いなので、ほとんどの人はただでさえない時間のなか、なんとか振り絞って勉強時間を捻出する。これが実態です。
そのため、受験生の本音に寄り添えば、「できる限り効果的に、そして合格の実現可能性は高く」これを一番に検討するべきです。
ここではソムリエ、ワインエキスパート二次試験を受けるにあたって、WBSが生徒様にアドバイスをする中でも極めて本丸に近い「なぜワインアイテムは最小限におさえていいか」を中心に解説をします。
具体的にはソムリエ・WE試験の事情と受験生の特殊な状況をもとに、プロスペクト理論のうち、特に損失回避の心理と参照点依存性をもとに解説をします(後述します)。
これを読むことでなぜWBSがほかのスクールと真逆の方針で二次試験をとらえているのか、そして逆に多すぎるワインアイテムはなぜノイズになると考えているのか、ここがお分かりいただけると思います。
繰り返しになりますが、ここでいう「ワインアイテムは最小限でいい」は試験対策での話であって、普段のワインライフでの話ではありません。
ワインを斜に構えて見る。このスタンスはもっともWBSのスタンスとは違います。
くれぐれも誤解をされないようにしてください。
試験は登竜門なので、早々と合格してもらい、広くて深いワインの世界にもっと踏み込んでもらいたい。そのお手伝いとお取りくださいますようお願いいたします。
大変に長いコンテンツではありますが、これをお読みいただくことで試験分析はどこまでするべきなのかがわかりますし、あなたの努力の質は驚くほど上がることをお約束します。
ただし大変に恐れ入りますが、当然WBSの会員様向け対策講義はさらに実践的で、もっと踏み込んでいます。
そのため完全な全出しではないことを最初にお断りします。
WBSの特別講座では具体的な点の取り方までをコーチをさせていただいていますし、ここで全出しをするほどいい人にもなれません。
ただし、全出しではないけれども、それでもおそらくあなたの中で大きなひらめきやきっかけになるはずです。
あなたが少しでもこの記事を読んで興味を持ってくれたのであれば、是非WBSを覗いてみてください。
二次試験直前でも間に合いますので、是非ご参加をお待ちしております。
それでは、前置きが長くなりました。WBSのソムリエ・ワインエキスパート二次試験 テイスティング対策講義を始めましょう。
なお、WBSでは2次試験向けのトレーニングについては1次試験合格後の9月からで十分に間に合うと考えています。
ただし、それであっても事前の準備はどうしても必要になってきます。
基礎的な準備として、
・白ワイン(シャルドネステンレス、シャルドネ樽、ソーヴィニョンブラン、リースリング、甲州)
・赤ワイン(カベルネソーヴィニョン、ピノノワール、シラー、シラーズ、マスカットベリーA)
が何となくの判別がつくように、9月までに意図的にこれらの品種で造られているワインをお飲みくださいますようお願いします。
【2024年版】ソムリエ・WE試験 二次試験テイスティング対策講義
試験の総論
まず、当たり前ではありますが試験を分析するにあたってその全体像をしっかり知ることが大事になってきます。
ソムリエ、ワインエキスパート試験は本当にざっくりいえば一次試験で半分にスクリーニングされ、2次試験は大体8割が合格し、2割が不合格になる。このパターンで推移しています。
もちろんこれは本当にざっくり乱暴に解説をしていますので、具体的な試験の難易度は別記事をご参考下さい。
具体的なソムリエ試験・ワインエキスパート試験の難易度の解説はこちら→
では、二次試験にフォーカスしてみましょう。二次試験はざっくりいって8割の人が合格して2割の人が不合格になる。こうでしたよね。
ということは、イメージとするとこのようなグラフ↓にすることができます。
①を2割のひとで、このゾーンを不合格としましょう。②⇒⑤に行くにしたがって高い得点ということになります。
⑤のひとは、高い点ですので当然安心して合格発表を迎えられるでしょうし、なによりも本当に努力をしたのでしょう。
④のひとだっておそらく相当なトレーニングをしたはずです。ここも素晴らしい結果です。
⑤のひとも④の人も確かに素晴らしい結果であることはその通りです。ここは正直に素晴らしいと評価されるべきでしょう。
しかし、ではこのような見方をしたらどうでしょうか?
「試験は合格と不合格しかないんだから、戦略的に合格した人が評価されるべきだ」という見方です。
戦略的に合格するとは?
「戦略的に合格する」といっても、いまいちピンとこない人もいると思います。もうすこし深掘りましょう。
⑤のひとは確かにトップクラスの得点で合格をしています。
では高得点とはなにか?当然ほかの人と違う結論を出して、これが正解だったから高得点になったということです。
他の人と同じ結論のままではボリュームゾーンになってしまいます。いいとこ③でしょう。
だから高得点を狙うためには他の人と違う判断をすることになります。
↑の図は正解と不正解を10人で検討したものになります。
ここではわかりやすく、受験生はぶどう品種をシャルドネか甲州で迷ったとしましょう。
正解は甲州だったとします。
●のひとはシャルドネを選んだ
●のひとは甲州を選んだ
としてください。
●の人は他の人が8割シャルドネを選んだところを甲州と判断したから、だから残りの2割になれるのです。
これが高得点のイメージです。
では、ここをもう少し踏み込みましょう。
よく見てみると不正解の8人であってもすべての人が不合格にはなりません。
なぜなら二次試験は全体の2割の人が不合格になる試験だからです。ということは8人のうち2人が不合格なので、まだ合格の可能性は75%ということになります
そのため仮に不正解であったとしても、ほかの人も間違えているため致命的なミスにはならず、決して悲観的になるものではないということがわかるはずです。
では、逆のパターンはどうでしょう?
甲州を選んだけど、回答は残念ながらシャルドネだった。
すると不正解の人は下位の2割になってしまい、二人とも不合格になってしまいます。
つまりほかの人と違う判断をした結果、致命的なミスを引き起こしてしまったということになるのです。
これが進学受験のように回答がはっきりしているのであれば全く問題ありません。遠慮なく回答を追い求めればいいだけの話です。
しかし、二次試験はテイスティングなのでせんじ詰めれば官能の試験です。
自信をもって特定できるときもありますが、そうでないときも多いです。
完全にすべてのワインの品種や生産国を当てるのはそもそも不可能だし、世界中どこを見ても完全に当てることができる人を見たことありません。
いかがでしょうか?少し見えてきましたよね。
これをまとめてみましょう。
●のひとはシャルドネを選んだ。正解がシャルドネであれば全員合格。正解が甲州であってもまだ合格の可能性は75%ある。
●のひとは甲州を選んだ。正解が甲州であれば合格。正解がシャルドネであれば不合格が確定。
ということになります。
高得点を狙うのは、ハイリスクではあるけどリターンは同じ。
無難な回答をするのはリスク分散ができたうえで、かつリターンも同様ということになります。
これを比較して、あなたはどちらが戦略として正しいと思いますか?
おそらく「無難な回答をする方が戦略として正しい」がほとんどでしょう。
分かりやすい品種が出た場合
では、ここをもう少し踏み込んでいきましょう。
例えば出題のワインがACブルゴーニュピノノワールだったとします。
特性も良く現れていて、パッと見てピノノワールかカベルネフランか、MBAか・・・。そんなところか・・・。
ここを、多くの受験生はピノノワールと判断したとします。これが先ほどのパターンです。
●のひとはピノノワールを選んだ
●のひとはMBAかCFを選んだ
こういう場合に、ほかの人が当てるワインが出た場合にミスってしまうと致命的なミスになることが見てわかると思います。
もちろんその分をほかの分野で挽回する可能性はありますが、それでもほかの人とは差がついてしまうのは分かるでしょう。
これは何を意味するのかというと、わかりやすいワインが出たときに外してしまうと差がつきやすくなる。これを意味しているのです。
分かりづらい品種が出たとき
では次にわかりづらい品種が出題された時を検討してみましょう。
例えば正解をソアヴェとします。これをドンピシャでソアヴェと言える人はそうはいません。
選択肢にはシャルドネ、甲州、ピノグリ、アシルティコ、コルテーゼがあったとします。
こうなると正解の確率は1割にも満たないでしょう。もっと低い可能性もありますが、便宜上正解を2割にしましょう。
●のひとはガルガーネガ以外を選んだ
●のひとはガルガーネガを選んだ
わかりづらい品種が出た場合は回答は当然割れるので、合格か不合格かは持ち越しになります。
しかし合格率はまだ6/8なので75%もあるということになります。
いかがでしょうか。おそらくあなたは「自分の感覚に従ってブドウ品種を選ぶのが正攻法」ととらえていたかもしれません。
しかしよく検討すると、あなたの感覚に従ってワインを選択することは必ずしも正攻法ではなく、むしろ場合によっては悪手になる可能性が高いということが分かったはずです。
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2024,08,25 【ソムリエ・ワインエキスパート二次試験】アイテムは広げず、絞った方がいい 600円
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