【最終更新日】2024年10月3日
このページは最後まで閲覧できる購入後の記事になります。必ずブックマーク、もしくはURLの保存をお願いいたします。
購入後のページですので、SNSなどでの共有、本人以外の閲覧は固くお断りします。ご報告はこちらから→
2023年度ソムリエ試験は路線変更をしたところが多く、中でも論述のポップには驚いた、という方も多いでしょう。
ポップ(POP)は、Point Of Purchaseの略で、消費者にとってわかりやすく「ここがウリ」という購買意欲を掻き立てる販促ツールのことをさします。
これまでソムリエの論述試験は文字で回答する筆記形式の設問でしたので、受験生は「まさか」という心理になったはずです。
ただし論述試験でのPOPの出題は、ソムリエ試験の行く末を検討すると、ソムリエ協会側の「こういうソムリエになってほしい」というメッセージととらえることもできます。
これまでソムリエ試験は、特に筆記試験では単純な暗記で回答できる問題も多く、過去問や練習問題をこなして受験勉強をする方がほとんどでした。
そのため数年前までは「ソムリエ試験は過去問・練習問題で対策すればOK」という記事も多かったように思います。
確かに過去問や練習問題の取り組みは重要ですが、ソムリエにとってもっと大事なのはお客様の意図を読んだり、あるいは「何が問われているのか?」を考える推察力です。
にもかかわらず他人が用意した練習問題や過去問で準備をしても、肝心の「考える力」が養われませんので、これではソムリエ協会としては何とかしたいと考えるのは当然のことでしょう。
資格試験の難易度的にも、正直過去問や練習問題をこなして合格できる試験は、決してレベルは高くありません。
資格試験でも一般的に難易度が高いとされる試験になればなるほど考える力、推察力が求められます。
にもかかわらずいつまでたっても「ソムリエ試験は過去問、練習問題でOK」というのは、悪い表現をするとこの試験がなめられているのです。
試験の難易度と権威性はある程度比例しますので、当然ソムリエ協会側は経営合理性から、難易度を上げ、「ソムリエ試験は難しい」という合格プレミアをつけたいと考えるはずです。
そこで論述試験にも新しい傾向としてPOPの出題を出し、受験生にその場で考える力、その場で推察をする力を問おうということなのでしょう。
おそらく、ポップの作成は今後も毎年とは言わずとも出題される可能性はありますし、仮に出題がされなくても、ポップの作成はソムリエの本文である「ワインを売る」の縮図になります。
ここでしっかりとポップ作成の基礎を押さえて、自信をもって論述試験に臨めるようにしましょう。
なお、この記事は、「なぜこうなるのか」をできる限り多く記載しています。
単純に「ポップはこう書けば点数がもらえるよ」と教えても、そのパターン以外の出題がされれば対応ができず、最悪な場合それが引き金となって不合格になることもありうるからです。
ここは面倒であっても「なぜそうなるのか」について、できる限り踏み込んで理解をするようにしましょう。
なお、この記事は有料コンテンツとなっております。
記事後半部分はお支払いをいただくことで最後まで閲覧できるようになっています。
WBS一般会員は無料で最後まで閲覧いただけます。間違って購入しないようにしてください。
目次
ソムリエ論述試験 ポップ(POP)作成の書き方とポイント
ソムリエ試験は「暗記型」から「理解型」へ
僕が運営するWBSでは、ソムリエ・ワインエキスパート試験は「暗記型」から「理解型」にシフトしていると解説しています。
ソムリエ試験が暗記型から理解型へとシフトしている理由は、暗記型では記憶の質が低く、実務において適切な対応が困難になるからです。
試験合格にプレミアを出すことは、主催者側としては当然の考えでしょう。その意図からも、いつまでも暗記型の試験ととらえられるのは避けたいはずです。
暗記型の学習は極端な話、他人が作ったものを覚える作業なので、試験範囲の知識を単純に覚えるだけで、応用力や柔軟性に欠ける傾向があります。
そのため、実務で求められる問題解決能力や状況に応じた判断力が十分に発揮できません。
一方、理解型の学習では、知識を体系的に理解し、背景や原理を把握することで、柔軟な対応が可能となり、記憶の定着も良くなります。
これにより、試験だけでなく、実際のソムリエ業務においても高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
ソムリエ協会側が理解型の試験にしたいと思うのは、試験合格後のプレミアを考えても当然の流れと言えます。
ポップ(POP)作成は理解型の試験として最適
では、なぜ2023年度試験でいきなりポップの作成が問われたのでしょうか?
多くの意見はこうでしょう。
ソムリエ試験はもともと、飲食店勤務の方向けの職業を限定した資格試験でした。
ワインショップなどの飲食店以外の方はワインアドバイザーという別名の呼称で、2016年にソムリエに合併される形で呼称そのものはなくなった経緯があります。
つまり、もともとソムリエ資格は飲食店勤務とワインショップ勤務の二つの大きなくくりがあり、この経緯から、どうしても試験内容は飲食店勤務の方むけのものになりやすかったのです。
ただしこれにはもちろん反発もあり、ワインショップ勤務などのいわゆるショップソムリエには不利だという声も根強かったのです。
そのため、これを調整する目的で2023年度にポップ作成の出題があった。
なぜならポップは飲食店ではなく、ワインショップで必須のスキルだからです。
もちろん受験生の声を反映させたリバランスの目的での出題、というのもあるでしょう。
ですが僕はそれ以上に、ポップ作成はソムリエ協会側が受験生に向けた隠れたメッセージなんだととらえています。
おそらく、論述試験を取り入れたこと自体が「理解型へのシフト」に舵を切るきっかけだったのでしょう。
ですが、文字ベースの論述ではどうしても「このように書けばいい」という攻略法があり、理解型を試すには限界があったのでしょう。
また、記述式の論述では、少し難しい問題を出すと今度は「覚えている、覚えていない」の理屈になってしまい、「結局ソムリエ試験は暗記の試験か」と評価をされてしまうのです。
しかし、ポップ作成であれば白紙の中に自身のイメージを構築し、お客様にとって何が知りたい内容なのかを具現化するという、推察力、思考力、実行力の問われる形式です。
もちろん、ポップ作成が今年度以降も出題されるうちに、ある程度の模範解答のようなものは出現するだろうし、これを考慮して新しい形式の問題が出現するはずです。
ただし、それであっても、根本的には「推察力」「何が問われているのか」「何が求められているのか」を考える力さえあればその場で対応が可能ですし、あなたの地力は向上します。
ポップ作成は理解型の試験としては有効ではありますが、単なるポップ作成のテクニックに終わらせず、最終的にはあなたの推察力、考察力を養うようにしましょう。
2023年度試験の概要
それでは、2023年度試験のポップ作成の試験内容を振り返りましょう。
【 問題 1 】
テイスティング試験で供出された1番目のワインをワインショップで販売するにあたり、POP(Point of Purchase)を作成することになりました。自身のテイスティングに基づき、枠内を自由に使用してコメントを書いて(描いて)ください。
1番目のワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2021 年(フランス/ボルドー)
の記載でした。
ここではまず、ポップが何かを知らないと回答できませんので、知らなかった人には酷な試験内容でしょう。
ただしソムリエの実務家としての試験と考えれば、「ポップがわからない、というのはそれだけで大減点だ」というソムリエ協会側の意図でもあるかもしれません。
では、模範解答を見てみましょう。
採点のポイント
一番のポイントは「買いたくなるか」。
テキストのみでも評価、イラストなどデザイン性のあるものは特別加点とした。
正確な情報の記載(銘柄、ヴィンテージ、価格など)
ワインの説明(特徴、味わいなど)
シチュエーション提案(楽しみ方など)
購買意欲をそそる文言など
となっています。
何が問われているのか?を考える
ここで、模範解答を覚えてポップの書き方を箇条書きで覚えても、新しい形式になれば何も書けません。
なので、ここから「なぜこのような模範解答になるのか」を考えましょう。
当たり前ですが、ポップは購入意欲を誘い、購入行動につなげることが目的になります。
買う気にさせることが目的ですが、じゃあ耳障りのいいことをただ並べればいいのかと言われればそれは違います。
事実と違うことをいって購入させても後でクレームになるし、最悪悪評につながります。
そのため、嘘がないこと(事実を述べる)は大前提になります。
何が事実で何が意見や願望なのかがわからなければポップは書きようがありません。
ここは日ごろから自分の発している言葉は果たして事実なのか、願望なのか、意見なのかをはっきりと棲み分けるようにしましょう。
これをふまえた上で、ポップの項目はざっくりいえば以下のようになります。
簡単な理由も添えてありますので、必ず理由も理解しましょう。
①ワインの名称:
ワインの名前は消費者が選択する際の基本情報です。
ブランド名やワインのスタイル(赤、白、ロゼなど)も明記することで、顧客がすぐに興味を持てるようになります。
ここに事実と違うことを書くのは購入の前提条件にかかわってきます。
事実と違うことを書くのは絶対NGとなりますので、ここは細心の注意を払いましょう。
②価格:
価格は購入決定に直結する重要な要素です。顧客は価格を見て、自分の予算に合うかどうかを判断します。
また、割引やセール価格がある場合、それを明確に示すことで購買意欲を高めることができます。
本番では価格はわかりませんが、模範解答に価格が記載されている以上、書いた方がメリットは大きいはずです。
合理的に推測すれば、ポップには価格は推測で書くしかありません。
③生産地・産地:
ワインの生産地や地域は、味わいや品質に影響を与える重要な情報です。
特定の地域やブドウ品種にこだわる顧客も多いため、これらの情報を提供することで、顧客が選びやすくなります。
今回であれば、ボルドー地方はフランス南西部のため、「フランス南西部、ボルドー地方産」などと書くとイメージがしやすいということになります。
④味わいの特徴:
ワインの味わいや香りの特徴を簡潔に説明することで、顧客が自分の好みに合うかどうかを判断しやすくなります。
例えば、「果実味が豊かで、スパイシーな余韻が楽しめる」などの表現が有効です。
また、さっぱりしているのか、複雑なのか、フルボディなのか、ライトボディなのかもわかりやすい表現になります。
⑤料理とのペアリング、シチュエーションの提案:
ワインと相性の良い料理を提案することで、購入の際の決め手となります。
顧客がそのワインをどのようなシーンで楽しめるかをイメージしやすくなり、購買意欲が増します。
また、シチュエーションとしてどういうシーンにふさわしいかもソムリエにとっては必須の能力でしょう。
⑥受賞歴や評価:
ワインが受賞した賞や、専門家からの高評価があれば、それを明記することで、品質や信頼性をアピールできます。
これにより、顧客がそのワインを選ぶ際の安心感が高まります。
ただし、⑥については試験では受賞歴などの前提条件がわかりませんので、書きようがありません。
適当に受賞歴を書いたらそれこそ事実に反すると減点になる可能性があります。
そのためここについては記述しないほうが良いでしょう。適当に金賞受賞とか書いたらダメです。
これらの項目は、顧客がワインを選ぶ際に必要な情報を網羅し、購入を促進するために不可欠です。
情報が明確かつ簡潔に提供されることで、顧客の選択が容易になり、最終的には売上の向上につながります。
誰に向けて書くのか?
今回の試験内容をよく読むと、”ワインショップ内のポップ”になります。
ですが、そのワインショップがどういうものかは記載がありません。
専門性の高い高級なワインショップか、あるいはリーズナブルで大衆的な雰囲気のワインショップかは特定されていないのです。
こういう場合は、通常は合理的に最大公約数をイメージして書き上げるのがセオリーです。
一般的なワインショップであれば、ワインに興味がある人が雑多にいる、そんなイメージです。
そのため、いくらワインショップだからワイン好きが集まるだろうからといって、アルファベットだけで記載するのはダメです。
カタカナをデフォルトで使うことになります。
この辺りはしっかり問題文を読み込んで記載しましょう。
模範的なポップを見てみよう
ソムリエ協会の模範解答をそのまま当て込んだのが↑のポップになります。
おそらく多くの人は「なんだ、これじゃ文字だけだからポップとしては弱いじゃないか」と思うかもしれません。
イラストについては後述しますが、あったほうがいいのはその通りですので、時間があまればブドウのイラストを描くなどの努力は必要です。
ですが、デザイン性は求められていませんし、ソムリエ試験にデザイン性を一律に求めるのは逆に試験の信頼性を落とします。
模範解答にも
イラストなどデザイン性のあるものは特別加点とした。
とありますが、運営側の経営合理性を考えれば当然でしょう。
試験の性質からも特別加点で合否がひっくり返るようなものは試験の性質上できないはずです。
おそらく採点官の裁量の範囲に収まる微々たる追加点くらいにしかならないはずです。
ここについては後述をします。
本来書くべきことを適切に書けばいいので、先ほどのソムリエ協会の模範解答であれば
正確な情報の記載(銘柄、ヴィンテージ、価格など)→ACボルドー2020年、ソーヴィニョンブラン種
ワインの説明(特徴、味わいなど)→さっぱりとしながらも穏やかな樽香が心地よい
シチュエーション提案(楽しみ方など)→週末のゆったりした午後のひと時にお勧め!ペアリングの提案
購買意欲をそそる文言など→当店のお勧め白ワイン!
など、すべてを盛り込んであることがわかります。
これでも合格十分な内容ですが、これを本番にしっかり書けるのはしっかりとトレーニングをしないといけません。
ここからさらに踏み込んで、具体的なポップの書き方と、ポップ作成のトレーニング方法を解説します。
ここから先はクローズコンテンツになります。
具体的なポップの書き方から得点するポイント、イラストは必要なのかどうかについて分析・解説しています。
WBS一般会員様は無料で最後まで閲覧いただけます。
イラストは必要なのか?
多くの受験生にとって気になるのは「イラストはあったほうがいいのか」「デザイン性は問われているのか」でしょう。
ただしポップの採点についてはまだ1回しか実施回数がなくサンプル数が少ないため、推測ベースで分析するしかありません。
噂話では「イラストがあった人は合格して、無い人は不合格になった」などの話を聞くこともあるかもしれません。
しかし、その根拠になるサンプルサイズは決して大きくないでしょうから、少なくとも確証を持てるほどの数ではないはずです。
受験生の側でイラストが根拠になって合否が決まったのかどうかはわかりませんし、わかってはいけません。
イラストを描いた人はそれだけ全体的に意欲があるでしょうから、文字ベースも意欲にあふれていたから合格しただけかもしれません。
ソムリエ協会の模範解答を見ても、テキストのみでも評価、イラストなどのデザイン性は特別加点↑としたと表記されています。
この文言だけを判断すると、少なくともイラストの有無で合否がひっくり返るのは考えづらいです。
イラストの有無で大勢の受験生の合否が決まるのであれば、それは論述試験ではなくイラスト試験です。
ソムリエ協会の模範解答をそのまま読めば、イラストの有無は決定打ではなく、イラストを描くくらいに意欲的に書き込むことがポップの決定打だととらえるのが合理的な判断でしょう。
情報が少ないため、様々な憶測が耳に入るかもしれませんが、重要なのは「購入させる意欲だ」ととらえるようにしましょう。
ソムリエ論述試験でのポップの書き方
それでは、ここからいよいよクローズコンテンツになります。
まず、この試験はソムリエ協会主催のソムリエ試験になりますので、必ずソムリエ協会の考える良いポップを検討する必要があります。
それが模範解答に詰め込まれているので、かならず覚えましょう。
採点のポイント
一番のポイントは「買いたくなるか」。
テキストのみでも評価、イラストなどデザイン性のあるものは特別加点とした。
正確な情報の記載(銘柄、ヴィンテージ、価格など)
ワインの説明(特徴、味わいなど)
シチュエーション提案(楽しみ方など)
購買意欲をそそる文言など
これら一つ一つを検討すれば、おのずと主催者側の良しとするポップが書けるようになります。
では、一つ一つ見て見ましょう。
①買いたくなるポップか?
ワインショップにおけるポップ作成の際、最も重要なポイントは、顧客が「買いたい」と思うかどうかです。
以下にデザイン性が優れていようが、売れなければ「買いたい」と思わせなければ意味がないからです。
ポップは商品の魅力を一瞬で伝えるツールであり、その内容が購買意欲を引き出すものでなければ意味がありません。
視覚的に魅力的で、簡潔かつ具体的な商品説明や特典、希少性を強調し、感情に訴えるメッセージを盛り込むことで、顧客の心を動かし、購入を促進する効果が期待できます。
また、ポップ作成ということですので、基本的にはワイン好きな方の最大公約数の方が購入予定者になります。
そのため専門用語はできる限り控え、「ワインに興味がある」層が買いたいと思う内容にしてください。
②正確な情報が記載されているか?
2023年度試験では1番目のワインには
1番目のワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2021 年(フランス/ボルドー)
と付記がされていましたので、ワイン以外ですとこれが客観的にわかる事実のすべてです。
おそらく本試験でポップの作成が求められる場合、何らかの事実が開示されるので、それはすべて盛り込んだ方がいいでしょう。
普通に
ソーヴィニヨン・ブラン種
2021 年
フランス、ボルドー産
であることを書けば問題ありません。
ありがちでやってはいけないのが、勝手に自分で事実を作ってしまうことです。
例えば「ボルドーの白ワインと言えばセミヨンも少し入っているだろう」ということから、セミヨン種を入れ込んだりするのはやめましょう。
③ワインの説明
これがおそらくソムリエ協会側が最も重要視している部分でしょう。
味わいから端的にお客様にお勧めする文言を抽出して、それを具現化するのがポップの真骨頂になります。
端的に言葉を選ぶので、長ったらしいテイスティングコメントを書き込んだり、自己満足な分析を入れるのは逆にマイナスになる可能性が高いです。
例えば2023年度試験の場合に、2021年産だから、ボルドーヴィンテージチャートのことをいくら細かく書き込んでも、文字数が多くなればなるほどマイナスになります。
それじゃ面倒くさくて店頭のお客様は見てくれないし、見てくれなければ売れないからです。
では、どのようにして端的にお客様が知りたい言葉を抽出すればいいか?
それはずばりワインのカテゴリです。
白ワインであれば
爽やかなさっぱり系
複雑味のある樽熟系
バランスの取れた中間系
熟成の進んだ複雑な味わい
赤ワインであれば
渋みの軽やかなライトボディ
程よい渋みが心地よいミディアムボディ
しっかりした渋みと飲みごたえのフルボディ
など、「このワインはどういう味わいなのか」をまずはカテゴライズしましょう。
カテゴライズといっても最初はライトボディなのか、ミディアムボディなのか、フルボディなのかを振り分ける程度で十分です。
そのあとの文言付けについては↑の文言を参考にしていただいて構いませんが、出来れば自分でも考える癖付けをお願いします。
香りの文言を付記する場合
ここで、ソムリエであれば香りの文言をつけたくなるのが人情でしょう。
例えばボルドーのソーヴィニョンブランであれば柔らかいかんきつ類の香りや穏やかな樽の印象が香りの主軸になるはずです。
この場合に、必ず香りの主体になっているものから順に1~2程度にまとめて書くようにしましょう。
若い白ワインであれば当然果実の香りが主体になるはずです。
赤ワインであっても果実の香りが主体になりますが、樽の印象も消費者へのアピールになります。
そのため、
白ワイン:かんきつ類、洋ナシ、白桃、ミネラル、樽の印象
赤ワイン:キイチゴ、イチゴ、カシス、ブルーベリー、ブラックチェリー、樽の印象
位にまとめるのが無難です。
逆に香りの構成のほんの数パーセントしかないようなキーワードや、踏み込んで「少し煮詰めたカシスの香り」といっても普通の消費者は分かりませんし、普通にウケません。
「早朝、森の中を歩いていたらふわっと感じる霧の様なミネラル感」みたいなポエムもウケません。
文字数は少なく、端的に伝えるのがセオリーです。
④シチュエーション、ペアリングなど
これもソムリエであれば実務上最も重要とされるポイントです。
普段ワインを扱う中で、ワインだけ見ているのか、ワインの先にお客様を見ているのかで全く変わってきます。
ポップの作成を試験問題に出すということは、厳しい表現ですが、ワインだけ見ている受験生はソムリエと名乗らせない、という主催者側の強いメッセージでもあるのです。
この場合もサンプルとして、
白ワインの場合
飲みやすいさっぱり系→ランチタイムに軽く一杯、食前酒にも最適、ワインパーティーの乾杯に、お魚のカルパッチョ、キノコのてんぷら
複雑身のある樽熟系→クリーム系のお料理と一緒に、しっかりしたディナータイムの白ワインに、ワイン好きの集まるワインパーティーに、鶏肉のクリーム煮込み、鶏モモ肉のグリル、ホタテのクリームソース、鶏と白菜の鍋物、鶏肉の唐揚げ
アロマティック系品種→アジア系料理とのペアリングに、ワイン初心者に特におすすめ、タイ風焼きそば、天心
赤ワインの場合
渋みの軽めなライトボディ→白身のお肉系の料理に、渋みが苦手な方にもお勧め、鶏肉のグリル、パスタ料理、豚しゃぶ、肉じゃが
バランスの取れたミディアムボディ→ワインパーティーの一本に、お肉料理全般にあわせやすい、ハンバーグ、とんかつ、ミートソースのパスタ
渋みと飲みごたえのあるフルボディ→赤身肉のステーキに、渋いワイン好きに、赤身肉のバーベキュー、すき焼き、サーロインステーキ
などをご参考にしてください。
⑤購買意欲をそそる文言
ワインのポップ作成において、購買意欲をそそる文言は、顧客の心を捉えるための重要な要素です。
どれだけ正確でも、「いろいろ書いてあって詳しくて正しそうだけど、でもなんとなく買いたくない」ではダメなのです。
ただし、これまでのポイントをおさえれば特にこれ以上気にすることはありません。
ここまでで十分に購買意欲をそそる文言はちりばめられているはずです。
以下、購買意欲をそそる文言のポイントです。
まず、商品の特徴や魅力を簡潔に伝えることが大切です。
例えば、「フルーティーで爽やかな味わい」や「樽熟成による深いコク」など、ワインの風味や特長を具体的に表現します。
次に、特別感や限定感を強調する言葉も有効です。「数量限定」「今だけの特別価格」「希少なヴィンテージ」などは、購買を急がせる効果があります。
また、ワインと一緒に楽しむシチュエーションや料理との相性を描くことで、顧客の想像力を刺激し、実際の利用シーンを想起させることも有効です。
「ローストビーフとの相性抜群」「大切な人との特別な夜に最適」などの文言を使うことで、ワインを購入することで得られる体験をイメージさせ、購買意欲を高めることができます。
デザイン性は、求められていない
ワインのポップ作成において、デザイン性は確かに重要な要素ですが、最も重視されるべき点ではありません。これはソムリエ論述試験でも同様です。
ソムリエ試験なのにデザイン性が求められたら「そんなのソムリエ試験じゃない」とクレームがつくはずです。
そのため、ここでいうデザイン性は、イラストが得意な人の特殊な能力ではなく、「丁寧に、わかりやすく書いているか」が問われているととらえましょう。
ポップを、中身を考えず、デザイン重視で作成するのは逆にデメリットが大きいです。
ワインを見た目の雰囲気やデザインに凝って内容をおろそかにしてお客様に売ったとしましょう。
これで実際飲んで違ったら「あのお店は分かっていない、表面的なお店だ」と評価されるでしょう。
特にワインショップの現場では、デザインの華やかさや洗練さよりも、顧客にとって何が一番重要であるかを的確に伝えることが優先されます。
つまり、ポップは「何を言いたいのか」、そのメッセージが明確であることが最も重要なのです。
顧客がワインを選ぶ際、限られた時間の中で多くの情報を処理しなければならないため、ポップはシンプルで分かりやすく、直接的な言葉を用いることが求められます。
例えば、ワインの特徴、味わい、価格、特典、またはそのワインがどのようなシチュエーションで最適かといった情報が一目でわかるようにすることが重要です。
もちろん、デザインが全く無関係というわけではなく、目を引く色使いやレイアウトが効果的に活用されることはありますが、それはあくまでメッセージを強調するための手段に過ぎません。
デザインが複雑すぎると、かえって顧客が混乱し、伝えたい内容がぼやけてしまう可能性があります。
したがって、ワインのポップ作成では、視覚的な魅力よりも、伝えたい情報がはっきりと伝わるように工夫することが成功の鍵となります。
まとめ
ソムリエ試験におけるポップ作成は、「ワインを端的に捉え、どのように売るか」を評価する重要な要素です。
ポップは、限られたスペースで商品の魅力を一瞬で伝えるツールであり、その効果的な作成は、ワインの本質を理解し、顧客に訴求する力を養うための訓練となります。
この試験は単なる知識の確認ではなく、実際の販売シーンで役立つ実践的なスキルを磨く機会でもあります。
ポップ作成は、一見すると難しく複雑に思えるかもしれませんが、普段からワインと向き合い、しっかりとその特徴を観察する習慣を身につければ、難しくありません。
例えば、香りや味わい、産地の特性を理解し、それを端的な言葉で表現する力を養うことが求められます。
また、ワインをどのように提案するか、つまりどんな食事やシチュエーションに合うのかを考え、それを魅力的に伝えることができれば、自然と効果的なポップが作れるようになります。
さらに、今回ご紹介した少しのコツを知ることで、試験のハードルを大きく下げることができます。
具体的には、短くても的確な表現を使う、視覚的にわかりやすいデザインを心がける、購買意欲を高める言葉を選ぶといったポイントを意識することが重要です。
これらのスキルは、日常的にワインと向き合い、顧客に提案する経験を積むことで自然と身についていくものです。
ここまで読んでくれたあなたなら大丈夫です。
何個か自分で書き上げて、しっかり準備して本番に備えましょう!
【ワインブックスオンラインスクールのご案内】
このサイトは、ワインブックススクールの運営です。
ワインブックススクールでは、月額2200円で、いつでも、どこでも、誰でもワインの学習ができる環境が整っています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験の対策に
趣味のワインライフに
エクセレンス試験の対策に
飲食店の頼もしい見方に
ご活用ください。必ずお役に立てることをお約束します。
WBSのソムリエ・ワインエキスパート試験対策講座はこちら→
ワインビジネスをご検討のお店様、企業様へのワインコンサルタントも行っています。
ワインエキスパート試験とは?試験の全体像はこちら→
ワインブックスにお越しいただいてのテイスティング講座はこちら
ワインブックスのテイスティングコースはこちら→