購入後:【ソムリエ・ワインエキスパート二次試験】アイテムは広げず、絞った方がいい

【最終更新日】2024年8月28日

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こんにちは。ワインブックスの前場です。

僕はワインブックススクール(以下WBS)と言ってオンラインのワインスクールを運営しています。

WBSは月額2200円でいつでもどこでも誰でも学習できることにこだわったワインスクールで、お陰様で大変に多くの生徒様が学習をしてくださっています。

 

ワインは歴史的に市民社会の伝播によって伝わった経緯があり、その土地の風土や環境が大きくワインの味わいに影響を与えています。

ごく普通の市民社会で広まった経緯から、僕には「ワインはみんなのものだ」という強い信念があります。

だからできる限り価格をおさえて、かつ品質は最高レベルのものを提供しようということでスタートをし、今のところ満足のいく内容をご提供できていると考えています。

 

WBSはワインを体系的に学習し、その流れで自然な形でソムリエ、ワインエキスパート試験の合格があるというスタンスです。

そのため講義は対策講座と銘打っているわけではなく、ワイン全般の知識経験を得てくださいというものになっています。

しかし、多くの生徒様はソムリエ試験、ワインエキスパート試験を受験し、合格を勝ち取っています。

 

これはもちろん生徒様の頑張りが一番です。

そのうえで、WBSは試験向けの特別講義も充実していて、普通の対策講義を超えるような内容の情報を提供している結果、よいシナジーを生んでいるものと思われます。

 

このような流れの中で、WBSの二次試験対策講義は特にほかのスクールに比べて際立った個性があると感じています。

それは「テイスティングのワインは最小限の数に絞って体得し、あれもこれも幅を広げるのはリスキーな判断だ」という考えです。

 

これは何を意味するのかというと、事前のワインテイスティングの経験は絞りに絞って、その代わりに表現方法を徹底的にマスターしてもらうということです。

実際にWBSのテイスティングワインのアイテムは赤白4種類ずつで、それ以外は余裕がある方だけ取り組んでくださいというものです。

おそらくどのワインスクール様よりも少ない銘柄でトレーニングをしているはずです。

 

 

もちろん生徒様の中にはこれじゃ足りないからということでほかのスクールに通われた方もいるはずです。

ご自身でワインを調達したり、ワインバーなどでブラインドテイスティングを経験するなどの自発的な学習をされている方もいらっしゃたでしょう。

ただしそれであっても最終的にはWBSのスタンスを受け入れてくれて、実際の試験で実力を発揮し、そしてほとんどすべての人が2次試験を突破しています。

 

これはなぜか?

WBSはワインにとどまらず、試験とその周辺環境までメタ推理も含めて分析していて、これをうまく取り込むことに成功しているからです。

 

ワインと向き合うという点で見れば、赤白4種類ずつは明らかに少ないです。

多くのワインを生徒にテイスティングさせ、本番の試験でできる限り高い点で合格をしてもらうのが普通でしょう。これが多くのワインスクールの教え方です。

 

ただし、これがどこまで受験生の試験中の実際のアクションに反映されるのか?これは疑わしいです。

後述しますが受験生は「この試験を落としたらチャンスは1年後に持ち越し」という極めて特殊な状況にあります。

 

しかもテイスティング試験は官能試験のため、どれだけトレーニングをしても正解の確実性はどこにも担保されません。

にもかかわらず「できる限り多くのワインを体験して、そのままテストに反映させて下さい」となるか?そう甘くはないからです。

 

 

もちろん中にはワインスクールで多数のワインを経験し、これが実際の試験でドンピシャで出題されることもあるでしょう。

こうなると中にはほかの人が外すようなレアなワインでも品種や生産国まで当てる人もいるはずです。

 

しかし物事はそうそううまくはいかないものです。

中には経験が増えることで逆にノイズが増えてしまい、判断に迷ってしまうこともあるはずです。

 

 

「何だそんなことを言って。それじゃあ多くのワインをテイスティングするのが無駄だというのか?」

おそらくこのように義憤を感じられる方もいらっしゃると思いますが、それは誤解です。

 

最初に申し上げた通り、ワインは市民生活の伝播によって広がった経緯があるため、市民生活の数だけワインの品質にも違いがあります。

「ワインはみんなのものだ」と言っておきながら、多様な市民生活に目を背け、ワインを限定的なものとして扱うのはあまりにも無茶でしょう。

 

そのためワインはできる限り広く味わってほしいし、味わいがわかるようになってもらいたい。これは揺るぎません。

しかし、では試験ではどうか?これは全く話は別です。

試験を受けるからには合格が目的で、その目的のためにWBSの考えとか理念とかを持ち込むのは筋違いだし、最悪生徒様の本音を無視することになります。

 

この試験の本質は可処分時間との戦いなので、ほとんどの人はただでさえない時間のなか、なんとか振り絞って勉強時間を捻出する。これが実態です。

そのため、受験生の本音に寄り添えば、「できる限り効果的に、そして合格の実現可能性は高く」これを一番に検討するべきです。

 

ここではソムリエ、ワインエキスパート二次試験を受けるにあたって、WBSが生徒様にアドバイスをする中でも極めて本丸に近い「なぜワインアイテムは最小限におさえていいか」を中心に解説をします。

具体的にはソムリエ・WE試験の事情と受験生の特殊な状況をもとに、プロスペクト理論のうち、特に損失回避の心理と参照点依存性をもとに解説をします(後述します)。

 

これを読むことでなぜWBSがほかのスクールと真逆の方針で二次試験をとらえているのか、そして逆に多すぎるワインアイテムはなぜノイズになると考えているのか、ここがお分かりいただけると思います。

 

 

繰り返しになりますが、ここでいう「ワインアイテムは最小限でいい」は試験対策での話であって、普段のワインライフでの話ではありません。

ワインを斜に構えて見る。このスタンスはもっともWBSのスタンスとは違います。

くれぐれも誤解をされないようにしてください。

試験は登竜門なので、早々と合格してもらい、広くて深いワインの世界にもっと踏み込んでもらいたい。そのお手伝いとお取りくださいますようお願いいたします。

 

大変に長いコンテンツではありますが、これをお読みいただくことで試験分析はどこまでするべきなのかがわかりますし、あなたの努力の質は驚くほど上がることをお約束します。

ただし大変に恐れ入りますが、当然WBSの会員様向け対策講義はさらに実践的で、もっと踏み込んでいます。

そのため完全な全出しではないことを最初にお断りします。

 

WBSの特別講座では具体的な点の取り方までをコーチをさせていただいていますし、ここで全出しをするほどいい人にもなれません。

ただし、全出しではないけれども、それでもおそらくあなたの中で大きなひらめきやきっかけになるはずです。

 

あなたが少しでもこの記事を読んで興味を持ってくれたのであれば、是非WBSを覗いてみてください。

二次試験直前でも間に合いますので、是非ご参加をお待ちしております。

 

それでは、前置きが長くなりました。WBSのソムリエ・ワインエキスパート二次試験 テイスティング対策講義を始めましょう。

 

 

なお、WBSでは2次試験向けのトレーニングについては1次試験合格後の9月からで十分に間に合うと考えています。

ただし、それであっても事前の準備はどうしても必要になってきます。

基礎的な準備として、

・白ワイン(シャルドネステンレス、シャルドネ樽、ソーヴィニョンブラン、リースリング、甲州)

・赤ワイン(カベルネソーヴィニョン、ピノノワール、シラー、シラーズ、マスカットベリーA)

が何となくの判別がつくように、9月までに意図的にこれらの品種で造られているワインをお飲みくださいますようお願いします。

 

 

【2024年版】ソムリエ・WE試験 二次試験テイスティング対策講義

試験の総論

まず、当たり前ではありますが試験を分析するにあたってその全体像をしっかり知ることが大事になってきます。

ソムリエ、ワインエキスパート試験は本当にざっくりいえば一次試験で半分にスクリーニングされ、2次試験は大体8割が合格し、2割が不合格になる。このパターンで推移しています。

もちろんこれは本当にざっくり乱暴に解説をしていますので、具体的な試験の難易度は別記事をご参考下さい。

 

具体的なソムリエ試験・ワインエキスパート試験の難易度の解説はこちら→

 

では、二次試験にフォーカスしてみましょう。二次試験はざっくりいって8割の人が合格して2割の人が不合格になる。こうでしたよね。

ということは、イメージとするとこのようなグラフ↓にすることができます。

①を2割のひとで、このゾーンを不合格としましょう。②⇒⑤に行くにしたがって高い得点ということになります。

 

⑤のひとは、高い点ですので当然安心して合格発表を迎えられるでしょうし、なによりも本当に努力をしたのでしょう。

④のひとだっておそらく相当なトレーニングをしたはずです。ここも素晴らしい結果です。

 

⑤のひとも④の人も確かに素晴らしい結果であることはその通りです。ここは正直に素晴らしいと評価されるべきでしょう。

しかし、ではこのような見方をしたらどうでしょうか?

「試験は合格と不合格しかないんだから、戦略的に合格した人が評価されるべきだ」という見方です。

 

 

戦略的に合格するとは?

「戦略的に合格する」といっても、いまいちピンとこない人もいると思います。もうすこし深掘りましょう。

⑤のひとは確かにトップクラスの得点で合格をしています。

 

では高得点とはなにか?当然ほかの人と違う結論を出して、これが正解だったから高得点になったということです。

他の人と同じ結論のままではボリュームゾーンになってしまいます。いいとこ③でしょう。

 

だから高得点を狙うためには他の人と違う判断をすることになります。

 

 

↑の図は正解と不正解を10人で検討したものになります。

ここではわかりやすく、受験生はぶどう品種をシャルドネか甲州で迷ったとしましょう。

正解は甲州だったとします。

 

●のひとはシャルドネを選んだ

●のひとは甲州を選んだ

としてください。

 

●の人は他の人が8割シャルドネを選んだところを甲州と判断したから、だから残りの2割になれるのです。

これが高得点のイメージです。

 

では、ここをもう少し踏み込みましょう。

よく見てみると不正解の8人であってもすべての人が不合格にはなりません。

なぜなら二次試験は全体の2割の人が不合格になる試験だからです。ということは8人のうち2人が不合格なので、まだ合格の可能性は75%ということになります

そのため仮に不正解であったとしても、ほかの人も間違えているため致命的なミスにはならず、決して悲観的になるものではないということがわかるはずです。

 

では、逆のパターンはどうでしょう?

甲州を選んだけど、回答は残念ながらシャルドネだった。

すると不正解の人は下位の2割になってしまい、二人とも不合格になってしまいます。

つまりほかの人と違う判断をした結果、致命的なミスを引き起こしてしまったということになるのです。

 

これが進学受験のように回答がはっきりしているのであれば全く問題ありません。遠慮なく回答を追い求めればいいだけの話です。

しかし、二次試験はテイスティングなのでせんじ詰めれば官能の試験です。

自信をもって特定できるときもありますが、そうでないときも多いです。

完全にすべてのワインの品種や生産国を当てるのはそもそも不可能だし、世界中どこを見ても完全に当てることができる人を見たことありません。

 

いかがでしょうか?少し見えてきましたよね。

 

これをまとめてみましょう。

 

●のひとはシャルドネを選んだ。正解がシャルドネであれば全員合格。正解が甲州であってもまだ合格の可能性は75%ある。

●のひとは甲州を選んだ。正解が甲州であれば合格。正解がシャルドネであれば不合格が確定。

 

ということになります。

高得点を狙うのは、ハイリスクではあるけどリターンは同じ。

無難な回答をするのはリスク分散ができたうえで、かつリターンも同様ということになります。

 

これを比較して、あなたはどちらが戦略として正しいと思いますか?

おそらく「無難な回答をする方が戦略として正しい」がほとんどでしょう。

 

 

分かりやすい品種が出た場合

では、ここをもう少し踏み込んでいきましょう。

例えば出題のワインがACブルゴーニュピノノワールだったとします。

 

特性も良く現れていて、パッと見てピノノワールかカベルネフランか、MBAか・・・。そんなところか・・・。

ここを、多くの受験生はピノノワールと判断したとします。これが先ほどのパターンです。

 

 

 

●のひとはピノノワールを選んだ

●のひとはMBAかCFを選んだ

 

こういう場合に、ほかの人が当てるワインが出た場合にミスってしまうと致命的なミスになることが見てわかると思います。

もちろんその分をほかの分野で挽回する可能性はありますが、それでもほかの人とは差がついてしまうのは分かるでしょう。

 

これは何を意味するのかというと、わかりやすいワインが出たときに外してしまうと差がつきやすくなる。これを意味しているのです。

 

分かりづらい品種が出たとき

では次にわかりづらい品種が出題された時を検討してみましょう。

例えば正解をソアヴェとします。これをドンピシャでソアヴェと言える人はそうはいません。

 

選択肢にはシャルドネ、甲州、ピノグリ、アシルティコ、コルテーゼがあったとします。

こうなると正解の確率は1割にも満たないでしょう。もっと低い可能性もありますが、便宜上正解を2割にしましょう。

 

 

●のひとはガルガーネガ以外を選んだ

●のひとはガルガーネガを選んだ

 

わかりづらい品種が出た場合は回答は当然割れるので、合格か不合格かは持ち越しになります。

しかし合格率はまだ6/8なので75%もあるということになります。

 

いかがでしょうか。おそらくあなたは「自分の感覚に従ってブドウ品種を選ぶのが正攻法」ととらえていたかもしれません。

しかしよく検討すると、あなたの感覚に従ってワインを選択することは必ずしも正攻法ではなく、むしろ場合によっては悪手になる可能性が高いということが分かったはずです。

 

試験中の心理

正直な話、WBSで学習をされている人であれば、この程度の分析は「いろはの”い”」でしょう。

ただしWBS生以外であっても試験問題を研究した人やすこしでも問題を俯瞰視できたひとは、「なんとなくリスキーな選択」がわかっていたはずです。

 

では、実際の本試験での心理をイメージしてください。試験は一年に一度。これを逃したら合格は一年後に持ち越しになります。

 

ここで、アリゴテが出題されたとして、これをはっきりとアリゴテと結論付けられる人がどれだけいるでしょうか?

 

・確実にアリゴテだ

・アリゴテだと思うけど、やや不安

・アリゴテだと思うけど、ほかの品種かもしれない

・アリゴテかもしれないけど、ほかの品種かもしれない

・アリゴテじゃないと思うけど、ワンチャンアリゴテ

・全くわからない

 

このように判断が分かれたとします。だいたい試験中の心理はこんなところでしょう↓

 

「確実にアリゴテだ」と思った人は自信をもってアリゴテにチェックするべきです。

それでないとテイスティングの意味がないし、自信なさすぎですし、自分に嘘つきすぎです。

 

ただし、「アリゴテだと思うけど、やや不安」の人はどうでしょうか?

おそらくほとんどの人はアリゴテにチェックを入れられないはずです。

なぜか?「8割がたアリゴテかもしれないけど、外した場合のリスクが大きすぎてチェックが入れられない」という心理が働いて、多くの人は無難な品種にチェックを入れるのです。

 

当たり前ですが「アリゴテだと思うけど、ほかの品種かもしれない」「アリゴテかもしれないけど、ほかの品種かもしれない」こういう人はもっと回答は割れ、アリゴテにチェックを入れる人の割合は下がるはずです。

そして「アリゴテじゃないと思うけど、ワンチャンアリゴテ」「全くわからない」ひともアリゴテにはチェックを入れないのが普通の判断です。

 

ですが、先ほど見てお分かりの通り、別にここで間違えても不合格は確定しないし、若干合格率が下がるだけなので致命的なミスではありません。

繰り返しになりますが、本当にアリゴテだと確信が持てる場合はアリゴテにチェックを入れるべきです。

しかしそうでない場合は、戦略的にはアリゴテにチェックは入れないほうが正しい判断だということに気づくはずです。

 

合理的でない回答を避ける

これは何も「無難な品種にチェックを入れろ」と言っているわけではなく、試験中の受験者の心理を検討するとマイナーな回答にチェックを入れられないプレッシャーがかかるという傾向を知りましょうということです。

ここがわからないと戦略を無視して「アリゴテじゃないかもしれないけど何となくアリゴテにチェックを入れる」人が増えることになります。

 

では、回答がアリゴテである可能性は何%あるでしょうか?過去の傾向からいいとこ数%でしょう。おそらく2~3%くらいです。

過去の事例を踏まえればシャルドネなどのメジャーな品種の可能性の方が高いので、わからない品種が出された場合、結論を「シャルドネではないか」と判断する受験生は多いはずです。

このプレッシャーの中であなたがアリゴテと結論付けられるのは本物です。おそらく全体でもトップのテイスティング力でしょう。

 

では、この場面で残念ながら正解がシャルドネであればどうでしょう。

迷った結果、保守的にシャルドネを選んだ受験生が多い中、アリゴテにチェックを入れた。

あなたは間違えた場合に致命的なミスを背負うことになるのです。

(ただしWBSの経験ではすべての品種を外しても合格できるだけの得点ができるようにアドバイスをさせていただいておりますので、文言通りイコール致命的、というものではありません)

 

ソムリエ・ワインエキスパート二次試験 過去のテイスティングアイテムはこちらをご参考ください→

 

 

配点を検討する

では、ここでソムリエ試験、ワインエキスパート試験の本試験のあとに、回答とともに発表されたテイスティングの配点を見てみましょう。

ソムリエとワインエキスパートで若干の差はありますが、ここではソムリエを例にとります。

 

詳しくは省きますが、おおむね結論の部分(品種、収穫年、生産国)が2割強、表現の部分が8割弱の配点になっています。

ただしここまで検討した通り、結論の部分では受験生の心理に大きなネガティブプレッシャーがかかるため回答に差はでにくくなることが推測できます。

この辺りは主催者側もわかっていて、だから結論の部分に大きな配点ができないという本音があるのです。

 

では、これを「表現も大事だけど、結論はもっと大事」という声が上がるとしましょう。これはこれでもっともな意見です。

仮にこの声を反映して結論5割、表現5割だとしたらどうでしょうか?

するともっと受験生は委縮してしまい、優秀な人であれば「ずいぶん運任せな試験だな」と冷めてしまうでしょう。

 

優秀な人であればそんな試験に大事な可処分時間はかけられないし、最悪な場合受験者離れを起こす可能性も出てきます。

ここを検討すると、今後も結論2割、表現8割の傾向は続くと判断するのが無難ですし、受験生として主催者側の心理を知っておいて損はありません。

 

「チャンスは一年にいちど」のプレッシャー

ではいよいよここから結論を出しましょう。

もちろんこの結論はWBSの考える結論なので、多くあるうちの一意見にすぎません。あなたはあなたなりの結論を出してください。

ただしここまでお読みのあなたであれば、「ずいぶん理詰めではあるけど、言っていることには一理ある」と思ってくれているはずです。

 

ソムリエ、ワインエキスパートの素地としては、多くのワインをテイスティングするのは当然ですし、ここは理屈ではありません。

経験の違いによる説得力のあるなしは如実に表れるし、そもそもワインに興味があればおのずといろいろなワインを味わってみたくなるはずです。

 

ところが試験でのテイスティングということになると、これが全く様相を変えることに気づいたはずです。

試験中の心理は「このチャンスを逃したら次のチャンスは一年後」という極めて特殊な心理が強く働きます。

このような場面では、人間は「成功したい」という心理よりも「失敗したくない」という心理が大きく働くのです。

 

当たり前でしょう。ほかの人が外すような品種を当てて大きく成功しても、結果は「合格」のみ。ほかの合格者と同じステータスです。

それであれば「もし間違えて失敗するくらいなら、自分の考えとは違うけど無難な方にチェックしておこう」という心理が働くのです。

 

プロスペクト理論

「成功したい」か「失敗したくない」か?

「人間は成功したいという心理よりも失敗したくないという心理が大きく働く」という理論は、損失回避の心理と言います。

この心理はプロスペクト理論と言って行動経済学の理論のひとつです。

心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって1979年に提唱され、ふたりは行動経済学の基礎を築いたという理由で、2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

 

あなたは「合格の可能性を30%上げます」と言われた場合と「不合格の可能性を30%下げます」と言われた場合、どちらを選びますか?

おそらく後者でしょう。それが人間心理なのです。

期待値よりも損失回避の心理が働く。これは不確定要素が大きい場面ではより顕著に表れるし、プレッシャーが大きい場面でこの心理に逆らうことはよほどの決断が必要だということなのです。

 

損失回避の心理が働けばおのずと回答は無難なものになりやすいし、それは行動心理学でも証明されていることなので、決して物珍しいものではないのです。

 

参照点依存性

このプロスペクト理論にはいくつかの分野に分かれています。

ソムリエ・ワインエキスパート試験では、おもに損失回避の心理とともに参照点依存性をおさえてください。

 

参照点依存性は、人間の心理は物事の価値を絶対的な尺度で計るのではなくて、定点的に変わってくるし、相対的なものだというものです。

分かりやすいのが生活水準でしょう。生活水準を上げ、その後に収入が減ると「元に戻れない」という心理が大きく働くため、人間は合理性を失い、判断を誤るのです。

こうしてギャンブルに走ったり、最悪な場合に犯罪に手を染める人は後を絶ちません。これが参照点依存性です。

 

ソムリエ・ワインエキスパート試験では、テイスティングに進んでいる人はすでに一次試験を合格していますから、膨大な時間を筆記試験にあてています。

ということは「ここまでやったのだから」という気持ちが大きく働きますので、余計に試験中の判断は保守的なものに落ち着きます。

 

なぜ保守的なものに落ち着くのか?

「ここまでやったのだから合格したい」という気持ちよりも「ここまでやったのだから不合格になりたくない」という気持ちの方が強いからです。

 

 

ワインのテイスティングは、絞っていい

ここまでお読みのあなたであれば、なぜWBSがテイスティングワインは絞ったほうが良くて、逆に幅を広げすぎるとノイズになると思っているのかがわかったかと思います。

テイスティング試験では大きなプレッシャーがかかり、かつ、官能試験という不確定要素の高い、極めて特殊な心理状態になります。

 

この心理状態では人間は普通は「高得点で合格したい」という期待値よりも「不合格になりたくない」という損失回避の心理が勝るため、結論の部分ではそう簡単に普段通りのテイスティングができないのが実際のところなのです。

外部の人間は簡単に「自分の感覚に素直になってテイスティングしましょう」と言いますが、これを受験生の身になってみるといかに無責任なことを言っていることがわかると思います。

 

直前期になるとどうしても「あれもこれも知っておいた方がいい」という気になってしまい、いろいろテイスティングをしたくなる気持ちは分かります。

もちろんいろいろテイスティングすることそのものはいいのですが、ではこれを実際の本番で適切に反映できるのかと言われればそうでないことは、実際に受験したことのある人では何となくわかるはずです。

 

どこまで絞って、どこから切り捨てるのか?

テイスティングワインは幅を広げすぎずに絞ったほうがいいとして、では大事なのが「絞るっていってもどこまで絞るのか」でしょう。

いくら絞るといっても限界がありますので、その線引きは大事になります。

 

WBS生であればご存じのとおり、

・シャルドネ ステンレス

・シャルドネ 樽

・ソーヴィニョンブラン

・リースリング

(甲州)

 

・ピノノワール

・カベルネソーヴィニョン

・シラー

・サンジョヴェーゼ

(MBA)

 

この8種類を基本アイテムとして販売し、これ以上は希望者だけ個別に購入してくださいというスタンスです。

ただし、2次試験前には週に一度特別講義をしてあらゆるワインが出題されてもいいように準備はするし、かりに品種をすべて外しても合格できるように、その具体的なアクションプランまでをアドバイスしています。

 

もちろん、この8種類は絞りに絞っていますので、やや不安なことも多いでしょう。

それであればもちろん個別に準備をするべきですが、それであっても

 

白:甲州、アリゴテ、ミュスカデ、ゲヴュルツトラミネール

赤:MBA、メルロー、マルベック、グルナッシュ

 

位で十分です。これ以上はもちろん参考にはなりますが、同時にノイズになる可能性の方が高いと感じています。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ここまでお読みのあなたは、「ワインのことはほとんど書かれていない」ことに気づいたはずです。

この記事はソムリエ・ワインエキスパート試験の二次試験対策講座で僕がお伝えしているほんの一部です。

 

あなたの目的がいまでも

「試験であってもいいテイスティングをしたい」

「試験であっても自分の感覚に素直になってテイスティングしたい」

こう思っているのであればいうことはありません。

本当に申し訳ありませんが、ここまでの情報は必要なかったし、あなたには参考にならない情報なので、切り捨ててください。

 

しかし、多くの人の受験の目的は合格でしょう。それが普通の感覚です。

それであればワインよりも先に試験全体の状況と受験者や主催者側の心理を把握することは極めて大事でしょう。

そうでないと最悪自己流で受験することになってしまい、不合格の可能性を引き寄せてしまうのです。

 

これまでソムリエ・ワインエキスパート試験の対策は、ワインを真正面から分析し、ワインと向き合うという発想が主流でした。

もちろんワインと向き合うのは当たり前ではありますが、ただしWBSでは試験を分析するとなるとワインだけではとても足りないと考えています。

試験の傾向はもちろん、主催者や受験生の心理までを検討し、そして結論と実際のアクションプランに落とし込む。これがWBSのスタンスです。

 

大変に長い記事ではありました。ここまでお読みのあなたであれば、具体的にどのようにこの試験をとらえ、取り組むべきかがわかったはずです。

ぜひ皆様のご活躍を期待しております。


 

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