【最終更新日】2022年10月29日
先日2022年度ソムリエの二次試験合格発表があり、それにともなってしれっと「テイスティング項目別配点」のリンクがあったので、そこで驚いた人もいると思います。
テイスティングの項目別配点とは、外観や香り、味わい、結論などについての配点がおおむねどのようになっているのかが記載されています。
ただし記載の内容は○○%~○○%などのあいまいなものになっていて、また記載内容と実際の項目もあったりなかったりもあります。
参考程度の資料ととらえておくのが無難でしょう。
このての資料についてはちらっと数値だけをみてもよく理解できないことも多いです。
そのため公表された数値をもとにいかに分析するのか、どのようにして学習に活かすのかが肝要です。
なお、記事の品質担保のためご説明しますが、僕は前場亮と言いまして、ワインブックスの代表を務めています。
ユーチューブチャンネル「ワインブックス」を運営していて、こちらはワインジャンル最大規模になっています。
自身は30歳の時に国内のソムリエコンテストで優勝し、その後にワイン界から完全にはなれて法律とインターネットを勉強し、ワイン界に戻りました。
教育機関として当サイトワインブックススクールを運営していて、毎年多くのワインエキスパート試験の合格者を出させてもらっています。
そのため質の高い一次情報が入りやすい立場ですので、これを根拠に記事を作成しています。
目次
ソムリエ二次試験 テイスティングの項目別配点とは?
項目別配点の内容は?
では実際に発表されたソムリエの項目別配点を見てみましょう。
外観 18~20%
香り 29~31%
味わい 17~18%
そのほかの項目 8~10%
収穫年 5%
生産地 7~8%
ブドウ品種 12~13%
となっています。
ちなみにワインエキスパートは
外観 16~20%
香り 29~30%
味わい 17~19%
そのほかの項目 8~10%
収穫年 5%
生産地 7~8%
ブドウ品種 12~14%
となっていて、若干の違いはあれどノイズ程度の誤差でしょう。
これをイメージしやすく一アイテム100点だとするとこうなります。
これを回答一つの点数に割り振るとおおむねこうなります。
(一つのワインを100点として)
項目 | 配点 |
---|---|
外観 | 2.5点 |
香り | 2.5点 |
味わい | 2.5点 |
その他の項目 | 2.5点 |
収穫年 | 5点 |
生産国 | 7点 |
ぶどう品種 | 12点 |
単純な足し算で計算できない部分もありますが、煎じ詰めれば配点の8割弱が表現に割り当てられ、結論については2割強にとどまっているということになります。
表現8,結論2の配点とは?
では、ここまででソムリエ二次試験の配点は(ざっくりと)表現8,結論2の割合になっていることがわかりましたが、ではこの8:2の数値とはどのようなものなのかを検討しましょう。
僕はWBSで実際にソムリエ試験の二次試験を受験する方へ具体的なアドバイスとコーチを行っています。
9月には毎週1回の特別講義を行い、個別のアドバイスもさせていただいているためご参加されたほとんど方を合格に導いています。
僕が実際に生徒様にお話しするのは試験の合理的な分析です。
この分析は表面的な数値だけではなく、試験全体の構成や業界の事情なども含めたメタ推理も含まれています。
そのなかでわかりやすいものが「ソムリエ二次試験に名人芸は求められていない」というものです。
ソムリエのテイスティングというとどうしてもブドウ品種、生産地、収穫年までをぴたり当てられるかどうかが大事と思われがちですが、それは誤解です。
どんな簡単なぶどう品種、ワインであっても目の前に事前情報がないままぴたりと当てるのは名人芸です。
これは試験の項目別配点からも見て取れます。
今回の発表にあったように、表現8,結論2の割合になっています。
これは何を意味するのかというと、主催者側は合格者の選別に結論については2割しか選考基準に入れていないということになります。
結論は重要ではないのか?
ここまでご紹介すると、どうしても「なんだ、じゃあ結論は重要じゃないのか」と短絡的に紐づけたくなるかもしれません。
その気持ちもわかりますが、しかしもう一歩踏み込んでい見ましょう。
結論についてはたかが2割ではありますが、されど2割です。
ソムリエ2次試験はネット上で様々な情報があり、いくつも攻略法を紹介している記事は見つかるはずです。
これらを検討すると、おおむね「表現については無難な回答をすれば落ちることはない」という理屈が目立ちます。
WBSでも二次試験は落とす試験ではなくて、自滅する人をスクリーニングする試験だといっていますので、論旨は同じになります。
ただしこのまま受験生のレベルが上がり、表現に差がつかいないとなるとどうなるか?
結論がどれだけ当たるかどうかが合否の分かれ目になる可能性があるということなのです。
どこまで結論は大事なのか?
表現が一番大事だけど、結論も大事というなんとも歯がゆいことを書いていますが、それじゃあ読む側にとってあんまりでしょう。
じゃあ結論とはいってもどこまでが重要なのか?ここを検討してみましょう。
この試験はアイテムごとに難易度はあって、大雑把に言えばこのような具合でしょう。
難易度☆シャルドネ、ソーヴィニョンブラン、リースリング、甲州、ピノノワール、シラー(シラーズ)、カベルネソーヴィニョン
難易度☆☆ミュスカデ、MBA、メルロー、サンジョヴェーゼ
難易度☆☆☆それ以外
本当に乱暴ですが、おおむねこんな具合でしょう。
そしてなんと今年の出題は難易度☆のブドウからすべてが出題というわかりやすいものでした。
ほかの年であっても3つのワインのうち2つは難易度☆からの出題が多いし、難易度☆☆の出題が二つあればかなり難しいと感じるはずです。
他の人が当ててるのに自分が外す
ソムリエ二次試験は一次試験の筆記試験とは違い、受験者の回答を分析し、合格率を検討して合格点を決める相対評価になっています。
そのため絶対的な出題の難易度はたいして問題にならない素地があります。
ということは、「ほとんどの人が当てているにもかかわらず、自分だけが外す」とどうなるでしょうか?
こうなるとおそらく難易度☆のワインでしょう。これを外すと致命的なミスになる可能性があります。
例えば典型的なシャブリが出題された場合、おそらくWBSで学習された方であれば7割はシャブリまで回答できるはずです。
ということは生産国に加えてブドウ品種も特定できていることになりますが、これをあなたはオーストラリアのソーヴィニョンブランと回答したとします。
すると生産国に加えてブドウ品種も外してしまい、こうなるといくら表現で頑張っても挽回は難しくなります。
他の人が外しているのに、自分だけが当てる
では逆に難易度☆☆☆のワインの出題だとしましょう。
たとえばオーストリアのグリュナーヴェルトリーナーだとします。グリュナーに自信をもってチェックできる人がどれだけいるでしょうか?
たしかに周りはみんな外してあなただけが「これはグリュナーヴェルトリーナーだ」と当てられればそりゃあ痛快でしょう。
しかし踏み込んで検討すれば「この人はただ戦略もなしにやっただけなんじゃないか」と思われる可能性もあります。
これが何のプレッシャーもないただのテイスティング会であれば気楽です。
あなたがグリュナーだと思えばグリュナーと言えばいいだけですから。
ですがこれが本試験でこう出来るかどうかはあやしいです。
「グリュナーヴェルトリーナーかもしれないけど、仮にグリュナーにチェックを入れて、正解がシャルドネだったらどうしよう」
という心理が働くのです。この心理は経験してみないとわからないはずですが、試験を控えているあなたであれば想像はできるでしょう。
ここでもし正解がシャルドネだった場合は、ほかの人がすべて当てているにも関わらず、自分は国名も品種も外すことになります。
しかも表現ではほとんど差がつかないとなると、いよいよグリュナーヴェルトリーナーにチェックを入れにくくなるはずです。
つまり、難易度が☆☆や☆☆☆のぶどう品種であれば回答は割れるし、ここで仮に自分がチェックを入れて点数を伸ばしたとしても、相対的に見ればリスクの方が大きくなってしまうということになります。
まとめ
いかがでしょうか。ソムリエ協会が発表した項目別配点を分析すれば、ここまでがわかるということになります。
では、仮にこれが名人芸を競う試験だとしましょう。名人芸の試験であれば表現と結論ではどのような配点になるでしょうか?
おそらく表現2:結論8になるはずです。
結論8表現2の試験であれば積極的に陳品種、難易度の高い品種にチェックを入れる必要がありますが、あなたはそんな試験に一年間をかけて頑張れますか?
僕なら無理です。「名人芸か運で決まるような試験にばかばかしくて時間は割けない」おそらく合理的な判断ができる人から脱落するはずです。
こういった分析ができないとあれもこれも手を出してしまい、結局後になって「あそこまでやるのは無駄だった」となってしまうのです。
ここまでお読みのあなたであれば、ヒントの様なものが見えているはずです。
ゴールはすぐそこです。頑張ってください。
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